機動戦士ガンダム進藤   作:ドロップ&キック

44 / 60
今回は、諸事情で中途半端な時間にアップです(^^

そして、満を持して(?)新キャラの登場ですが……よりによって44話、4が二つで「()()」回とか、4が二つ並んで「死屍(しし)累々」とか連想してしまいますな~。

どんだけ”彼”は死亡フラグに愛されてるんだか(^^




第044話:”運の悪い男の娘……もとい。少年”

 

 

 

世の中、運が悪い者はどこにでもいる。

それは人類が宇宙を生活の場とし出したC.E.年間でも変わらない。

 

「ううっ……流石に一人は不安だよぉ」

 

そうコックピットの中で呟く男の娘……失礼。男の子の名は”ニコル・アマルフィ”。

 

ふわっとした新緑を意味する萌黄色のクセっ毛と、くりくりとした大きな瞳が特徴の見目麗しい、「少女と見間違うような」ショタ系美少年である。

あるいは『こんな可愛い子が女の子のはずがない』と中身が腐って糸を引いてるお嬢様方に表現されるかもしれない。

ぶっちゃけ、原作より輪をかけて雰囲気がショタっぽい。

 

原作と言えば、容姿より更に差異がある点があった。

そう、この世界線の二コルはとにかく「運が悪い」のだ。

 

えっ? 「原作でもクルーゼ隊唯一の戦死者だから運が悪いだろう」だって?

ノンノン。そういう分かり易い「運の悪さ」ではない。

彼の一番の不幸は、「パッと見て運が悪いと分からない」点だ。

 

 

 

二コルは第二世代コーディネイターであるが、両親から望まれコーディネイトされたのは、実は以下の三つだ。

・ピアノの才能

・可愛らしい容姿

・長寿でなくてもいいから年を取りにくい体

 

……うん。趣味丸出しである。というか、欲望丸出しである。

アマルフィ夫妻の業はきわめて深いだろう。

 

だが、これが二コルの不幸の始まりだった。そう……二コルに施されたコーディネイト処理は、結果的に言えば『大成功にして()()()()()()のだ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

大成功の部分は、両親の要求が全部叶ったことだ。

二コルは愛らしくピアノが上手な愛嬌のある優しい少年として育った。

老化が遅い=成長が遅いという副作用でややショタっぽくなってしまったが、それを補って余りある可愛らしい少年だった。

よく腐ったお姉さんに誘拐されなかったものである。

 

ニコル・アマルフィという少年自身も、『可愛いピアノ弾き』という評価だけで十分に幸せだった。

両親の愛情を一身に受け、大好きなピアノを日々弾けるという幸せな日々だったが……それはある日、唐突に終わりを告げるのだ。

 

 

 

プラントには、少年少女なら大部分が受ける”総合精密身体/体力測定(実はザフト候補生の選別を兼ねている)”というろくでもないイベントがあるが……基本真面目な二コルはそこでつい本気を出し、『()()()()()()()()()()()()()()()()()』を見せつけてしまったのだ。

そう、ここから先が”大失敗”の部分。

 

そして、その体力測定のすぐ後に、ザフトが大好きな”血のバレンタイン”が起き、周囲の「ナチュラル許すまじ!」の同調圧力と、少年らしい「ちょっと格好いいこと言ってみたい」願望が重なり、愛国少年っぽいこと言ってみたら……

 

『二コル、優しいお前が軍隊に入るなんて、父さんはとても心配だよ。だが、一人の親として、そしてプラントの市民として国を守りたいというお前の意思を尊重しよう』

 

二コルパパ、ザフトは軍隊じゃなくて、もっとヤクザな民兵組織だ。ついでにプラントは、国家としては未承認もいいところである。

 

蛇足ではあるが、単一思想(モノカラー)に染まりやすいスペースコロニーという情報学的にも物理的閉塞環境の中で生み出される同調圧力というのは、中々にキツそうだ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

……気がついたら、ザフトの訓練学校(アカデミー)に入れられていましたとさ。そして、アカデミーではなんと同期のアスラン、イザークに続きなんと総合成績3位というスコアを残す事になる(公式です)。

だが、その時の本人の心境は……

 

(うそん……)

 

そして、試しにやってみたらなんとなく出来てしまった爆弾解体処理で、全校1位を取ったときは……

 

(ピアノなのっ!? ピアノやってたから、何時の間にか”器用さEX”とかになってて1位とれちゃったのっ!?)

 

要するに、平均を大きく超える身体能力と優れた戦闘センスを発露させてしまったわけだが……普通なら、『それ大成功なんじゃね?』と思うところだろうが、それはあくまで()()()()()()()()()の話だ。

 

そう、彼の不幸は原作よりも戦争や軍隊を「野蛮なもの」として嫌っていたのだ。

無論、性格的にも向いてないことも自覚していた。

 

だが、スペックは高くとも気の弱い二コルはそれを言えるはずもなく、流されるままに似合いもしないと自分では思ってるエリート兵の証である赤服を着て、クルーゼ隊などに放り込まれていたのだった……

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

(不幸だ……)

 

二コルは現状を端的に要約し、内心で嘆いた。

その心の呟きは、見ようによっては女の子より女の子っぽいルックスのせいで、()()()()の代名詞である某カミジョーさんとは比べる方が間違ってるくらい儚げに見える。

 

”ブリッツ”、キミはボクにぴったりの機体なのかもしれないね……」

 

彼が乗るMSは、GAT-X207”ブリッツ”。

フェイズシフト装甲と切替式で、ミラージュ・コロイドを用いた高度なステルス機能を持っていた。

いや、正確には『ミラージュ・コロイド・ステルスを実戦で投入できる、今の所唯一の機体』がブリッツだった。

 

「いつも、どこかへ消えたいと思っているボクには……」

 

だが、現実はどこまでも残酷だった。

いつものように同僚にイジられ(あるいはイビられ)て出撃し、”アルテミスの傘”と呼ばれる全方位光波防御帯で覆われたユーラシア連邦の宇宙要塞に、攻略の先兵として向かっていたのだ。

アルテミスの傘は、その消費電力の大きさゆえに常時展開しているわけではない。

原則、敵が接近した場合のみに展開する。

 

そこで、高度ステルス機能を持つブリッツがその特性を生かして忍び込み、忍者っぽく撹乱し、中にいるだろうアークエンジェルごと一網打尽にする……そういう作戦だったのだ。

 

 

 

もう手を伸ばせば要塞に触れそうな位置にまでブリッツは近づいており、作戦は半ば成功したかのように思われたが……

 

「へっ?」

 

”BaGooooVoooooooM!!”

 

唐突に、何の脈絡もなく、二コルはブリッツごと爆炎に飲み込まれたっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

さて、時間を少しさかのぼって、視点をアルテミス内部に移してみようみよう。

 

いつに?

”エリミネーター”たちが、小型フォークリフト級の力を持つ作業用アーム(マニピュレーター)で、ユーラシア連邦兵の死体と弛緩体を艦外に放り出し、それとバーダー交換するように必要な物資を積み終えた後のことだ。

ちなみに作業中、マリューに……

 

『もしかして、ナタルのご先祖様って、海兵隊やる前はカリブ海とかで海賊とかしてた?』

 

と真顔で問われたので、

 

『かもしれませんね。どっちも似たようなもんです。国の後ろ盾があるかどうかくらいしか違いませんし』

 

ただ、これは言っておかなくてはならない。

 

『ただ、今回手に入れたのは、お宝なんて浪漫あふれるものではなく、ただの”()()()”ですが』

 

 

 

 

 

 

 

「はははっ! このままおめおめと逃がすとでも思ったかっ!!」

 

と目を血走らせながらガルシアが吠える。

この男は、アークエンジェルをがっちり抑え込んでる係留固定アームを外す気など、最初から無かったのだ。

確かに如何にアークエンジェルが最新鋭の戦艦だろうと、推力だけでこの固定具を振り切ることはできないはずだが……

 

『結構』

 

ガルシアの誤算は、ナタルが「MSの火器より遥かに強力な」艦砲を、本気で撃つとは思ってなかったことだろう。

実際、さっきも艦砲(ぶき)をちらつかせただけで、撃ったのはストライクのバズーカだけだ。

 

『ゴットフリート、1番2番旋回! ミサイル全弾、撃てっ!!』

 

結局、ガルシアはナタルのことを全く理解などしてなかったのだ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

ナタルの思考は、今回はシンプルだった。

係留アームがアークエンジェルを放さないなら、係留アームを固定しているドックごと破壊してしまえばいいと。

そして、アークエンジェルの各所に収められた武装は、彼女の狙い通りの破壊をまき散らした。

はれて束縛を脱した大天使だが、再び宇宙(そら)を駆けるためには、あともう一押しが必要だった。

そして、その一押し出し渋るナタルではない。

 

「ローエングリン、1番2番、展開! 緊急発射準備!!」

 

ユーラシア連邦の最大の失敗は、『アークエンジェルの()()()()()()()()()()()()を外に向けさせて係留した』事だった。

その先にどのような頑強な扉があろうと、陽電子砲の前では紙も同じだ。

 

そして、その砲口の先には宇宙空間と要塞を隔てる装甲シャッターがあったが……

 

「ヤマト少尉、飛び移れ!」

 

『はいっ!』

 

「発射シーケンス、完了!」

 

アーノルド・ノイマンの言葉にナタルは軽く頷き、

 

「ローエングリン、撃てっ!!」

 

 

 

ナタル・バジルールは有言実行をモットーとする、繰り返すが「やると決めたらとことんやる女」なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




二コル君、華麗に登場! 直ぐに爆炎に飲み込まれたケドネ(挨拶

という訳で、ガンダムSEED屈指の不遇キャラ、でも回想とかイメージではそこそこ出番が多いニコル・アマルフィの登場回でした。
そして、約束のwith ブリッツでの爆発オチw

それにしても、皆様……前回の海兵隊繋がりか~ら~の~「シーマ様座り」ネタ、よく気がつきましたね~。
正直、あんなにネタを分かってもらえるとは、嬉しい誤算でした♪

まあ、ナタルは流石にMS乗らんでしょうけど(^^


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。