Q:近代以降における島嶼ないし沿岸部要塞攻略の基本、あるいは華と言えば?
A:艦砲射撃!!
という訳で、最強の
アークエンジェルがぶっ壊したドッグを更に火力による力業で強制拡張工事し、ワタシことカガリ・ユラ・アスハに預けられた”イズモ”は、強襲揚陸艦でも近頃はやらない敵拠点への”
「ぶちかませっ!!」
と威勢のいい掛け声とは裏腹に、実は半壊と全壊の中間状態にある大破したドックへの乗り付けは、結構ジェントルだ。
当たり前だが、こんな戦いで船を傷付ける意味はないし、更には揚陸戦の主力、1個中隊編成の”オーブ宇宙海兵隊”の紳士諸兄に作戦前に負傷リスクを添付したくない。
そう、今回の主力は”イズモ”でもなければ、ギナ兄率いるMS隊でもない。
”ヘリオポリス”の崩壊後に救助艦隊に便乗してやって来て、ワタシたちと合流した彼らだ。
ナチュラル、コーディネーターを問わず屈強な男(一部、女)が居並ぶ海兵隊はいいぞー♪
C.E.時代のイカレたテクノロジーと日本人の血を引くオーブ人の怨念めいた執着が、重なり溶け合い融合して生み出された”強化人工筋肉内蔵式倍力装甲宇宙服”……、いやここは素直に声を大にして、
”プロテクトギア”
と呼ぼう。そう、あの”紅い眼鏡~”とか”ケルベロス~”とかのキーワードで出てくるあれだ。
ただし、オリジナルと大幅に違うのはカラーリングで、威圧感のある黒ではなく、オーブ軍が自衛隊から引き継いだ伝統の”OD”、緑系の”オリーブドラブ”だ。
実は原典でも、陸自仕様のプロテクトギアの設定ががあったりするのだが……
ともかく、これが公式な宇宙海兵隊の”
MSパイロット・スーツと比べても火力と防御力と機能性と拡張性と格好良さで圧倒しているこの”着る戦闘装甲車”を標準装備するオーブ唯一の部隊が、”宇宙海兵隊”なのである。
しかもこれ、機能性ではオリジナルを軽く凌ぎ、完全気密構造なのは宇宙服でもあるので当たり前だが、電力がある限り中は体表空調の快適仕様で、重量自体は恐ろしくあるが医療分野で鍛えに鍛えられ洗練に洗練を重ねられた内部に張り巡らされた強化人工筋肉のパワーアシストでしっかりサポート。
他にも、例えばゴーグルは多機能化されてVR/AR技術をふんだんに使った網膜直接情報投影式で、視野/視角は肉眼となんら変わらない。
「潜水夫の気分を味わえる」とされたオリジナルと比べたら、大幅な進歩だろう。
加えて武器もまた良い。
技術不足と軽量化の失敗で米軍が開発を放り投げた”XM29 OICW”をC.E.時代の技術でアレンジしたような代物で、多目的電子照準システムに、オーブ軍標準の6.5mm×47弾仕様の自動小銃(100連ドラムマガジンが標準!)と5連発弾倉の25㎜
一般歩兵にはそれでも少々重く大きいかもしれないが、いかつい宇宙海兵隊にはぴったりだろう。
というか、形からも特性からも中二スピリッツ溢れるめっちゃ”浪漫ウエポン”だ。
無論、武器はこれが標準ってだけで、サイドアームやナイフなんかも充実。爆発物やら何やらのオプションに、もっとデカイ銃だって火力増強で携行している。
性質的にまさに宇宙海兵隊ではあるが、装備や見た目を見てると、つい”
しかも、装甲宇宙服も複合自動小銃もバッテリー技術の大幅な進歩で、昔の栄養ドリンクのCMじゃないが、比喩でなく「24時間
そして、要塞内部に突入する彼らの露払いを兼ねて、イーゲルシュテルンと比較的威力の小さなミサイルで、ドック内を掃討しておくことも忘れない。
所謂、”揚陸時の支援砲撃”だ。
(画面スクロール前に弾幕ばらまくのはシューティングの基本ってな)
☆☆☆
次々と揚陸する精鋭たちを見送るだけ……なんてこと、このワタシがするわけないだろ?
予備の女性用
「”ザ・ワン”。暫くブリッジを頼む」
「了解でソキウス」
そう敬礼する”最初のソキウス”。
「お姉様、どうかご武運を」
そう心配そうな顔をするフレイに、
「カガリ様、どうか楽しんできてくださいませ♪」
笑顔で小さく手を振るラクス。
この辺りに性格の違いが出ていて面白い。
「精々、油断しないことだな」
「お前まで見送りに来てくれるとは意外だぞ? 弟よ」
本当に意外なんだが、どういう心境の変化だかカナードまでわざわざブリッジまで見送りに来てくれたのだ。
「弟言うな。せめてカナードと呼べ」
「へいへい」
ちなみに、カナードとおつきの
亡命は既に略式で受理されているが、かと言って直ぐに戦場に立って良い分けない。
我が国は、寝返ったばかりの国外人を即座に戦場に投入するほど、軽率でもなければ余裕がないわけでもない。
大体、カナードも二コルも政治的に微妙過ぎるのだ。
扱いから考えて、まともに戸籍もなさそうなカナードは(相手がユーラシア連邦以外なら)まだしも、二コルは明らかにプラントのパワーエリートだしな。
こんな所で命を落とされても、実につまらん。
「そいじゃあ、まあ……」
口の端が吊り上がるのが自分でもわかった。
「一狩りいこうか?」
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「な、なんなんだっ!!? これはっ!? この状況はっ!?」
その日、もはや狼狽を隠す余裕もなくなったユーラシア連邦少将、ジェラード・ガルシアは混乱の極みにあった。
『我が名は”ロンド・ギナ・サハク”。オーブ国防委員であり、同時に”イズモ”の臨時艦長だ。ユーラシア連邦宇宙要塞”アルテミス”司令官、ジェラード・ガルシアに告ぐ。貴官の先程からの
唐突に入った通信より、彼にとっては最悪の意味での状況の劇的変化は始まったのだ。
『故に我が国は、
その宣言と同時に、まさに奇襲と言うタイミングで”レッドフレーム”を捕縛せんと取り囲んでいた傭兵MSは、瞬く間に駆逐された。
だが、ガルシアの不幸はここで終わる訳はない。
程なく突然、要塞全体を揺らす振動が襲い、
「今度はなんだっ!?」
「こ、こちらの探知距離外からの砲撃かと……」
「報告は正確にせよっ!!」
「何者かの砲撃で、ドックが大破した模様ですっ!!」
「防衛システムはどうしたっ!? なぜ動かんっ!?」
「未だ修復終わってません!!」
これもアークエンジェルの後遺症、あるいは置き土産と言うべきか?
もっとも、ロウ・ギュールに夢中すぎて(?)、どうやらガルシアは自分が何故傭兵を雇う羽目になったか忘れてるようではあるが……
「た、大変です司令っ!! 何者かが要塞に突入してきますっ!!」
「何者とはなんなんだっ!?」
状況から考えてオーブしか有り得ないだろうが、そんな簡単な結論さえも最早ガルシアには出せないでいた。
要するに、この時点で彼の運命は最早決まっていたのだ。
なぜなら、装甲宇宙服に身を包んだ金髪の死神が、今まさに発令所に近付きつつあったのだから……
プロテクトギアはリリンが生み出した素晴らしい造形物だと思う(挨拶
要塞攻略戦、終わりませんでした(^^
というか、趣味に走りすぎというか……中二スピリッツに不足を感じないオーブの兵器開発チームに喝采をw
そして、緑のプロテクトギアに身を包んだ1個中隊に制圧されるユーラシア連邦の紳士淑女たちに憐憫を(ヲイ
というか、仮に生き残っても
書いておいてなんですが、この状況で「積極的自衛権の行使」とは詭弁というか……凄まじい拡大解釈かなっと(^^
ギナ兄:「わざわざジャンク屋がオーブのひも付きだと宣言してるのに、先に手を出した阿呆どもが悪い」
ハイ、ソウデスネー。