SAO イーディスと逝くアンダーワールド   作:難波01

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太陽(ソルス)の光は、世界の支配者が斬り倒されようと平等に世界を照らしている。

 

シズクとアドミニストレータの決着の後、結局のところキリトは端末から外界の菊岡と連絡できて、正史通り機材トラブルの負荷を直に受けて昏倒してしまった。

 

最高司祭の死を契機にセントラル・カセドラルで行使されていた監視術式は機能を失い、残存した整合騎士を中心に人界の保護を目的に、また、アドミニストレータの死は一部の整合騎士間だけに整合騎士のトップであるベルクーリから知らされた。

 

今や整合騎士に休みはないと言っても過言ではないほど、人界には魔物が跋扈し飛竜が時間を問わずに騎士を乗せて飛び立つ光景が中央修剣学院臨時本部から見て取ることができる。

 

 

 

 

 

 

 

人界・北東に位置する山岳地帯に現れた魔獣を退治するために事の顛末を知る整合騎士たちからは英雄と呼ばれるシズクが山肌を駆け上がり、鷹の上半身と馬の下半身を持つ魔獣に雷のような一閃を落とす。

 

「龍槌閃・・・イーディス、堕とすぞ!」

 

身をひねって避けようとする魔獣の左翼を断ち切った一閃、ぴぎゃ!と悲鳴を上げた魔獣は渓谷に落ちていく。

 

「エンハンス・アーマメント!」

 

待ち構えていたイーディスの操る闇に魔獣は一瞬で飲まれて息絶えた。

 

「ふぅ、クー。集落の被害は?」

 

着地したシズクが、先の集落の様子を見ていた元神獣に尋ねると、ないよーと返す見た目シベリアンハスキーの成犬。

 

分けあってシズクの神器となっていて共に駆けている。愛称はクー。

 

「おつかれ、相変わらず無茶するわ」

 

「あまり派手にやるわけには行かないだろう?ここ行商が使う渓谷だし、崩すわけにもいかないからな」

 

「確かに見習い騎士たちじゃ重荷だったかもね、私たちに回ってきたのは納得。それじゃあ帰りましょ?」

 

互いに獲物を鞘に納めてシズクとイーディスは帰路についた。

 

 

 

 

 

 

シズクの知るSAO正史では、心神喪失状態になったキリトはアリスと共にルーリット村に避難している。

 

何故か?と言えば、現存する整合騎士たちの中には「最高司祭様を殺害した極悪犯だ!罰せられてしかるべきだ!」と言う者もいてキリトの安全を考慮してアリスと避難した、と言うのが大まかな筋書きだ。が、今は違う。

 

修剣学院内の一角に天幕を張って本部を構えるというのはカーディナルの案で、一般の人々にとって雲の上の存在である整合騎士は同じ人間であると言う事を理解させる意図があるらしい。が、この二か月ではすぐに解決する案件ではないのは明白で、さらに学院生徒は目の前で女神アカウントを使ってログインしてきたヒロインたちの降臨を目の当たりにして混乱していたのは秘密だ。

 

シズクも実際に目にすると混乱してしまい、最近は考えをまとめるのにエルドリエの押しかけ稽古が非常に役立っているのは余談だ。

 

「アンダーワールドってハスキー居るんですね」

 

「ああ、クーの事?元々神獣って話だよ。」

 

修剣士達に、修剣学院生に追い回される一匹の大型犬を整合騎士の鎧ではないラフな格好のユージオが後ろで女神の呟きに答えた。

 

現実(リアル)からキリトを求めてきた女性・アスナ、アンダーワールドでは女神・ステイシアのアカウントを使用していることから多少女神由来のトンデモ現象を引き起こすレイピア使い・・・それでいてキリトの恋人。

 

「神獣が人間を慕う事があるんですね」

 

「シズクとクーはかなり特殊な関係って聞いたけど、僕も詳しくは知らないな。」

 

アスナの言葉にユージオはそう呟いた。

 

そんなユージオも自分が罪人となることで救った後輩、ティーゼとロニエに再開を果たせたのだ。

 

件の二人はクーを必死に追いかけている。

 

「カセドラルじゃ、シズクの天職は教導役って話だけど・・・みんな目に見えてレベルアップしているんだ。何か秘訣でもあるのかな?」

 

その光景を目にして、ユージオは思わずつぶやいた。

 

 

 

 

 

 

忙しい。

 

シズクが最近口癖になっていることだ。

 

人界に溢れかえった魔獣の脅威から人々を守り、カーディナルとベルクーリが前線を敷いたことで腕に覚えのある修剣士は魔獣討伐に名乗りを上げている。

 

それは実に助かっている。

 

整合騎士は地方の村だと未だに雲の上の存在だ、彼ら(あるいは彼女ら)がいないと話なんか進まない。

 

「以上が魔獣討伐の報告です。騎士長」

 

「おう、お疲れ。おめぇさん達に頼むと手早くて助かるぜ。シズク、左手は・・・希望拳(ホープオブフィスト)だったか?調子はどうだい」

 

報告書に目を通しながらベルクーリが、体調を訪ねる。

 

アドミニストレータが打ち取られた直後、間違いなくシズクは死にかけていた。

 

それこそ、なんで生きているのか不思議なほど肉体は損傷し、天命値なんてとっくに尽きているんじゃないかと思うほど・・・と言うよりはその状態を目にしたファナティオ、デュソルバートはすぐに諦めたとか。

 

カーディナルが《幻想殺し》(仮)に呼び名を与えたのだ。

 

ベルクーリとしては、つい最近まで死に体であった部下を労わっているわけだが、シズクとしても左手に宿った切り札の使い方を命がけで理解したと思っている。

 

「大丈夫ですよ・・・キリトは目を?」

 

「ああ、覚ました。アスナの嬢ちゃんが来てすぐにな」

 

 

 

 

 

 

 

キリトはただ困惑していた。

 

目を覚ましてすぐにアスナが、リーファが、シノンがそれぞれハイアカウントを使ってアンダーワールドにログインしてきたこと、ロニエとティーゼとの再会。のちに起るであろうアスナ達との問答、懐かしいと思えるほどこの世界で過ごした半面、菊岡を感傷的に攻めた事への罪悪感も抱いていた。

 

「へぇ、お兄ちゃんはこっちでも女の子を侍らせていたんだ?」

 

「違うぞ!ロニエは修剣学院の後輩で決してやましいことはない!!」

 

「キリトくん?」

 

「はい!?」

 

素っ頓狂な悲鳴を上げたキリト、そのタイミングで入り口の簾(正確には違う)を潜ってきたシズクとイーディス。

 

その二人に希望を見出したキリトが言葉を発するより先にシズクが動いた。

 

「あ~、イーディス。キリトは今取り込み中のようだ、出直そう」

 

「おい!?それはないだろ!!?」

 

「ねぇ、シズク。なんか懐かしいくらいの悲鳴が聞こえるんだけど?」

 

シズクが踵を返しながらイーディスの肩をたたいた、反射的に叫んでいたキリトがすがるように手を伸ばすと簾の前で何時だったか、ベルクーリとシェーレに飛天御剣流のすべてを出し切れと連戦に次ぐ連戦で助けを求めていたシズクに姿が重なったイーディスが尋ね返す。

 

「諦めなさい、キリト。兄上がああなったら態度を変えることはありません」

 

「「「兄上!?」」」

 

キリトの退路を断つようにアリスが言う。

 

アリスの言葉に驚いたのはキリトとユージオ、と言うかその場にいた全員が驚いた。

 

 

 

 

 

 

 

「何でぇ、まだ慣れないのか?」

 

治療用天幕で起きていたいざこざを聞きつけてベルクーリが足を運んでみれば、キリトを助けに外界から来た女神たちとキリトを慕う後輩の痴話喧嘩(この場合は違う)を見たシズクが何処か察して逃げようとしたらアリスの兄呼ばわりに驚いた幼馴染達と言う構図だった。

 

「・・・キリトとユージオは知らなかったよな、整合騎士になってすぐのアリスと関わる機会が多くてさ、イーディス共々兄弟みたいな扱いされていたんだ。割とすぐにあの戦いですから、慣れませんよ。」

 

「その割にはアリスの嬢ちゃんに回るはずの討伐依頼、おめぇさんがだいぶ肩代わりしているだろ?」

 

「ああ、道理で私以上に走り回っているわけだ。ま、私もアリスのお姉ちゃんポジだから当然付き合ったけど」

 

ベルクーリにいじられ、簡易的な説明しかしてなかったシズクの行動に納得したイーディス。

 

項垂れて、いかにも「疲れてんだから、これ以上いじらないで!」と態度で示すシズク。その光景にアスナ達は思うところがあった。

 

「アスナ」

 

「うん、私たちにとってのキリトくんが」

 

「整合騎士たちにとってのシズクさん、なんでしょうね」

 

因みに上からシノン、アスナ、リーファである。




データが飛んで沈黙していましたが、再開です
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