そして、60話というキリの良い話数になったのは偶然ですが、いよいよ「ガンダム進藤」全体における最大級の”キーパーソン”の影がw
宇宙要塞”アルテミス”の中枢、発令所を掌握した我々は、停戦命令を出させると同時に各所の制圧と接収を開始した。
ああっ、カガリ・ユラ・アスハだ。
死にはしないだろうが、右手首から先が吹き飛んだのがショックだったのか、ガルシアは直ぐに停戦命令出せそうもなかったので、時間をかけるとかけた分だけ余計な人死にも出そうだったので、妙に協力的な態度になった要塞副司令官(名前は知らん)に代行してもらった。
ああっ、言っておくけど制圧と言っても”A-801”の発動じゃあるまいし、要塞の住人全てぶち殺せなんて命令は出してないからな?
停戦命令出てんのに、なお抵抗を試み輩には容赦なく弾ぶちこんで構わんとは言ってあるが、無抵抗な人間……恭順の意思を示すなら丁重に扱えと伝達済みだ。
まあ、宇宙海兵隊基準の丁重だから、過度な期待をされても困るがな。
んで、ガルシアやら有象無象は一先ず監視状態にしておいて……
「悪いな、ロウ。要塞の中まで来てもらって」
という訳で、制圧もひと段落ついた所でギナ兄もだがロウ・ギュールにもご足労願ったわけだ。
「いや、それは別にいいんだが……んで、俺っちに何か用か?」
「お前さんのエンジニアとしての腕を借りたい」
要約してしまえば、”イズモ”の技術班と共同でこの要塞のシステムの掌握とデータの抜出を手始めにやって欲しいのだ。
「報酬は、我々が回収した傭兵共が使っていた”
1機逃げられた(どうも、”アサルト・シュラウド”装着とか十字架のマークとかカイト・マディガンっぽいんだよなぁ~)そうだが、ガルシアに雇われた残りの傭兵は全滅させている。
正確には、爆散させたりコックピット潰したりした”撃墜”が3機に、行動不能にしたり仲間(?)が殺られたのを見て投降したのが2機で計5機分のジンだ。
(逃走した1機を含めれば計6機。ガルシアも中々頑張って集めたじゃないか)
現状、MSに乗れる傭兵はMS自体の希少性と、今はまだ訓練受けたコーディネイターしか操縦できないのでレアだ。
つまり、完全に売り手市場でそんな中、ガルシアごときが6機も集められたのは奇跡に近い。
(奇跡じゃなければ、おそらく……)
それはともかく、修理して使えそうなのは精々2~3機だが、
何しろ基本は宇宙を漂ってるのを拾ってくるか、ザフトの横流し品しかない。
オーブが大西洋連邦を除き国外に機体や部品を供給してないため、プレミアついて修理出来なくともパーツ取り用として使うだけでも十分金になる。
「無論、前払いだ。希望するなら直ぐに渡すぞ?」
ロウ・ギュール一味の母艦”ホーム”は既に停泊している。
直ぐに積み込み作業もできるだろう。
ああ、言い忘れていたがワタシらがぶっ潰したのは「アークエンジェルが停泊していたメインドック」だけで、”アルテミス”には当然、要塞規模にふさわしく普段は使われない予備ドックとかもあるから、そこに停泊してもらっている。
実は、要塞脱出用のアガメムノン級(しかも、艦名は”ポチョムキン”……もしかして、ユーラシア連邦の軍人は阿呆しかおらんのか?)も収納させれていたのだが、当然それを使わせる暇なぞ与えなかったし、突入作戦初期に最優先で抑えさせている。
「そいつはまた大盤振る舞いだな? 俺に何をやらせたいんだ?」
「要塞のシステム掌握のサポート。この要塞はどうにもきな臭い」
考えてみれば、カナード(とガネっ娘)が乗っていた”オルテュギア”が向かっていたのも”アルテミス”……しかも、ごく少数の開発チームを例外として乗員にはだんまりで”
(って事は、ガルシアがコネで傭兵どもを雇ったんじゃなくて……)
「ロウ、おかしいとは思わないか? 人望も評判も悪い意味で有名なジェラード・ガルシアが、どうして”アルテミスの傘”がぶっ壊されてから、こうも短時間で、”レアなMS乗りを
「えっ?」
「仮にコネがあったとしても、その金はどこから出た? プレミア価格のMS乗りな傭兵を六人まとめて雇うってのは、決して安い買い物じゃないぞ? ユーラシア連邦はそんな簡単に小切手だか領収証を切れる組織か? あの国は、いつからそんな気前良くなったんだ? 付け加えれば、”傘”の機能不全から傭兵が来るまでのレスポンスが早すぎる。別にユーラシア連邦だけの話じゃないが、公的機関の予算の承認には相応の手続きが必要だぞ?」
一応、これでも国防委員だからな。その辺の事情はわかるさ。
相場から考えて、MS乗りの傭兵を機体込みで六人も雇うなら、間違いなく一介の基地司令の権限や、その上役の裁量で出せる金額じゃない。
最低でも稟議書(あるいは起案書)作って関係各所に回し、軍の予算委員会あたりの承認がいるだろう。
「確かにそりゃ不自然かもしれないけどなぁ……」
「ユーラシア連邦の政府や軍とは考えにくい。じゃなければ、誰が人を集め金を出した?」
「……”アクタイオン・インダストリー”か?」
ワタシは無言で頷いた。
「この基地には、何か秘密がある。ロウ、それを暴く手伝いをしてくれ」
(正確には、”隠蔽されてるだろうMS開発関連のデータをサルベージしてくれ”だが……)
ロウ・ギュールという男は独特の嗅覚がある。これに謎コンピューター『8』が加われば、そう悪い結果にはならないだろう。
「引き受けてくれるか?」
「いいぜ!」
すると、ロウはニカッと笑ってサムズアップし、
「
ああ、そう言えば原作でも「アクタイオンの開発施設衛星でレッドフレームが閉じ込められる」的な小イベントあったな。
(だが、あれって”アルテミス”の後じゃなかったか?)
もしかして、時系列が入れ替わってるのか?
(いかんな。
もう忘れられてるかもしれないが”アストレイ三人娘”の一人、”ジュリ・ウー・ニェン”は、原作と異なりレッドフレームの譲渡と同時に、技官兼連絡官としてロウ・ギュール一味に「出向扱いで正式に加入」している。
ただし、表向きは「ロウ・ギュール一味の新人ジャンク屋」扱いなので、”マリーン”という偽名で活動している……そうだ。
(実に微妙な原作再現だよなぁ……)
「ロウ、物は相談なんだが……」
「なんだ?」
「レッドフレームが何時の間にか装備している実体剣と、”アクタイオンに意趣返ししたい理由”、その情報を纏めて売ってくれないか?」
「ジュリ……じゃなかった。マリーンから聞いてないのか?」
「より詳細な情報も欲しいし、本人からの主観情報も欲しい」
「その程度、
「いいのか? 情報だって立派な商材だろ?」
「ジン5機は、報酬としてはもらいすぎなくらいだ。そのくらいのサービスはさせてくれ」
ははっ。中々の
(そりゃジュリも惚れるわけだわ)
「ホント、ジャンク屋にしておくには勿体無いほどの気風の良さだな。オマエは」
「バカ言うなよ。これでも、俺はジャンク屋って奴に誇りを持ってるんだぜ?」
☆☆☆
結論から先に言おう。
ワタシは、”ガーベラストレート”の製造情報と、アクタイオン・インダストリーが所有する宇宙拠点の正確な座標と内部構造を把握する事ができた。
(これは、後で重要な意味を持つかもな……)
そんな予感がする……というか、そうすべき状況なんだろうな。
特にアクタイオン絡みならば。
「例え、相手が”矮小化したアナハイムもどき”だとしても、放置する手はないか……」
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言い訳になってしまうが……度重なるイベント続きで、ワタシも自覚ないままほんの少しだけ疲れていたのかもしれない。
後で確認したら、ジュリから提出された報告書には、”
(それを読み落としていたとはな……)
我ながら、イージーミスをしたものだ。
だから、”アルテミス”の完全占拠を確認したワタシは、要塞の通信室にこもり”イズモ”を中継して、つい”
「まあ、そろそろ報告する頃合だろうし」
今度はそう自分に言い訳しながら……
『おおっ!! 首を長くして連絡待っていたぞ! マイ・スイートハニー”
ああ、何故だろう。
その金色の髪と無邪気な顔を見ると、らしくないけどなんだか酷くホッとするよ。
「ワタシもだよ”むったん”」
嗚呼……ママ、ようやく”むったん”を出せたよ(バブみ感
ただし、通信上での出演ですが(^^
とりあえず、”むったん”関連は次回に回すとして……
ロウとの会話は純粋に書いてて楽しかったですが、実は意外とこの先の伏線が入ってたり入ってなかったり……
”アルテミス”編が予想以上に長くなってしまってますが、どうもこの先の展開を考えると、狭い意味でもハイペリオンやアクタイオン関係で入れておきたい「
とりあえず、次回は”むったん”回かなと?
何やら恐ろしく長くなりそうな(計算上、どんなに短く作っても150話くらいになりそうな……)このシリーズですが、これからもお付き合い頂ければ嬉しいです。