機動戦士ガンダム進藤   作:ドロップ&キック

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今回も即アップでw
とりあえず、連休中に書けるだけ書いて投稿するスタイル。

今回はサブタイ通りの内容ですが、ちょっとアルテミス攻略戦(?)の内容が垣間見えます。
戦いとは、戦う前の準備で八割がた決するとも言いますしね(^^





第041話:”合衆国海兵隊式ミーティング……なのかな?”

 

 

 

「まず、作戦の概要を説明する」

 

ナタルはプロジェクション・ホログラムでいくつかの画像を投影し、

 

「まず最初に伝えておくが宇宙要塞”アルテミス”は保安部隊や憲兵隊こそいるものの、対人戦に特化した特殊部隊(スペツナズ)やそれに類する部隊は存在しない。まあ、ザフトが白兵戦を仕掛けてくるとも思っていないのだろう」

 

そう言葉を切ってから、

 

「全方位光波防御帯、”アルテミスの傘”だったか?があるとはいえ、難攻不落と思い込むとはまさに片腹痛いだ」

 

段々口が悪くなってくるナタルは、中々にキュートかもしれない。

 

「まあ、そういう輩だからな。おそらくは、最初はマウントを取るために向こうの佐官クラスが乗り込んでくるだろうな。ユーラシア連邦と東アジア共和国はメンツとか権威に拘る」

 

フンとつまらなさそうに鼻を鳴らし、

 

「そして、傘の中に招き入れ補給を受けさせると見せかけて、保安部隊と憲兵隊を突入……まあ、合計して1個小隊(30名前後)だろう。現状、連合/ザフトにとり戦略的価値が高いとは言えないアルテミスには、そこまで人員はいない。保安部隊と憲兵隊を合わせても中隊に手が届かない以上、小隊以上の人数を割くとも思えん」

 

要するに、”陥落しなければよい”という程度の戦略重要度だ。

 

「なので、それを逆利用させてもらう」

 

ナタルはニヤリと笑い、

 

「アーガイル伍長、本艦を制圧しようと部隊が突入してきた。さて、油断するのはいつだと思う?」

 

「……制圧が完了したと思った瞬間ですか?」

 

「そうだ」

 

ナタルは満足げに頷き、

 

「《私》は一度、制圧された振りをする。そうすれば、連中はおそらく、最優先で確保したいMSを艦外に出すように要求してくるはずだ」

 

そしてスッと目を細めて、

 

「その時こそが、最大の好機到来となるだろう」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「アーガイル伍長はブリッジ、ケーニヒ伍長とハウ伍長は厨房、バスカーク伍長は格納庫にそれぞれ潜んでおけ。それぞれの場所に”エリミネーター”を2基ずつ貼り付けておく。いや、正確には厨房ではなく食堂に配置か。残り2基は機動予備としてフリーに動けるようにしておく」

 

「その根拠は?」

 

言葉少ないカズイの問いに、

 

「連中の制圧ドクトリンさ」

 

ナタルは笑い、

 

「ブリッジは艦の頭脳。当然敵も人員を割く。おそらく、捕虜にした人員を集めるのは食堂だ。格納庫は接収要員がいるだろうからな」

 

そしてナタルはマリューを見て、

 

「ラミアス大尉、貴方はヤマト少尉と共にストライクのコックピットで待機していてください。乗り込んできた敵将校の相手は、小官とフラガ大尉で行います。フラガ大尉に艦長役を演じてもらいますが」

 

「俺かよ?」

 

「ちょっと待ってナタル! 私、これでも結構強い……」

 

()()のガンスリンガーとしての強さは知っています。ですが、」

 

ナタルはにこりと微笑み、

 

「人を騙すのに致命的なまでに向いてない」

 

 

 

「そ、そんなことないもん!」

 

「そんなことあります。貴女は人が良すぎる。しかもヤマト少尉と交際するようになってから、ますます女としても磨きがかかってる。今回のミッションは、貴女に向いてないんですよ? ラミアス大尉」

 

「むう~」

 

「呼んだ?」

 

「「呼んでないっ!!」」

 

「おおっ! 息ぴったりじゃん」

 

わざとまぜっかえすムウは内心で、「悪くないコンビじゃん」とか思っていたとか。

 

「それに”エリミネーター”をまさか”殺傷(キル)モード”で起動させるの?」

 

「それこそまさかですよ。普通に”暴徒鎮圧(ライオット)モード”で起動させます。交渉材料を皆殺しにしては無意味ですから」

 

歩哨警備ユニット”エリミネーター”には大きく分けて二つのモードがあり、一つは内蔵チェーンガンを使うキルモード、もう一つは電磁投射式の電撃銃(スタンガン)を使うライオットモードだ。

スタンガンと言っても21世紀の日本で販売されているような電極を押し付けるタイプのものではなく、高温超電導素材の弾芯(コア)を持つ()()()の付いた電極付ダーツを電磁投射して対象に撃ち込み、電撃を飛ばして失神させるというものだ。

イメージ的には、「避雷針を突きさして、失神する程度の極小雷を落とす」と考えていい。

 

ライオットモードのメリットは、電撃による心臓麻痺などのイレギュラーがなければ非殺傷で相手を無力化できる事と、亜音速のリニアガンのためほとんど発射音がしない点だ。

 

「しかし、”エリミネーター”をこれ見よがしに置いて気づかれませんか?」

 

「アーガイル伍長、この艦の”エリミネーター”がなぜわざわざ白色をしてると思う? しかもご丁寧に”武器も作ってる家電メーカー”のロゴまで入れて?」

 

「あっ!? 擬態!」

 

「そうだ。待機状態の”エリミネーター”は四角いボディと相まって冷蔵庫などの家電、ないし何らかの機材にしか見えん。実際、お前らもラミアス大尉も、この艦にエリミネーターが搭載されているとは気づかなかったろ?」

 

思考と視覚の盲点といおうか?

エリミネーターは外見からは武器がついているように見えず、待機時は移動脚も折りたたまれ、直方体になる。

この状態だとナタルの言う通り、家庭用の大型冷蔵庫と言われても信じてしまうだろう。

実際、エリミネーターは倉庫に格納されていたわけではなく、艦の随所……通路など、「人目のある場所」に設置されていた。

 

「あと、認識票は作戦中は外すなよ? お前たち全員の生体認証データは入ってるが、認識票に入ってるチップも敵味方識別アイテムになってるからな?」

 

全員が頷く中、

 

「それとアーガイル伍長、トール伍長、ハウ伍長、バスカーク伍長。銃には非殺傷の弾など用意はない。故に自衛を理由に銃口の先にいる敵は、射殺してしまってかまわん。むしろ、的確に仕留めろ」

 

「ちょっ!? ナタル!?」

 

「できるな?」

 

サイたち四人は、はっきりと頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

「おい、バジルール。ありゃ、どういう判断だ?」

 

「どう、とは?」

 

「あれだ。ラミアスを坊主と一緒にストライクに放り込むってこと」

 

ミーティングを終えて一同解散となった後、ムウはナタルを呼び止めていた。

 

「ああ。あれですか」

 

ナタルは合点が言ったように、

 

「ヤマト少尉は、おそらく……今の所、生身の人間は撃てません。一人でコックピットにいる場合は、ですが」

 

「そりゃ、まあ……性格的に引き金が軽いタイプじゃないだろうが」

 

「逆にああいうタイプは、『近くに守るべき対象』がいると化けるものです。自らに敵意を向ける者には躊躇しても、守護対象に害意を向けるものには躊躇がなくなる」

 

「嫌にはっきり言い切るな?」

 

するとナタルはくすりと笑い、

 

「バジルール家は由緒正しい軍人の家系ですが……その軍歴の始まりは、師団編成が整ったばかりの”アメリカ合衆国()()()なんですよ。大尉殿」

 

「そりゃまた……」

 

ムウは絶句すると同時に、今回想定される「誘引してからの制圧戦」におけるナタルの作戦立案能力の高さに妙に納得してしまった。

 

「以来、先祖代々海兵隊です。まあ、小官は適性の関係で船乗りにされてしまいましたが……ヤマト少尉のような手合いの話は、よく知ってます」

 

「じゃあ、カレッジーズ(がきんちょ)共が戦えると踏んだのも、海兵の直感か?」

 

だが、ナタルはきょとんとした顔をしてから……

 

「それはちょっと違います。彼らがオーブ人だからですよ」

 

「……その意味は?」

 

「コペルニクス市で初等教育を終えたヤマト少尉は違うようですが……オーブ人は、義務教育期間中に、一度は必ず見るそうですよ? 鬱になろうがどうなろうが、それが国の伝えるべき、日本を祖とするオーブ国民なら知るべき歴史として」

 

「何を?」

 

「再構築戦争当時、”日本列島からの最後の脱出者”が、『命がけで持ち出した動画』を、です」

 

どうやら、ナタルは()()を見たことがあるらしい。

 

「端的に言って”地獄”ですよ? 他に表す言葉がない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ちょっと軍人(海兵隊家系)っぽいナタルを書いてみたかった(挨拶

そして、マリューさんの扱いがw

でも、ナタルはちゃんとキラとマリューの関係を知ったうえで認めてる臭いです。
もしかしたら、「ダメなお姉さんにはダメなお姉さんなりの使い道がある」と達観してるだけかもしれませんが(^^

そして、ところどころ出てくる、再構築戦争のおどろおどろしい闇ガガガ……



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