SAO イーディスと逝くアンダーワールド   作:難波01

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二年の月日は、割と早く過ぎ去った。

 

幸い、あのカセドラル告白放送以来、アドミニストレータはなりを潜めている。

 

ベルクーリさん曰く「アリスに神器を下賜して直ぐ寝ちまった」らしい、それが一般的に人の睡眠時間をゆうに越えた年単位と言うから驚きだ。

 

特に小難しい任務もなく、イーディスと順調に仕事もプライベートもこなしていく毎日だった。

 

変化といえば俺ことシズクが霧舞に乗るのではなく、成長した雨崖に乗って移動しているくらいか。

 

そんなわけで俺は恒例となった本気(ガチ)の死合いに望む、ベルクーリさんもファナティオさんもイーディスが見守る中、斬った斬られたと言う物騒な立会いをする。

 

「シズク殿、今日は本気でお願いします」

 

アリスが頭を下げ、俺がSAOでアリスといったら金木犀の剣と知る・・・記憶通りの装備を手にして正騎士に格上がりしたアリスと対峙する。

 

「こちらこそ、整合騎士第三位の力を存分に発揮してくれ。俺もクーの力をより引き出そうと思う」

 

俺の神器が少々特殊なのか、これで出せる強化は終わりとクーに教えられた技能を試すべくアリスと立ち会っているわけだ。

 

因みに現在では奥義を封印して立ち会ってもアリスと互角、奥義ありならちょっと危ないくらいの力量差だ。

 

ベルクーリさん曰く「俺の後の整合騎士は皆範囲攻撃を選ぶ傾向にある」と言う忠告をもらっている。

 

後は簡単だ、範囲でもファナティオさんのようなビームでなければ、弾けると踏んでいる。

 

「それじゃ、本格的に危ないと思ったら止めるぞ。始め!」

 

ベルクーリさんの裂帛の気合が篭った掛け声と供に、俺は居合いの構えを、アリスは抜刀して式句を唱えた。

 

「エンハンス・アーマメント!咲けっ花達!!」

 

「エンハンス・アーマメント!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地を蹴るシズクと刀身が黄金の花弁となった剣を振るうアリス、単純に見たら範囲攻撃ではなく剣術を主とするシズクが不利だ。

 

私ことイーディスの前で火花が散る。

 

幻狼刀の武装完全支配術は言うなれば疲れ知らずになれ、分身が出来る、シズクは最大百人に分身が出来、百人全てが本体と同じ強さだ、剣の速さ・正確さが一度に襲い掛かるわけ。

 

正直、一回だけダークテリトリーのゴブリンたちに全力を出したシズクを見たことがあるけどアレは酷いの一言に尽きる。

 

血の海に立っているシズク、ソレを仕立て上げた時間を知った当時の私はゾクッと背筋に寒気を覚えた。

 

アリスが成長したように、武装完全支配術を発動した所でシズクは剣術だけ。

 

アリスのように無数の花弁がその一枚に至るまで高い攻撃力を持つのではなく、術者を強化する珍しいタイプなのだ。

 

ガガガ!と花弁がシズクを捉えようと襲い掛かる中、シズクは文字通り消えた。

 

何度か見たし、長いこと一緒にいる私なら分かる。

 

シズクはアリスを斬らない、アリスの神器を初めて見たからどんな攻撃になるか見定めたのだろう。

 

「うぉ!行き過ぎたっ」

 

騎士長もファナティオも目を見張って言葉こそ発していないけど驚いている。

 

何分、鍛練場の真ん中で立ち会っていたにも拘らず一秒未満で端まで・・・十メル以上は移動してしまったいたのだから。

 

「なっ!?」

 

シズクの声を聞いて、金木犀の剣を操りながら肩越しで確認するアリス。

 

「さて、白夜みたいなタイプの攻撃か。刃か花かの違いはあるが・・・大丈夫だろう」

 

また良く分からないことを呟いてシズクは腰を落とした。

 

アリスは返しの刃で花弁を操った広範囲攻撃に転じている。

 

私はシズクの考えていることが分かった。

 

「弾く心算か・・・」

 

「何を言っているの?そんなことをしたら坊やは・・・やりそうね」

 

「まぁ、素であの速度だからな。開放術でより洗練されたとなりゃあ分からんさ・・・弾けるとは思えんが」

 

私の呟きに何処か最初こそ驚いたようだが何処か達観したファナティオが同意し、開放術なしの状態で奥義まで受けたことのある騎士長が挑戦的な笑みを浮かべている。

 

それからアリスが振るった四連続、武装完全開放状態なので凄まじい手数の花が襲い掛かる訳なんだけど。

 

「うん、一枚掠ったか」

 

その殆どを耳障りな騒音と供に叩き落して、シズクは右肩を裂いた一つの傷を抑え見ていた。

 

「シズク殿、真面目にやってください!」

 

直接こないことにアリスも腹を立てているようね。

 

「勿論、やっているとも。瞬歩は室内で使うの初めてだからコツがつかめなくてな?」

 

「んなっ!?」

 

「でももう掴んだ」

 

瞬きもしていない、アリスは間違いなくシズクを注視していた、にも拘らず一瞬で十メル以上はあった間合いを詰めたシズクが幻狼刀の柄で金木犀の剣をアリスの手から弾き、返しの刃でアリスの首に刃を添えた。

 

ぶわっ!と突風がアリスの髪をなでて、何が起きたか理解できないアリスと止める必要性がないとニヤついていた騎士長とハラハラしながら見ていたファナティオが歩を進める。

 

私も二人に続いて歩みだす。

 

「そこまでだ。コレにて打ち合いを終了とする」

 

鍛練場の中央で互いに剣を治める二人に騎士長が言葉をかける。

 

「その、シズク殿。言葉を荒くして申し訳ありませんでした。」

 

「いやいや、アリスのせいじゃないから気にしないでくれ。試運転に当てた俺も悪い」

 

ぺこりと頭を下げるアリスにシズクはそう言ったと同時に私がとろうとしていることに呆れた表情を浮かべる。

 

「坊や、何時の間にあんな動きを?」

 

「それは私も気になりま・・・シズク殿、また呆れ顔でどうしたので・・・ふっ!」

 

「きゃ!アリス、何で避けるの!?」

 

「イーディス殿、いきなり抱きつくなと何度言えば分かるのです!?」

 

「去年からっすよ、俺が勝っている一点を突き詰めたらこうなっただけ。にしても仲のよろしいことで」

 

「にしても尖らせ過ぎじゃねぇか?」

 

ファナティオが尋ねるとアリスを強襲した私が答えてアリスをちょっと悔しそうにしているアリスを慰め、呆れながらも神器の出生・・・元の性質と自分の性質がかみ合ったと語外に言うシズク。

 

やりすぎじゃねぇかと苦言を呈する騎士長がいた。

 

因みにシズク曰く「過去と未来を斬れる人に勝つにはコレくらいじゃ甘いだろ」らしい、ほんと負けず嫌いね。

 

 

 

 

 

 

 

夕刻

 

ふぅっと一息つく俺ことシズクは考える。

 

アリスの範囲攻撃は洒落にならん。

 

瞬歩と名づけて去年から磨いていた武装完全支配術の一端を馴らすつもりでやったんだが、どうも予想以上に手数が多かった。

 

うん、戦闘スタイルが瞬歩を多用する時は剣心より一護よりになる。

 

定期的に瞬歩を使って身体を慣らす必要さえ感じる始末だ。

 

右腕が痛い、筋肉痛みたいな痛みだ、武装完全支配術の恩恵があってこの程度、瞬歩の速度を維持して九頭龍閃とか天翔龍閃を打ったら動けなくなるんじゃないか?

 

(馴れだよ、ご主人)

 

(・・・クーまで根性論を持ち出すとは思わなかったな。)

 

イーディスの部屋・・・・と言うより二人の自室で一人胡坐を掻いて幻狼刀と向き合って対話中、因みにイーディスはアリスと(無理やり誘って)90階層の大浴場に行っている。

 

許せ、アリス。イーディスの暴走よりも俺は対話を優先したい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちゃぷん、とお湯に波紋が広がる。

 

私ことイーディスは、午前の立会いの後から悔しそうだったアリスと騎士長の三人で珍しく稽古をしていた。

 

私に流れてくる書類仕事?大丈夫よ、シズクがある程度片付けてくれてる。

 

「イーディス殿は、シズク殿の“アレ”をご存知だったのですか?」

 

胸までお湯に浸かったアリスが尋ねてきた。

 

「瞬歩なんて変な名前の歩行術でしょ?知っているわよ、弱点も。でも弱点はその内克服するでしょうね」

 

私は答えながら伸びをして縁に頭を預けた。

 

肩までお湯に沈むと暖かくて居心地が良い、布団とは違うけど眠気を誘うのは違いない。

 

「弱点まで知っているのですか!?」

 

「わっぷ!?」

 

ぐいっと迫るアリスの動きに応じてお湯の波紋は波へと変わって私の顔を直撃した。

 

昼間のは相当悔しかったみたいね、あのアリスが他人から弱点を聞きたがるなんて。

 

「大丈夫よ、アリスは強い。シズクも自分が他の整合騎士より勝っている部分を隠し切れないほど実力は均衡していたってことじゃない?」

 

騎士長に勝つためにシズクが編み出した瞬歩、もうそれは瞬間移動に近い速度で移動するものだ。

 

幾ら武装完全支配術の恩恵で疲労感が無いとは言え、その反動は確実に存在する。現にシズクは腕が痛いと言っていたから金木犀の剣を捌くのは相当無理をしたんだろうな、後で揉んで上げよう。

 

「そうでしょうか?」

 

「そうよ。私でよければ何時でも胸を貸してあげる。特訓の相手にだってなるわ」

 

「はい、ありがとうございます・・・これは興味本位なのですが」

 

アリスが一転して興味本位に、それでいて控えめに尋ねてきた。

 

「そうね、アレから進展があったか教えてくれるかしら?」

 

「ふぁ、ファナティオ!?」

 

入ってきたファナティオが、アリスの意を代弁。

 

後ろに控える四旋剣の面々も見て取れる。

 

 

ああ、長くなりそう。私・・・・のぼせないでいられるかな?

 

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