前回は拳だったので、今回は口頭で……?
やや重い話も混入してますが、読んで貰えると嬉しいっす。
「なんだとっ!? 貴様がキラ・ヤマトの双子の姉だというのかっ!? 貴様もスーパーコーディネイターなのかっ!?」
「落ち着けって」
”ごすっ!”
「うごっ!?」
とりあえず、脳天に一発鉄拳制裁して鎮静を促す。
姉と弟の語らいで、拳がコミュニケーション・ツールになるのは一般的だ(実例:幼い頃のミナ姉)が、
(まあ、キラとはこういうコミュニケーションはとれないだろうからな~)
という訳で、今はこの関係を楽しむとしますか。
「確かにキラとワタシは、遺伝学的に言えば二卵性双生児だが、ワタシはどこも遺伝子をいじくってない正真正銘の
「お前のようなナチュラルがいてたまるかっ!!」
「いや、マジだって」
「ば、バカな……ただのナチュラルが、肉弾戦とはいえこの俺を圧倒したというのか……?」
何やらショック受けてるカナードだが、ここで残酷な事実を告げなばなるまい。
「あんな~……格闘戦にナチュラルとかコーディネイターってラベルだかレッテルだかは、ほとんど関係ないぞ? あるのはただ、純粋に強いか弱いかだけだ」
これは事実だ。
ワタシの印象で恐縮だが、生まれ持った高スペックに胡坐かいてて、大して研鑽もせずに「ナチュラルは弱い」と慢心しきってるコーディネイターほど倒しやすい相手はいないからな?
「ナチュラルだから劣ってるとか、コーディネイターだから優れてるとか先入観持ってると、簡単に足元掬われるぞ?」
ぶっちゃけ、そんなんより油断も隙も無いナチュラルの暗殺者の方がよっぽど怖い。
「今のお前みたいにな」
「グッ……!」
「先ずは自分の弱さを認めろ。大抵の強さってのは、先天的ではなく後天的なもんだ」
だからこそ、カナード・パルス……お前には可能なんだよ。
(キラ・ヤマトを倒して自分が成功作となる……『自分がキラ・ヤマトより劣ると思い、超えたいと願う』、そんなお前だからこそ、)
「カナード、お前はワタシに完膚なきまで負けた。だが、実は筋力や反射速度、動体視力などの基礎的なフィジカルは、はっきりと数字に出るほどお前さんが勝っていた。その面では
「……技量と経験の差か?」
ワタシは小さく笑い、
「ほら。答えは出たろ?」
「な、なにがだよ?」
「弱き者は弱さを認め、
弱き者は生き残れない。
これは真理だ。外敵に滅ぼされるだけじゃない。自然の環境変化に追従できず滅びることもあれば、あるいはもっとどうしようもない理由で自滅することもある。
よく「弱者の生存戦略」という言葉を聞くが、戦略を得て生存に成功した時点で、それは相対的にもう弱者とは呼べないとワタシは思う。
「お前は今、自分で見つけたろ? 何が自分に足りないかを。これからもそれを繰り返していけば、望む強さに手が届くかもしれん」
押し黙り、悩み始めるカナード。
思い悩むのは若者の特権みたいなもんだから、それは別に構わない。
分類的にはワタシも若者枠に入るはずだが、中身が中身だけに胸を張って言えないところだ。
もっとも、張るほどの胸はないが。
☆☆☆
(それはいいとしても……)
話は変わるが、今ワタシとカナードが話してるのは尋問室だなんだが、
(基本、関係者以外立ち入り禁止の筈なんだが……)
ギナ兄がいるのは当然だろう。艦長だしな。
フレイがいるのは、ワタシが同行させたから当然だ。
(”メリオル・ピスティス”は……)
~回想~
『カナードは
『はい……』
『ところで、ワタシは一緒にアイツの世話係を探しててな。メリオル・ピスティス、お前さんさえよければ、』
『亡命させてください。お願いします。何でもしますから』
『今、何でもと言ったか?』
『確かに何でもと言いました……! 一目惚れなんです』
『いや、それは聞いてないが……わかった。亡命手続きは直ぐに取ってやるから、土下座でにじり寄ってくるのはやめい』
~以上、回想終了~
とまあ、こんなやり取りがあり、呼ばないとなんか面倒臭そうなので尋問室にも入るのを許した。
そこまではいい、そこまでは良いんだが……
「いつツッコもうと迷っていたが……何故、お前がここに居る? ラクス・クライン」
「後学のためですわ♪」
一言でぶった切ってきたな。
ちなみにワタシは許可を出した覚えはない。
「ギナ兄ェ……」
「客人なのだろう? 別に構わんではないか」
あっ、なんか「下手にかかわると面倒臭そうだから許可だした」って顔してるな~。
(ギナ兄に面倒な奴と思われるなんて、どんだけなんだよラクスは……)
無理に追い出す理由はないから、いいけどさ。
「ただラクス、覚悟しておけ? お前にとっては、いやプラントで生まれ育ったコーディネーターには、割と耳が痛い話になるぞ?」
「委細承知の上ですわ」
本人がそういうなら、それもいいか。
☆☆☆
そして、またワタシは思い悩む姿が妙に絵になる黒髪少年、カナード・パルスに艦内端末を、三次元投影モードで渡し、
「そう言えば、話が途中になっていたな? 分かりやすいよう簡易イメージ・モデリングにしてるが、採取したお前さんのDNAマップとワタシのDNAマップを平行投影してるぞ? そして、それを重ね合わせて照合をすると……」
「血縁一致率、約50%……」
予想通りの結果というべきか?
まあ、原作を読んだ時から、遺伝学的には近似あるいは相似に近い遺伝子の持ち主である事は想像していた。
声といい容姿といい、カナード・パルスはキラ・ヤマトに「似すぎていた」からだ。
それは、自然受胎と遺伝子操作を受けた人工子宮の生まれという違いはあるとはいえ「キラと二卵性の双子」という関係性を持つワタシにとっても、
「そう。語弊のある言い方だが、ワタシとお前の半分は同じ遺伝子さ。種違いか腹違いかは言及せんが、平たく言えば片親が違う
「俺に親は……」
「それを言ったらキラも、大きな意味じゃ母親の胎外で受精卵となった大半のコーディネイターはそうならないか?」
実際、コーディネイターは親子の情がナチュラルに比べて全体的に弱いという研究結果もあるくらいだしな。
「望んだ容姿じゃない」、「自分の優れた才能が引き継がれなかった」、そんな理由で育児放棄したり児童遺棄したりするケースが後を絶たない。
事実。『遺伝子操作で自ら命を生み出せる』という傲慢さが強いプラントのコーディネーターは、調査の結果極めて生命倫理が低いことが報告されている。
C.E55年に”トリノ議定書(=「遺伝子改変禁止に関する協定」)”が制定されたのは、何も遺伝子操作者への生理的嫌悪感が理由じゃない。
「いつでも命を遺伝子操作で製造できる」と考える製造者、そうやって生まれたコーディネーター自身のの生命倫理感の低さも、当時から大きな問題になっていたのだ。
極端に言えば、「思い通りの子供が生まれなければ、次の子供を製造すればいい」と考えるコーディネイターは少なくないのだ。
(まるでSSRやURが出るまで引き続けるガチャだな……)
ワタシやキラの遺伝子提供者(個人的に親とは言いたくない)ヒビキ夫婦はナチュラルだったらしいが……キラってURだかSSRが出るまで、受精卵まで含めれば有り得ない数の命を犠牲にしたという意味においては、弁明の余地はない。
その直接的な犠牲者は「キラの試作品で失敗作とされた」カナード・パルスで、間接的には「資金繰りのために製造された」ラウ・ル・クルーゼだ。
「繰り返すが生まれ方はかなり違うとしても、キラ・ヤマトとワタシは遺伝学的には”二卵性の双子”だ。だから、結果としてお前とは半分血がつながった姉と言ってもおかしくないだろ?」
「そ、それは……」
さて、そろそろ一歩踏み込んでみますか。
「なあ、カナード……そもそも、お前にとってスーパーコーディネイターとはなんだ?」
「えっ?」
「スーパーコーディネイターとは、一体何だと思う?」
コーディネイターに纏わる生命倫理の話って、ある意味鬼門だよね?(挨拶
今回は、割とまとめるの苦労した話どした~。
ただ、「カナード勧誘イベント」やるには、彼が「スーパーコーディネイターの失敗作」と呼ばれていた以上、避けては通れない話題も多いんですよね~。
今回は、カガリ・ユラ・アスハではなく「転生者としてのカガリ」な部分が描けていたら嬉しいな~と。
とりあえず、カガリは一気に勧誘を畳み掛けるみたいですよ?