もしも竈門炭治郎がドラえもんだったら   作:三柱 努

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夢のおはようの座

無惨の居場所をつきとめたドラ治郎は、煉獄と共に無限列車へと乗り込んだ。

 

周りはすっかり日が暮れていた。

ガタンゴトンと夜の闇を走り、町を抜け、だだっ広い山道へ突入していく。

「切符、拝見・・・致します」

車掌がパチンパチンと煉獄とドラ治郎の切符に切り込みをいれる。

「拝見しました・・・」

 

 

これは十二鬼月、下弦の壱・魘夢の罠であった。

夢に関する血鬼術を用いるこの鬼は、配下の人間に指示し、列車に乗り込んだ鬼殺隊に催眠術をかける算段をしていた。

術の発動条件。彼の血を混ぜた切符に鋏痕をつけた瞬間、煉獄は深い眠りに落ちる。

発動を確認した魘夢は“手”だけの存在となり、同じ車両に忍ばせていた配下の人間たちに指示を出していた。

「俺は暫く先頭車両から動けない。準備が整うまで頑張ってね。幸せな夢を見るために」

 

 

という声を、ドラ治郎もガッツリ聞いていた。

相手に夢を見せる血鬼術。夢の内容を自由に操ることもできる、夢を支配する術であるが、できないことも存在する。

それは“夢を見ている相手にさらに夢を見させる”こと。

故に『気ままに夢みる機』で今まさに夢を見ている最中のドラ治郎には、この血鬼術が効かなかったのだ。(通常そんなことをする意味がないため、ドラ治郎の存在は魘夢にとって想定外であったのだ)

 

「煉獄さん、起きて。起きてください」

「!!??」

隣の席に座る煉獄をドラ治郎はユサユサと揺さぶる。

その光景に魘夢の配下の人間たちは大いに驚いた。

「あ・・・あなた、なぜ! 眠っていたんじゃ。夢を見せられていたんじゃないの!?」

配下の人間たちは焦った。魘夢に従わなければ、彼らが望む夢を見せてもらうことができなくなってしまう。

こうなってしまえば、自分たちの手でドラ治郎を始末するしかない。

「もう、早く起きないと鬼が何か悪いことをしちゃうのに。そうだ、イイものがあった!」

ジリジリと凶手が迫る中、ドラ治郎はポケットから“手”を取り出した。

「!?」

魘夢と同じ手だけの存在の不気味さに恐れおののく配下の人間たちをよそに、ドラ治郎は「夢たしかめ機~!」と呑気に叫んだ。

「煉獄さんが夢を見てるか確かめて」

瞬間、ドラ治郎の取り出した“手”は素早く動き出し、煉獄の頬をギュウーとつまんだ。

 

「いっ!!!! よもや、うたた寝していたのか、この非常時に! 柱として不甲斐なし、穴があったら入りたい!」

今、煉獄の目の前には2つの手と錐を持った乗客。

「鬼血術か! 鬼は何処だ!」

覚醒と同時に現状を把握した煉獄。

「先頭車両です」

ドラ治郎の進言が届くや否や、煉獄は炎となって走り始めていた。

 

 

「・・・・・あれ? 早すぎない?」

煉獄が先頭の機関車にたどり着くと、そこには鬼・魘夢が座り込んでいた。

魘夢は腕を機関車に沈ませ、体を融合させている最中であった。

「その目、下弦の鬼か。やはりな!」

煉獄と魘夢。対峙した瞬間、コンマ秒早く先手を取ることができたのは間合いの利が勝った魘夢であった。

「お眠りィィ」

強制昏倒催眠の囁きが煉獄の耳に届く。

だが、煉獄の頬にはドラ治郎の出した“手”がぶら下がったままであった。

煉獄は夢に一瞬にして誘われ、その夢は一瞬にして確かめられ、一瞬にして覚める。

「炎の呼吸 壱ノ型・不知火!」

催眠は一瞬にして解除され、煉獄の強烈な踏み込みの勢いは微塵も殺されることなく、魘夢を袈裟斬りにして切り伏せた。

「何故・・・眠らない・・・何故・・・こんなにも早く起き・・・」

「知らん!」

崩壊する中、辛うじて口から出た魘夢の問いを一蹴した煉獄であった。

 

 

その後、機関車は原因不明の動作不良で停止した。

「煉獄さん! 鬼は倒せましたか? 列車、止まっちゃいましたね」

先頭車両でドラ治郎と煉獄は合流した。列車が止まり、煉獄が平気な顔をしているのだから、隊員であれば何が起きたか推測できるものなのだが・・・

冨岡や井黒であれば入れるツッコミを、煉獄は一切入れなかった。人の短所に目をやるような性格ではないのだ。

「致し方あるまい。竈門少年は鴉を飛ばして、隠に後処理を要請してくれ。俺たちはここからは歩いて本部に向かうぞ!」

テキパキと指示を入れる煉獄。

煉獄は列車を後にすることを決めていた。十二鬼月の追手が来る予感があったからだ。

 

 

そしてそれは唐突に飛来した。

列車から離れきれないうちに2人の目の前に現れた土煙。

「うわぁ! 何、何!?」

「やはり来たか」

煉獄が睨む先、土煙の中から現れたのは鬼であった。

目に刻まれた上弦・参の字。鍛え上げられた体躯と余裕のある姿勢。強者の雰囲気が滲み出ていた。

「姿を現すとは思わなかった」

煉獄の言葉に、参の鬼は「・・・?」とその意味を理解できなかった。

 

 

実はこの参の鬼・猗窩座は追手ではなかった。

魘夢の直後のタイミングでの襲撃は偶然。

そもそも無惨は煉獄やドラ治郎が浅草の家の前にたどり着いていたことも気づいていなかった。

煉獄が警戒していたような事態には陥っていないのだ。

 

 

事情を知らない猗窩座は、構わず口を開いた。

「俺はお前に話があるからな。姿を見せてやった」

「話?」

煉獄は首を傾げた。追手がわざわざ何を話そうというのだろうか、と。

「お前も鬼にならないか?」

猗窩座も目的は単純にスカウトであった。断られれば殺すつもりではあるが、特に他意は無い。

だが煉獄はその言葉の裏の意味を探った。

「・・・話を聞こう」

「そうか、鬼にならないなら殺・・・えっ?」

 

猗窩座は困惑した。煉獄が対話から真意を探ろうとしていると知らない彼は、歴代の柱にスカウトを断られた時と同じ答えが返ってくると思っていたのだ。

「えっ? 煉獄さん、鬼になるの? う~ん、いいんじゃないですか? 煉獄さんが鬼になったらすっごく強くなりそう!」

猗窩座は困惑した。

煉獄の隣に立つ隊員・ドラ治郎までもが妙に賛同しているのだ。

 

「いや。俺は如何なる理由があろうとも鬼にはならない」

煉獄の手のひら返しに、猗窩座は『どっちだ?』と困惑する。

「だが、所属を変えるという意見をお前が持っているなら、俺からも提案がある。上弦の参の鬼よ、鬼殺隊に入る気はないか?」

「・・・・・・ん?」

煉獄は相手の出方をうかがっていた。本部を発見ないし潜入する目的の相手が、この絶好の誘いにどう出てくるか、を。

だが、そんな事情を知らない猗窩座は困惑した。そもそも提案として全く想定していないからだ。

 

「それはグッドアイディア! 鬼さん、鬼舞辻無惨のところより、こっちのほうがずっとイイ所ですよ!」

つい先ほどスカウトに賛同してくれていたドラ治郎が何か言い出したことに、ますます困惑する猗窩座。

 

「鬼殺隊に入れば、衣食住は丸々タダですし、給料も出ます。刀だって支給してもらえるし、友達だってできるんです! そちらに嫌な上司とかいないですか? 理由もわからないのに叱られたり、何をしても褒めてくれなかったり」

ドラ治郎が鬼殺隊のメリット、無惨側のデメリットを指摘する。

 

『・・・叱られてばかりで・・・褒めてもらえない』

『そういえば俺が柱になっても、父上は褒めてくれなかったな』

ドラ治郎の言葉に一瞬、嫌な思い出が2人の頭をよぎる。

 

「はっ!? 俺は何を・・・無惨様に反意など・・・つッ、無駄な問答をしてしまった。鬼にならないなら、殺す!」

不意に無惨への不満を考えてしまい、その恐怖によって我に返った猗窩座はすぐさま構えた。

「術式展開 破壊殺・羅針」

「壱ノ型・不知火」

すさまじい勢いで飛び出した猗窩座に、煉獄もまたすさまじい反射力で反応して踏み込んだ。

両雄の衝突に火花が飛ぶ。

「うわぁっ! すごい力と力のぶつかり合いだ! ボクも加勢しないと!」

そう言うとドラ治郎はポケットから丸々とした布袋のようなものを取り出した。

「チャンピオングローブ~! これさえあればどんな強い相手にも殴り合って勝つことができる!」

ドラ治郎はその袋を両手にはめると、猗窩座に向かって走りだした。

「竈門少年! 動くな! 待機命令!」

煉獄の命令を聞くようなドラ治郎はいない。

見るからに愚鈍な動きで襲い掛かるドラ治郎に、猗窩座は目を向けることもなく『破壊殺・空式』の衝撃波を飛ばした。ドラ治郎の強さを目測し、この程度の威力であれば容易に四肢を吹き飛ばすことができると踏んでいた。

 

が・・・

 

ドラ治郎はその衝撃波を容易く殴り弾いていた。

「なっ!?」

そして猗窩座の懐に入ると、闘気の弱い拳を猗窩座に叩き込んだ。

「ぐはっ!」

猗窩座には敵の闘気を読み取る力があった。闘気の強弱で攻撃の方向やタイミング、威力を察知することができる。

ドラ治郎の放っていた闘気は明らかに異様であった。蚊でも叩こうかという程しかない量でありながら、繰り出された拳の威力は壮絶。

それを受ける覚悟の量が猗窩座には足りず、転がり倒れてしまった。

 

「破壊殺・滅式」

 

それは、ドラ治郎程度の相手に繰り出すような突きではない。

達人を、煉獄を仕留めるほどの絶技であった。

が・・・・ドラ治郎には通用しなかった。

「避けられた、だと!?」

猗窩座が視界に捉えたドラ治郎は無傷のまま、袋を振りあげて迫っていた。

「くっ・・・」

「炎の呼吸 奥義 玖ノ型・煉獄!」

その時、余所見をしていた猗窩座の上半身を根こそぎえぐり斬ったのは、煉獄の刀であった。

全ては一瞬。ドラ治郎に警戒を向けていた猗窩座の体を燃やし尽くすほどに広範囲に断ち切っていた。

「多勢に無勢は承知! だが君たちの悪行三昧を思えば卑怯とは言うまい!」

煉獄の豪語は猗窩座の耳に届くことなく、その体は崩壊した。

 

 

「やったぁ! やりましたね煉獄さん!」

「うむ! 竈門少年の素晴らしい拳技のおかげだ! 二人とも無傷で倒すことができたことは何よりも喜ぶべきことだ!」

喜ぶドラ治郎に、煉獄は微笑みかけた。

「競り合いを交えて感じたことがある。この鬼には迷いが見られた。その迷いがあったからこそ拳が鈍り、俺たちは勝てたのだと思う」

「そうなんですかぁ」

激戦の後の実感も無いドラ治郎のつぶやきに、煉獄は『大物だな!』と感心する。

 

「さて問題が残ったぞ。先程、鴉を2人とも飛ばしてしまった以上、上弦の鬼討伐をお館様に伝える手段が無い」

「え? 今から本部に戻るんですよね? 直接伝えればいいじゃないですか」

「この襲撃頻度を考えれば、俺たちは浅草で無惨に気付かれ、今も尾行されているのは確実だ。この状態で本部まで鬼を案内してしまうのは下策だろう」

帯刀したまま話す煉獄に、ようやく事態の深刻さに気付いたドラ治郎は周囲を見回し警戒した。

「俺たちの為すべきことはただ1つ。このまま本部から遠ざかり追手を引きつける。長い旅になるが、覚悟してくれ竈門少年!」

キリッとした目でドラ治郎の目を見る煉獄。その目には覚悟の炎が宿っていた。

 

「それなら尾行を巻いちゃいましょう」

ドラ治郎の突拍子のない提案に煉獄の目が丸くなる。

「良い意気込みだが、何か策があるというのか?」

「はい、どこでもドア~!」

煉獄の悩みを無視してぶっ潰すように、ドラ治郎は何処から出したのか理解できない巨大な開き戸を取り出し、何も無い野原の上に建ててみせた。

「これは・・・?」

さすがの煉獄も冷静さを失う中、ドラ治郎は悠々と開き戸を開き、その中に煉獄を招き入れ、すぐさま扉を閉めたのだった。

 




【22世紀コソコソ噂話】

本物の無限列車編は2020年10月16日公開だ!

もし鬼滅の刃の世界に秘密道具を1つだけ持っていくとしたらどれがいい?

  • 名刀・電光丸で正統派の戦いをしたい
  • とりよせバッグで手軽に鬼を絶滅させたい
  • 進化退化光線で可哀想な鬼を救ってあげたい
  • きこりの泉で綺麗な無惨を作りたい
  • ソノウソホントでチートプレイをしたい
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