鬼殺の剣士となったドラ治郎は、無事な姿で鱗滝の家に戻っていた。
すると
ドガ! ててて・・・と、戸を蹴り飛ばして家から出てきたのは、禰豆ミであった。
「禰豆ミちゃん、そんなお行儀の悪い事をしちゃいけません!」
そう言って叱りつけるドラ治郎であったが、禰豆ミに『ぎゅう』と抱きしめられ、微笑まずにはいられなかった。
「起きたんだ。よかったぁ。もうずっと目を覚まさないかと思って心配したんだよ。もう、のび太くんより寝坊助さんなんだから」
禰豆ミの元気な姿に喜ぶドラ治郎。
そんな彼を禰豆ミごと『がしっ』と抱きしめる手があった。
「よく生きて戻った」
それはドラ治郎を最終選別に送った鱗滝。
毎回、自分の教え子たちが死んでいくのを見てきた彼は、ドラ治郎の無事な姿を見ていつまでもわんわん泣いたのだった。
それから15日後。
ドラ治郎はひょっとこ面の男からドラ治郎専用の日輪刀を受け取っていた。
日輪刀は別名『色変わりの刀』と言い、持ち主によって色が変わる。
ドラ治郎の刀の色は・・・
「色が・・・変わらない?」
「いや、そんなことは無いはずだ・・・銀色か?」
何の変化も見られない日輪刀を前に、ひょっとこ面の男も鱗滝も落胆していいものか、頭を抱える。
だが、そんな彼らにお構いなく、ドラ治郎の鴉が鳴き始めた。
「カアァ。竈門ドラ治郎ォ。北西ノ町ヘェ向カェェ! 鬼狩リトシテノォ、最初ノ仕事デアル。心シテカカレェ。北西ノ町デワァァ、少女ガ消エテイルゥ! 毎夜毎夜、少女ガ少女ガ消エテイル!」
次の日、ドラ治郎の姿は北西の町にあった。
この町では夜が来ると、毎晩のように若い娘が攫われているのだという。
「これは何とかしないと。よし、ボクに任せなさい!」
そう言って誰も見ていない空き地でドンと胸を叩くドラ治郎。
「とりよせバッグ~!」
西洋風のハイカラな鞄を取り出し、その中に手を突っ込むドラ治郎。
「女の子を誘拐する悪い鬼、出てこい」
すると鞄の中から、どうやってその鞄の口から出てきたんだ? と指摘したくなる成人サイズの鬼が現れた。
「ぎゃああああ!!」
この時刻はまだ昼間。
日光に当てられ、鬼は悲鳴と共に消滅していった。
「やったぁ。これで安心・・・・って思ったけど、本当にこれで終わりなのかな? ゲームだとそろそろ、2体以上同時に出てくるボスキャラとかに出会う頃だよね」
そう言ってドラ治郎は再び鞄に手を突っ込み、鬼を引きずり出した。
「みぎゃああああ」
「やっぱり。油断大敵・・・って、実はまだいたりして」
冗談半分で笑いながら鞄に手を突っ込むドラ治郎。
「ががぎゃぁあああ」
「出たぁ」
「ギャィアアお兄ちゃあああ」
「あらら。また出たぁ」
「うぎゃああああ」
「あらら、まだいたの」
鞄に手を突っ込んでは、ドラ治郎の周りに悲鳴が巻き起こる。
そのたびに、鬼が身につけていた服や装飾品が山を作っていった。
一山できたらちょっと移動して別の場所で鞄を探り、悲鳴を鳴らし、山を作る。
「ッギギギャァアア」
「う~ん、敵が大量に出てくるイベントだったのかぁ。でもまぁいつかは止むよね」
こうして、鬼を日光の下に引きずり出すこと1時間ほどが経過した。
「さて、そろそろお昼ご飯にしようかな」
山になった衣服の前で、ドラ治郎は地面に座り込んだ。
「どら焼き、出てこい!」
ワクワクした表情で、ドラ治郎は鞄の中からどら焼きを取り出す。
「う~ん、この時代のどら焼きは皮が薄いなぁ」
どら焼きの起源は諸説あるが、現代の形のどら焼きになったのは昭和時代と言われている。
当初、どら焼きは皮1枚だけを使い、端の部分を折りたたんで四角く作り、片面の中央は餡子がむき出しで、現代のきんつばによく似た形であった。
それが幕末の時代に『銅鑼』の形に似せたどら焼きが考案されたのだが、それでも薄い皮のままで、せんべいのような固い生地であった。
その後、明治時代に西洋からパン生地の文化が導入され、ようやくふっくらしたどら焼きの発想が生まれ始める。
大正時代はどら焼き成長期。美味しいふっくらどら焼きへ変化しつつある時期だったのだ。
「でもやっぱり、僕は普通のどら焼きが食べたいなぁ。グルメテーブルかけ~」
そう呟くと、ドラ治郎はポケットからマス目の市松文様の風呂敷を取り出した。
それを地面に敷き、「どら焼き」と話しかけると、風呂敷はジジジと音を立て、ボコッとその上に薫り高い“西洋かすていら”を生み出した。
「出来立てのどら焼きだ。美味しそうだなぁ」
ホカホカの餡子入りかすていらを美味しそうに頬張るドラ治郎。これまでの旅で見せた中で一番の大満足笑顔を見せた。
こうして、お腹を満たしたドラ治郎は鬼退治を再開。
小一時間ほど鞄から鬼を出し、ついに何も出て来なくなった。
「もう、どれだけ悪い鬼がいるんだ。困っちゃうよ。って・・そうだ思い出した。このとりよせバッグは世界中からとりよせちゃうんだ。だから、“人を誘拐する鬼”を全部とりよせちゃったんだ。どうりでどうりで」
鞄を逆さまにしてバタバタと振るうドラ治郎は、一仕事終えた感を出しながら、風呂敷からお茶とかすていらを取り出して一服したのだった。
のも束の間。
「次ハ東京府浅草ァ。鬼ガ潜ンデイルトノ噂アリ! カァアア」
鴉が騒ぎ、次の指令を叫び始めた。
「ええ、もう? 今、鬼をやっつけたばかりじゃないか」
「行クノヨォオ」
鴉はドラ治郎のどら焼きを突っつき、ドラ治郎を急かす。
「待って、待ってよ」
「待タァナイ」
こうして2日後、ドラ治郎は東京浅草に到着した。
「ここが浅草かぁ。やっぱりまだ古くて、逆に新鮮だなぁ」
夜なのに昼のように明るく、高い建物と人で溢れ、発展した街・浅草の中、ドラ治郎と禰豆ミはスタスタと歩いていた。
夜は禰豆ミを元のサイズに戻してあげられる。せっかくなら外に出してあげたいという、ドラ治郎の兄心であった。
「う~ん。それにしても鬼が潜んでるって噂、聞かないなぁ」
浅草の町を道行く人々は平和を謳歌していた。
警邏隊が町を練り歩き、道行く人々は笑顔。
小さな女の子を抱くお父さんも、今にも死にそうな青白い顔色をしているが、笑顔で妻と共に歩いている。
「平和だなぁ」
結局、ドラ治郎は浅草では鬼に遭遇することはなかった。
「何なのコレ。スカのイベントとかあるんだ・・・それか、何かイベントフラグでも見落としちゃったのかな?」
その後、ドラ治郎には次の指令が来ていた。
都会の浅草とは打って変わって、ほのぼのとした田舎道を歩いていく。
カエルの鳴き声がケロケロと心地よく耳に触れ、トンボが優雅に空を舞っている。
これはこれで平和な景色だ。
ドラ治郎がしばらく歩いていると、道の真ん中で男女が揉めているのが見えた。
「頼むよ! 頼む頼む頼む。結婚してくれ! いつ死ぬか分からないんだ俺は!だから結婚して欲しいというわけで!頼むよォ――――ッ」
金髪の少年が少女に求婚しているようだ。
それも熱烈に。
猛烈に。
ドラ治郎が止めに入ると、金髪の少年・我妻善逸はまくし立てた。
善逸いわく
・少女が声をかけてくれたのは自分の事が好きだから
・ドラ治郎のせいで結婚できなかったから責任を取れ
・死ぬ前に結婚したいから、鬼退治で死なないように守れ
・地獄の日々だから死んだ方がマシだけど怖いから死にたくない
・イィヤァアアーーーいやぁあああ! 助けてェーー!
『注文が多いなぁ』
ドラ治郎は呆れて物も言えなかった。
こんなに
ワガママで
文句ばっかりで
怖がりで
泣き虫で
意気地なしで
情け知らずで
甘ったれで
日本中がこのレベルに落ちたらこの世が終わるくらい酷い人間を
ドラ治郎は見たことがあった。
『ああ。どうしてボクは、こうものび太くんみたいなダメ人間と縁があるんだろう?』
ドラ治郎はうんざりしながらも、善逸を放っておけないと面倒を見ることに。
「カァア! 駈ケ足駈ケ足。ドラ治郎、善逸、走レ! 共ニ向カエ次ノ場所マデ!」
鴉に促され、ドラ治郎と善逸は森の中へと入っていった。
その先に屋敷を発見する2人。
そこは何とも言えない不気味な雰囲気の屋敷であった。
『こんな立派な屋敷なのに、ここに来るまでの道は人の痕跡が全然ない。でも、人の出入りが無いのに屋敷はこんなに綺麗だから廃墟とも考えられない。不思議だなぁ』
ドラ治郎はその不気味な雰囲気に違和感を覚えた。
「なぁドラ治郎。本当にここに行けって雀は言ってたのか?」
善逸は耳を澄ましてドラ治郎に問いかける。
「・・・いた」
善逸が指さした先。屋敷の玄関の上がり框の下から、のそっと鬼が現れた。
「ぐひぐひ。子供だ。舌触りが良さそうだ」
現れたのは目が4つもあり、舌を出して這いずり回る異形の鬼であった。
「ア゛――――――(汚い高音)」と叫ぶ善逸。
「ちょっとキミ、怖がりすぎだよ。今まだお昼でしょ? あの鬼は外に出て来ないから大丈夫だよ」
ドラ治郎はそう言って冷静に善逸を落ち着かせる。
「でも夜になったら外に出て誰か人を襲っちゃうかもしれない。倒していこう」
「いやぁあああ! 何言ってんのドラ治郎! 逃げよう! 逃げた方がいいって」
ポケットに手を入れようとするドラ治郎だったが、叫びながら掴まろうとする善逸せいでもたついてしまう。
そこに・・・・屋敷の中から誰かの走る足音と声が聞こえてきた。
「猪突猛進! 猪突猛進!」
【22世紀コソコソ噂話】
現時点で『女の子を誘拐して』喰っていた鬼はうっかり全滅しているぞ。
もし『源静香』の姿を与えるならどのキャラが似合う?
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『し』のつく人・胡蝶 しのぶ
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『ず』のつく人・竈門 禰 豆子
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『か』のつく人・栗花落 カナヲ
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入浴シーン枠・甘露寺 蜜璃
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弦楽器は武器・鳴女