日出づる国、異世界に転移す 非公式外伝『GW』 作:島スライスメロン
その後の本編の描写と矛盾などがある場合がございます。
ご了承の上お読みください。
キャラ描写につきましては、原作作品と異なる場合がございます。
ご注意下さい。
・前回までのあらすじ
政府からの発表によって異世界探査を行うこととなった自衛隊。
海上自衛隊第一航空隊に属する鹿屋航空基地のP-3C部隊成川班は、日本から約1200km地点の陸地にて、大型飛翔生物とそれに騎乗した人型生物を発見する。
赤い夕暮れに染まる異世界にて、異世界人との初遭遇を果たした彼らに待ち受ける運命とは?
P-3C「俺もう引退してもいいんじゃないかな?」謎の勢力「ダメです」P-3C「チクショウ……」
【月詠月夜(ファーストコンタクト) ~憧憬は真実から遠い羽化登仙《ライアニズム》~ ②】
* * *
【ロイメル視点】
昼食後に始まった第1翼龍騎士団の対地攻撃訓練は、夕暮れが近づき空が最も赤く染まった頃になって終了した。
1つの太陽と1つの明星の輝きが支配する黄昏の世界の中、後は渡り怪鳥の群れなどが大陸に接近していないかを確認するべく、半島周辺の偵察を行ってから引き揚げようということになりかけたのだが……
〔翼龍〕
「ギャァァァァオ!!!!」
―ゴォォォォォ……―
〔ラーツ〕
「あれは……龍か!?だが、なんとも不気味な呻きだ……」
突如として3人の翼龍が威嚇の声を上げ始め、更に灰色をした謎の飛行物体が,『呻き声』とでも形容すべきあまり聞きなれない奇妙な音を伴って、北東の方角から翼龍以上の凄まじい速度で飛来したため、急遽予定を変更しその物体の正体を探ることとなった。
まずは今起こった出来事を本国の軍上層部への報告として上げるために、副団長のドイルが魔伝―魔法伝令具―を使って、そのまま本国の魔伝部隊に直接連絡……はしない。正確にはできないのである、魔伝の性能上。
魔伝とは、魔鉱石の発する魔波と呼ばれる空間を伝わるエネルギー波を、受信体となる別の魔鉱石が受信することによって始めて通信の送受信が成り立つ。だがしかし、魔波のエネルギーは空間を伝う内に拡散・減衰していくし、それにこの世界で魔波は自然・人工含めて空間中にありふれたエネルギーであり、魔伝による通信は距離を伸ばせば伸ばすほどにノイズに紛れてその精確性を喪失していく特徴があった。
そのため魔伝で長距離通信を行う場合は魔波を伝道しやすい素材を用いた有線魔伝を用いるか、もしくは中継局を置いて減衰する魔波を増幅・送信する必要があるが、前者はとてもかさばる上、物理的な線を使う以上物質に引っ掛けて切らないようにしなければいけない(必然翼龍に携行できない)。
後者は有線よりはましなものの、それでも装置は大掛かりであり(数10km以上を中継するものの場合、重量が少なくとも50kg以上必要な上、操作も複雑で専属の操作員が必須)、最前線で直接戦闘行為を行う翼龍に積むことは、騎のペイロード的にも、また作戦遂行能力的にも困難となり、事実上運用不可能なのである。
そこで翼龍騎士団の場合は、龍の操り手と魔伝の操作士の2名がタンデム式に騎乗する長距離無線魔伝令専属騎を1個団あたり1騎ほど置き、その騎が部隊の魔伝を統括と長距離通信に必要な作業を担うこととなっている。なお無線伝令役の騎は積載量が多く、またその積載物も衝撃などに弱い精密機器であるためにどうしても動きが鈍くなりがちであり、そのため最前線よりも1歩ほど後方に引いた場所にて待機し、必要に応じて通信を管理する。
ドイルは自騎から100kmほど離れた場所にて滞空している筈の通信騎と交信を図る。
〔ドイル〕
「こちら『イのロ(ドイルのTACネーム)』、『イのハ(第1翼龍騎士団伝令兵のTACネーム)』、応答せよ』」
〔第1翼龍騎士団伝令兵〕
“こちら『イのハ』”
〔ドイル〕
「至急ナイチ(本国)のアガリオソイ(東方面の司令部)に報告しなければならないことがある。繋いでくれ」
〔第1翼龍騎士団伝令兵〕
“了解”
ドイルの通信を受けて、騎の伝令役翼龍に跨る2名の伝令兵のうちの魔伝操作士が、様々なメーターやスイッチ、ダイヤルの付いた大型の魔伝装置を操作し、まずはキャンプ・ガイチに通信を繋ぐ。
〔第1翼龍騎士団伝令兵〕
“こちらイのハ。部隊イからアガリオソイに通信を繋ぎたい。どうぞ”
〔キャンプ・ガイチ通信兵〕
「了解。こちらの中継器を経由させる」
イのハから通信を受けたキャンプ・ガイチの魔伝室の職員が施設の魔伝中継器を手動にて起動・操作し、イのハの通信を本国のイリオソイに中継する手筈を整える。中継器の操作が人の手によるのは、自動化するほどの技術がまだないためである。
これでキャンプ・ガイチからアガリオソイに通信を直接送れるのかというと、実はそうではない。キャンプ・ガイチで増幅された魔波は、今度は更に禁断の地各所に設置された通信中継器を経由して本国内の通信中継器へと伝わり、そうしていくつもの中継器を経由してようやくロイメル王国軍の西方面司令部、コードネームでアガリオソイと呼ばれるその場所に、現場からの通信が入るのだ。
このような数多くの手順を踏むことによって、禁断の地から数100キロ先の本国に伝えられる魔波信号は、ノイズを紛れさせることも少なく、人が言葉をしっかり認識できる範囲の、明瞭な音声情報を保持するのである。
魔伝の操作室と司令部室としての機能を併せ持った広大な1室、そのロイメル王国の西側の軍事情報を統括するその場所に、禁断の地の第1翼龍騎士団からの通信が入る。
〔ドイル〕
「アガリオソイ、こちらイのロ。ケガレ(禁断の地)半島部のニシアガリ(北東)からアンノウン(正体不明の飛行物体)が出現。目標の大きさは翼龍と同じ程度だが、速度は翼龍を遥かに凌ぐ。脅威度は不明なれど追跡は不可能。目標はこちらの追跡を振り切ったのち、再度ニシアガリ方面へと飛び去った―」
その通信を受けた西方面司令部は寝耳に水を受けたような衝撃を受け、その場の勤務幹部によって第8、第9騎士団を増援として派遣することを即座に決定したのちに、直ちに首都の総司令部にこの件の指揮権を譲渡してその判断を仰ぐこととなった。
* * *
【日本SIDE】
日本国外南西側方面の調査を担当していた海上自衛隊鹿屋航空基地第一航空群第一航空隊所属のP3-Cの内の1機、成川二等海尉(当時)が率いていた機は、日本の南西約1200km地点に、かつての地球世界の地形に存在しない未知の大陸を発見した。
同機が指揮管制する無人偵察機八咫烏と共にこの地域上空に侵入した成川は、未知の大陸発見直前に機載レーダーにて探知していた登録データのない未確認飛行物体を捜索し、その物体を八咫烏の搭載テレビカメラで確認したところ、古代の地球にかつて存在していた肉食恐竜ティラノサウルスに似た胴体を持ち、背中から蝙蝠に似た巨大な翼を生やした全長8メートル規模の未知の大型飛翔生物の姿が映し出された。
〔八田〕
「ファンタジーな世界だとは思っていたけど、まさかこんなのまでいるとはなあ……」
その姿は地球のヨーロッパ世界で伝説上の存在として扱われてきたドラゴンと呼ばれる架空生物に非常に酷似しており、一同は思わず唖然とすることとなった。
更に一同を驚愕させたのが、その生物は顔の部分に兜を被り、そこから伸びた紐によって背中の上に騎乗した人間、甲冑を装着した騎士のような風貌の人物たちが操っていると思しき光景が見られたことであった。
そのことはこの異世界において日本以外にも人類が存在し、それが一定レベルの文明を有した知的な存在であることを理解するのに十分な光景であった。
―後にそれが異世界特有の大型飛翔龍類『翼龍』を操るロイメル王国翼龍騎士団の隊員であることが発覚したことについては、この物語の原作を既読している読者の方々なら既にご存じのことであろう。
だがしかしこの時の彼らにとっては、それらは生まれて初めて遭遇した未知の存在であり、その正体について知りえていなかったが故にその光景に驚愕していたことについて留意していただきたい―
さて、そうして異世界にて衝撃のファーストコンタクトを果たした彼らであったが、その感想は各々違っていた。
〔八田〕
「まるでス〇ルバーグ監督の映画みたいな光景だな、空飛ぶティラノサウルスがいるなんて。
イスラ・ヌブラル島が実在したとは、是非本人に見せてやりたいな」
〔鎌田〕
「でも『ジュラ紀の遊園地』に甲冑を着た人間はいないでしょう。どちらかというと『親戚の家の階段下に住んでた両親が魔法使いの少年』や「指輪を巡る冒険物語」の方では?」
〔八田〕
「すまんがその映画見たことないんだ。だからあまりピンとこない」
〔鎌田〕
「マジですか八田先輩」
〔八田〕
「だって俺が生まれた時には恐竜のやつと違ってシリーズ終わってたし、見たことあるやつの方が少ないだろ」
〔鎌田〕
「まあ確かに今2045年ですからね。30年以上も前の映画なんて知ってるのはおっさんくらいでした。件の恐竜映画シリーズは時折続編が作られ続けていますが……ところで、ス〇ルバーグって今存命でしたっけ?」
〔八田〕
「ああ、それなら……」
〔成川〕
「おいお前ら、今は任務に集中しろ」
成川が無駄話に興じる鎌田と八田を叱咤したことで、混沌としつつあった現場の空気が引き締まった。
〔成川〕
「一体何がどうなっているのかは分からないが、とりあえず様子を窺おう。だが近づきすぎると相手側を威圧してしまうかもしれないから、あまり近づきすぎてはいけないな。DOC!」
成川の指示を受けた八田が八咫烏を操作して、目標の周囲を旋回させる。
目標の動きは非常に緩慢で、八咫烏の速度に全く追いつけていない。
〔八田〕
「目標の速度は非常に低速。八咫烏に追いつく気配はありません」
〔成川〕
「フム、とりあえずこちらから近づかなければ危険はないということか。とりあえず今日はこの場を離れて、基地に帰投しよう。基地に連絡を取る。他の機を中継するので、連絡を」
本来なら衛星経由で基地と連絡を取るところだが、今はその衛星が存在しないため、他の機に通信の中継役を任せなければならない。
また、長距離通信に適した短波の利用に関しても、現状この世界の電離層の性質などがまだ調べ斬られておらず、通信不能エリアが以前よりも多くなっていたため、長距離通信に関しては近隣の機を介して行う手筈となっていた。
〔成川班通信兵〕
「了解。理恵(たかえ)2尉の機が一番近いです」
〔成川〕
「よし、では理恵班の機を中継して基地に連絡を入れるぞ」
そうして基地と連絡を取った成川班は、その場から離れた。
八咫烏もまたP-3Cの後を追ってその場から離れていく。
と、その時。
〔通信兵〕
「ん?これは相手の無線周波数かな……」
通信機のセンサーに引っかかった微弱な電波、それに気づいた通信兵はその周波数を記録した。
〔通信兵〕
「成川2尉、相手の無線周波数と思しき微弱な電波を感知しました」
〔成川〕
「うむ。相手は無線機を有する程度の技術力は有しているということか……」
* * *
一方連絡を受けた基地では、交渉可能かもしれない高等知的生物の勢力の発見という事態に、このような事前に備えて政府からあらかじめ配られていた緊急時対応マニュアルに従って行動することとなった。
それによると、最寄りの外務省職員に連絡を取って、基地に連れてこさせることとなっていたため基地周辺の外務省職員に連絡を取った。
だがしかし、連絡を取った職員から返ってきた答えは、鹿屋航空基地の隊員たちの予想を裏切る、意外なものであった。
〔外務省職員〕
「申し訳御座いませんが、今回の調査に関して我々外務省は、もう少しの間職員の同行を見送らせて頂きたいと考えております。
貴方方自衛隊が文明的な人類と思しき勢力を発見したことは、送られてきたデータを参照するに恐らく事実でしょうし、その成果は素直に称賛致しましょう。
ですが、相手の文化様式も一切不明であるにも関わらず、不用意に接触することは、少し性急にすぎるように思われます。
数日、或いは数週間ほどは様子を見て、安全を確認できた上で接触を図りたいのです。よって、今日今すぐというのは承諾できかねる事案なのです。
無論時が来て、準備が整ったら我々も調査に同行いたします。しかし今日今からというのは反対させて頂きたい」
確かに、異世界人発見という素晴らしい成果を上げたことは誇るべき成果であり、それは肯定されてしかるべきであるが、だからといってそこから一気に物事を調査から直接接触に移行しようというのは、少し性急に過ぎたのかもしれない。
そういうわけで、その職員と電話でやりとりしていた基地司令の桐山は、一旦連絡を切ってしまおうとした。
だがしかし、電話先の外務省の職員は、”ですが……”と前置きを置いたうえで、次のような話を持ち出したのである。
〔外務省職員〕
「ただ、官ではなく民間人ではありますが……このような不測の事態、そう安全性すらも確保されていない土地で、それでもなお相手との交渉に臨み得る、荒事においても役立つであろう実力を持った、専門職の男を用意することは可能です。その人物の為に、最大限の支援を約束いただけるということであれば、協力することは構わないのですが……」
その意図不明の提案に、桐山は狐につままれたような感覚を覚えたものの、どうしたわけか彼の思考の低層の、無意識の海とでも言うべき領域において、雷の閃光が走るかのような衝撃と、泡がぶくぶくと大量に沸いて、しゃぼん玉のようにふわりと浮き上がるかのような感情の静かな盛り上がりがあって、第6感レベルの感覚において、”なんとなくだが、同意したら良さそうか?”という言葉が脳に走りだした。
桐山は、冷静に考えることも重要ではあるが……と自身の心に理性で語り掛けた上で、自身の第6感の囁きに、自分の感を信じて、ここは一つ身を委ねてみるか?という結論を出した。
〔桐山〕
「分かりました。ではその、貴方の紹介する人物に対し、我々は最大限の支援をお約束致しますので、是非ともご協力の契約を取り次げて頂くことを、海上自衛隊海将補、桐山勲留の名において外務省にお願い申し上げます。
……今回の調査は、今後我が国がこの新世界において地歩を築き上げるための、重要な任務なのです。よって我々としても、何とか成果を上げなければならないのです」
桐山の誠実な態度に、電話越しに思いを汲み取った外務省職員が深く理解を示し、言葉を返した。
〔外務省職員〕
「貴官のご要望、確かに承りました。では今度は我々の方も誠意を示すこととしましょう。
必ずや貴官のもとに、かの人物を用意致します。少々お待ちください」
そして、鹿屋基地と外務省職員との連絡は終了した。
突然の官同士の真面目なやり取りに、鹿屋基地の通信室は妙な空気に包まれたものの、とにかくその人物とやらを待つこととなった。
そして成川班の連絡から一時間後……
―突然だが異世界の月、それは地球のそれとは少しばかり形態が異なる。
月『本体』は地球のそれと似て黄色ないし白、灰色がかった球体であり、また大きさも体感的には違いがない。しかし、異世界の月は地球の月とは決定的に異なる点がある。
異世界の月は、その周囲に木星や土星、天王星・海王星の周囲を取り巻くそれとよく似ていながらも、それらと違い虹に似た多色のスペクトルの輝きを放つ奇妙な『環』が掛かっているのだ。
それは岩石や氷塊、またはガスなどが漂って形成されていると推測されているのだが、太陽系における惑星の環が地球よりも遥かに巨大な質量を持つガス惑星の強力な重力がその形成に関わっているのに対し、衛星規模の天体がこのような環を形成し得ている理由については、天文学者、物理学者たちの頭を非常に悩ませている。
仮設によると『暗黒物質(ダークマター)』がこの現象に関わっているのではないか?という予測が立てられており、現在調査を施行中である―
さて、幻想的な光景が空の一部を彩る夜の時間帯になって、ようやく外務省職員によって紹介された人物が基地に表れた。
その人物は、応接室にて待機していた桐山の下に訪れると、次のように名乗った。
〔謎の民間人の男 【曽我】〕
「フリーで交渉人をしています、『曽我勇吾』と申します。
この度はお呼びいただいて誠に恐縮です」
鹿屋基地を訪問した―正確には迎えを出して連れてきた―のは、遊び人のお兄ちゃんといった風貌の、人の良さそうな笑顔を浮かべた30代半ばくらいの男性であった。
中肉中背の体型で、髭はしっかりと剃って清潔な顔をしている。髪は伸ばしているが後ろで縛ってきちっと纏められており、肌は健康的に焼けている。
服装は派手なオレンジ色の登山用ジャケットで、濃緑色のリュックを背中に背負っており、今から登山に行くと言われても違和感のない雰囲気を纏った曽我はしかし、これから行われる国家的な重大事において彼を連れていくのが果たして適任であるのか、甚だ疑問であるように思える。
そんな曽我の存在に、基地司令の桐山以下鹿屋基地の面々は困惑したが、とにかくこの人物が事態を動かすことになっているために取り合えず歓迎をすることとした。
〔桐山〕
「当基地司令の桐山です。さっそくですが曽我さんには我が基地の航空機に搭乗して、現地に向かって頂きたいと思いますが、宜しいでしょうか?」
〔曽我〕
「念のため伺いますが、安全のほうは?」
〔桐山〕
「与圧防護服と脱出用パラシュートを用意してあります。また護衛の隊員を2名、それと、医務士官を1名を同行させます」
武装した護衛を付けるのはともかく、医務士官も同行させるのは、この世界の病について情報が足りないためだ。
万が一何らかの病疫に羅感した場合に備えて、医務士官は必要であった。
〔曽我〕
「お気遣いをどうも。パラシュートの使い方は知っていますが、念のため後で使い方を教えてください」
〔桐山〕
「分かりました。えー装備は用意させていただきましたが、これでもまだ安全を保障できないかもしれません。大変申し訳ない」
〔曽我〕
「いいえ。未知の相手と交渉をする以上、危険を避けられない場面は想定していますので。念のためこちらでもいくつか道具を用意させていただきました」
勿論危険なものはありませんので心配しないでください、そう言って持参してきたリュックを開け、中身の道具―鏡や髭剃り用のT字型カッター、歯ブラシと歯磨き粉、コップに石鹸、下着類などの日用品は現地での滞在を考慮すると持っていても不思議ではないし、ミネラルウォーターや様々な種類の何らかの薬剤、恐らく下痢止めや抗生物質の類も現地の飲食の安全が未知であるため持参は考慮できるが、チョコレートや飴、ガムにタバコなどの嗜好品も入っていたのは、交渉に赴くというよりもキャンプに行くといった感じだ―を呑気そうに取り出して見せた彼の様子を見て、桐山は相手の人間性や能力などは測りかねると思った。
〔桐山〕
「(外務省の職員によると、彼は『国内外において数々の交渉をこなしてきたプロ』だということだが……信用してよいものだろうか)」
桐山は曽我の一筋縄ではない人間性を感じ取った。
一体どのような人生を送ってきたのか、それは桐山の知るところではないし、知るべきことでもない。それ故追及はしなかった。
〔桐山〕
「さて、紹介しましょう。今回護衛を担うことになります、竜馬喜平海士長と南戸入江(みなと いりえ)1等海兵、それと医務官の佐笹原多摩王寺(さささはら たまおうじ)3等海尉です」
紹介された三人の男たちが、曽我に対し自己紹介を始める。
まず名乗ったのは、ひょうきんさと精悍さを程よく併せ持った風貌が特徴の、竜馬喜平である。
〔竜馬〕
「竜馬喜平海士長です」
竜馬は平均より若干身長が高く、180cm前後だ。
竜馬に次いで、今度は南戸入江が名乗った。
〔南戸〕
「南戸入江1等海兵です」
南戸は竜馬より少し背が低いものの、それでも175mよりは上に見える。
最後に名乗ったのは眼鏡をかけた白衣の男であり、先端部が外に向かってカールしたセミロングの髪型が特徴のその男は、一見ひょうきんな感じがするものの、元の顔立ちがとてもよく、精悍な男らしさを秘めていた。
〔佐笹原〕
「佐笹原多摩王寺3等海尉です。軍医として貴方の健康や衛生を管理致しますので、気分や肉体に異常を感じた場合は、遠慮せずに申し出て下さい」
既に武装を完了している護衛の竜馬、南戸と、医務官として白衣を羽織った佐笹原が曽我と挨拶を交わす
三人の中で一番年長なのは医務官の佐笹原で、37歳。逆に最年少なのは南戸で27、因みに竜馬は31歳である。
〔桐山〕
「早速で悪いですが、既に用意した航空機の準備は整っております。今すぐ出せますが、いかがなさいますか」
〔曽我〕
「今すぐ出ましょう」
桐山の提案に、曽我は即座に返答した。
そういうわけで交渉人を載せたP-3Cは、夜の空の向こうにある未知の大地目指して発進することとなった。
〔曽我〕
「夜の闇を照らす人の光、これが消えないようにしなければならないな」
遠ざかる日本の地―雨が上がり夜空に万月がその姿を堂々と君臨させているその下で、月光に照らされながらもかき消えぬ、無数の人工の輝きを灯す夜を征服した文明―の光景をP-3Cの窓から覗いた曽我は、人知れずそう呟いた。
そこにあるのは1人の人間の覚悟であった。
* * *
【ロイメルSIDE】
『それ』を持った男は、大勢の男を前にして雄叫びを揚げた。
彼の名はクック……ロイメル王国の大8翼龍騎士団『円陣の突破兵(サークリット・ブレークスロハー)』の団長にして、規律と団結を重んじる武人である。
彼はよく整えられたカイゼル髭に荒い鼻息を当てながら、部下に激を飛ばした。
〔ロイメル王国第8翼龍騎士団団長 【クック】〕
「みんな丸太は持ったな?行くぞぉ!!」
〔男の集団〕
―ウオオオオオ―
〔????〕
「ほう……」
それを少し離れたところから見ていた見た目麗しい女性騎士が、関心を示しながら言葉を呟く。
彼女の名はアンドゥイル……第9騎士団『夜行する戦乙女団(ヘロディアス・ハサーズ)』の団長を務める女傑である。
〔第9翼龍騎士団団長 【アンドゥイル】〕
「クック殿たちの丸太はいい丸太だな」
〔若い女性騎士〕
「いやいやいやどういう状況ですか隊長?!丸太って何?!なんであんなの持ってるんですか!意味が分かりませんよ!」
その日、夜間飛行訓練を目的としてキャンプ・ガイチに遠征に来ていた第8、第9翼龍騎士団は、突如本国から下った命令に驚きつつも、本来よりも予定を早めて出撃することとなった。
予想だにしない不意打ちのような出撃命令に、幾人かの団員は動きをもたつかせたものの、それでもなんとか体裁を整えて今出撃せんとする両団だが、アンドゥイル率いる第9翼龍騎士団が槍や弓矢、ハンドボウガンなどで武装しているのに対し、何故かクック率いる第8翼龍騎士団の面々は……『丸太』を装備していた。
太くて長い丸太を両手で抱えながら雄叫びを揚げる、そんな屈強な男たちを横目に、第9翼龍騎士団のとあるうら若き乙女―ロイと同じように、ひと月ほど前に入団したばかりの新米で、紫色の髪をした犬獣人―は唖然としながら、異常な光景を普通に流しているアンドゥイルに突っこんだ。
〔アンドゥイル〕
「お前にもいつか、丸太の良し悪しが理解できる日が来るようになるさ」
〔若い女性騎士〕
「は……?」
若い女性騎士は隊長の言葉を理解できずにいたが、第8騎士団の屈強な男たちはそんな彼女の状況に戸惑う心境など全く知る由もなく、熱狂に包まれていた。
その熱狂に包まれた集団は時を経るごとにどんどん精神を高揚させていき、やがて所々で高笑いが始まった。
〔第8翼龍騎士団団員A〕
「アヒャヒャヒャヒャ!今日も頭がラリパッパーだぜ!」バンバンバン!
手にした丸太を激しく地面に叩き付ける様は、もはや正気を失っている。
そんな様子に女性騎士が引いているところ……
〔第8翼龍騎士団団員B〕
「正気に戻れーっ!!」ガツンッ
〔第8翼龍騎士団団員A〕
「グワー!!」
横からその男の同僚が割って入り、正気を失った男の頭を後ろから思い切りぶん殴った。丸太で。
同僚のバッティングによって吹っ飛ばされる男。まさか死んでしまったのか?と若い女性騎士が異常な事態に顔面蒼白になる中、男はフラフラしながらもなんとか立ち上がり、こう言った。
〔第8翼龍騎士団団員A〕
「おれはしょうきにもどった(迫真)」
まるで何事も無かったかのように淡々とした態度の男に、若い女性騎士は呆気に取られた。
が。
〔第8翼龍騎士団団員B〕
「まだ治っていなかったか!今度こそ正気に戻れー!!」ガツンッ!!
一度正気に戻った男を、先ほどの同僚が二度目の、今度は先ほどよりも強い一撃を食らわせて再度ぶっとばした。
〔第8翼龍騎士団団員A〕
「グワー!!」
〔若い女性騎士〕
「なんで!?」
とんでもない凄惨な光景に、もはや突っ込まずにいられない若い女性騎士は、団を率いるアンドゥイルにその答えを求めた。
〔若い女性騎士〕
「だ、団長、何がどうなっているんですか……!?何故彼らはあんなことを?」
動揺する新米騎士の質問に、アンドゥイルが状況に見合わない呑気な声色で答える。
〔アンドゥイル〕
「あれだけ馬鹿に興奮しているのは、『例の強壮剤』、と『満月の魔力』……強壮剤は夜間の睡魔を追い払うために食事で接種したが、今夜は満月だから少し精神の安定性が乱れやすい。まあ、これも騎士の鍛錬の一環だから心してかかるように」
〔若い女性騎士〕
「ええぇっ……?」
アンドゥイルの言った『強壮剤の接種〛と『満月の魔力』、その言葉を聞いた女性騎士は驚きと困惑双方の理由から素っ頓狂な言葉を漏らした。
〔第8翼龍騎士団団員A〕
「フフッ、お前の一撃かなり効いたぜ。おかげで目が覚めたぜ」
〔第8翼龍騎士団団員B〕
「友よ、やっと分かってくれたか」
そう言いながら何事も無かったかのように彼らが拳同士を突き合わせる様を、さも自然の、ごく当然な出来事だとでも語っているかのような、感情の激しい揺さぶりのない平常心の感じられる瞳で見ていたアンドゥイルは、呆けた若い女性騎士を狂気の道に導くような魔性の言葉をかける。
〔アンドゥイル〕
「所詮翼龍騎士などというものは、いつもいつも目まぐるしくグルグル回って。グルグル、グルグルグルグル、グルグルグルグル回り続けた果てに頭がクルクルアッパラパーになるろくでなしの狂戦士さ。まともな感性は消えていく。
ああ、お前がやけに興奮しているのも『強壮剤』と『満月の魔力』の作用だよ。まあこれくらいなら問題ないが、精神圧と血圧の上昇にはくれぐれも注意しろ。上げれば上げるだけ後の疲れが酷いし、それに……アレの日も重くなる(ボソッ」
〔若い女性騎士〕
「ぅわんぉっ///!!はぁ~……」
その隊員はアンドゥイルの発言で赤面するほど恥ずかしくなって妙な嬌声を上げつつ、この先騎士団勤務大丈夫かなあなどと思った。
〔クック〕
「よし、そろそろ出発するぞ!全員私に続け!」
団長のクックの言葉で、それまでの狂気が嘘のように厳粛な空気を纏い始めた第8翼龍騎士団の面々は、粛々と出発を始めた。
〔アンドゥイル〕
「よし、我々も続くとするか。全軍、離陸用意!我等第9翼龍騎士団、夜の戦女神の名の下に、その名を深淵の闇に刻め!」
斯くして出撃を開始する第9翼龍騎士団。若い女性騎士は、急速に変わり続ける状況に振り回されながらも、どうにか追いすがろうと必死に食らいついた。
空に飛び出した計50騎もの翼ある肉塊たちは、一路北東の方向へと向かって行った。
その後両団は凡そ1時間ほどかけて第1発見者として現場に留まっていた第1騎士団のラーツ・ドイル・ロイと合流し、本国へ帰投しなければならない彼らから警戒任務を引き継いだ。
その頃になると空はすっかり暗く染まって月が闇夜を照らしていたが、視界が極端に低下する夜間飛行というものは非常に危険なものであり、灯りとして魔導カンテラを持っていても時として不幸な衝突事故を招くため、慎重な行動が要求された。
* * *
さて禁断の地の広さは地球世界でいうアラスカほどであり、面積は日本の約4倍にも及ぶ広大な土地である。デカイ(ゆるふわな語彙力)。
そんな広大な土地を、精々北海道ほどの大きさしか持たないロイメル王国が事実上保有しているのは、この土地が禁断の地だから、という理由だけではない。
過去、それこそ200年ほど前までは、ロイメル王国以外の国々もこの地域の支配を目指して開拓団を送ったことがあった。何があるかもわからない未開拓の土地というのは、その時点での重要性は低くとも後々何らかの価値が出てくる可能性があるからである。
しかしそれはなぜか尽く『何者かの妨害』によって壊滅させられ、そして200年前の神の涙事件によって数千もの犠牲者が出たことを境にして、誰もがこの不吉な土地から手を引くこととなった。
この土地に何が存在するのか、実際の所ロイメル王国もよく知らない。わかっているのは、一見して無害に見える広大な森林地帯が、突如として人知を超えた牙をむくことがあるということである。
先ほどの飛行物体は、もしやその『何か』に関係があるのではないか、という危機感を共有するロイメル王国の人々はしかし、自分たちにできる精いっぱいのことを淡々とこなしていくことだけが救いになることを信じて行動するしかなかった。
* * *
翼龍の巡航速度は凡そ150km程度であるため、禁断の地から数100km先のロイメル王国へは数時間掛かってしまう。
そんな遠征軍を行ってから空戦機動訓練を行うことなどは兵にも家畜にも不要な疲弊を与える為、森の各地に龍と騎乗者が休憩を取るための簡易休憩所が設置されている。
翼龍が3匹、母龍なら1匹が着陸できる程度に切り開かれたスペースに、大体4人程度が軽い休憩を取れる小屋がぽつんと建てられているだけの代物であるが、それでも一息つくことができる場所であることに変わりはなく、ラーツ達3名と3体の翼龍たちは思わぬ長時間勤務となってしまった今日の任務の疲れを取っていた。
長時間翼龍に騎乗していると、どうしても腰の辺りに疲労が蓄積してしまう。翼龍騎士にとっては休憩もまた任務のために重要な任務なのだ(因みに、休憩小屋などが見つからなかった場合に備えて翼龍には個人用の簡易テントやマットなども積載されている)。
〔ロイ〕
「しっかし隊長。なぜ自分らは基地に戻らず、態々本国まで強行軍を?」
新米のロイがふと疑問を口にする。
報告のためならば本国まで戻らずとも、キャンプ・ガイチまで戻ればよい話であり、それが何故本国まで戻ることとなったのか?
その答えは、ラーツが答えた。
〔ラーツ〕
「実はあの物体を目撃した時、これに姿を収めてな」
そう言ってラーツが取り出したのは、一斗枡ほどの大きさ(縦横に約31.82cm、太さ約17.82cm)の正方形の箱の真ん中に、ガラスの丸いレンズが付いた道具であった。
〔ロイ〕
「それは『撮影機』ですね」
撮影機とは地球のカメラにあたる道具で、ロイメル王国のものは精々原始的なカメラ程度の性能である。
内部にプリズムとしての機能を持つ魔鉱石と火の魔鉱石や光の石が内臓されており、火や光の魔鉱石の光で照らした物体から反射してレンズから入り込んだ光を、プリズムで増幅し写真となる鏡板や金属板に焼き付けることができる。
画像はセピア色で、また精度も粗いが、それでも短い時間―数秒から数10秒程度―レンズを向けておくだけで風景を記録できるため、軍では地形の記録であったり、個人情報の管理や、戦果確認などのために写真が用いられており、特に偵察能力の求められる翼龍騎士にはとりわけ重宝されている。
〔ラーツ〕
「うむ。写真を撮った以上は、これを直接情報部までとどけなければならないからな。遠距離から直接遠方まで画像を届ける術がない以上、誰かが運搬せねばならない」
〔ロイ〕
「それで直接本国まで戻るわけですね」
〔ラーツ〕
「お前とドイルが写真を運ぶ私の護衛なのだから、しっかり休んで任務を果たせよ」
〔ラーツ〕
「護衛より強い保護対象じゃないですか」
そうして休憩して疲れを取ったのち、3名は本国目指して翼龍を飛ばした。
東の空に浮かぶ満月がその存在感を放つ空を背中に、ラーツは呟く。
〔ラーツ〕
「今宵は満月……月の魔力が最も高まるとされる夜。
地上の生命はその魔力の影響を受けて生体活力を活性化させ、また不可思議なことも起こり易いとされている。
何らかの災いの前兆でなければいいのだが……」
胸に抱えた不安を呟く彼を余所に、夜の空に浮かぶ巨大な月は、何も言うことなくただ君臨していた。
* * *
【日本SIDE 古橋班P-3C】
異世界の夜空を飛ぶP-3C。その内部で寛ぐ曽我は、機内の設備を色々と興味深そうに眺めていた。
〔曽我〕
「この機体はとても古いですね。日本にもこんな機材がまだあったとは驚きです」
素人の曽我から見ても1発で見抜かれるほど、P-3Cの機内設備は古かった。
というか、ぼろかった。
明らかに古い機材や新しい機材を強引につぎはぎした機内設備は、1部にはゴリラがシンボルキャラクターとなっている、某有名強力接着テープのようなもので繋ぎ止めたような部分すらも存在した。
〔古橋〕
「新鋭機を用意できずに申し訳ございません」
〔曽我〕
「あー、まあ構いません。我々は特攻隊同然だということは存じておりますから」
〔古橋〕
「あの、それは……」
曽我の言うことは半ば事実であった。
未知の相手との接触、それが平穏にいかない可能性があるため、最悪『切り捨てても構わない』ようなもの―人と道具―が用意されたのだ。
実に非情な扱いである。
そのような上からの個人の人権を貶めるような扱いをしかし、肝が据わった様子で受け入れている曽我を見る古橋は、この男に対する疑問―何処の何者であるのか―を抱かずにはいられなかった。
〔曽我〕
「自分が異世界で交渉人第1号になれるなんて、とてもワクワクしますね。多少の危険なんて飲み込みますよ」
曽我はこの危険かもしれない状況を、むしろ楽しんですらいるのかもしれない。
〔古橋〕
「大変申し訳ございません。ですが必ず貴方の身柄の安全は確保いたしますので」
古橋は、曽我の言葉を聞いたうえで、自分たちが切り捨て可能な存在であっても、そんなことはさせぬと心に誓った。
* * *
【ロイメルSIDE】
禁断の地から北東に約800km。
白く力強い月光を放つ満ちた真円の月と、輝き放つ無数の星々が闇に満ちた地上の者達を導く灯りとなる夜の洋上を、幾何かの光の粒が飛び交っている。
翼龍の背中に固定装備されたカンテラの灯りによって照らし出されるのは、ロイメル王国の翼龍騎士団、その第8、第9番隊である。
火の魔鉱石を加工した発光体を組み込んだ魔導カンテラは、松明と違って風に煽られて辺りのものを燃やすことはないし、それにその光量も松明より明るかった。
昼間と比べて視界が大幅に減衰する夜間の飛行に際しては、こういった照明器具の使用が推奨されている。
さて、翼龍騎士団員とその騎乗翼竜達は既に7時間以上飛行していたが、最後に取った食事の際に魔鉱石を加工した『強壮剤』を同時接種したおかげで魔力と集中力を維持し、夜間の哨戒飛行を続けられていた。
この強壮剤は水晶状の結晶構造を持つ『女王冷晶(クイーン・コールド・クリスタル)』と呼ばれる魔鉱石を粉砕して粉末状にした『フィロポヌス(労働愛)』と呼ばれる薬剤で、パン生地などに混ぜ込んでから丸め固めて団子状にしたり、粉をそのまま水に溶いたりしたものを飲食することで効能を発揮する。
ロイメル王国においてはその魔力と集中力を長時間維持する性質から軍部、特に翼龍騎士団においては利用されることがある。
効果時間後に精神の変調や肉体の不調などを引き起こす副作用や、依存性などがあるためその使用には慎重を要し、また使用後には精神の診断や『毒抜き』などを行うこととなっているのだが、それでも毎年『幾何か』の兵士がこの強壮剤の影響で廃人と化しており、その対策については現在対応法を模索中である。
さて、そんなわけで夜間の飛行任務を続けている彼らであったが、ラーツ達の報告にある灰色の飛行物体とやらは、一向にその姿を現していなかった。
翼龍は強壮剤の接種によって2000km程度は連続飛行できるとはいえ、もう既に半分の1000kmほどを飛んでしまっている。あと10分ほどして何も見つからなければ帰投しなければならないとクックもアンドゥイルも思い始めていたところで、彼らの元に伝令兵が報告に来た。
魔伝を使わず直接来たのは、魔伝そのものがまだ翼龍騎士団全体に行き渡っていないためである。
ロイメル王国の翼龍騎士団の場合、魔伝は翼龍12騎から成る小隊1個につき1つ配備し、1個団は小隊2つと伝令用の独立翼龍1体から編成されるため、1個団あたりの魔伝配備数は計3つということになる。
魔伝の管理については、魔伝の扱いに長けたものから選抜されることになっており、例えばラーツ総長率いる第1翼龍騎士団第1小隊の場合はドイル副団長がそれに該当する。
なお魔伝の扱いの上手い下手とは、放出する魔波の調整が上手いとか、あとは喋り声が明瞭かつ耳が良いということも要素に入る。これらが良くない場合
―ロイメル語でおk-
などと言われ重要な問題に繋がる。
さて、クック、アンドゥイル両団長の元に来た伝令兵は、北東方向に飛行物体2つを発見したことを報告した。
それを聞いたクックは第8の半数、第1小隊を率いて北東に向かい、更に半分を第9と共に残留させて、自身の目で目標を追跡することとした。
その約20分後、クック率いる第1小隊は遂に謎の正体不明の飛行物体―自衛隊の航空機―を発見した。
* * *
【日本SIDE】
〔古橋班隊員A〕
「目標を確認。大型飛翔生物と、それに騎乗している人型生物です」
〔竜馬〕
「どれどれ、八咫烏からの映像を見せてくれよ……ってなんじゃこりゃあ?」
日本出発から約50分後、古橋の率いる古橋班のP-3Cと八咫烏は、自機前方から飛来する複数の飛行生物と、それに騎乗する騎士を視認した。
基地から離陸して凡そ40分後には機載のレーダーにてその存在を探知していたためすぐに接近することができたが、相手はレーダーや暗視装置に類する探知手段を持っていないのか、こちらの存在に長らく気付いていないようであった。
だが竜馬を含めた搭乗員の目を引いたのは、騎士達の様子ではなくその騎士達が右手に持ち構えている丸太であった。
〔竜馬〕
「丸太抱えていやがるぜ。吸血鬼の出てくる島が舞台のホラーギャグ漫画かよっ」
〔隊員A〕
「不思議なこともあることものですね。漫画のような出来事が、まさか現実でお目にかかれるとは」
〔竜馬〕
「そこいらに豚汁があったり刀が自生していたりはしないよな?」
〔隊員A〕
「あったよ燃料、でかした!ってやつですね」
未知の世界であるから、何でもありかもしれないと思い始めている竜馬。無論それは半信半疑ではあるものの、そういった期待を抱かせた。
さて、自衛隊員たちは彼らの様子を暫く観察していたものの、相手の速度は精々が150km程度であり、P-3Cと比べると緩慢極まりなかった。
八咫烏の巡航速度は時速約800kmほどで、目標との相対速度は約時速650kmから600km程度。つまり目標は時速約150kmから200km程度の速度で飛翔していることになる。
つまり地球世界の近代兵器に対抗しうる速度性能は持たないということか、と古橋班の一同は理解し、その余裕故に古橋は、こちらから相手の能力に合わせてやることにした。
〔古橋〕
「速度を75ノット(時速138.9km)まで落とそう。お客人もいるから慎重にな」
キャビンにいる古橋が無線でコックピットにいるパイロットに指令を下す。
〔パイロット〕
―了解、速度75まで落とします―
古橋の指示を受けて、機体の速度を低下させていくパイロット。
ところで突然だが、『失速速度』という言葉を聞いたことがあるだろうか?
それはその航空機が揚力を確保しうる低速度の限界値であり、その速度を下回れば即ち文字通り失速を起こし墜落する値ということである。
固定翼機の場合は機体によってその速度はさまざまであるが、大抵の機体でほぼ間違いなくそのような低速飛行の限界が存在する。
なおP-3Cの場合、本来のスペックでは機体の失速速度は133ノット(246km/h)(フラップアップ時)ないし112ノット(207km/h)(フラップダウン時)程度となっている。時速75ノットの飛行はそれを遥かに下回るので、そのような速度を目指したら機体を浮揚させている揚力は失効し、機体の墜落は避けられないはずなのである。
避けられない筈なのである(大事なことなので2回書くよ☆)。
それを遥かに下回る低速飛行、そんなものが果たして可能なのであろうか?
……
ええ~本当に可能でござるかぁ?(しつこい煽り。ぶっちゃけ楽しい)
だがそんな事情など知らぬといった様子のP-3Cは、左旋回を行いながら現在ロイター飛行中につき2発だけが稼働中のプロペラの回転数を落として速度を低下させる。
P-3Cの改良点その1、『エンジンの変更』がその効果を発揮する。
従来以上の低回転に対応させた改良型エンジンは、既存の運用を遥かに下回る低回転に至っても停止を起こすことなく、その正常な回転動作を続けていた。
更に遠征任務機化した際に既存の翼から交換された、新規設計のBLC(境界層制御)装置付き主翼がフラップ部より強制的に空気を排出し、空気の剥がれを防ぐことによって失速状態に陥ることを回避する。
P-3Cの第2の改良点、『翼の変更』は無事その役割を果たした。
そうして速度が最小抗力速度を下回るところまで下がると、それまで正の値を保っていた縦方向の静安定及び横の安定(上反角効果)が中立または負の値に反転し、航空機の飛行特性が逆になる。この領域を主にバックサイド(不安定領域)などと呼称するが、この領域での機体の運動はパイロットの操舵意図とは反対方向に動く。
即ちフロントサイド(安定領域)での操舵において上昇する場合はパイロットが操縦桿を引いて、機首を上向きにすることで揚力が増して上昇がなされるが、バックサイドにおいては機首を上に上げた際に機体にかかる抵抗の値が急増して速度の低下を引き起こし、そのことによって揚力不足を起こした機体は下降していくといったことが発生する。
このパイロットの操舵に対する機体の反応から実際の機体に起こる挙動への応答は非常に急激であり、操舵による操縦は困難を極める。そのためバックサイドにおける機体の姿勢制御は操舵ではなくエンジン推力(スロットル)の操作によって行わなければならない。
しかし機体の僅かな動作が大きな状態の崩れを引き起こすバックサイドにおいては、手動によるエンジンの微調整による飛行の安定もまた困難を極める。
そのため、低空低速飛行を目的として施されたP-3C第3の改良箇所である『フライバイライト化されたエンジン制御システム』が、エンジンの挙動を逐一管理・修正していくことによって機体の安定が試みられる。それによってようやくP-3Cは、本来の性能では在り得ない時速150キロ以下の飛行を実現した。
……改良型のP-3Cは、机上計算上で最大65ノット(時速120.38)までの低速飛行に対応している。これは対海賊船対策であり、ヘリコプターには及ばないものの滞空能力を向上させることで哨戒能力を引き上げる意図がある。
言っておくが本来のP-3Cではこんなの無理である。都合よく☨魔☨改造されててよかったね☆(ニッコリ)
なおP-3Cに随伴する八咫烏は、機首を迎角75度ほどに上げたのちに、主翼と尾翼、機体後部に備え付けられたベクタードスラスター(推力偏向ノズル)の動作をそれぞれ機敏に制御することで、時速150km以下の飛行を行っていた。
翼の揚力などほぼ発生し得ないような状況でも墜落することなく飛行を続けているのは、それだけ優秀なエンジンと飛行制御システムを備えているということの証であり、これを成し得た米国の軍事技術の先進性と、それに引けを取らない日本の技術力の高さを暗に物語っていた。
さて、そうして翼龍の追跡にあえて追いつかせるつもりになったP-3Cと八咫烏は、相手が食いついてくれることを祈って接近した。
機体に付いた照明類を起動しながら接近すると、相手はそれでようやくこちらの存在に気付いたようであった。
それからは、相手は八咫烏とP-3Cに食らいつかんばかりの勢いで必死に食いつこうとしてきた。そんな必死な翼龍たちが、敢えて追いつかせようと合わせたP-3Cにようやく追いついたのは、数分後のことであった。
数分に渡る追跡劇の果てに、ようやく一人の騎士がP-3Cのコックピットに近づき、カンテラの光を向けてコックピットの中を覗いた。そして、コックピットのパイロットもまたその騎士の姿を見た。
月光に照らされるその騎士は、精悍な顔付をした、初老の男性であった。
日本人の彼らが始めて見る異世界人の顔は、日本人とは違うものの、ヨーロッパの白人種に近い、極めて地球人に近しい容貌であった―
〔コパイロット〕
「機長!相手と目が合いました。外人です!」
そもそも相手が外国人なのは当たり前だったのだが、コパイロットは相手の容貌が日本人と違って白色人種に似ていたことから、思わずそう言葉を漏らした。
それを横で聞いて可笑しく思ったパイロットは、少し苦笑しながら興奮したコパイロットを宥めるように言葉を選ぶ。
〔パイロット〕
「うむ。暗くてあまりよくは見えないが、ヨーロッパの白色人種に見える容貌かな?
だがしかし……」
パイロットは一拍ほど置いて言葉を紡ぐ。
〔パイロット〕
「相手が勇敢、いや無謀だったおかげで無事第一種接近遭遇成功、だな」
〔コパイロット〕
「は?」
古橋班のP-3Cパイロットがふと呟く。それを聞いたコパイロットは意図が分らず呆然とした。
〔パイロット〕
「UFOや宇宙人との接触で、至近距離でその姿を目撃することをそう呼ぶらしい。UFOが周囲の環境に影響を与えることが第二種接近遭遇だ」
〔コパイロット〕
「はあ……」
〔パイロット〕
「我々にとって彼らが異星人である様に、彼らにとっては我々のほうが異星人というわけだ。最も、我々が操縦しているのは葉巻でも円盤でもないが。それが実に可笑しいことだと思う」
そう言ったパイロットの表情は、僅かながら緩んでいた。
それを見たコパイロットは、そういうことなら共感できると思い、同じように笑った。
〔パイロット〕
「少し速度を上げようか。今彼らと交渉するかどうかを、お客人に委ねなければならないからな。その時間を稼ごう」
P-3Cは旋回しながら速度を上げ、北東に向かって飛んで翼龍たちを引き離した。
* * *
【ロイメルSIDE】
謎の2つの飛行物体を追跡するクックたちは、遂にその物体を発見した。
ロイメル王国での常識から、それらを『龍』として認識したクック達であったが、灰色の龍とその母龍と彼らが認識している物体2つは、彼等の常識に合致しない姿形をしていた。
灰色の龍は尻尾がまるで海洋生物の尾びれのようであったし、母龍のほうは翼に剣のようなものが高速回転する器官が左右にそれぞれ2つずつ、計4つ付いている。
何より、大きさが翼龍とは比べ物にならないほど大きかった。
それらの飛行物体は、同じ場所を、翼龍と同じ程度の速度でぐるぐると旋回し続けている。まるで何かを観察することを目的にしているかのように、だ。
それこそ自分達翼龍騎士を観察しているのではないかと、クックは感じ取った。
〔クック〕
「灰色の方はともかく、あの母龍はなんという大きさだ、昔北方の海から来た炎龍を見たことがあるが、あれよりも更に大きい。
何故だか動きが緩慢だが、それでもあれの戦闘力がこちらを上回っていたなら……」
クックは、自身の遭遇したものがどのような能力を持っているのかに冷や汗を流さざるを得なかった。
クックはかつて北方の海、現在テスタニア帝国の支配下にあるゾハン公国のある方角から、ロイメル王国に飛来してきた炎龍を向かえ撃ったことがあった。
炎龍とは、翼龍をも超えた高い戦闘能力を備えた生物であり、その性質は好戦的にして神経質、粗暴、執着的にして狡猾と、凡そ性悪的と言わざるを得ない『生きた災害』とされる存在である。
炎龍の能力だが、翼龍の大型個体である母龍と匹敵、若しくは上回る体格を持つ上で、速度、強度、攻撃能力は母龍を遥かに凌駕する。例えば、昔フラルカム王国が炎龍に襲撃されたときの話であるが、その時の相手の体長は全長約26m、弩の直撃を弾くほどの表皮を備えた上で、その速度は翼龍の3倍以上、ブレスの到達範囲は母龍の全長の10倍ほどの長さであったといわれている。
高い戦闘能力を持つ炎龍は一時的に追い払うだけでも、翼龍騎士団が少なくとも3個団ほどは必要であり、打ち取るならば少なくとも10個団以上は必要であるとされている。それはテスタニアのような軍事大国ならともかく、ロイメル王国のような軍事的には弱小国といって差し支えない国では成し得ないような難題であった。
結局、ロイメル王国は炎龍の迎撃に4個団を投入し、1個団が全滅するほどの犠牲を払ってどうにか炎龍を『禁断の地』の方向まで誘導したことでその時は難を逃れたが、もしまた炎龍が襲来することがあれば、今度はどれだけの犠牲を払わなければならないのかということで頭が痛くなる。
そんな炎龍と匹敵するだけの戦闘力を、もしこの相手が保持しているならば……
汗で鎧の下が蒸れる中で、思考がよくない方向に向かっていることを、彼は自覚していなかった。
―ああくそう、強壮剤が欲しくなってきた、今強壮剤があれば心を落ち着けることができるのに―
能力の底知れない相手を前に、そんな考えさえ頭をよぎり始めながらも、誇り高き騎士の使命を胸に、クックは相手に追いすがった。
そして彼がようやくその『母龍』の顔を覗いた時―その母龍の透明な瞳の奥に、2人の人間が座していることを確認したクックは、その事実にとても驚嘆した。
「人だ!!人が乗っている!」
それは、彼の知るあらゆる知識の中にない『現実』であった。
自らの頭の中の知識を、金槌で思い切り叩かれて揺さぶられたような衝撃を受けた彼は、だがしかし騎士の本能として未知の物への理解よりもまず、相手の行動への対処が思考の優先順位度としては上であった。
「(人が乗っているということは、即ちなんらかの人為的な目的のために来たということ!どこの者かは知らないが、人であるのなら尋常に縄に付くがいい!)」
その母龍は突如北東に向かって左旋回してクック達に背中を見せると、独特な羽蟲の羽音ような音を立てながらあっという間に引き離していった。
それに付き従う灰色の龍も、同じように行動する。
〔クック〕
「やはりワザと遅く飛んでいたのか!!」
その様子を見た他の騎士団は、凡そ翼龍とは比べ物にならないほどの俊足を持ってあっというまに距離を反していく『それら』を逃がすまいとする。
〔騎士団の隊員たち〕
「お、追え追え!恐らく敵だ!仕留めろ!」
受けた動揺からつい闘争心が逸る隊員たちを見たクックは、このまま追跡を続けるべきだろうかと思った。しかし……
「(いや、今この場の戦力であれらを追っても、返り討ちにあるのが関の山であろう。
一旦戻って戦力を整えることの方が重要か)」
かつて炎龍と戦ったことのあるクックは、迂闊な行動が人の犠牲に繋がることを理解していたため、あえて冷静な判断を自身に下した。
クックは声を上げて、部下たちを制止する。
〔クック〕
「やめい!このまま引き上げるぞ!……伝令兵、『禁断の地』に残っている者達に魔伝だ!良いな!」
クックの指示を受けた伝令兵が、自身も今起こったことに動揺しながらも騎士としての矜恃として上官の指示に従うことを優先する。
〔伝令兵〕
「ハッ!」
伝令兵の力強い返事を聞きながら、クックは未知の飛行物体が消えていった北東の方向へと目を向けて、言葉を呟いた。
〔クック〕
「奴らは一体……」
その問いに答えられるものは、まだその場にいなかった。
~数10分後~
拠点であるキャンプ・ガイチに向かって帰還行動に入っていたクックは、アンドゥイルたちと合流して『謎の龍』の情報を共有していた。
〔クック〕
「……というわけだ」
先ほどクックが体験したことを聞かされたアンドゥイルは、だがしかしあまり要領を得ない様子であった。
〔アンドゥイル〕
「瞳の奥に人間が座す龍か。うーむ、そんなものは聞いたことが無いが、とにかく巨大である以上は相応の戦闘力を有しているということであろうし、どうにか戦力をかき集めなければならないな」
〔クック〕
「今『禁断の地』にいる部隊だけでなく、増援を要請するべきだろう。でなければ、またいつ炎龍襲撃に匹敵する事態に陥るのか分かったものではない」
〔アンドゥイル〕
「といっても、あまり本国から戦力を動かしすぎるのも難しいだろうし……
ん?……クック殿」
〔クック〕
「ああ、どうやら運命は我々を安全な場所へは導いてくれないようだ」
アンドゥイルとクックは、翼龍のほんの僅かな行動の機敏―呼吸のリズムのコンマ単位での変化―から、状況の変化を読み取った。
そして翼龍が威嚇の唸り声を立てるよりも迅速く、部隊に警戒令を発する。
〔クック、アンドゥイル〕
「「総員、警戒態勢!何者かがここに飛来するぞ!」」
2人の隊長のほぼ同時の指示に、訓練によって記憶された肉体の動きが追従して、即座に翼龍の飛翔速度を増させた部隊は、向かってくる相手を捕捉するべく各自が視線を動かし始める。
〔隊員A〕
「後方より何らかの飛行物体が接近中!」
その言葉に全員が後方を見ると、2つの飛行物体が翼龍とは比べ物にならない速度で接近しているのが見て取れた。
〔クック〕
「アンドゥイル、例の龍だ!」
〔アンドゥイル〕
「あれがそうか!」
2人の隊長の警戒をよそに、その龍らは編隊を右横から追い越していった。
〔クック〕
「むっあれは!」
編隊を圧倒的な速度で追い越した母龍の背中に、『それ』が現れたのをクックは見た。
〔クック〕
「青白い……騎士!」
* * *
【日本SIDE】
P-3Cのキャビンでは古橋と曽我が異世界人とどう関わるかについて話し合っていた。
〔古橋〕
「曽我さん、彼らの姿形は地球人に非常に近いようです。ですが精神面で地球人と近しいかはわかりません。もしあなたがこの場での交渉を行わないつもりなら、我々はすぐに日本へ引き返します」
P-3Cに乗り込んだ時点で、曽我が異世界人と交渉を行うことになるのは決定している筈である。だがしかし、古橋はあえて客人の今の精神状態を優先した。
曽我が答える。
〔曽我〕
「その気遣いは、この機に乗った時点で不要のものです。私は覚悟を持ってやってきました。何もせずに帰ることはしません。今すぐ彼らと交渉を開始しましょう」
曽我は穏やかながらもしっかりとした芯の力強さを感じさせる言葉で答えた。
古橋はコックピットに連絡する。
〔古橋〕
「今すぐ彼らのもとに引き返せ。我々は今から彼らとの交渉に入る」
北東を向いていたP-3Cの機首は、再度南西の方向へと振り向き直った。
~数分後~
〔パイロット〕
「目標の群れを発見。これより追い越します」
高度2000m程度の場所にいる翼龍の群れを目視にて確認したパイロットは、その群れの右側から追い越しを図る。
精々時速200kmにも満たない程度の速度しか出せていない目標を、P-3Cはあっという間に追い越して、前方に出ることに成功した。
〔パイロット〕
「目標の追い越し成功」
〔古橋〕
「よし、作戦の第2段階に入る。竜馬!」
〔竜馬〕
「はっ!竜馬海士長、これより『機外活動を開始します』!」
古橋班のFCTである竜馬は、低高度につき与圧が外れたキャビンの扉を開放すると、そのまま機外に出た。
竜馬の装着した青白い色の特殊戦闘服には手足各部に特殊な機械式吸盤が備わっており、内臓したコンピューターが装着者の僅かな動作などを判別して吸着力のオン・オフを切り替えることで、航空機の機体表面を這うことができる。
それによって搭乗機体が飛行中でも機外戦闘活動を行うことが可能なのであるが、時速200kmを下回っているとはいえ上空2000メートルを飛ぶ機体に吹き付ける風は非常に強く、気を抜くと低温症と風圧で意識と肉体が同時に機体から剥がれ落ちてしまいそうであった。
そんな環境を竜馬は心底面倒くさい、と思いながらも、ヘルメットに取り付けられた電灯の光を頼りに機外を這って機体の上部に移動し、そして立ち上がると時機を取り囲む羽根つきの恐竜たちを見渡して、現実感のない状況にふと笑みを漏らした。
〔竜馬〕
「へへっ笑えらぁ……」
竜馬は来るなら来やがれ蜥蜴共、と相手の出方に警戒心と恐怖、それと起こるかもしれない戦闘に対する期待を抱きながら、腰にぶら下げた懐中電灯を抜き、右手に構えて振り始めた。
それを見た翼龍騎士たちは警戒の構えを見せるが、それを見て相手も自分と同じように未知の相手に対し臆する部分があるのだと共感する部分を見出した竜馬は、挨拶変わりだと掲げた右手を横に振り、なるべく友好的と相手に思わせられるように自身を制御した。
~今から数分前~
〔古橋〕
「相手と円滑にコミュニケーションを取るために、誰かが姿を見せたほうがいいだろう。というわけで竜馬、FCTのお前は目標を発見後、機外に出てコミュニケーションを図ってみてくれ」
〔竜馬〕
「やり方がまともじゃありませんね、隊長。ですがそういうのやりがいがありますよ。異世界人と初めてコミュニケーションを取った男として、歴史に名を連ねて見せましょう!」
こうして竜馬は、飛行中のP-3Cの機外に出て作業することとなったのであった。
……現在に戻る。
機外に出てジェスチャーによるコミュニケーションを試みていた竜馬は、依然として懐中電灯を手にどうにか相手と意思疎通が取れないか試行していた。
〔竜馬〕
「そうら、異世界人の皆さん、地球人の参上ですよ。何か反応を見せてくれよ」
そんな竜馬の行動を見た翼龍騎士は、警戒心を解かないままでもほんの少し安心した様子を見せ、お返しとばかりにカンテラを揺らした。
「よし、まずまずだな」
しばらくそうして竜馬が相手の気を引いていると、集団の先頭にいた龍が速度を落としているP-3Cに近づいてきた。
―クックの龍である―
〔竜馬〕
「こちら竜馬、まず1人が近づいてきました」
〔古橋〕
「相手に呼びかけるぞ、機外スピーカー起動。通信兵、呼びかけを」
〔通信兵〕
「“異世界の者に告ぐ。我々は海の向こうにある『日本』という国の者だ。我々は突然この世界に迷い込んでしまった。ここは何処か?貴方方は何者か?聞きたいことがあるので交渉の席を設けたい―”」
異世界人との交渉のために翼龍の群れの前方を飛ぶP-3Cは、その搭載機器の性能を駆使して情報収集を開始した。
〔隊員B センサー員〕
「近づいてきた人物が何か言っているようです。音声出します」
―センサー員が収音マイクにて拾った音声を機内のスピーカーに出力した丁度その瞬間、
『ここ』とは異なるとある空間において、密かにある『処理』が行われた。
だがこの場にいる誰も、それを認識することすらもままならないのだった―
* * *
【■■■■■■領域】
白い霧に包まれたその空間は、那由他にも上る無数の呻きが反響していた。
その空間の中でいくつかの電光が瞬く。その無数の雷光は、人間の理解しうる全ての色を内包していた。
それを形容するならば、雷光の形をした虹、とでも表現するべきであろうか。
その空間に在るのは白い霧と、那由他の呻きと、虹の如き雷光のみであった。
* * *
〔謎の騎士(クック)〕
「『こちらはロイメル王国第9翼龍騎士団である。貴君は我々の訓練空域に侵入している。
こちらの誘導に従い、制限飛行を行うべし
万が一聞き入れない場合は、攻撃もやむを得ない、繰り返す―』」
〔隊員B〕
「日本語!?彼らは日本語を理解しています!……いや?何かおかしい。なんか妙な違和感が……?」
〔古橋〕
「違和感?なんだ?」
〔隊員B〕
「もう一度音声出します」
そうして再度、『ここ』とは別の所に存在する空間において、雷光が走ったが、そのことを認識した者はいない。
〔謎の騎士(クック)〕
「“OIRUHU ROIMEL CINGDUMU RODAN NUYTODUN DADDO”( こちらはロイメル王国騎士団である)
“UNURAHA OITUTYNO BUGEYCODOWGIOWNY HUYYTE SYTEYRU”
(貴君は我々の訓練空域に侵入している)
“BUNGUYTY KYKANTO CHESTO SUDDO“
(万が一聞き入れない場合は、攻撃もやむを得ない)」
〔隊員B〕
「聞き間違いでしょうか?知識にない言語だと思うのですが、何故だか自然と、日本語として頭が理解しているような……?
なんだか相手の言葉を聞いていると、頭の中に熱っぽいものを感じる感じが……あります」
〔古橋〕
「なるほど、確かにこれは何か妙な、頭痛ではないが妙な違和感を感じるな?どういうのだ?だがとにかく、相手がこちらと意思が通じ合えたことは大事だな。とりあえあず相手の誘導に従ってみようか。竜馬はそろそろ戻ってきていいぞ」
〔竜馬〕
「了解。機内に戻ります」
斯くして、P-3Cと八咫烏はロイメル王国の騎士達に誘導されることとなった。
* * *
【ロイメルSIDE】
凄まじい速度で編隊を追い越した龍らのうち、母龍の方の横腹から青白い甲殻のようなものを身に着けた人間が現れた。
ヤモリのような動きで母龍の背中まで移動したその人間は、光る何かを手に、それを様々に動かしている。
それを見たクックは、問答無用で敵対するつもりはなさそうであると悟り、警戒心を捨てないまでもいくらか安心することができた。
〔クック〕
「こちらと話し合いを望んでいるのだろうか?」
彼が―見た目からして恐らく男だろう―何者であるのかは分からないが、何かを知ることができそうである。
〔クック〕
「接近して接触してみる」
〔アンドゥイル〕
「気を付けろよ」
アンドゥイルの励ましを受けて、謎の龍らに近づくクック。
すると母龍から人間の声が発せられた。
―異世界の者に告ぐ。我々は海の向こうにある『日本』という国の者だ。我々は突然この世界に迷い込んでしまった。ここは何処か?貴方方は何者か?聞きたいことがあるので交渉の席を設けたい―
突如大きいほうの灰色の物体から響いた声に驚きながらも、騎士は答える。
〔クック〕
「こちらはロイメル王国の騎士である。貴殿は我が国の訓練空域に侵入している。こちらの誘導に従わない場合、攻撃も辞さない」
―了解、ロイメル王国の騎士殿よ。こちらはそちらの誘導に従う。指示は音声にて行って欲しい―
〔クック〕
「協力に感謝する。では私の後を飛ぶように」
こうしてクックは、P-3Cを誘導することになった。
* * *
【約6時間後 キャンプ・ガイチ近域】
〔クック〕
「あそこが我々の基地だ。貴殿達にはあちらに着陸していただく」
ロイメル王国の騎士に誘導されているP-3Cは、正面に無数の橙色の光を見た。
その光は平行に伸びる2列の線を描いており、暗がりのためによく確認はできないが2列の光の線の中に滑走路のようなものが垣間見える。
翼龍と呼ばれる飛行生物が使うのか、それとも他の飛行物体の為のものなのか。文明の程度は不明だが、それでも滑走路として使えそうなものがあってよかったとP-3Cのパイロットは思った。
〔パイロット〕
「ちゃんとした滑走路があるとはな。万が一の時はお客人と護衛をフライトジェットパックかパラシュートで降ろして、P-3Cは森への胴体着陸をさせることも覚悟していたからな……事態が穏便に済みそうでよかった」
さて、今回の交渉任務になぜヘリやティルトローター機(CV-22Jなど)、それにC-3(C-2の次なんだから順当に行ったらC-3の筈)山鯨を使わず、態々P-3Cを用いたかというと、哨戒機故の高い情報収集能力があるからだ。
あと古いから万が一喪失してもさほど問題もなかったりする……うん、理由(こじつけ)にちょっと無 理 が あ る わ こ れ
滑走路があるかどうか分からない土地に向かうんだから素直にヘリコプターやティルトローター、ティルトジェットなど垂直離着陸機(VTOL)を送ったほうがいいはずなのだ。
P-3Cに垂直離着陸能力を追加すれば問題は解決だって? Ohナイスアイディア! 馬鹿じゃねえの?(マジレス)
これ以上P-3Cを弄ったら、もうそれ形がP-3Cそっくりなだけの 空 中 巡 洋 艦 ス ー パ ー メ カ デ ス オ ラ イ オ ン になっちまうじゃねーか。イスカンダルまで遥々望むのか?いっそ波動砲とか積んじゃうか?いくらなんでも無理すぎるわ!(ガチギレ)
だが本編第5話の描写で、初接触にはおそらく何故かP-3Cを使ってしまっているだろうので(或いは本当は山鯨だったのかもしれないけど)、 理 由 は 定 か で は な い け れ ど も とにかく無理やりP-3Cを使わざるを得ないのだ まる
……ワイアード先生、何故あんな無理のある描写を?(困惑)
敷いて理由をこじつけるなら、山鯨はウランベースのタービンやらのせいで整備性と運用の問題があるのかもなとか、オスプレイ(陸自機とは別の海自所有機の場合)なら空母艦隊に付いてる分ぐらいしかなくて、日本本土の基地に常駐してないのかもとか、ヘリだと情報取集能力に不安がとか、そんな感じになると思われる。
えーさて兎にも角にも、向かった先に滑走路が無くて燃料切らして墜落という、人知れないながらも超基本的な重大危機の回避に一息つくパイロット。犠牲者はいつもこうだ。文句ばかりは美しいけれど。
彼は念のため、拡声器で外部の騎士にこちらの必要な動きを知らせる。
〔パイロット〕
「我々が着陸するためにはそちらの舗装道をかなり長く滑走しなければならない。よろしいか?また舗装道の状況を見極めるために、一度低空を通過させて頂きたい」
〔クック〕
「構わない。そちらの常識と勝手が違うのか、同じなのかはわからないが、滑走路を使ってくれ」
滑走路利用の許可に安堵したパイロットはP-3Cの着陸脚を下ろし、その着陸脚に備わった指向性ライトを起動する。
夜間低空飛行において地上走査レーダーと同等、場合によってはそれを上回る重要な機能となる機体の前方下面を照らすライトを頼りにP-3Cは光の線に徐々に近づき、やがて森の中に切り開かれた滑走路の様子を鮮明にする。
コンクリートやアスファルトではなく、何かの木材を敷き詰めていることを確認した。機体の離陸滑走の妨げとなるような凹凸は確認できなかった。
滑走路の状況を確認した後、侵入のためにP-3Cは上昇旋回する。
〔パイロット〕
「未知の地での着陸だ。この機体の強化タイヤと着陸装置は不整地でも着陸できるが、それでも万が一ということがあり得る。お客人を怪我させないように慎重にいくぞ。アプローチ開始」
〔コパイロット〕
「了解」
パイロットとコパイロットは気を引き締めて、突然の横風や上昇気流などに備えつつ機体の速度と高度を下げていく。
そしてまだ暗がりの滑走路がライトで照らされる距離まで近づき、そして着地の衝撃がコックピットの座席越しにパイロットとコパイロットの臀部を突き上げたことで、無事着陸に成功したことを彼らは悟った。
〔パイロット〕
「ふう。結構燃料を食ってしまったな。これは日本まで帰るのは無理そうだ」
今回、無理のある低空低速飛行を何時間も行ってしまったせいで、燃料を大量に消費してしまっていた。残りの燃料ではとてもではないが日本までは戻れないと悟りながらも、これから始まる異世界人との交渉が上手くいくことに望みをかけた。
パイロットの意思を汲み取った現場責任者の古橋一佐が日本に長距離テレビ通信を行う。
〔古橋〕
「こちら第一航空隊の古橋。我々は現地勢力の基地に到着した。現在地の座標を送る」
発信された電波の中には、画像・音声データだけではなく機体の存在を他の機に知らせるデータも含まれており、それを受信した至近のP-3C-数100kmほど後方で、ずっと古橋班の動きを追跡していた―がそれを更に鹿屋航空基地へと送信した。
〔鹿屋基地 通信兵〕
「古橋班より入電。班は現在現地勢力の施設へと到着。機関燃料が無くなったもののその他に問題は無いそうです」
〔桐山〕
「うむ、よくやったな古橋。通信兵、古橋班はそのまま現地活動を続行せよと伝えてくれ」
〔通信兵〕
「は!」
昨日から徹夜で事態の動向を見守っていた桐山は、肩の荷を下ろしてふぅっと安堵の息を吐いた。
〔桐山〕
「とりあえず一難去ったな。だがしかし、本当に大変なのはむしろここからかもしれんな。私はここから動けないし、あとは現場の人間に任せるしかない。
さて、上手くいってくれるといいが」
疲労を混じらせた声色で言葉を呟いた桐山は、仮眠で睡魔を取り除くために休憩室へと向かった。
* * *
【キャンプ・ガイチSIDE】
夜明けの近づく森の中に作られた基地の中で、幾人もの兵隊が慌ただしく動き回っている。
その原因は、今しがた翼龍用滑走路に降り立った2つの飛行物体……灰色の翼龍と、巨大な母龍のためであった。
魔道具の照明に照らされる基地の中、高く築き上げられた見張り台から外の様子を窺う男が、この場を物理的に俯瞰していた。
〔????〕
「あれが謎の客人ですか。実に奇妙なものですが、さて、これから何が起こるのでしょうか」
今の状況を図りかねて困っている様子の男は、だがしかし、少し今の状況が興味深いとも思っていた。
そんな男の所へ、兵隊が会談を駆け上がってやってきた。
〔兵隊A〕
「フォンク司令。東司令部からの入伝です。『対象と接触を図れ』と」
兵隊の持ってきた伝令に、見張り塔に佇む男……キャンプ・ガイチ基地司令のフォンク・ロソン副将軍は、やれやれといった様子を見せながらも対応することとした。
〔フォンク〕
「では、対象を出迎えるとしましょうか」
……
異世界の地で、遂に異世界人と接触した日本人たち。
自らの世界で、異世界人と接触してしまった異世界人たち。
果たして未知の土地で彼らを待ち受けるものとは?
次回につづく☆
* * *
【次回】
遂に異世界人との接触を果たした日本国。未知なる異世界での出会いは両者に何を齎すのか。
問われる存在意義。
「貴方がたは何者か、どこから来たのか」
―
そして日本人は地球世界との決定的な違いを思い知る。
「魔法?」
「なに?魔法を知らないだと?」
―
そして始まるサクセスフル☆ストーリー。
「ゲーハッハ!貴様もケーキの材料にしてくれる!大人しくジャムになりやがれ」トントンシャカシャカブチブチグシャアッコトコトドジャアーン
「な、なんという気迫……これが異世界の魔王か!?」
果たして未知の世界で日本を待ち受ける未来とは!?
次回 第6話『月詠月夜(ファーストコンタクト) ~憧憬は真実から遠い羽化登仙《ライアニズム》~ ③』 お楽しみに!
(因みに実際の内容は制作状況により、多少変更される場合がございます。あらかじめご了承ください)
以上、第5話でした。
長時間飛行なんてそれ自体が過酷なのに、レーダーも暗視装置もなしで夜間に集団で飛ぶとか、もうシ〇ブ決めるしかないじゃないの……というわけで本編でちらっと出た『特殊な餌』はシ〇ブになりました☆ 原作の内容とは別に矛盾ないから外伝としてはセーフですよね(別の意味でアウトだが)。
※後で翼龍騎士団の描写ちょこっと増やしてみました。うーんこれはひどいw
この世界の月に関しては、原作であまり描写がないのでかなりオリジナル設定を盛り込みました。異世界なんだから多少わけわからん感じ(ルナティック)でもいいよね。
P-3Cですが、実機からかなり変更されています。エンジン翼別物でフライバイライトまで載せる……ってかなり無茶苦茶ですが、原作の描写やろうと思ったらあれぐらいむしろ改造が足りないくらいでしょう。山鯨とかあるし原作の日本なら垂直離着陸能力付けようと思えば付けられそう。P-3Cってなんだっけ?(哲学)
えーさて、ようやくタイトル通り異世界人と日本人が月夜に接触したわけですけど、次の回からは月夜関係なく話が進みます(タイトルの意味よ)。まあ話の中盤辺りでタイトル伏線回収ノルマ果たしたから問題ないはず。
次回予告?参考にならないよ(あれ?)。
※2020年11月27日の21時頃に、本文の一部内容を改訂いたしました。
※2020年12月8日、翼龍騎士団の描写を加筆・修正いたしました。
今回出たやつの設定です↓
・P-3C TECP ストライクオライオン/第二次空中巡洋艦計画
1986年(昭和61年)頃、P-3Cを母体に、E-2Cと同じAN/APS-138レーダーを搭載して早期警戒能力を付与し、さらにAN/AWG-9レーダー・火器管制装置とAIM-54 フェニックス12発を装備した機材で船団の防空を行うという「空中巡洋艦」とも称される大型戦闘機構想が検討されていたが、防空範囲は在空空域周辺に限られ、作戦柔軟性や迅速性に乏しく、護衛艦隊の都合に合わせて一体運用できないといった理由から早々に検討対象から除外された。
しかしその後、海外への海賊対処任務派遣などの導入時とは異なる運用環境に置かれたことを考慮して、P―3Cマルチロール化計画、通称第二次空中巡洋艦計画(ストライクオライオン)が立ち上がり、最終にP-3C遠征海賊対処仕様Type-Expedit Counter Piracy(TECP)化計画として2024年に導入が決定された。
後継のP-1ではなくP-3Cが改良され使われ続けている理由としては、海外派遣任務(中東海域の海賊対策など)に際し、その国の航空整備環境ではより大型のP―1を格納庫などに収納できない場面がある問題があったためである。
実際の機体の改造は2026年度に開始し、翌27年に改造機一号機がロールアウトした。
以下は主な改造内容
■レーダー近代化プログラム(Radar Modernization Program:RMP)
従来より検知能力に優れた捜索レーダーを搭載した。これにより従来よりも哨戒能力が向上している。
■各種兵装への対応。
海賊船艇対策において有効な空対地、空対艦装備の対応枠を増やし、あらゆる兵装の搭載を可能とすること。
また航空ドローン対策のための従来型(AAM-1~5)及び将来型空対空ミサイル(AAM-6 JNAAM 、AAM-7、AAM-8)への対応。
搭載するミサイルの改変に際し、翼を新規設計品に換装している。これは滞空時間を延長化するのと同時に、低空低速飛行能力も高められており、海賊対策などの海外派遣時の運用にも貢献している。
なおこの翼の設計には以前開発された飛行艇US-2での経験が反映されており、BLC(境界層制御)装置付き主翼がフラップ部より強制的に空気を排出し、空気の剥がれを防ぐことによって失速状態に陥ることを回避する。
■各種データリンク能力の強化。
従来のデータリンクシステムへの対応は勿論、2030年代には無人機のオペレートシステム搭載に対応し、管制能力の強化も行われている。
■エンジンの変更
従来以上の低回転に対応させた改良型エンジンは、既存の運用を遥かに下回る低回転に至っても停止を起こすことなく、その正常な回転動作を続けてられる。
■フライバイライト化されたエンジン制御システム
エンジンもそうだが、操舵もフライバイライト導入で運動性能が上がっている。
最終的にTECP 化を受けたP-3Cは、机上計算上で最大65ノット(時速120.38)までの低速飛行に対応している。
ヘリコプターには及ばないものの滞空能力を向上させることで、より高度な哨戒作戦を行うことが可能となった。
P-1使えよ。
・八咫烏
推力偏向ノズル(ベクタードスラスター)が付いてて運動性能抜群。コブラ機動できるよ!サイコガンは付いて無いけどな!(コブラ違い)
・月(異世界)
地球のそれとは少しばかり形態が異なる。
月『本体』は地球のそれと似て黄色ないし白、灰色がかった球体であり、また大きさも体感的には違いがない。
しかしその周辺には木星や土星、天王星・海王星の周囲を取り巻くそれとよく似ていながらも、それらと違い虹に似た多色のスペクトルの輝きを放つ『環』が掛かっており、それは岩石や氷塊、またはガスなどが漂って形成されていると推測されている。
この環は惑星に対して面側を向けており、太陽光を反射する『第二の月面』としての性質を備えているため、異世界の夜は地球よりも幾分か明るい。またこの反射光には『月の魔力』と呼ばれるエネルギーが含まれているとされ、そのエネルギーは惑星上の生物の生態に深く影響を及ぼしているようである。
太陽系における惑星の環が地球よりも遥かに巨大な質量を持つガス惑星の強力な重力がその形成に関わっているのに対し、衛星規模の天体がこのような環を形成し得ている理由については、天文学者、物理学者たちの頭を非常に悩ませている。
仮設によると『暗黒物質(ダークマター)』がこの現象に関わっているのではないか?という予測が立てられており、現在調査を施行中である。
・【■■■■■■領域】
謎の空間。
白い霧に包まれたその空間は、那由他にも上る無数の呻きが反響している。
その空間の中でいくつかの電光が瞬いている。雷光の形をした虹とでも形容すべき無数の雷光は、人間の理解しうる全ての色を内包している。
この空間がどのような意図で登場したのか、それについては今後の物語にて明かされる予定。
・撮影機
撮影機とは地球のカメラにあたる道具で、ロイメル王国のものは精々原始的なカメラ程度の性能である。
内部にプリズムとしての機能を持つ魔鉱石と火の魔鉱石や光の石が内臓されており、火や光の魔鉱石の光で照らした物体から反射してレンズから入り込んだ光を、プリズムで増幅し写真となる鏡板や金属板に焼き付けることができる。
画像はセピア色で、また精度も粗いが、それでも短い時間―数秒から数10秒程度―レンズを向けておくだけで風景を記録できるため、軍では地形の記録であったり、個人情報の管理や、戦果確認などのために写真が用いられており、特に偵察能力の求められる翼龍騎士にはとりわけ重宝されている。
・強壮剤/特殊な餌
水晶状の結晶構造を持つ『女王冷晶(クイーン・コールド・クリスタル)』と呼ばれる魔鉱石を粉砕して粉末状にした『フィロポヌス(労働愛)』と呼ばれる薬剤で、通称『特殊な餌』。パン生地などに混ぜ込んでから丸め固めて団子状にしたり、粉をそのまま水に溶いたりしたものを飲食することで効能を発揮する。
ロイメル王国においてはその魔力と集中力を長時間維持する性質から軍部、特に翼龍騎士団において利用されることがある。
効果時間後に精神の変調や肉体の不調などを引き起こす副作用や、依存性などがあるためその使用には慎重を要し、また使用後には精神の診断や『毒抜き』などを行うこととなっているのだが、それでも毎年『幾何か』の兵士や龍がこの強壮剤の影響で廃人・廃龍と化しており、その対策については現在対応法を模索中である。
ぶっちゃけ異世界版ヒ〇ポンである。
翼龍騎士やめますか?
人間やめますか? ←はい
・FCT用特殊戦闘服
FCT用の特殊な戦闘服。
特徴としては、拳銃弾や爆発物の破片を防ぐ装甲やパワーアシストに加えて、簡易の酸素供給マスクが備わっていることと、簡易の与圧機能、温熱機能があること、手足各部に特殊な機械式吸盤が備わっている点があり、これを内臓したコンピューターが装着者の僅かな動作などを判別して吸着力のオン・オフを切り替えることで、装着者が航空機の機体表面を這うことができる。
これによってFCTは航空機の機外において戦闘行動を取ることが可能となる。
FCTによる機外戦闘の意義についてだが、ドローンや飛行機能を備えた航空型WALKERなどが飛行中の航空機に取りつくのを防ぐという点で有効性を認められており、今日(2045年)のFCTの訓練・任務内容には機内戦闘だけではなく機外活動も織り込むことが常識である。
とはいえ、実際にFCTが機外活動を有効に行うことができるのは航空機の与圧装置を解除し、ドアを開放することができる高度約2,970フィート(約3000m)以下の低空域であり、それ以上の高度に達した場合、航空機の与圧装置が働きドアもロックされるためにFCTは機体の外に出ることも、逆に機内に入ることも困難になり、また備わった酸素マスクや与圧・温熱機能は、航空機がその速度や高度を激しく変化させた場合には対応が追い付かず、短時間しか有効に機能し得ないという点で、現高度2,970フィート以上における機外活動、特に戦闘行為の有効性は低いと言わざるを得ない。
更に軍用WALKERの登場もFCTの存在意義を低下させており、将来的には非常に限られた状況範囲内においてのみ、その存在が見られるようになると思われる。
というか人間の兵隊全般イラネ。全部AIに置き換えられるわw(いいのか?)
戦争の全てがAIに置き換えられたとき、人間が、戦士が取るべき道とは―
ま、なるようになるでしょう☆ぶっちゃけそこまで書く気はない(なお原作は)
ワイアード先生の書くオチに期待してまァァァァス!!!!!(届けプレッシャァァァッ!!!!!)