もしも竈門炭治郎がドラえもんだったら   作:三柱 努

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見知らぬ夜明け

鬼となった妹・禰豆ミを人間に戻すため、その手掛かりとなる老人・鱗滝左近次の元へ向かうことに決めたドラ治郎。

鬼の習性なのか、禰豆ミはどうも日の光を嫌った。

山から出ようとした時、洞窟にこもって顔をしかめる。

「う~ん、お日様が嫌なのかな? 富岡さんも太陽の下に出すなって言っていたし。でも、夜まで動けないのも困る・・・そうだ」

ドラ治郎はそう言うとポケットをガサゴソと探し、変な形の筒を取り出した。

「スモールライト~」

そう言ってドラえもんが筒の突起を押すと、その先から光が灯り、その光を浴びた禰豆ミの体がみるみる小さくなっていった。

「さあ禰豆ミちゃん。ボクの服の中に入って」

ドラ治郎の服の袖に禰豆ミは大人しく入っていく。

持ち運びしやすく、日の光も防ぐことができ一石二鳥だ。

 

 

こうして2人は狭霧山へ向かった。

道行く人に道を尋ね、あと一山という頃には辺りは少し暗くなりはじめていた。

「日が沈む。そろそろ禰豆ミちゃんも平気だろう」

ドラ治郎は袖から禰豆ミを出し、スモールライトの解除光線を当て、元の姿に戻した。

大丈夫かと声をかけると禰豆ミは機嫌良さそうにうなずく。

「鱗滝さんは何処にいるんだろう? 疲れたなぁ。ひとまずお堂で休もうか」

険しい山道を越え、すっかり疲れてしまったドラ治郎は、途中のお堂で一息つくことにした。

 

お堂の中には先客の3人の登山客がいた。

「どうもどうもお邪魔します」

「どうぞいらっしゃい。お疲れでしょう? よかったらお水をどうぞ」

山に入れば助け合うのがマナー。登山客のご婦人から竹筒の水を受け取り、ドラ治郎は喉を潤す。

禰豆ミは自分から動こうとしないため、ドラ治郎が飲ませてあげた。

「はぁ、助かった。ありがとうございます。ところで、この辺りに鱗滝さんというお爺さんが住んでいるそうなんですが、知りませんか?」

ドラ治郎の問いに3人は首を横に振った。それも当然、登山客が地元住民のことを知るわけなどない。

 

ガラガラ

 

その時、お堂の戸が乱暴に開いた。

そこに立っていたのは目つきの悪い少年だった。この寒い時期に羽織1枚の寒々しい恰好で、ドラ治郎たちを見てニヤニヤと笑っている。

「ハハ。今日は大量だな」

そう言うや、少年は牙を剥き出しにしてドラ治郎たちに掴みかかった。

「早い!」

人間の反応できる速度以上のスピードで、少年はドラ治郎の頭に牙をつきたてる。

 

 

「こ・・こいつ、頭が硬い」

襲い掛かるスピードがそのまま頭突きの衝突力になり、少年はグワンと怯んだ。

「痛たた、この子も鬼なんだ。危なかったぁ」

頭をさするドラ治郎。ダメージが一切通らなかったことに少年鬼は愕然とした。

獲物が多数いた場合、速攻で1人の頭を噛み砕き、残る獲物に恐怖心を植え付け動けなくする。それが鬼のいつもの戦略であった。

「な、何なんだあの子は」「人を食おうとしたのか!?」「ひっひぃ!」

パニックになった登山客たちが立ち上がり逃げ出そうとする。だが、お堂の唯一の出入り口である戸を鬼が抑えているため逃げようにも逃げられない。

「ハハ。運が良かった。逃げられちまったら厄介だっt」

「瞬間接着銃~!」

鬼が言い終わるか終わらないかのわずかな間に、ドラ治郎は「これでも喰らえ」と短筒を鬼に目がけて発砲していた。

短筒の先から白くネバネバした液体が飛び、鬼に吹きかかる。

「な、なんだこれ・・・動けない!」

粘り気に腕や足をとられ、体の自由が効かなくなる鬼。

その隙に3人の登山客はクモの子を散らすように逃げて行った。

「あ! クソ、俺の餌が。人間のくせに・・・この・・・」」

「人を餌呼ばわりしないの! それと禰豆ミも落ち着いて」

粘りに抗いながら悪態をつく鬼に、ドラ治郎が禰豆ミを抑えながら怒る。

禰豆ミはドラ治郎が襲われた途端、目の色を変えて怒りを露わにしていた。

家族が襲われたことを怒る人間らしい感情が残っている何よりの証拠だ。

 

「さて、キミには聞きたいことがあるんだ。正直に答えてね」

「ハンッ。俺が何でも答えてやるお優しい奴だとでも思うのか? 甘すぎんじゃねぇのか?」

富岡が言った通り、鬼はドラ治郎を尊重しない。どんなことであろうと、丁寧に教えてやろうとしてくれる存在ではない。

「そう言うと思って。心の声スピーカー!」

ドラ治郎が取り出したのは、何やらユリの花のような形をした器と長い紐であった。

紐の先端を鬼に乗せると、ユリの先から鬼の声が響き始めた。

《何だコイツは。怖い。不気味だ》

「なっ!? 俺の声!?」

突如聞こえてきた自分の声と本心に、鬼は驚き目を丸くする。

「この道具は人の心の声を聴くことができるスピーカーなのさ」

ドラ治郎が自慢げに説明すると、禰豆ミが「ムー」と目を丸くしてはしゃいだ。

「じゃあ、えっと何を聞こうか・・・そういえば逃げてた人たち、大丈夫かなぁ? もしこの辺りに他の鬼がいたら・・・」

《この辺りは俺の縄張りだ。他の鬼がいるわけないだろ》

意図せず漏れる鬼の心の声。その情報提供にドラ治郎は「そうなの。ありがと」とサラッと礼を述べた。

「くっ・・・何の茶番だコレは」

歯噛みする鬼を尻目に、ドラ治郎は質問を考え付いた。

「そうそう。妹を人間に戻す方法を教えてください。知ってるかなぁ?」

「あ? そんなもん、知るわけねぇだろ」

《あ? そんなもん、知るわけねぇだろ》

鬼の返事と心の声が被さる。本当に知らないようだ。

「あらら。じゃあ、誰か知ってる人いないかなぁ?」

ドラ治郎の言葉に鬼は少し考えを巡らせた。

 

彼自身、鬼を人間に戻す方法を知る心当たりを考えたことはなかった。だが、誰かと問われれば答えはただ1つ。

人間を鬼に変えることができるのは唯一“あの方”のみ。

しかし、その事実は彼自身が鬼に変えられた時に、固く口止めされていた。

『喋ってはいけない。私の事を誰にも喋ってはいけない。喋ったらすぐにわかる。私はいつも君を見ている』

今でも鮮明に思い出される恐怖のひと時であった。骨の底まで震えそうな支配的な恐怖。

その名前すら、口に出した途端・・・待っているのは・・・

考えてはいけない。微塵も思考をしてはいけない。

 

《人間を鬼に変えることができるのは、鬼舞辻無惨様だけ・・・》

鬼の心の声は偽ることができなかった。

その瞬間、鬼の口から禍々しい腕が生えてきた。

「な、何だ!?」

ドラ治郎が驚愕する中、鬼から生えた腕が鬼の体を磨り潰し始めた。

バキッベキッグシャッと、耳を塞ぎたくなる音が響く。

鬼の体が細胞の1つ残らず消滅するまで、ひたすらに潰されていく。

このグロテスクな光景に、ドラ治郎はたまらず耳を塞ぎ目を閉じた。

「うわぁ。この道具、年齢制限とか大丈夫? のび太くんに見せたら一瞬で気絶しちゃうよ」

気持ちの悪いものを見たと、吐きそうな表情を浮かべるが、こんなことを言っていられる余裕はあるようだ。

 

 

この光景を見ていた者が、ドラ治郎と禰豆ミ以外にもう1人いた。

鱗滝左近次は困惑していた。

鬼の臭いを嗅ぎつけて現れてみれば、目の前には少年と少女、そして鬼の肉片が。

少年からは鬼に襲われたような臭いがする。鬼からは少年以外の臭いはしない。

つまり、鬼を倒したのは少年であるのは間違いない。

 

鬼殺の剣士を育てる“育手”である彼は、富岡義勇から依頼の手紙を受け、ドラ治郎を迎えに来ていた。

〈略啓 鱗滝左近次殿

鬼殺の素質のある少年をそちらに向かわせました。不可思議な術を使い私を気絶させるほどの力を持ちます。身内が鬼によって惨殺され、生き残った妹は鬼に変貌していますが、人間を襲わないと判断致しました。この二人には何か他とは違うものを感じます。もしかしたら“突破”して“受け継ぐ”ことができるかもしれません。どうか育てて頂きたい。手前勝手な頼みとは承知しておりますが何卒御容赦を。御自愛専一にて精励くださいますようお願い申し上げます。匆々 冨岡義勇〉

 

『略しすぎだ義勇』

鱗滝は心の中で叫んでいた。

『不思議な力の件、冨岡をも気絶させるほどのものを、具体的に書いてほしかった。

鬼に変貌した妹が人間を襲わない判断材料を、もっと詳細に書いてほしかった。

推薦されれば育てるから、前後の文言を書く行間があったら、そっちの具体・詳細を書いてくれ。

そこの情報が無いから、今目の前の光景に困惑しているのだ』

 

このように鬼が肉片と化した状態を、鱗滝も見たことがあった。

それは鬼が鬼舞辻無惨の名を口にした時に起こる現象。無惨の正体が露見しないよう、口封じのための呪いである。

この少年の戦い方も不可思議極まりないものだが、それ以上に“鬼に無惨の名前を言わせる”ところまで追いつめた方法のほうが重要だ。

余程の拷問でもしたのか、脅迫でもしたのか・・・いずれにせよ、そんな恐ろしい所業をしでかしておきながらこの平然とした表情。

『こんな末恐ろしい少年を儂に押し付けるのは、手前勝手な頼みすぎるぞ義勇。どうせなら思いやりが強すぎたり、優しすぎて困るくらいのほうが、まだマシだ』

そう思いながらも、鱗滝はドラ治郎に会わないわけにはいかなかった。

 

「儂は鱗滝左近次だ。義勇の紹介はお前で間違いないな?」

鱗滝が唐突に問うと、ドラ治郎は一瞬呆気にとられながらも口を開いた。

「え? 天狗さん? 鱗滝? あっ、アナタが冨岡さんの言ってたお爺さん。はい、ボク竈門ドラ治郎です。妹は禰豆ミといいます」

ドラ治郎の自己紹介に、鱗滝は彼を試すように間髪入れずに問うた。

「ドラ治郎。妹が人を喰った時、お前はどうする?」

「えっと、まずは食べられてしまった人とその家族の人に謝ります。それで、その家族の保障をしなきゃいけないですね。市役所・・・この時代は役場があるのかな? に、死亡証明書とかを提出して、ちゃんとします。食べられちゃった人の分も、しっかり手続きをします。全部終わったら、そんな事態を起こした原因。さっきの鬼さんが言ってた、人間を鬼に変えることができる鬼舞辻無惨ってのを倒します」

『判断が早い・・・が・・・』

鱗滝は頭を抱えた。

〈妹を殺して自分は腹を切って詫びる〉が正解だと言ってやりたかったが、犠牲者の保障まで言及されるとは思っていなかった。

それも正解とも言いたいが、覚悟が甘いというか、無惨を倒す前提で話をされても困る。

「もちろん、ボクが禰豆ミちゃんには絶対にそんなことはさせません!」

『言われた。それだけは肝に銘じておけと、言いたいことを先に言われた』

ドラ治郎の決意を前に、鱗滝は終始ペースを狂わされていた。

『義勇。こういう厄介を簡単に押し付けるから、お前は嫌われるんじゃないか?』

そう思いながら、鱗滝はすっかり日の落ちた夜空を虚ろに見上げるのだった。

 




【22世紀コソコソ噂話】

本作の流れはドラ治郎の行動次第で原作と異なる動きを見せるぞ。

もし『野比のび太』の姿を与えるならどのキャラが似合う?

  • 泣きつき仲間・我妻 善逸
  • ガンマン・不死川 玄弥
  • あやとりマスター・累
  • 睡眠の友・魘夢
  • メガネキャラ・前田 まさお
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