機動戦士ガンダム進藤   作:ドロップ&キック

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朝っぱらから投稿です。
通勤通学中に読んでもらえば嬉しいなっと。

思い出話に絡め、いよいよ本格的な原作乖離が始まりそうですよ?




第009話:”カガリとギナ兄、微かにアズラエル。あと赤とか青とか色々”

 

 

 

「それにしてもカガリ」

 

「ん?」

 

「本当に””と””を外部に『()()()()』する必要はあったのか?」

 

「ギナ艦長、いやギナ兄……それは何度も話し合ったことだろ?」

 

「それはそうだが……やはり納得はいかん」

 

「開発リスクの分散と開発経路の多様化は、兵器に限らず短期開発の肝だろうに」

 

「だがな、」

 

ギナ兄ことロンド・ギナ・サハクは訝し気な目線で、

 

「所詮は廃品回収業者根無し草の戦争屋だろうが?」

 

 

 

これは、ヘリオポリスが崩壊するまでの間の数時間、イズモのブリッジでワタシとギナ兄の間で行われた会話である。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

多分、察しの良い人は既に何の話か気づいているかもしれない。

そしてワタシ自身、どこからどう話そうか悩ましいと感じている。

だが、ここは前世の記憶から話す方が手っ取り早い気がする。

 

ヘリオポリス崩壊を起点に、ガンダムSEEDの世界は大雑把に言って”二つの派生する物語”が生まれることになる。

 

一つはジャンク屋”ロウ・ギュール”とMBF-P02、通称『アストレイ・レッドフレーム』を中心とする物語。

そしてもう一つは傭兵集団”サーペントテール”叢雲劾(ムラクモ・ガイ)とMBF-P03、『アストレイ・ブルーフレーム』を中心とした物語だ。

 

いわゆる本編に対する外伝、それを表すように”非王道(ASTRAY)”シリーズと呼ばれたこの二つのシリーズは、当初アニメである本編に対し漫画と小説という媒体で発表された。

そして、ギナ兄のサハク家は、本編では登場せず、この二つのアストレイに深く関わってゆき……やがて、ギナ兄は関わったが為に歪み、最終的には命を落とす。

 

 

 

漫画や小説の登場人物ではなく『リアルで生きる人間』として考えた時、ワタシがロンド・ギナ・サハクという人物に感じるのは友愛と親愛だ。

 

原作のカガリ・ユラ・アスハが、ロンド・ギナ・サハクと面識があったかは知らない。

だが、カガリ・ユラ・アスハとして生きることを決めた私にとり、絶対に会うべき人物だったのは確かだ。

 

だからワタシは、10歳の誕生日に邂逅することを決めた。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

幼いころに会ったギナ兄は、何というか……もう既に”ギナ様”だった。

平たく言えば、周囲を見下す事が当たり前の『鼻持ちならないサハク家の若殿』だ。

だからワタシは自身とオーブの未来をかけ、その伸ばしに伸ばした鼻っ柱を全力で圧し折る事にしたのだ。

 

方法はシンプルに殴り合い。

場所は海外のゲストも招いた五大士族合同主催のパーティー的な会合だったと思う。

 

ワタシの提案は、『パーティーの余興』として受け入れられた。というか、そうなるようにお膳立てし根回しもした。

 

方や男で年上でコーディネイター。

方や女で年下でナチュラル。

 

ギナ兄は言うに及ばず、ワタシ以外のその場にいた誰もが、ギナ兄がワタシを軽くあしらうかひねるかしておしまいだと思っただろう。

 

(だが、当然そうはならなかった)

 

一言で言えば……ガチ軍隊格闘(シラット)使いは伊達じゃない!

悪いけど、コーディネーター特有のスペック差任せのやり口でゴリ押されてやるほど、甘っちょろい覚悟でワタシは生きてないんだな、これが。

殺さぬように加減したとはいえ、全身に骨折13か所、裂傷や打撲は数知れず……むしろ周囲が唖然とする中、ミナ姉が止めに入るまで意識を失わず、後に全治2か月と診断された怪我を負った中でなお立ち上がろうとしたギナ兄の精神力を、むしろ褒めるべきかもしれない。

負けず嫌いはホント変わらない。

 

細かい話は割愛するとして、こうしてサハク姉弟とワタシの縁は結ばれたのだ。

スマートではないし、むしろ野蛮なやり方だが、ワタシとギナ兄にとっては、いわゆるたった一つではないけれども『冴えたやり方』だったと今でも自負している。

 

すんごい余談だけど……このパーティーに招待され、ワタシとギナ兄の戦いの一部始終を見ていた者の中に、当時はまだ20代だったムルタ・アズラエルという青年がいたことを特記しておく。

 

まあ、あれも出会いと言えば出会いだし。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

話は戻すが、原作でロウ・ギュールと叢雲劾がどうやって物語に関わる羽目になったのか、少しだけ列記したい。

 

ロウ・ギュールは、崩壊したヘリオポリスの残骸をデブリとして回収してる最中にレッドフレームを拾う。

叢雲劾は「アストレイの処分と、その目撃者の始末」を依頼されたが、裏切られて始末されそうになった所を前出のロウと共闘し、ブルーフレームを得ることになる。

そして、ギナ兄……ではなく、原作のロンド・ギナ・サハクはこの二人と対立し、敗れるのだ。

 

だからワタシは、根本と前提を書き換えることにした。

そもそもだが、勝手に残骸を漁りに来るロウはともかく、劾……というかサーペントテールに対する依頼は、今生では成立しないのだ。

 

アストレイ・シリーズは、その性質から非公開な計画ではあっても非公式な開発計画ではない。国民の同意を得た立派な、誰に恥じる事も非難されるいわれもない『れっきとした()()()()だ。

無論、技術盗用なんて悪辣な真似はしておらず、むしろP0シリーズと大西洋連邦のGAT-Xシリーズとは、『コンセプト違いの兄弟機』に近い。

 

例えば、原作では初期段階ではMBF-P01”ゴールドフレーム”しか実装してなかった『両腕の掌に増設された連合MSと共通の武器接続プラグ』だが、今生ではゴールドフレームだけではなくレッドフレームやブルーフレーム、あるいはその後に続くP0シリーズ、そして量産型に至るまでの標準装備だ。

少なくとも今のオーブには、大西洋連邦と異なる規格のMS用武器を作る意味はない。

 

他にも色々あるが……だが、はっきり言えるのは、原作のあの『ろくでもないエンカウント』にならぬよう、それなりに手は打ってある。

もっと言うなら、ジャンク屋組合(正確にはロウ一味指名で)とサーペントテールには、この状況を見越してオーブ行政府からの『正式な依頼』をすでに出していてる。

つまり、『原作とは異なる関わり方』に是正した。

 

そして提示した報酬の一部が現物支給、つまりレッドフレームとブルーフレームだったというわけだ。

 

 

 

このご時世、”未完成の試作機”だとしてもMSは超貴重な代物、URアイテムだ。

お陰様で、一発でロウも劾も食いついてきた。

そりゃ確かに時節を考えれば最新鋭のMSが入手できる破格の条件だったとはいえ、ちょっとは警戒しろよと言いたくなる勢いだったのは追記しておく。

 

無論、ただくれてやる訳じゃない。

運用データの供出と、開発の協力も取り付ていて、そのための人材も既にジャンク屋組合とサーペントテールには送り込んでいる。

 

気づいてる人もいるかもしれないが……ロウの元へは”オーブ三人娘”の一人、”ジュリ・ウー・ニェン”とサポートチーム。サーペントテールには同じく三人娘の”マユラ・ラバッツ”とサポートチームだ。

 

我ながら無茶をやってる自覚はあるぞ?

だが、これらの根回しは『()()()()()』があるワタシがやるしかなかったのだ。

そのため努力もしたし、少々汚い手を使っても発言力も貯めた。

 

確かに未来が『原作より良い物』になるとは限らないだろう。

だが座して、原作のカガリ・ユラ・アスハのような、無知蒙昧と怠惰に起因した『無力ゆえの惨めさ』なんて死んでもごめんだ。

 

結局は、最後まで『世間知らずのお嬢様』から脱却しきれなかった原作カガリはあの程度が限界だったのかもしれない。

だが、ワタシは今こうして生きてるんだ!

 

(だったら徹底的に抗ってやるだけさ……!)

 

こう見えてもワタシ、某『破滅フラグに立ち向かった乙女ゲーの悪役令嬢』は嫌いじゃないんだぜ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




破滅フラグは圧し折ってこそナンボです(挨拶

まあ、カガリが力技で圧し折ったのはギナ兄の鼻っ柱でしたがw
あと、その時のガチバトルでアズラエルに破滅や死亡とは別のフラグをおっ立てた模様。

やり口は基本脳筋でも、付け届けや根回しなんかで頭使うのが意外と好きなカガリ様でした(^^


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