SAO イーディスと逝くアンダーワールド   作:難波01

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人界を守護する整合騎士、それはアドミニストレータが“シンセサイズの秘儀”を施して生み出した都合のいい騎士人形だと俺ことシズクは知っている。

 

だからと言って整合騎士たちを否定するわけでもなく、その行いを肯定する気もない。

 

実際問題、魔獣や侵入を図るダークテリトリーの勢力と戦うのは整合騎士だし民は顔も知らぬ整合騎士を崇めている上に民からも整合騎士へなれるチャンスがあると日々鍛錬に励んでいる。

 

貴族がその辺は顕著に出ているかも・・・。

 

ソレをちゃっかり任務の帰りとか人里や王都に足を運んでみてきた俺は思うようになった。

 

「本当にやるのか?エルドリエ」

 

俺の前で意気込む美青年に思わず尋ねる。

 

コレは鍛練でもなければ自分で吹っかけた決闘でもない。

 

「アリス様を我が師とするため、貴方を超えねばならない。何より整合騎士でもない貴

方の実力を確かめたい!!」

 

イーディスと供に見ているアリスは申し訳なさそうに頭を下げたのを見て俺は溜息を一

つ挟んで幻狼刀に手をかける。

 

「本当に全力で良いのか?」

 

「無論!貴方に騎士道の何たるかを教えて差し上げる!」

 

よし、九頭龍閃で〆よう。

 

 

 

 

 

 

 

 

ことの発端は、数日前に召喚された31番目の騎士・・・エルドリエ・シンセシス・サーティーワンがアリスに惚れ込んだのが始まりである。

 

彼が召喚されたとき、偶々任務でカセドラルを留守にしていた俺とイーディスは、帰って来るなりアリスに同情することになった。

 

「アリス様!ああ、アリス様は今日もお美しい!」

 

「エルドリエ、貴方は任務ではなかったのですか?」

 

「私のアリスに何か?」

 

「お言葉ですがイーディス殿、アリス様は貴方のものではありますまい?」

 

「何?妹に絡む輩を追っ払って何が悪いの!?」

 

コレである。

 

イーディス一人でも疲れ目になっていたアリスは、朝から付きまとってくる鬱陶しいの

が二人に増えた、お気の毒に。

 

「その、大丈夫か?アリス」

 

「シズク殿・・・恐らく貴方なら今の気持ちを共有できる筈です」

 

「ああ、酔った時のイーディス並みってのは見れば分かる。朝から苦労するな」

 

「ええ、正直困っていました。コレでは落ち着いて食事も出来ない」

 

コヒル茶を差し入れて、同情する俺にアリスも同意して苦言を漏らす。

 

エルドリエの神器下賜直後の模擬戦を担当したのはアリスで、案の定と言うべきかボコボコにしたらしい。

 

それで、大抵の騎士は先ずベルクーリさんの基盤となる鍛練を受ける、その後は個人の武器種にあったものへと変化していく。

 

どうも天才肌らしいエルドリエは、ソレをパス、師にベルクーリさんではなく、アリスを指名してきた、と言うのが一連の流れ。

 

「整合騎士でもない貴方が何故ココにいる!?」

 

ちょっとアリスと親しげに会話するだけでコレだ、正直やってられん。

 

「イーディスの従者だからだ。」

 

「一人でも十二分に任務をこなせる整合騎士が従者をとるだと?」

 

「そうよ、エルドリエも強いのでしょうけどシズクには及ばないんじゃないかしら?」

 

「そうですね、イーディス殿の言う通りでしょう。」

 

「なっ!イーディス殿は兎も角、アリス様までそう仰るのですか!?」

 

エルドリエはアリスの言葉に酷く驚いている。

 

うん、イーディスは兎も角ってのは納得できる。

 

自分の従者の実力は把握しているのは当たり前と言う物だ、イーディスは「もうシズクのほうが強いよ」何ていうこともあるが、武装完全支配術の相性は基本的に悪いのでどちらが強いなんて断言できない。

 

闇を操れるイーディスの剣は分身も闇から生み出せる、なのでこちらの限界数を出しても粘り勝ちされる可能性もあるんだ。

 

どっかの忍者みたいにまた分身ってできないから。

 

それにしても面倒だ、こういうプライドの高い奴は大抵実力差を認めないんだよね、正規の流派じゃないとか違反だとか言ってさ。

 

「それではこうしましょう、エルドリエ。シズク殿から一本取れれば弟子として認めます」

 

「はい?アリスさん、何を言って・・・」

 

「そのお言葉!お忘れなきようお願いします!!」

 

若干申し訳なさそうなアリスだが、どうにも俺が負けるとは思っていないようでお願いしますね?と念を押してくる。

 

エルドリエはやる気に満ち溢れており、俺がやる気ないよ?何ていっても挑発してくるだろう、容易に想像つくわ。

 

「いや、鍛練のときじゃ駄目か?」

 

「おや、主やアリス様の信頼を裏切るのですか?」

 

ホラね?これだから貴族上がりは嫌なんだよ、いや、エルドリエが元貴族かどうかは別として、プライドの高い奴は基本的に苦手なの。

 

「シズクが貴方に負けるというの?」

 

そして沸点が低いイーディスのコンボである。

 

可笑しい、普段はこんな沸点低くないはずなのだが特定のことになるとイーディスは短気になるのだ。

 

「その証拠にこうして決闘から逃げているではありませんか!」

 

エルドリエが勝ち誇ったように声高らかに言うと見習い騎士達が「ああ、アイツ死んだわ」と言うような表情でこちらを見ている。

 

安心しろ、皆の衆。コイツは九頭龍閃で勘弁してやる。

 

「シズクは平和主義なの。その時になったらエルドリエなんて目じゃないんだから!」

 

「では、是非見せてもらいましょう。イーディス殿の寵愛を賜るシズク殿の力を!」

 

どんどんヒートアップしていくイーディスとエルドリエ。

 

やめて!聞いてるほうが恥ずかしい単語を乱立しないで!

 

「ちょうあいって何ですか?」

 

ホラ見なさい!リネルが首を傾げてるじゃあ・・・いや、ワザとだわ、悪い笑顔してるわ。

 

「分かりやすく言うと愛されているという事よ」

 

ことは段々と大きくなり、リネルの問いにファナティオが答えている。

 

あ、ファナティオさん?そんな暖かな視線を送られても困るのです。

 

エルドリエの奴、見事に俺も込みでイーディスを攻撃してるな、しかも反論に困るタイプの言葉攻めだ。

 

「なんでぇ、シズクと戦いたいのかい?」

 

若干呆れ気味に、怖い物を知らんねぇと言いたげなベルクーリさんがイーディスとエルドリエの仲裁に入った。

 

一連の流れを聞いたベルクーリさんはファナティオさんと同じように暖かな視線で、

 

「妹分に頼られるなら本望じゃねぇか、シズク」

 

とか言い放った。

 

「叔父様!?」

 

「イーディスが譲ちゃんの姉なら、さしずめ少年は兄貴ってとこだろ?」

 

「火に油を注がないでくださいよ!」

 

「まぁ、そう言うな。お前がエルドリエに認めてもらうのも必要だろう?」

 

「シズク殿が・・・アリス様の兄上!?」

 

「エルドリエ、それは違います!」

 

ホラ見なさい、エルドリエは何か物凄い衝撃を受けたように数歩後ろにふらついて、テーブルに手を着いて呟いて、アリスがそれを否定して、イーディスが嬉しそうに俺の肩をバンバンと叩く。

 

「シズクも聞いた!?騎士長公認だよ!」

 

「はいはい、あんまり肩を叩くな。エルドリエ、決闘は受けよう。木剣か実剣どちらでやるんだ?」

 

もはやどうにでもなれ、諦めも境地に達すると達観出来るんだなと思いながら俺は尋ねる。

 

「シズク殿が全力を出せるのは神器のみと伺いました。なので互いに神器でお願いしたい!」

 

こうして、冒頭に戻るわけなんだが・・・・。

 

神器を使った決闘はもはや殺し合いだ。

 

立会人がいて、互いに全力ともなあれば武装完全支配術の使用もありえる。俺は使う気はない、今回にいたってはエルドリエにも使わせる気はない。

 

「それじゃ、この銀貨が地面に落ちたら開始だ。良いな?二人共!」

 

「はい!」

 

気合十分なエルドリエとは相反して俺は酷く億劫である。答えるのも嫌になるので頷くと騎士長が銀貨を指で真上に弾いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私ことイーディスは基本的に力量が伴えば、整合騎士だろうと見習いだろうと分け隔てなく接するし見下したりしない。

 

ま、シズクの影響を多少なりともうけているとは言え、整合騎士じゃないから弱いなんて固定概念には囚われない。だっていつも証拠が一緒にいるわけだし。

 

エルドリエは何かとシズクに噛み付く傾向にあったし、アリスのことで私も口論することが多かった。

 

「ねぇ、アリス。何でシズクに勝ったらなんて言ったの?」

 

脇で観戦するアリスに尋ねる。

 

さっきは私も頭に血が上って売り言葉に買い言葉だったから冷静でいられなかったのよね。

 

「エルドリエは、シズク殿の剣を知りません。一度完膚なきまでにやられる必要があると感じました」

 

「エルドリエってプライド高いモンねぇ・・・それにしてもアイツがアリスのお兄さんかぁ」

 

「それは!」

 

「良いじゃん、何かと頼っちゃいなよ。任務の時とか必要だなって感じたらね?」

 

「良いのですか?」

 

「取らないでしょ?」

 

「取りません!」

 

銀貨が宙を舞う中、私はアリスとそんなことを話す。

 

そして、銀貨は鍛練場の固い床に落ちて音を奏でる。

 

 

 

 

「そこまで!」

 

 

 

 

刹那で勝負はついた。

 

「いきなり九頭龍閃・・・実はシズクも怒ってた?」

 

それは何度も見たし受けたシズクの神速の九連撃。

 

受けたエルドリエは大の字に伸びており、シズクは何食わぬ顔で歩み寄る。

 

「どうですか?エルドリエ。整合騎士でなくともこれほどの実力を有している者もいるのです」

 

「あ、偏見をなくすためだったのか・・・・」

 

倒れたエルドリエに語りかけるアリス、シズクに決闘を振った理由はコレね、アリスもしっかり師匠をしているじゃない。

 

「エルドリエ、これで分かったろう?少年が何で最高司祭様からカセドラル教導役なんて天職を賜ったか」

 

「き、騎士長・・・私が間違っておりました」

 

そう言って騎士長がエルドリエの手を取って起き上がらせる。

 

「アンタ、本当に容赦ないね?」

 

「何を言うか、見習い騎士連中にもコレやってんだぞ?」

 

「良く死人がでないね!?」

 

「そりゃ、手加減してるからな。九撃全部刃を裏返してる。峰打ちだし突きは柄頭で突いているんだ、普通にやったら死ぬわ」

 

「だって、エルドリエ。」

 

私がシズクに言うと口を尖らせるシズク。

 

その言葉通りなら本気ではなかったという事だが、それは模擬戦で死人を出したら洒落にならないからと言う事らしい。

 

「私は・・・・・・私は」

 

「エルドリエ?本当に大丈夫か?」

 

何やら様子の可笑しいエルドリエを心配する騎士長、拳を震わせ、決心がついたかのような顔になると「シズク殿!」と叫んだ。

 

叫び声に反応したシズクは動きを止めて顔をエルドリエへ向ける。

 

「一つだけ、お願いがあるのです・・・・・・!」

 

「へ?」

 

間の抜けた声で聞き返すシズク、私としてはシズクがエルドリエにも認められて偏見の視線を向けられる事がなくなっただけでよかったんだけど。

 

「私を、私を弟子にしてくれないでしょうか!!!」

 

最大級の声量でそう叫んだ。

 

シズクは「は?弟子!?」と困惑し、私は無表情でエルドリエを睨んでいた。

 

私と過ごす時間が減るじゃない・・・・唯でさえ見習い騎士達の向上に買って出ているのよ?シズクは。

 

エルドリエはシズクの前まで歩き、跪く、まるで神様へ敬意を表すかのように。

 

「私は貴方を超えたい。目にも止まらぬその剣を、いつか私のものとしたいのです!だからどうか、どうか貴方の剣技をお教え願いたい!」

 

「止めてくれ!弟子ってエルドリエはアリスを師にとりたかったんじゃないのか!?」

 

「アリス様とはまた違った剣にこのエルドリエ、惚れこんでしまったのです!なのでどうか!!」

 

困惑しながらやり取りする二人を見て騎士長はニィッと口角を持ち上げる。

 

「アリスの譲ちゃんはこの結果を予想してたかい?」

 

「いえ・・・正直意外です。エルドリエがただシズク殿を認めるだけでなく師に仰ごうとは」

 

きょとんとして答えるアリス。

 

「俺は従者だ!弟子は取らないから師の件は他をあたれ!鍛練でなら嫌って程技を見せてあげるからそこで盗んでくれ!良いな!?」

 

シズクの悲鳴に近い声を聞いてアリスはハッと我に帰る。

 

そうなると私に帰ってくるのでは?と思ったらしい。

 

「どうしても駄目ですか!?」

 

「駄目!何度も言うけど弟子なんて取らないから!!」

 

平行線を辿るシズクとエルドリエのやり取りをみて、溜息をついた。

 

「止しなさい、エルドリエ。シズク殿が困っています」

 

「ですが、アリス様!」

 

「私もシズク殿の剣には興味があるのです。なので二人揃ってご教授していただきましょう」

 

あ、良い様に面倒を押し付けた。

 

シズクはもう「うん?良いよ、手加減しないからね?」と片言になっていた。達観したのか諦めたのか・・・どっちでも良いけど私といる時間もっと減らない?

 

「それじゃ私も・・・」

 

「嫌だ!」

 

「何でよ!?」

 

即答されちゃった。

 

そんな嫌そうな顔しなくてもいいじゃない・・・・。

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