もしも竈門炭治郎がドラえもんだったら   作:三柱 努

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自分ではない誰かの刺激臭

ドラ治郎たちが那田蜘蛛山に入って早々に遭遇した異常事態。

仲間同士で斬り合う隊員たち。それを操る蜘蛛の糸。そして出会った少年鬼。

ドラ治郎・禰豆ミ・伊之助と、森の中で出会った隊員・村田の4人は連携の末、少年鬼を倒したのだった。

 

「よっしゃぁあああああ。俺たち、やったぞ! ついに、ついに!」

「何を馬鹿騒ぎしてんだコイツは?」

喜ぶ村田の姿を不思議に思い首をかしげる伊之助とドラ治郎。

「だって、だってさぁ俺たちついに・・・」

感涙する村田であったが、ドラ治郎は「シッ、静かに」とその口に指を当てた。

ドラ治郎は森の奥を睨む禰豆ミの様子を見逃さなかったのだ。

すると、奥からザッと足音が聞こえはじめ、その主が姿を現した。

 

それは女性の隊員だった。

「駄目、逃げて」

涙目で酷く焦った様子で刀を手にし、ドラ治郎たちに警告している。

「階級が上の人を連れてきて。そうじゃないとみんな殺してしまう。お願い、お願い!」

必死に懇願しながら、ジリジリと近づいてくる女性隊員。さらにその後ろから、他の隊員も姿を現しはじめた。その誰もが、腕が変な方向に曲がっていて、一部骨が皮膚を突き破って、口から血の泡を吐いている人もいた。

とてもではないが、自力で動ける様子ではない。蜘蛛の糸に体を操られているのだと判断できた。

「なんだと!? 鬼は俺たちが倒したばかりじゃないか」

「他に鬼がいるんですよ。さっきの子供の鬼が“僕たち家族”って言ってたじゃないですか。つまり、他にあと2人以上は鬼がいるんですよ」

ドラ治郎の分析に、伊之助が首を傾げ笑う。

「2? アハハハ、変だぜドラ治郎。テメェ知らねえくせに、どっからその数字が出てくるんだ?」

「1人なら、夫婦とか兄弟、親子って言い方をするもんさ。それがお父さんやお母さん、兄弟や旦那さん、奥さんならね。家族ってことは、その並びであと2人はいないと呼ばないでしょ?」

「なるほど」

ドラ治郎の説明に納得する村田と伊之助。

「それよりも、今はこの人たちを助けないと。材質変換器~!」

ドラ治郎は箱の光を隊員たちに浴びせ、その糸から彼らを解放した。

「村田さん、この人たちをお願いできますか? 僕らは他の2人の鬼を倒してきます」

「ああ、そうだな。俺に任せろ」

「よっしゃ! ぶった斬ってやるぜ!」

そう叫ぶと、我先に猪突猛進伊之助が森の中に消えていった。

「あぁ、行っちゃった。もうしょうがないなぁ。禰豆ミちゃん、行くよ」

ドラ治郎は箱の光を周囲に照らし、蜘蛛の糸を無力化しながら森に入っていった。

途中、両手を鎌のようなものに替えられた首なし鬼とも遭遇したが、光を当てた途端に倒れて動かなくなった。

 

 

 

それから少し入った所で、ドラ治郎は少し木々の拓けた場所に出た。

岩の上に女性の鬼が座り、ドラ治郎と禰豆ミを睨んでいる。

その場に伊之助はいなかった。

伊之助が殺されてしまったにしては時間が短すぎるし、鬼を放置して走り去ることは彼の性格から考えにくい。ということは、何処か変な方向に走っていって、ドラ治郎とはぐれてしまったのだろう。

「もう、勝手にどっか行っちゃうんだから」

プンスカ鼻を鳴らすドラ治郎。女性の鬼はそんなドラ治郎の様子を戦々恐々と睨んでいた。

 

『さっきから人形たちの糸の感触が無い。蜘蛛が直した感触も。まさか、コイツらが全部斬ったってことなの!?』

抗う術を失い、女性の鬼は絶望していた。

ドラ治郎は材質変換器を禰豆ミに渡し、自らは電光丸を振りかざして鬼に迫った。

「覚悟~!」

迫るドラ治郎に、女性の鬼はすっかり戦意を喪失してしまっていた。

『殺される・・・頸を斬られる・・・怖い。ああでも、死ねば解放される。楽になれる。恐怖と苦痛の日々から・・・』

女性の鬼は頸を差し出していた。自ら死を切望し、ドラ治郎に殺されることを望み両手をさらけ出して。

「えっ?」

ドラ治郎の足が止まっていた。

女性の鬼の異様な降伏の様子を怪しんだのではなく、電光丸の誘導が無くなってしまったからだ。

電光丸は相手の敵意を感知して持ち主を動かす道具。

敵意が無い相手には何も動いてくれないのだ。

 

「あらら止まっちゃった。もう、キミは戦う気がないの?」

ドラ治郎の間の抜けた声のトーンの問いに、女性の鬼は怒りと悲しみが溢れた。

「戦う・・って、殺し合うって・・・嫌に決まってるでしょ。何よ、楽にしてくれるって思ったのに・・・覚悟してたのに・・・殺してくれないの? 解放してくれないの?」

女性の鬼の目からは涙が溢れていた。

「えっ? ひょっとして、鬼をやってるのが嫌なの?」

「嫌も何も、仕方がないのよ! 食べなきゃお腹が減って狂いそうになる。殺さなきゃ殺される。従わなきゃ酷い目に・・・」

両手で顔を押さえ泣き叫ぶ女性の鬼。心の底から悲しんでいる彼女の姿に、ドラ治郎は同情を覚えた。

「そうかぁ・・・そんなこととは露知らず。何とかしてあげたいなぁ・・・あっ、そうだ。こいつを使えばどうかな?」

そう言うとドラ治郎はポケットから新しい短筒を取り出した。

 

「進化退化光線銃~!」

 

ドラ治郎はそう言うと、短筒に何かを打ち込み、引き金を引いた。

銃口から発せられた光が女性の鬼に照射され、彼女の体は光に包まれた。

「!!?? な、何を!?」

痛みも無く、苦痛も無いが、何か体に違和感がある。

彼女は驚きのあまり、自らの服の裾に足をとられ岩から転げ落ちてしまった。

「痛っ・・・何よこれ、体に力が入らな・・・い?」

彼女は自らの手を見てハッとなった。

彼女を支配していた鬼に強制的に変えられていた肌の色が、すっかり普通の人間のものに戻っていたからだ。

それだけではない。落下した際の傷がすぐに治らず、血が流れて、痛いままであった。

「痛い!? 治らない!? それに鼻が・・臭いが・・・人間の臭いが・・・アナタの臭いが!」

彼女は自らの変化が信じられなかった。

鬼として当たり前に知覚できていた人の臭い、血の臭いに鈍感になっている現実を。

鬼の凄まじい筋力が抜け落ち、自分の服に重さすら感じるほど弱体している現実を。

「まさか・・私・・人間に・・・戻ったの?」

自らの両手をまじまじと見つめ、彼女は自分の体を抱きしめ泣き崩れた。

「もしかして、人間に戻したら嫌だった?」

余計なお世話をしてしまったのではないかとドラ治郎はあたふたした。

そして短筒を再び取り出し、今度は逆の効果が出るようにツマミを回していく。

「う・・・ううん・・・ちが・・・」

彼女は嗚咽に耐えながら、必死に首を横に振った。

 

 

解放をずっと望んでいた。

母親の役を無理やり与えられ、その意味も目標も理解できぬまま。

誰も教えてくれぬまま。

誰も救ってくれぬまま。

暗い森の中で過ごす選択肢しかない毎日。

全ては自分が鬼であるから。鬼の自分が生きるには耐え続けるしかなかった。

夢の中で見たことがある、誰か大切な人に優しい眼差しを向けてもらえた記憶。

人間だった頃の記憶。その頃に戻れたら、どれほど幸せだろうか。

それが今、自分の体に起きている。

夢かもしれない。夢であったらどれだけ悲しいことだろうか。

 

 

「~♪」

彼女の背中に優しい手が差し伸べられた。

それは先ほどまで彼女に光を照射していた女の子。

口に竹を咥え、どこか鬼の臭いがする女の子。

「・・・・さっきの臭いとその眼、まさかアナタ・・・鬼?」

「はい。禰豆ミちゃんはボクの妹で鬼なんです」

ドラ治郎があまりにもケロッとした声で言うせいで、彼女は一瞬反応に遅れてしまったが、その非常事態に気付くと卒倒して仰け反った。

そう。人間の体に戻れたということは、鬼の食料になってしまったということ。

蛇に睨まれた蛙。猫を前にした鼠。

「でも禰豆ミちゃんは人を食べたことが無いんです。だから大丈夫」

大丈夫というドラ治郎の言葉は全く信じられなかったが、禰豆ミが彼女の頭を優しく撫でると、その温かな手のぬくもりに、彼女はようやく安心を取り戻した・・・

 

のも束の間。彼女は深刻な事態を思い出した。

「そ、そうよ! この森には累が・・十二鬼月がいるの! 私が人間に戻ったと知ったら・・・駄目ッ。早く逃げないと!」

彼女の必死の様子にドラ治郎も緊張を覚える。

「じゅうにきづき? なんか強そうな名前。どっかで聞いたことがあるような無いような。でも大丈夫。ボクがついてるから安心して」

そう言って胸をドンと叩くドラ治郎。

「でも先に傷の手当てをしなきゃ。えっと、お医者さんカバンはどこにしまったかな?」

「手当てなんて、そんな悠長なこと言ってないで早く!」

「あっ、そうだね。キミの鬼が治るんなら、禰豆ミちゃんも人間に戻るはずだ。試さなきゃ」

「そんなことより! 危険が危ないの!」

ポケットに手を突っ込むドラ治郎を必死に引っ張ろうとする彼女。

そんな2人のやりとりをキョトンとした顔で見ていた禰豆ミであったが、ふと森の中に顔を向け、「むー」と指をさした。

 

その時、ドラ治郎の体は電光丸に引っ張られるように禰豆ミの元に飛んでいった。

「なっ、なんだ!?」

カキンッ!

刀と刀が火花を散らす。

森の奥から颯爽と現れた何者かの刀が禰豆ミを狙い、それを電光丸が自動的に守ったのだ。

「だ、誰だ!」

着地して体勢を整えるドラ治郎。その背に禰豆ミを守り、元・鬼の女性にコチラに来るように手招きしながら、強襲の主を睨みつける。

「なぜかばう・・・いや、お前は!?」

襲ってきた男はドラ治郎の顔を見てハッとなった。同時に禰豆ミの姿にも気づき、目を丸くする。

「あっ! あなたは、冨岡さん! おひさしぶりです」

ドラ治郎は襲ってきた男・冨岡義勇の姿を見て平和ボケした言葉をかけた。

冨岡はドラ治郎の呆れるほどお気楽な調子に呆れていた。

鬼の気配だけを頼りに禰豆ミを斬ろうとした自分の失敗については反省しつつも顔には出さず。

「相変わらず能天気だな。竈門ドラ治郎」

「そうかなぁ? それより冨岡さん、ここで何してるんですか?」

能天気にもほどがある。元・鬼の女性ですら、そう思った。

ここが鬼のいる森だとか、鬼殺隊だからとか、そもそもドラ治郎自身も鬼殺隊でしょうが!とか、ツッコミたくて仕方ない。

「あっ、そうだ。冨岡さん大変なんです。ここに十二カ月とかいう強い敵がいるみたいなんですよ」

「?」

ドラ治郎の言葉に目を点にする冨岡。そこに女性は「十二鬼月!」と助け船を出した。

「そうそうそれそれ」

「十二鬼月、下弦の伍か? 村田の報告によれば、村田とドラ治郎、猪頭の男、竹を噛んだ娘で倒したと聞いているが」

冨岡の淡々とした言葉に、女性とドラ治郎は「へっ?」と呆気にとられた。

 

 




【22世紀コソコソ噂話】

人間に戻った累の母の鬼は、累に似せた肌の色・髪の色・顔の模様が消えて、体型は原作登場時そのままの状態だぞ。

もし『剛田武』の姿を与えるならどのキャラが似合う?

  • 乱暴な美男子・嘴平伊之助
  • いつでも弱い者の味方・煉獄杏寿郎
  • 力強くて色男・宇髄天元
  • 涙もろくて猫が好き・悲鳴嶼行冥
  • 泣きたくなる優しい音を出す・竈門炭治郎
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