SAO イーディスと逝くアンダーワールド   作:難波01

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「っ!!?」

 

 

シズクはアドミニストレータに斬りかかるべきかと真剣に考えた。クーが消えて、床から抜いた幻狼刀を下段に構えた。キリトも同じようで剣の柄を痛いほど握り閉め、足の骨が軋むほどに床を踏みしめる。

 

キリトは自分の仮初の命とカーディナルの本物の命、天秤にかけるまでもない。しかし、キリトは斬り込めなかった。一か八かの博打にアリスとユージオの命まで巻き込むからだ。同じようにシズクもイーディスの命を巻き込むことに抵抗を覚えて、このまま記憶通りになる事を良しとしない理性と衝動のせめぎあいに陥った。

 

 

「あら、随分とおかしなことを言うのね。今さらそんな交換条件を受け入れて、私にどんなメリットがあるのかしら?」

 

 

 

「さっき言うたじゃろう。ひたすらに術を練り上げてきたと。200年前と比べぬ方がよいぞ。その哀れな人形の動きを封じながらでも、貴様の天命の半分くらいは削ってみせるぞ。それほどの負荷がかかれば、貴様の心もとない記憶容量がさらに危うくなるのではないか?」

 

 

カーディナルの言葉に、アドミニストレータはあくまでも微笑みを崩さず唇に人差し指を当てて考えを巡らせる素振りを見せると、やがてため息まじりに答えた。

 

 

 

 

「その程度で私のフラクトライトが脅かされるとは思えないけど、たしかに面倒ではあるわね。その交換条件、っていうのはこの閉鎖空間から坊や達を逃せば事足りるのよね?今後永遠に手を出すな、って意味なら拒否するわよ」

 

 

 

「いや、一度退避させるだけでよい。彼らなら、きっと・・・・・」

 

衝動が勝った。シズクが腰を落として、刀を鞘に納めて居合いの構えを取る。

最短、最速で真っ直ぐに殺す。ただその一点にのみ集約して踏み出そうとするとカーディナルの強固な『意志の力』に一瞬、抑え込まれてしまった。

 

「よさぬか!!」

 

「このまま見殺しに出来るかッ!!」

 

「ならばお主に、あの剣の巨人とアドミニストレータを一度に相手取って戦う術があるのか!?あの剣に一度胸を裂かれ、自分で分かっておるじゃろう!それでは無駄死になのじゃ!例えここで負けても、お主らは生きねばならんのじゃ!死んだらそこで終わりなのじゃ!最後にワシらが勝つためには、誰かがここから生きて帰らねばならんのじゃっ!!」

 

ある!と断言できなかった。シズクにとって、先ほど神様を名乗る存在との邂逅はただ幻想殺しみたいと名前を借りていた左手に宿る力、それは思惑通り切り札足りえた力だと理解させた。

 

力の本質を理解した今、解き放つことは可能だ。だが、左手に宿る力を使って確実にソードゴーレムを破壊し、アドミニストレータに一矢報いる・・・・そんな保証はなかった。そして、報いるだけでは駄目なのだ。

 

 

「・・・すまぬな、後を頼む」

 

 

言葉を飲み込むシズクに誰よりも人間を愛した管理者は、彼に優しく微笑んだ。そして再びアドミニストレータに向き直ると杖を捨て、両手を広げながら前に出た。

 

 

 

 

 

「さぁ、これでよかろう。こんなちんけな身体じゃが、煮るなり焼くなり好きにすれば良い」

 

 

 

「ふふっ、あははは!いいわよ。その方が私も楽しい遊びを後に取っておけるし、ね。じゃあステイシア神に誓いましょう。私は・・・」

 

 

 

「いや、神ではなく貴様が唯一の信頼を置くものに誓え。自らのフラクトライトに誓うのじゃ」

 

 

 

「・・・はいはい、そうですか。それじゃ私のフラクトライトに誓うわ。私はおちびさんを殺した後、後ろの5人は無傷で還してあげるわ。この誓約だけは私にも破れない。今のところは・・・ね」

 

 

 

「それで良い」

 

 

 

 

 

カーディナルがそう言って頷いた瞬間、彼女に向かって伸ばされたアドミニストレータの右手から一筋の紫電が迸り、躊躇なくカーディナルの体を貫く・・・筈だった。カーディナルの眼前から発生していた雷の余波が床を抉るという、想像を絶する一撃を甲高い音と共に“掻き消した”。

 

 

「悪い、カーディナル。やっぱ俺には無理だわ」

 

 

「何故じゃ!?お主は何故割り込んだ!!?」

 

 

「俺は、クーにも託されている。この世界の人を護ってくれって・・・・何より、この()は誰かを助ける為にあるっ!!!」

 

 

「あははははは!良いわ、どこまで耐えられるか実験してあげる!!」

 

 

高々とした笑い声を響かせながら、アドミニストレータは優に10を超える紫電をカーディナルの前に立つシズクへ放った。徐々に左手首に右手を沿え、衝撃に耐えるシズクを見ていて、キリトとユージオは無力感を嚙み締めていた。

 

 

(僕は、僕はなんて無力なんだ・・・!僕達を助けてくれた人達が無残に散っていく様子を、遠目に見ていることしかできないなんて・・・!)

 

 

(何か、何かないのか・・・!?あの化け物に勝つ方法は!!)

 

 

「さぁそろそろ終わりにしましょうか?さようならリセリス、さようならシズク!あはははははは!!」

 

 

 

 

 

弓のように体を反らせて笑うと、アドミニストレータは何とか堪えていたシズクに特大の雷撃を見舞った。それを逃げようともせず真っ向から受け止めたシズク。服が焦げたカーディナルが宙を舞う中、堪えきれなくなったキリトとユージオ、アリスが駆け寄ってカーディナルを起した。

 

 

「カーディナルさんっ!ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・僕は・・・・・!」

 

 

「ワシよりもあ奴は!?」

 

 

「大丈夫っ!!!」

 

 

服こそ焦げて、痛々しいダメージを物語っているがカーディナル自身は最後の一撃のダメージを余波で受けていただけ。ユージオに抱き起こされるとシズクの所在を確認するべく、痛みで閉じていた瞼を開く、同時にイーディスの声が届く。

 

 

「私の従者は、“誰かの為”なら際限なく強くなれるから!!」

 

 

 

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