日出づる国、異世界に転移す 非公式外伝『GW』 作:島スライスメロン
その後の本編の描写と矛盾などがある場合がございます。
ご了承の上お読みください。
この作品は基本ギャグ時空となっております。キャラ描写につきましては、原作作品と異なる場合がございます。くれぐれもご注意ください。
本作には独自設定が登場する場合がございますが、公式ではない点をご留意ください。
・前回のあらすじ
禁断の地にて異世界人と接触した鹿屋航空基地第1航空群第1航空隊の面々は、地球とこの世界との違いについてより多く知る機会を得、また異世界人たちもまた異なる世界からの来訪者たちによって変革の時を目前としていた。
されども憧憬は真実から遠い羽化登仙《ライアニズム》。異なる世界同士の接触は、湖と海水の交わりの如きもので、それは即ち生存競争を誘発する臨海の天変地異である。
まず言葉ありき。「光あれ」。
万象滅相の信(いのり)の下、赤い悪魔の心臓が脈を打ち、龍の尻尾を擽ったがために、破滅の光がそこに生じた。
混沌とした異世界にて吹き荒ぶ、幾多もの国家による苛烈なる覇権主義という名の脅威を前に、日本が取り得る行動とは?
戦後100年の夜明けは希望の未来か、それとも……
【月詠月夜(ファーストコンタクト) ~憧憬は真実から遠い羽化登仙《ライアニズム》~ ④】
【ロイメルside】
前回ラストより時は少し遡り、まだ日を跨ぐ前の夜の時間。
ロイメル王国の東側、禁断の地と呼ばれる森林地帯の入り口あたりに、3頭の空駆ける翼龍と、それに跨った3人の男たちの姿があった。
玉虫色に輝く金属素地に獣の毛皮などを組み合わせた野性的な意匠の兜や胸甲、手甲を装着した逞しい戦士たちの正体は、ロイメル王国第1翼龍騎士団のラーツ、ドイル、ロイ団員である。
彼らは昨日の夕刻、森林の訓練地帯における戦闘訓練中に、突如謎の飛行物体―自衛隊の航空機―と遭遇し、その際入手した情報を情報部に届ける為に、数刻かけて本国へと帰投したのである。
〔ロイ〕
「やっと人里のあるところに出ましたね」
3人の中で一番若い、訓練兵上がりの新人ロイは、夜通しの飛行に疲れた声を漏らす。
〔ロイ〕
「隊長、ちょっと休憩していきましょうよ~ どこか空いてる店に入って、一息つきたいですよ」
後輩の情けない姿に、ドイルが呆れを表す。
〔ドイル〕
「こらこらロイ。確かに訓練からそのまま長時間任務に入ってしまったのは大変だが、騎士たるものそう簡単に弱音を吐くものではないぞ」
〔ラーツ〕
「しかし、ロイの気持ちも分かるな。人目の着かないところで少し休憩しようか」
ラーツは、第一発見の関係者だからといってこの任務に新人のロイを連れてきたことは判断ミスだったか?と思ったが、今さら引き返すこともできないので、取り合えずロイを気遣いながら任務を続行することにした。
〔ドイル〕
「了解です。さあロイ、目的地まであと少しだぞ」
〔ロイ〕
「あとどれくらいですか?」
時間か距離か、兎に角早く任務を終わらせたいロイは、疑問を口にした。
〔ラーツ〕
「本当にあと少しだから、頑張れロイ」
それは誤魔化しであり、ロイのほうもそれを理解していたが、あえて聞き返すのも面倒なのでそっと流した。
その後、人や家畜の目に付かないように集落から外れた場所を飛行し続けた彼らが目的地に着いたのは、更に数時間後のことであった。
* * *
ロイメル王国の王都ロクサーヌは、周辺を壁で覆った城塞都市である。
なだらかな丘を中心に発展し、外郭を土壁や石壁で防護したその都市は、平時には国内の他集落からやってくる様々な人種とその隊列で賑やかだが、いざ籠城を開始すれば攻略せんと迫る敵を殺伐とした戦意のもとに迎撃するであろうことが、容易に想像できた。
最も、それは計20万を号する某覇権国家の軍団を食い止めるには、些か規模が小さく頼りないものであったが。
さて、そんな城塞都市内部、丘の東下側には、四方数キロに渡って平らに均された土地が存在する。
ロイメル王国王都空軍基地と称されるその場所は、同国最大級の軍事施設のうちの1つであり、航空戦力の主力である翼龍は勿論のこと、補助戦力である大型鳥類や蟲も数多く配備された、正に同国最強の戦力を示す場所なのだ。
そんな場所にラーツ達はいた。
〔ラーツ〕
「ではしばらくの間、彼らの世話を頼む」
〔翼龍飼育員〕
「はい。ラーツ団長たちもお気をつけて」
夜の闇が魔導仕掛けの照明で照らされる中で、夜勤の隊員は夜中の訪問客であるラーツ達を見送る。
禁断の地から飛行し続けて数時間、ようやく首都までたどり着いたラーツ達は、翼龍を預けておくために一旦基地に立ち寄り、それから基地の馬車を借りて外に出た。
翼龍は騎士にとって掛け替えのない相棒であるが、だからといってどこにでも連れていけるわけではない。翼龍に乗って飯屋や風呂屋に立ち寄ろうものなら、あっという間に騒ぎになってその責任を追及されてしまう。
そういうわけで、よほどの急用でもない限りはこうして翼龍を預けておける施設に入れておくのが一般的である。
なお、ロクサーヌ内部において翼龍が離着陸できる場所はもう一か所あり、そちらは半官半民で運営される商業空港で、通常軍所属の航空家畜が敢えて利用することはないが、空軍基地が使えなくなった緊急時にはそちらも使用する。
さて、空軍基地を離れたラーツ達は、馬車に乗って南に数キロ下り、とある施設に入った。その施設は、人の目線よりも高く積まれた石壁で周囲を覆い、その内部を警備兵が徘徊するなど、簡単に入れる場所ではないことがわかるが、ラーツ達は任務の令状を通行証として提示して入ることができた。
その場所は外に表札すらないが、名を空軍情報部本部といった。
ロイメル王国空軍はその規模こそ小さいものの、自前の情報機関を保持しており、国内外で集められた様々な情報がここで解析を受ける。
現在の主な任務は対アムディス王国の諜報・監視・偵察であり、陸軍情報部や海軍の情報部、それに外務局の諜報機関などと足並みを揃えながら、自国の安全保障に関わる情報を整理して王政府に提出している。
情報部本部の施設内に聳え立つ石造りの二階建ての館で、ラーツ達は職員に『写真撮影機』―初歩的な技術を用いたカメラ―を渡すと、とある部屋に案内された。
そこには木製のイーゼルやキャンバス、それに描画道具があり、そこでラーツ達は自身の目撃した物体のスケッチを描く。
光と火の照明魔道具の明暗間隔が不規則な明かりに照らされる部屋の中で、数時間前の記憶を頼りにスケッチを描いていると、職員が中に入ってきた。
〔情報部本部 職員〕
「現像が完了しました」
〔ラーツ〕
「どれどれ……ふむ、こんな感じか」
〔ロイ〕
「うわー、ほぼほぼ輪郭じゃないですか」
職員は、撮影機内部の金属板を現像した写真を取り出すと、ラーツ達に見せた。
その写真は、カメラ自身の性能がさほど高くないこと、夕刻という明かりの不足した時間帯に撮られたこと、また被写体自身の高速性や、撮影機を操作したラーツ自身の体の揺れなどからあまり鮮明ではなかったが、兎に角資料として完成した模様だ。
こうして作られた情報資料は、ラーツ達の証言などと合わせて解析が行われる予定である。
〔情報部本部 職員〕
「それと、キャンプ・ガイチからの連絡がありまして、第8、第9翼龍騎士団がこの正体不明の物体と思しきものと接触したようです。
現在、キャンプ・ガイチまで誘導中とのことです」
〔ラーツ〕
「そうですか。これで正体が判明しますね……っと、これがスケッチです」
ラーツは描いていたスケッチを職員に見せる。
そのスケッチは、細部などが写真よりも精密に描かれており、写真ではぼやけた部分を補正するのに十分使えそうである。
〔情報部本部 職員〕
「では、次は聴収を行いますので部屋まで……」
そうして導かれるままに聴収室に移動したラーツ達は、昨日起こった出来事を話した。
そして数分後。
〔職員〕
「……では、今回の聴収は以上となります。今回の事件に関しましては、事実を確認したのち報告結果が届けられます。
場合によっては再度の聴収もございますので、ご了承下さい。
ご協力ありがとうございました」
〔ラーツ〕
「ふう、疲れたな。二人とも、取り合えず王都基地に戻って休もうか」
〔ロイ〕
「はあー、やっと終わったんですね」
粗方の情報を出し終えたラーツ達は、情報部本部から立ち去ると、長時間勤務の疲れをとるために首都空軍基地へと戻り、宿舎に戻って一度睡眠をとったのち、風呂に入ってから木のような見た目の細長い根菜を乾燥させたらしき、見るからに固そうな保存食で空っ腹を満たし、また再度宿舎のベッドに潜り込んで本格的な二度寝をした。
結局彼らは正午過ぎまで睡眠し、何も入っていないことにストレスを感じた胃袋の、決して無視することのできない脈動を目覚ましの鐘代わりとして、目を覚ますこととなった。
* * *
【日本side とある研究機関】
またも時間を遡り、時刻が日を跨いで少し経った辺りになる深夜。
人里離れた山の中に聳え立つ何らかの研究所の内部において、職員がキーボードやマウスを操作して目の前のモニター画面に表示された生物に関して、様々な解析を行っていた。
〔研究員〕
「うーん、やっぱり画像だけでは不明な点が多いな
やはり実物を確保しないことには……」
彼が解析を行っているのは、昨日海上自衛隊の哨戒機部隊が遭遇した現地生物、翼を有した蜥蜴とも形容すべき容貌を有した翼龍及びそれに騎乗した騎士である。
画像には通常の有視界範囲で撮られたものの他に、赤外線域で撮られたものもあり、またレーダー技術を応用して物体の内部をある程度透過スキャンにかけたものや、磁気探知や超音波を駆使したものもあった。
しかしそれらの画像は主に汎用機材を用いて遠距離から撮られたものであり、可視光と赤外線以外のそれでは正確性に欠けていた。
〔研究員〕
「対象の画像から推測される筋力、体温と、飛行高度、速度、それに周辺温度が我々の推測値と異なる……一体何をどうしたらこんなことが起こるんだ?」
その研究員は、送られてきた動画とコンピューター・シミュレーションによる計算結果とを比べて、その違いを計測していたが、地球の常識では不自然な点がいくつか存在することが発覚した。
まず翼龍の肉体構造から推測される推定筋力では、動画通りの高度で、動画と同じ速度を出すのに不足すると考えられ、また体温及び周囲の温度も計算よりも若干高めになっていた。
〔研究員〕
「この惑星の環境は、やはり地球とは異なるな……っと、おっともうこんな遅い時間か。
うっかり熱が入ってしまって時間をかけたけど、取り合えず続きは明日に回して、今日はもう上がろうか。
新築のぉー、宿舎があー、私の帰りを待っているううぅー、っと」
研究員は少しアップテンポのリズムを組んだ呟きをしながら、部屋を出た。
* * *
【日本SIDE 鹿屋航空基地】
〔海上自衛隊員A〕
「昼飯だあァァァャァァ野郎ども(ファッキンガイズ)ッ!!!」
時刻は進んで、昼間の正午頃。ランチタイムが始まった基地の中には、和気あいあいとした空気が満ちつつあった。
普段厳格な態度で訓練に励む自衛隊員たちにとって、飯の時間は健全な身体と精神を形作るのに大切な娯楽の一つだ。
海上自衛隊における飯の提供は大きく2つに分かれる。一般隊員たちが曹士食堂を利用するのに対し、尉官以上の幹部たちは幹部食堂に集まる。
その幹部食堂の中で、卓を囲む桐山や成川たちの前に置かれているのは、まずは鏡のように程よく磨き上げられて光を反射する白い陶器の皿に盛られた、野菜がたっぷりと入ったキーマカレーである。
水分と熱でぷっくらと膨らんだ艶やかな暖かい白米の上に、玉ねぎ、ナス、ほうれん草がミンチされた豚肉と絡んだキーマカレーがかけられた様は、その芳醇な香りと相まって食欲をそそった。付け合わせに福神漬けとラッキョウ、それに温泉卵がついているのが料理として完璧だ。
だが今回、その完成されたキーマカレーのカレーの横には、これまた白い皿に葉野菜とともに盛り付けられた白身魚のムニエルが、まるで付き添うかのように置かれていた。焼きすぎず、ほどよい火加減で焼かれた身に、茶色のソースが上からかけられているそれは見るからに美味しそうである。
そのムニエルは、先日コック長が釣ってきて味と安全性を確認したラブカとイボガエルを融合させて顕現したような異世界の魚-名前はまだないが、暫定的に“イボラブカ”と呼称することにした―を、高速艇―官給品ではなく、桐山の私物―を用いて沖まで漁に出ることで大量に捕獲・確保し(なぜか桐山は基地周辺海域の漁業権を持っていた)、コック長の手によって加工された料理である。
〔桐山〕
「さあ諸君、いよいよ異世界の食材の試食だ。じっくり味わって感想を聞かせてほしい」
〔コック長〕
「俺の作った料理なんだから美味いに決まってますよ司令!」
ゲーハッハという魔王の如き圧の籠った高笑いを上げながら、コック長はご機嫌そうな笑顔を浮かべていた。
この料理長、己の料理を他人に食わせることに生きがいを見出しており、時折その時の気分で料理を作っては、基地の隊員たちに食べさせている。その手法は強引で、いつの間にか食堂に追加されていたシャッターを起動させてその場を「監獄」状態にして、その場の全員に振舞うのだ。
一応どの料理も平均以上に美味しく作られているのが救いと言えば救いだ。なお基地司令の桐山はこれを黙認している。理由は『隊員たちのレクリエーション』になるからだとか。
さて、そんな強引な2人によって開かれることとなった実食会は、実行者二人によって進行していく。
〔桐山〕
「では全員実食!」
桐山の一声で料理を食べ始める幹部たち。
〔成川〕
「ふうむ、淡泊な味に、烏賊や蛸に似たしっかりとした歯ごたえ……見た目よりは刺激が少ない味ですね」
〔桐山〕
「酒のツマミに良さそうだな」
異世界の魚は、見た目のおどろおどろしさとは違って、意外と食べやすかった。
〔理恵〕
「でも、本当に安全なんですか、これ?なんかすごい見た目の生き物でしたけど」
奈良の大仏のようにガタイの良い大男である理恵阿達(たかえあだち)2等海尉-38歳男性、牡牛座-は、その強そうな見た目とは裏腹の小心を発揮して、桐山に疑問を投げかけた。
そんな部下の心配そうな様子を見た桐山は、アルカイックな表情を浮かべ、こう言った。
〔桐山〕
「ヘッヘッヘッ心配スル事ハ無イ」
桐山の笑顔の裏の得体の知れなさを垣間見た理恵は、恐怖を胸につぶやきを漏らした。
〔理恵〕
「南無……」
理恵は別に仏教徒ではないものの、ふとした瞬間に経を唱えることがあった。
一体何がきっかけなのか、物心ついたころにどこかで耳にした誰かのお経が心に深く刻まれているのか、或いは中学時代の修学旅行で行った奈良の寺院での出来事が本人の思っている以上に心に残っているのか、若しくは天啓、考えられる理由はいくつかあるが、当人にとってそれは割とどうでもよいことであった。
理恵は小心者だが、それはそれとしてどうでもいいことは特に気にすることもない男であった。
因みにその日の牡牛座の運勢は、〇ジテレビの朝のニュース番組の占いによると6位であったが、理恵はその番組を見ていなかった。
昼飯は、特にアクシデントもなく穏便に終わった。
後日、基地の新メニューとして正式に加わった『イボイボラブカ至極のムニエル』は、そのネーミングに是非はあったものの、見事隊員たちの腹を満たすこととなり、開発者であるコック長の機嫌を良くすることになるのだが、その話は本筋とは全く関わりのない話のため割愛させていただく。
結局食材の安全性はどうなのかって?ヘッヘッへッ心配スル事ハ無イ。
いや本当心配することはなかったんですよ、ハイ。
* * *
桐山とコック長による楽しい楽しい人体実験であった昼食の後、桐山は理恵を呼び出して、ある任務に関する辞令を彼に下していた。
〔理恵〕
「武装勢力の調査ですか?」
思わず疑問を口にした理恵に対し、桐山の説明が入る。
〔桐山〕
「うむ。古橋たちが接触した集団はどうやら別の武装勢力、というか国家なんだが、それらはこの世界で現在進行形で聖戦と称する侵略戦争を行っており、しかもそれは範囲が広がっているという。いずれは古橋たちの接触した集団とも衝突の可能性があるらしいし、そうなると日本もまた巻き込まれる可能性が出てくるかもしれない。というわけで、今日はもう午後に別の任務が入ってるから無理だが、明日からは
調査のために現地に飛んでほしい」
〔理恵〕
「了解です。本日の任務から帰投後、新たなフライトプランを作成します」
〔桐山〕
「念を押すが、我々はこの世界の文明レベルを把握していない。現地にどのようなテクノロジーが存在しているのかは、はっきり言って未知数だ。
くれぐれも注意してくれ」
〔理恵〕
「はい、現地では慎重に行動し、隊員に危害の及ばぬように細心の注意を払い、任務を遂行します」
斯くして理恵はアムディス王国の偵察に向かう任務を帯びることとなった。
その任務が一体どのような結果を齎すのか、この時点ではまだ誰にも答えが分からない。
全ては明日以降にかかっている。
* * *
【ロイメルside】
昨日から続いた徹夜明けの勤務の後に、キャンプ・ガイチを総轄する基地司令フォンクの好意によって宿舎の一角を使わせて貰うことになった古橋たちは、そこで睡眠休憩を取って午後5時頃までゆっくりと時間を潰していた(一応念のため、2時間ごとに交代制で見張りを置いてはいた)。
日の暮れまではまだ時間があるものの、夕方に入り始めたといっていい時間帯であり、夜に働く者達が遅くまでかかる仕事に備えて目覚め始めるような頃合いであるといっていい。
古橋たちは、佐笹原の持ち込んだ携行糧食で遅めの昼食と早めの晩餐を兼ねた食事を取って腹ごしらえし、その後6時過ぎにフォンクやセブが待つ作戦室へと向かっった。そして日本が今後この世界と関わっていくために必要とされるであろう国際情勢の知識について、基地司令であるフォンクに話を伺った。
〔フォンク〕
「この世界には、公認されている国家が57ヶ国あるとされております。その内でドム大陸にある国の数は両手の指で数えられる範疇です」
要するに10個もないということである。後からしれっと増えるかもしれないが。
〔フォンク〕
「まずは我々の国であるロイメル王国の話から始めましょう」
そう言ってフォンクは、部屋の壁に貼られた横幅1メートル、縦幅50cm程度の大きさをしたドム大陸の地図の、北から東南に至る範囲を棒の先端で囲うかのように示した。
とどのつまりそこがロイメル王国の国土だということである。
〔フォンク〕
「我が国は200年以上の歴史を有する国であり、ルファー王朝政府の管理する国法によって人と亜人が対等の権利を有します。基本どの領地でも人と亜人が同じ領地内で暮らし、領地間の移動や交流、転居も許されております。
あらゆる種族が職業選択の自由を有し、転職や起業も盛んに行われます。逆に、固定職業への強制はこれを厳しく禁じられ、これを破った場合例え有力貴族であろうとも王政府により厳格に罰を与えられます。当然国民が奴隷を有することは禁止されており、また国外からの奴隷の持ち込みや、他国人が国民を奴隷として有する行為は、これを固く禁じられております。
国教はあえてこれを定めておりません。これは特定団体の優遇を防ぐためです。基本的に信仰の自由が認められておりますが、国内の治安を維持するために、過度の武装や残虐行為を行った団体に関しましては、王政府配下の官憲による査察及び取り締まりが行われ、場合によっては禁教認定を受けます。
禁教に認定された場合、その団体の国内における団体としての発言権や行動の権利はこれを一切禁止されます。
異種族間の婚姻及び養子縁組に関しては、当人間および保護責任者による同意が認められればこれを取り締まられることはありません。しかし当人及び保護責任者の同意を得ずにこれが行われる場合、官憲によって取り締まりを受けます。
このような国は、この大陸では他にはクドゥム藩王国しかありません」
その話をフォンクの横で聞いているセブは、彼の言葉を感慨深そうに聞きながら、こくこくと頷いていた。
異世界人に遭遇したばかりの日本人にとって、こちらの世界の人種問題は余り実感がないものの、それでもここが地球人とほぼ瓜二つの見た目を持つ人種と、それ以外の非地球人的な容貌の人種に分かれているであろうことは、コブラのような横に膨らんだ頚部と、皮膚表面に張り付いた鱗を持つセブを見れば、いやでも理解できたし、フォンクに関しても、日本人基準で若干毛深いというのはともかくとして、喋る時に垣間見える巨大な犬歯-まるで獣のそれであるかのように、人間のものとしては不釣り合い―の存在を考慮すると、ひょっとして彼もまた……ということは、なんとなくであるが察することができた。
そして、そのような見た目の違いが差別を生み出すであろうことも。
その上で、この世界の亜人とか異種族という言葉が一体何を指すものなのかの知識がない古橋たちは、そのことについて触れようとした。そしていの一番に発言した曽我が、フォンクに皆を代表するように疑問についての質問を行った。
〔曽我〕
「あの、そもそも亜人とは何ですか?我々の元居た世界ではそういった生き物自体が実在しませんでしたので、よくわからないのですが」
この世界の常識に疑問を投げかけられたフォンクは、亜人を知らぬと素直に口にした曽我に、興味深そうな声色で解説する。
〔フォンク〕
「なるほど、あなた方のいた世界には亜人が存在しませんか。ふぅむ世界が違うと常識も異なるのですねぇ。
えーさて、亜人とは、分かり易くいうと人間を模倣した模造生物であり、高等霊長類に属します」
フォンクは話を続ける。
〔フォンク〕
「亜人の出自に関してですが、神族や悪魔が、原始の創造神に倣い純粋な人間、つまり人族を作ろうとして生まれた存在だとされています。
特徴としては人族と共通する身体部位を持ち、また人類との意思疎通を可能とする高度な言語能力を保持することが挙げられます。
霊長類の中でもこれに当てはまらない、例えばワオキツネザルは人族と同じように直立歩行などを可能としますが、ろくにコミュニケーションが取れないのであれはただの猿であり、下等霊長類と呼ばれ人や亜人とは厳格に区別されます」
〔日本人一同〕
「(この世界ワオキツネザルいるんだ……)」
しかしどういうチョイスでワオキツネザルなのだろう。一体フォンクとワオキツネザルとの間にどのような関わりがあるのだろうか?
それは本人のみが知るが、語られることは多分ない。
〔フォンク〕
「えーさて、ワオキツネザルの話は取り合えず置いておいて、亜人の多くは、災女族(パンドラズ)のような例外はあるものの創造主の趣向を反映して純人族とは異なる容貌、能力を持っております。
獣人族は獣の形態を。
エルフ族は優れた魔法技術を。
そしてドリアード族は高い霊的感覚をといった具合にです。
なお、現在亜人は大きく分けて7つの種族に分類されます
魔力と魔導技術に生まれながらにして恵まれたエルフ。
豪胆かつ精微なる肉体と精神を併せ持ったドワーフ。
水棲生物の水人。
神龍の落とし子たる龍人。
霊能に優れたドリアード。
そして、悪魔の眷属と恐れられし魔人。
この7種族が主流亜人族と呼ばれ、古代から恐れられております。
最も、魔人は今ではかつての繁栄を失い細々と生きており、またヴァルキア人のように上記のどれにも当てはまらないものの、魔人よりも栄えているとされる種族もあるため、この定義は今では些か古いものとなってきているようですが……」
〔佐笹原〕
「うーむ、この世界には色々な人種があるのですね。
しかし、だとするとこの世界における人の定義とは一体何でしょうか?
一体どのような条件を満たせば、人とみなされるのですか?」
〔フォンク〕
「胸を開くと心臓に『人』って書いてあります」
フォンクがそう言った瞬間、場が静まった。
〔佐笹原〕
「え?」
日本人たちの混乱した様子を見たフォンクは、いたずらに成功したことを喜び、微笑んだ。
〔フォンク〕
「いや冗談です。心臓に『人』なんて文字が書いてあったらむしろ私が驚いてしまいます。
えー人の定義とは、外見的には直立歩行や道具を扱う手があるとか、それに言葉を話す、といったものがあります。
内面的には……自我で己を人と定めることと、他社に人であると認識されることでしょうか。
例え健康体で生まれずとも、例え正常に成長できなかったとしても、人を人たらしめる『何か』を求めて己を制御せしめるならば、それは人という存在と呼べるでしょう。
逆に、五体満足で生まれようと、流暢な言葉を口にし道具を上手く扱えようと、怪物の道理を突き進むのであればそれは人ではなく『害獣(モンスター)』であると私は考えます。まあ、人が何であるかという話は、私が定義づけるには少し大きすぎる問題ですな」
とどのつまり、人とは何かという定義、その認識はアバウトでいいということだ。
お前がそう思うんならそうなんだろう お前ん中ではな。
ゆるふわな少女ファイッ。
フォンクの説明を軽く聞き流した古橋は質問を続ける。
〔曽我〕
「人と亜人が対等な国が少ないということですが、なぜほかの国では人と亜人が対等ではないのですか?」
〔フォンク〕
「主に物量と文明力、あと精神性も含めた種族レベルでの性質の差が原因です。
亜人種族が個々の能力を重視し、個性や個々の人格の尊重に重きを置いているのに対し、人族はその弱さゆえに個人の能力や個性よりも全体としての団結を重視し、時に個人の人格を否定することすらも厭いませんでした。しかしそれでも、いやだからこそ人族の社会は個人の亡骸を土台として積み上げて、文明を押し高めることができたのです。
人族は亜人族より先行して、原初の創造神に生み出された神々の兄弟であり、亜人はそれを後追いする存在だと『統一宗教』にて教えられていることも差別を後押ししています。
『統一宗教』は人族の大半が信仰しており、その影響力は良くも悪くも計り知れません」
〔曽我〕
「あの、『統一宗教』とはどのようなものなのでしょうか?」
〔フォンク〕
「これは世界各地の人族の土着宗教を混合、調整させたものであり、その成り立ちは今は亡き古代の国家にあるとされております。
この世界には高度な文明国が20ほどあるとされておりますが、それらの大半は元をたどると1つの古代帝国にまで起源が遡るとされています」
〔曽我〕
「なるほど」
〔フォンク〕
「そこは人族が他国に先んじて『神の雷』……今日でいう”火薬”の大量製造に成功したことと、哲学的アプローチによる世界の真理の追及によって、繁栄を極めたといわれております。
活発に燃え盛る火山より採取される硫黄と、当時としては比較的緻密な計画に基づいて管理・実行された大規模農業と畜産、奴隷産業によって生じる大量の堆肥から生成される硝石、これによって発達した火薬学は、容易に神秘学・軍事学と結びつきました。
―我々は何故優れた武器を生み出すのに至ったのか?……人は同じ創造主(おや)から生まれた神々によって加護(ちょうあい)を受けたに違いないからだ!―
―我々の戦が常に上手くいくのは何故だ?……兄弟たる神々の加護のおかげだ!―
―神々の一族であり血筋に連なる我々人族は、所詮神々や悪魔に作られた『奉仕種族』たる亜人種族よりも優れているのだ!人よ、亜人を飼い慣らせ!―
……とこのようにして、火薬の運用に基づいた戦術と武道を構築した古の国家は、周辺国との力関係において優位を確立し、また多くの亜人が住む地域であり、強大な兵力を有する東側世界(オリエンタル)との対峙においても、力の均衡を取ることを可能としたのです。
……最も、その古代国家は資源の枯渇や自然災害、疫病や戦争、それに権力者間の争いなどによって滅んでしまい、今の分裂した形に収まってしまったのですが。
ですが、過去の帝国によって生まれた統一宗教や文化、技術は、過去から現在まで続く【人族優越思想】の物理的な裏付けであり、また同時に原初の創造神と、その血筋たる雷神などの高位神を頂点と頂いた、多神族信仰の台座でもあるのです」
〔佐笹原〕
「はあ~、それはまた壮大な話ですな」
〔曽我〕
「しかし、だからこそ厄介そうですね」
〔フォンク〕
「なお、古代帝国に始まる大きな連携を持つ人族に対し、それと歴史上対立してきた亜人種族ですが、こちらは人族と比べると特定技術に関しては種族全体の平均能力は高いものの、種族的特性による居住地域の限定や、異種族排除的傾向と純血主義、特定技術産業への傾倒によって総合的な技術水準という点では人族国家群に比べると厳しく、特に畜産の規模が人族に比べると限定的になりがちなことが多々あります。
そのため火器の安定運用を可能とした人族に年々押されてきており、差別や迫害が加速しております
今のところ全面戦争には至っておりませんが、残念なことにそれは時間の問題でしょう。いずれどこかの国が国家規模で亜人と戦闘を始めることは、現実的な話なのです。
それほどまでに、現在人と亜人の関係は劣悪で、そして状況が人族有利に傾きつつあり、我が国としては両社の間を取り持つために種族に関わらず受け入れを行っているのですが、これがなかなかに大変で、人族同士、亜人族同士ですら対立があります。
一応数の上で多数を占める人族はある程度協調路線を辿っていますが、亜人族は種族が違えば嗜好も生活様式も異なるので……」
真水と淡水は交わらないということである。
なお、フォンク、否この世界人は気づいていないが、人族と亜人種族がこと団結力という点で差が生じてしまった理由は実はもう一つ存在する。
後年日本の学術調査によって判明したことであるが、この世界の亜人種族はとある能力で人族と決定的な差があることが判明した。
その差のある能力とは【ダンバー数の上限】である。
ダンバー数とは、分かりやすく言うと『一人の人間が、自身以外の他者を一体何人まで仲間として認識できるのか』という能力のことだ(こう書くと専門分野から色々と反論を突っ込まれそうだが、今回はそこまで専門的な話はしないのでどうか大目に流してねっ)。
発見は西暦1990年代、イギリス人霊長類学者ロビン・ダイバー氏の霊長類の群れにおける行動の観察研究から導き出した暫定の数式が、未開地域の部落・村落の人工調査から得られた実際の集団の数と結果が一致したことによって、人間の平均的な集団は凡そ一つあたり150人程度の人数から成り立ち、それが一つの区切りになっている(実際には集団が晒されている環境や脅威によって100~230程度の揺れ幅がある)とする理論を説明する言葉である。
詳しいことは石の世界でクラフトワークする漫画でも読んで察してくれ。
多くの場合、亜人種族は身体の運動能力もさることながら、魔法技術や手芸技術、また武術などにおいて人族とは異なる能力を持つ。
別にすべてが人族よりも優れているわけではなく、例えばエルフであれば魔法技術と武術、ドワーフの場合は手芸技術において、人族よりも優れた能力を発揮する。
その秘訣は何か?
その理由としては、肉体構造の違い、住む環境による身体や思考の形成も理由ではあるものの、脳の構造についても実は技術と結びついている。
エルフの場合、彼らの肉体は魔力を生成・蓄積しやすく形成されているが、いくら魔力を保持していたところで、それを有効に制御する技術がなければ宝の持ち腐れとなるのは誰の目にも明らかである。
では果たしてエルフは魔法を行使する技術において人族よりも劣っているのか?
というと、個人の差を踏まえた上においても、種族平均において人族の、それも一般的に一人前と認められる程度の熟練した魔術師よりも高い能力を発揮するとされているのだ。
それは、エルフの脳細胞が魔法を制御する際に活発に機能することによってそのような結果を叩き出すためである。
しかし、魔法の制御においてエルフの脳細胞は優れた能力を発揮する反面、仲間の認識といった事象に関してはあまり活発に活動することがなかったという。
その理由としては、魔法の制御能力と仲間の認識能力の両立が難しいためではないか?と推測づけられた。
その学術調査を行ったある脳学者はこう語る。
「別にエルフの共感能力が劣っているわけではない。むしろ彼らの共感能力は高いくらいだといえるだろう。
しかし、それは視野の広さを意味しない。
むしろ特定の、狭い範囲の事柄に視野が集中してしまうせいで、広い範囲の環境というものを認識することが難しいといえるでしょう。
彼らは基本同族同士でのみつるみ、他のコミュニティに対しては時に攻撃的であるといえるほどの排他性を発揮し、また自身の興味を引くことのない事象に関しては、冷酷であるといえるほどに全くの関心を持つことをしない
彼らの中の少なくない数の個体が一生を自身の生まれた森の中で過ごし、外に出ることなく死んでいくという事実が、この調査結果の信頼性を大きく支えている」
なお人族であっても、亜人族に比較的性質が近いと診断されるような、生まれつきないし後天的に高い魔法素質を保持する者の場合、ダンバー数の少なさや知覚機能の異常などを抱えている。
―天才とは孤独で、孤高の存在なのか?―
因みに長々とダンバー数の話しちゃって”ああ今回の話と関係あるくだりなんだな”と思ってる方、すいませんこれ今回の本筋とは何の関わりもない単なる蘊蓄ですw
後々思い出したようにこれの話題が出る可能性がありますが、多分さらっと流されると思います。期待していた方には申し訳なく思いますが。
ところで宇宙の心って結局なんのことだったんだカトル(唐突なメタネタ)。
閑話休題、フォンクは話を続ける。
〔フォンク〕
「我が国は開放政策をとっているため、大陸を目指す様々な種族が訪れます。特に新天地を目指す亜人種などは定着してくれることも多いので、我が国の開拓において非常に助かっております。
なお我が国はさほど有用な希少資源もなく、されども国内の食料はある程度余裕がある状態なので周辺国との大きな対立は今のことろございません。そもそも国内の開発すらもまだ進んでいないのでそんな余裕もありませんがね。
そうそう開発といえば、この辺りも開発予定区域なのですが、余り進む気配がなく、今のところ軍事訓練区域としてしか使っていないのです」
〔曽我〕
「大体どの辺りまでが現時点で開発済みの範囲なのでしょうか?」
曽我の質問に対し、フォンクは大陸中心北部分を棒の先端で円を描いて示し、答えた。
〔フォンク〕
「現在我が国が開発を行った範囲は大陸の北部分が主であり、大陸の4分の1ほどを占める広大な森林地帯は殆ど手付かずとなっております。
その最大の理由は、この土地に纏わるある事情が関係しております」
〔曽我〕
「ある事情?」
〔フォンク〕
「200年前、我が国がこの広大なる森林地帯を開発すべく足を踏み入れました。しかしその時空から巨大な炎の塊が降ってきて、森の一角を人々ごと焼き払ったのです」
古橋たちは、自分たちが今いる場所がそんな曰くつきの場所だと知って、ちょっとした驚きと同時に過去に出た犠牲者たちに憐れみの情を抱いた。
〔フォンク〕
「当時の人々は、それをこの土地に人間が入ったことで神が怒り嘆き、天罰を与えたのではないかということで、この地を神聖な地と定め、何者も立ち入りを許されぬ『禁断の地』として放っておくことになったのです。
それから200年ほどは、この土地の開発が話題に上ることはなかったのですが、近年になってあれ以来何もなかったのだから神の天罰など存在しなかったのではないかという話になり、今はどうにか開発できないか苦慮しているところです」
〔曽我〕
「この土地はどうなるのでしょうか?」
〔フォンク〕
「今更天罰などなかったなどといっても、長い間忌避していた土地ですので、ここに腰を据えたいものが中々に集まりません。よって軍事訓練区域として使い続けることになるでしょう」
他の使い道があれば良いのですがねえ……、と言って、フォンクは話を締めた。
〔フォンク〕
「話を変えましょう。我が国は温暖な気候ですので、一年を通して農作物がよく育ちます」
因みに我が国の特産物はこれです、と言って、フォンクは拳二つ分程度の大きさをした、丸みをおびた木箱を取り出し、蓋を開けて中身を見せた。
そこにあったのは、茶色がかった黒色の四角い物体で、それが沢山詰め込まれていた。
何かの飴玉のようである。
〔フォンク〕
「我が国に自生するシダ類の樹液を固めた糖蜜飴です。我が国では開拓民でも手に入れられるほどポピュラーなものですよ。いかがですか?」
それを勧められた古橋たちは、一つずつ摘まんで口に葬りこんだ。
土のような独特のえぐみがあるが、甘味としての糖度は十分にあった。地球のものでいうと黒糖あたりが近いだろうか?
〔古橋〕
「おばあちゃんちのお菓子って感じですねえ」
〔フォンク〕
「糖蜜はそれ自体の美味しさに加えて、使い方によっては食べ物の保存期間を延ばすことなどもできるので便利です。
また、発酵させればお酒も造れますので、我が国を訪れた際は是非糖蜜酒をご堪能下さい」
今日から毎日、ジャムを焼いてラム酒を呑もうぜ?
〔フォンク〕
「さて、次はクドゥム藩王国についてお話しましょう。
この国は我が国の南側にある隣国であり、ドム大陸から海を越えて東に位置する大陸に存在する、獣人国家ヴェルディル王国と同盟関係にあります。
我が国と同じく亜人種族との人材交流が盛んで、ヴェルディル王国からの移住者が多くいます。
政府の組織力が小さく、国内の意識統制を行うことが難しいため、国針は基本日和見主義的ですね。仮にロイメル王国がこの国に軍事同盟を申し出ても断られる可能性が大きいです。まあ正直な話大した戦力がないので同盟を組んでも大きなことはできませんが……」
〔古橋〕
「件のアムディス王国とやらが攻めてきた場合は……」
〔フォンク〕
「まあ無血開城する可能性が高いですな。ヴェルデル王国が同盟を結んでいるといっても、距離が遠すぎて軍を送ることは難しいですからね。
そもそも同盟自体、軍事的連携ではなく人材と技術の交流、それと国際的孤立を避けることを目的としたものですので……」
事実上の国際姉妹都市みたいなもの、なのであろう。
〔フォンク〕
「さて、続きましては……」
フォンクはいくつかの国を紹介して、古橋たちに大陸の国際情勢について説明した。
フラルカム王国、ラザール共和国など、ロイメル王国周辺の国々についての講釈が行われる。
そして……
〔フォンク〕
「さて、次はアムディス王国についてですね。ここは我が国の西側に森林を挟んで存在する『国交のない隣国』です。
この国は長年鎖国体制を取っており、入国者は勿論、脱国者もほとんどいないため謎に包まれております。しかし、近年突如『聖戦』を大儀として掲げて大陸の秩序を犯しはじめました」
そのことで現在、当事者のロイメル王国は勿論のこと、異世界での生存を模索しこの大陸とできれば関わりたい日本にも、良くない影響を与えているといえる。
〔フォンク〕
「話によりますと、かの国の現在の兵の数は推定20万であり、これは我が国の兵力の4倍強に上ります。
支配国から奴隷兵を追加すれば、更に数万は増えるでしょう。
さて、この国の特徴は独自の国教『ベルム教』にあります。これも詳細は不明ですが他民族を悪魔の同類と見做して拒絶するほどの過激な教えのようです」
古橋たちはふうむと息を漏らす。
何を持ってそんな過激な思想がぶち上げられたのかは正直分からないが、とにかくうさん臭さに満ち満ちている。そしてそんな過激な思想を掲げる集団が、一定の力を保持していることは、その文明の発展具合を別としても、軽視することはできないだろう。
今後どのような対策を取るにしても、最終的には衝突が起こり得る。
〔古橋〕
「因みにこの国との戦いに敗れた国は、今どのような状況なので?」
〔フォンク〕
「えー奇妙なことに、アムディス王国は打ち負かした国の支配はそこそこに、医療従事者の連行を行っているようです」
〔古橋〕
「医療従事者の連行?」
〔曽我〕
「それはまた、どうしてでしょうか?」
古橋たちは、意外な情報に疑問を抱いた。
〔フォンク〕
「アムディス王国では伝染病でも蔓延しているのでしょうかねえ?」
よく分からないが、重要な情報の可能性もあると古橋は頭の中に刻んだ。
〔曽我〕
「気になりますねえ」
曽我もまた、この情報に何か裏を感じているようである。
〔フォンク〕
「まあ、ここで考えたところでどうにかなるわけでもないでしょうし、話を戻しますね。
アムディス王国の強さの秘訣は無論大陸内の国家でも有数の大軍がまず一番の理由なのですが、実際のところ、この国の強さは表面上の兵数の多さだけではないようですね。
他国から流れてきた情報によりますと、アムディス王国の軍団が会戦や都市攻略を開始するのと同時に重鎮の暗殺やスキャンダルの暴露、それに都市内部での大規模火災や水源汚染などの騒乱が起こったそうです。
おそらく事前に侵入させた工作員を使って攪乱を行っているのでしょう。我が国も早急に対策を行うべきですが、どれだけ予防できるか。
それに、工作員を抑え込めたところで圧倒的な兵力の差はなんとも覆せないところですし、とどのつまり我が国の戦局は戦う前から不利であり、貴国は我が国との交流を熟慮せねばならないということですね。
以上で大陸の国際情勢についての説明は終わりです。ご清聴ありがとうございます」
フォンクは、日本と大陸との交流について、言葉を選んだうえで遠回しに『やめとけ』と言った。いいところ親切心といったところであろう。
アムディス王国について話すときのフォンクの言葉は諦観に満ち、その言葉は抑揚が平坦であった。
亡国の危機というどうしようもない現実を前にして、かえって冷静になっているということであろうか?
〔古橋〕
「部外者が差し出がましい質問をするようですが、貴国はそのアムディス王国と対峙するつもりですか?」
古橋の問いにフォンクはふうむと唸ってから答えを返した。
〔フォンク〕
「国王陛下がどのような決断を下すのかはまだ分かりませんが、戦闘を命じられればそれに従うまでです。
そのためにこれまで国から養って頂いたわけですから、従うのが筋というものでしょう」
軍隊などというものはろくでなしそのものである。
普段何を生産するでもなく訓練に明け暮れ、偶に人助けなどを行うものの、いざ戦争が始まれば敵を殺すか、味方を守るためと称して敵を殺すかのどちらかしか道がない。
それで勇猛果敢に戦って戦果を上げれば適当に英雄だのと持ち上げられるが、結果が伴わなければ味方どころか後世の歴史家如きにすらもこき下ろされ、名誉をぼろ糞に乏しめられるのだ。
そんな全く以て労力に見合わない仕事をはした金を元手にこなす、詐欺師同然の軽薄集団だと言われればそれはそのとおりである。
そんな異世界人の屑に自分と同じものを見出した古橋は感銘を感じ、少しばかり友情というものを抱いた。
そして同時に、未来に待つかもしれない悲劇を想像して、憐れんだ。
〔古橋〕
「そうですか。お答えいただきありがとうございます」
〔フォンク〕
「では、次は大陸の外についてお話を……」
* * *
〔古橋〕
「魔法とはどういったものなのでしょうか?」
国際情勢に関してフォンクからあらかた話を聞いた後、古橋たちは魔法に関して話を聞きだしていた。
この世界に魔法と呼ばれるものが存在することは、少しだけフォンク達の話によって教えられたが、実際のところどのようなものが存在するのか、またどういった仕組みで動くのかなど、そういった具体的な話に関しては余り聞けていなかった。
古橋たちによる基本的な事柄に関する質問に、フォンクは特に嫌がる様子もなく素直に解説を開始する。
〔フォンク〕
「魔法とは生物の願い、祈りを魔力を用いて現実化する技術の事で、特に魔術師が行使するものです。
魔法は、それを発動させるために強い精神力と、魔力に耐えるための肉体が求められます。
強い精神力が無ければ魔力に指向性を持たせることはできず、また肉体の強度が十分でなければ、魔法の反動によって使用者自信を傷ついてしまいます。
人族の場合、魔術師の素質を生まれつき保有するものは少なく、後天的な肉体の改質や鍛錬によってこれを身に着けることが多数です。
獣の類であっても高度な魔法技術の獲得には成長や親の教育が欠かせませんが」
まず語られたのは魔法の概論。魔法とはどのようなものであり、それを起こすために必要な物事や道具を、どのように扱うことで魔法という事象が発生するか、といったことである。
フォンクのいうように、魔法とはまず生物の願い、祈りを実現するために必要な技術であり、魔力とはそのために必要なエネルギーである。
魔力が用いられて動くからこその魔法であり、またそのためには、魔力を管理するに足る強い意志や肉体が必要で、つまりはそこに地球で発達した科学との違いが存在するわけである。
それを理解し踏まえた上で、曽我が質問を行う。
〔曽我〕
「どういったことができますか?」
曽我はフォンクに具体例の提示を求め、求められたフォンクは分かり易い例を挙げた。
〔フォンク〕
「色々です。火を灯すこともできれば、物質を潤したり、風を起こしたり、硬化させるなど、魔法はありとあらゆる分野に応用されています。
これによって人々は豊かに暮らすことができ、また害獣のや災害などの脅威から安全に守られています。
最も、その使い方次第で人々を苦しめることも、害獣や災害を生み出すことも出来てしまいますが……
ところで、そちらの科学技術では、どのようなことが可能でしょうか?」
古橋や曽我たちが魔法に疑問を抱いているのと同じように、フォンクもまた地球の科学というものに興味を抱いていた。
曽我が彼の質問に答えを返す。
〔曽我〕
「我々の科学もこちらの魔法と同じく、火を灯すこともできれば、物質を潤したり、風を起こしたり、硬化させるなどは可能で、また使い方次第で良い結果も悪い結果も引き起こせてしまいます。
現在の科学技術では、熱や電気が主要なエネルギー源ですね。これらは燃料や発電装置によって発生します。例えばこのような情報端末は、内部に蓄えた電気によって内部の機構を全て作動させていますし、P-3Cはエンジン内部で燃料を燃やし、それを電気に変えて様々な機能を使います」
曽我は、自身の持つ情報端末―リアリイン・ツールーを起動させ、フォンクに見せた。
曽我の説明は、科学の総轄論としては半ば大雑把ではあったものの、道具という科学の精神を体現する実物を前にすれば、細かい道理や説明などは、科学というものを理解する上での大きな問題にはなりえないであろう。
現に、曽我の持つリアリイン・ツールを観察するフォンクの表情は、科学というものの実態はともかくとして、それの持つ可能性については非常に興味深いものであると理解したようで、楽しそうに微笑を浮かべていた。
〔フォンク〕
「なるほど。まあ、我々の文明力では恐らく理解はできませんが、興味深いものだということは分かりました。では魔法の話に戻りましょう。
魔法の場合は物質に蓄えられた魔力を制御することによって、様々な現象を生み出しますが、その為には必要となる現象に対応した魔力が必要で、火を起こすならば火、水なら水と分かれています。そのため種族や地域、また個人ごとに得意分野がそれぞれ異なってしまうのです。因みに私は火と風の魔法が得意で、畜獣の操舵や魔伝の操作が得意です」
〔佐笹原〕
「魔伝とは一体何でしょうか?聞いた感じ連絡手段のようですが……」
〔フォンク〕
「魔伝とは魔法伝令通信、魔波を使うため魔波伝令とも呼びますが、火と風の魔力を含んだ物質同士を共鳴させることによって通信を成り立たせる技術のことです。
火の魔力は雷を生じさせ、その生じた雷は風の魔力の生み出す流れに乗って天地を伝っていくため、魔伝に要するのです」
フォンクによる魔伝の説明に、古橋が思い当たるふしがあるように唸った。
〔古橋〕
「ふむ……実は気になることがあったのですが、我々があなた方と遭遇した時、こちらの電波探知装置に反応があったのですが、もしかするとあなた方の魔伝というものを探知したのかもしれません。
念のため確認させていただきたいのですが」
〔フォンク〕
「というと?」
〔古橋〕
「あなた方に一度魔伝というものを使っていただき、それにこちらでどの程度干渉できるのかを試してみたいのです」
〔フォンク〕
「なるほど、そういうことでしたら協力いたしましょう」
そういう訳で、一行は早速魔伝について実験調査を行うこととなった。
実験の内容はこうである。
まず基地の魔伝と翼龍に積んだ魔伝同士で交信を行う。
次にその魔伝の通信波を、P-3Cの電波探知機を使って受信する。
最後は、通信機から魔伝に対して送信ができるのかを試す。
今回の実験では、クック団長率いる第8翼龍騎士団が協力してくれることとなった。
障害物になるべく通信波を遮断されないように龍舎から開けた滑走路に出た翼龍と、基地に備え付けられた魔伝との間で、通信が開始される。
すると早速、P-3Cの電波探知機に反応が出始めた。計器のモニターにも様々な波長や数値が表示され、またヘッドフォンが人の声を出力し始める。
〔Pー3C通信兵〕
「通信波を探知。微弱ですが、一定の規則性を見出すことができます。通信の内容も拾うことが可能な模様……”テストテスト、本日は晴天なり、繰り返す、本日は晴天なり、月が奇麗ですねテストテスト……”」
どうやら、魔伝の通信波が電波のようなものであることは立証されたようだ。
なお、異世界でもマイクテストの掛け声は日本とさほど変わらない様子だ。テストテストって……(因みに異世界では月が奇麗ですねという言葉に特別な意味はない。そのまま月の状態を表す言い回しである)。
次いで、今度はP-3C側から魔伝の方に干渉を試みる。
探知した魔波を元に通信波を作成したP-3Cは、基地と翼龍の魔伝に送信を試みる。
〔基地通信兵〕
「魔鉱石内部の火の魔力が活性中。凄い反応です。しかし、風の魔力が不活性なため音を出力できません」
魔伝用の魔鉱石はP-3Cからの通信電波を受け取ることには成功したものの、それを音声として出力することはできなかった。
実験に立ち会ったクックが、自身の携帯魔伝にて実験に参加中の部下に話を伺う。
〔クック〕
「翼龍の方はどうか?」
〔翼龍の通信兵〕
「魔鉱石内部の火の魔力は活性化していますが、風の魔力がうんともしません。これじゃあ向こうの通信音声を拾うのは無理ですね」
どうやら、魔波を電波アンテナで拾うことは可能であるが、逆に魔鉱石で電波を拾った場合、魔力の反応が限定的で上手く受信できないようである。
〔フォンク〕
「そちらの通信はどのような仕組みになっているのでしょうか?」
〔古橋〕
「電波通信は、音声や画像をの振動や光を電気信号に変換し、更に空間を伝わる電気の波に変換して、それを受信機側で受け取った後再度電気信号にして、電気で音や光を発生させる機器を使って音や光を出しています」
〔クック〕
「つまり、魔鉱石とは違うわけだな」
さて、ここで魔伝について少し『メタ』な説明をしよう。
魔伝では、魔力を持った音、魔音が魔鉱石の結晶構造に振動を起こした際に発生する共鳴振動波及び魔電熱が、風と火の魔力の波に変化して空間を伝わり、他の魔鉱石の共鳴反応を誘発する。
云わば『超音波を使った電話を、電波のエネルギーで駆動する』とか『電波がそのままスピーカーを駆動する電力となり、超音波を増幅し通常音波に変える』とでも形容すべき原理が用いられているらしい(ただ、魔波が空間を伝わる速度は音波よりも高速で、周波数や波長の維持力も高い)。
云わば電気を帯びた音波のようなものが魔伝の通信波の正体なのであるが、そうであるがゆえに電波だけを拾えばよい地球の電波探知機が魔伝の通信波を傍受できたのに対し、音波と電波双方を拾わねばならない魔伝は地球の電波のみからなる通信波を傍受することができないのである。
〔古橋〕
「しかしそうなると、そちらからこちらに通信を行うのに問題はないのですが、こちらからそちらに対し連絡を取る際に、不便になりますな。やはりこちらと連絡を取り合える通信機材を早めに用意しなければ」
古橋は昨日、日本本土の鹿屋航空基地に、P-3Cや八咫烏の補給用燃料のほかに、日本側とロイメル側が互いに連絡を取り合えるように通信機材の用意も要求していた。
恐らくそれらは急いで用意されているだろうと思うが、それでも本日中に届くことはないだろうと思われ、古橋たちはもうしばらくこの場所で異世界人との交流と、得た情報を日本本土に知らせる役割を担うことになる。
〔フォンク〕
「我々としても、いつまでもあなた方をここに滞在させたままでは、正式なもてなしなども出来ないので、早めに公式な交流をしたいところです」
先ほどフォンクは、日本がロイメル王国と関わることは日本のためにならないからやめた方がよいと遠回しに言ったが、それはそれ、やはり国同士の正式なやり取りで、ちゃんと相手をもてなした方がよいという考え自体はあるようだ。
〔フォンク〕
「さて話は変わりますが、今日の会合はこのあたりでお開きにして、続きはまた明日に、ということにしませんか?
昨日はあなた方との遭遇でこちらは色々と急な仕事が舞い込んで慌ただしくなってしまいましたし、あなた方も一旦体と心を落ち着けて、健康的な生活サイクルに切り替える必要があるのではないでしょうか?
この基地を預かる身としては、部下や客人の健康管理には気を付けたいところなのですが」
古橋たちはフォンクの指摘を受けて意識したが、確かに気が付けば時刻は夜の9時に迫っており、確かに夜更かしをしない健康的な生活サイクルを実現するためには、そろそろ就寝の準備に取り掛かったほうがよさそうである。
〔古橋〕
「確かに、一旦昨日からの徹夜生活サイクルをリセットして、早朝起床に切り替えるべきですね。
ええ、今日はこのあたりで解散して、続きはまた明日にしましょう。
曽我さんもそれで宜しいでしょうか?」
〔曽我〕
「そうですね、そうしましょう」
そしてその日の会合はそこで終了し、古橋たちと曽我は明日に備えて早めの就寝を行うことになった。
彼らの居る宿舎の真上には、輝く星々と月が君臨していた。
夜空に浮かぶ輝きの月が、彼らの平穏な眠りを守る守り神となるかは、未だ未定である。だがしかし、それでも月の光は今日もこの世界を優しく照らし、迷える魂たちを鎮める役割を果たそうとしていた。
突然の出会いに困惑しながらも、寄り添い合わんとする魂。
月は果たして、彼らを最良の方向へ導いてくれるのだろうか。
次回につづく
* * *
【次回】
穏やかな交流によってお互いの事を認識していく日本人とロイメル人。その関係は良好なものになりそうであり、将来に期待が持てそうだ。
一方、危険な武装勢力であると目されるアムディス王国との接触を目論んでドム大陸西側に向かった理恵は、そこで異世界の現実を目の当たりにする。
事件が日本にもたらすものとは?そして明かされる事実に、世界は揺れ動く。
次回 第8話『月詠月夜(ファーストコンタクト) ~憧憬は真実から遠い羽化登仙《ライアニズム》~ ⑤』 お楽しみに!
以上、第7話でした。
ダラダラグダグダ書いてたら前回の投下から半年も間が空いてしまいました。
続きを期待していた方、絶望させて申し訳ない!><
しかも久々に更新してなんですが、なんと次の投下もしばらく間が空いてしまうんだぜ!もはや白けるだろう?私もそう思う。だがこれが現実だ(迫真)。
書くのに時間かけすぎて、話がブレブレになったのは超反省点になる説。
では久々の設定公開だ☆ これをやるために態々かったるい本編なんかを書いているといっても過言ではないんだぜヘヘッ
……
うわーんパパッと文章を書きたーい!書けない気分に憂鬱すぎておっパブに入り浸りそうな今日この頃(行ったことないけど)。
※話を当初公開していたものから、少し出来事の時系列などを変更いたしました。
古橋たちの会合が後ろに回って、鹿屋基地の下りが先に変わりました。
前回古橋たちとフォンクたちの会合は夜に行うって言ったのに、うっかり一夜明かしてしまいましたよ……
半年もかけてダラダラ書くから時系列がすっぽ抜けるのだ、反省。
※情報部の設定変えました。どこの所属かわからんふわっとしたものから空軍所属機関になります。
↓今回出た設定
・空軍情報部
ロイメル王国空軍はその規模こそ小さいものの自前の情報機関を保持しており、国内外で集められた様々な情報が最終的にここで解析を受ける。
現在の主な任務は対アムディス王国の諜報・監視・偵察であり、陸軍情報部や海軍の情報部、それに外務局の諜報機関などと足並みを揃えながら、自国の安全保障に関わる情報を整理して王政府に提出している。
本部は首都ロクサーヌ内にある館施設。警備はこの国だと厳重なほう、だと思われる。
・亜人
亜人とは、人間を模倣した模造生物であり、高等霊長類に属する。
神族や悪魔が、原始の創造神に倣い人間を作ろうとして生まれた存在だとされている。
特徴としては人族と共通する身体部位を持ち、また人類との意思疎通を可能とする高度な言語能力を保持することが挙げられる。
霊長類の中でもこれに当てはまらない単なる猿などは、下等霊長類と呼ばれ人や亜人とは厳格に区別される。具体的には動物として扱われる。残当。
亜人の多くは、災女族(パンドラズ)のような例外はあるものの創造主の趣向を反映して純人族とは異なる容貌、能力を持っている。
獣人族は獣の形態を。
エルフ族は優れた魔法技術を。
そしてドリアード族は高い霊的感覚をといった具合に。
現在亜人は大きく分けて7つの種族に分類される。
■魔力と魔導技術に生まれながらにして恵まれたエルフ。
■豪胆かつ精微なる肉体と精神を併せ持ったドワーフ。
■水棲生物の水人。
■神龍の落とし子たる龍人。
■霊能に優れたドリアード。
■悪魔の眷属と恐れられし魔人。
この7種族が主流亜人族と呼ばれ、古代から恐れられているが、魔人は今ではかつての繁栄を失い少数が細々と生きており、またヴァルキア人(というかルタロスタ人)のように上記のどれにも当てはまらないものの、現状の魔人よりも栄えているとされる種族もあるため、この定義は今では些か古いものとなってきているようだ。
近年は人族に対し劣勢にあるようで、物量や文明の発展具合なども併せて対抗は難しい様子。
だが彼ら自身が変わろうとしない限り、その力関係は未来永劫続くだろう。そしていずれ恐竜のように滅びる。それがさだめ。
・ダンバー数
分かりやすく言うと『一人の人間が、自身以外の他者を一体何人まで仲間として認識できるのか』という能力のこと(こう書くと専門分野から色々と反論を突っ込まれそうだが、取り合えず本作ではそういう『設定』のものとして、現実との乖離については考慮しないこととする)。
発見は西暦1990年代、イギリス人霊長類学者ロビン・ダイバー氏の霊長類の群れにおける行動の観察研究から導き出した暫定の数式が、未開地域の部落・村落の人工調査から得られた実際の集団の数と結果が一致したことによって、人間の平均的な集団は凡そ一つあたり150人程度の人数から成り立ち、それが一つの区切りになっている(実際には集団が晒されている環境や脅威によって100~230程度の揺れ幅がある)とする理論を説明する言葉である。
この世界において、人族と亜人との間における差異として、このダンバー数の違いも存在し、亜人はダンバー数が人に比べて少ない(=団結力において劣る)ため、生来的に一見人族に対し能力で優勢にあるように見える亜人は、人族との戦いおいては物量の差、連携の差で追い詰められる。
物量の差をひっくり返すためには、圧倒的な質の差が必要であるが、残念なことに亜人と人族との間にある差は決して大きくはない。
亜人は人より強いが、それだけだ。決して個人で津波や雪崩を押し返すほどに強くはなく、海に飲まれれば泡のように消え去るのみ。非情だが、それが現実。
・古代の帝国
過去に存在した人族の帝国。
知識人による哲学的アプローチからの世界真理の追及(魔導科学の基礎理論解明や社会組織の役割と働きの追及、個々人の行動心理などの解剖など)を行うだけの生活的余裕や、火薬を製造する程度の技術力があったものの、資源の枯渇や自然災害、疫病や戦争、それに権力者間の争いなどによって滅んでしまい、その後分裂した国土が現在の高度文明圏の元となっている。
その影響力はかつての領土は無論のこと、ドム大陸のような僻地にまで及んでおり、この時代に築き上げられた文化体系の根の深さは深く、広い。
・統一宗教
世界各地の人族の土着宗教を混合、調整させたものであり、その成り立ちは今は亡き古代の国家にあるとされている。
様々な神々や怪物、悪魔、そして英雄たちの織り成す壮大な歴史浪漫的叙事詩をベースに、個人や社会への訓示や教義が教えられている。
古来より人族は他種族と争ってきたため、人族の心の拠り所となる人族優位及び亜人への敵意を煽るような思想が目立つ。
こんなのでも、なかったら世界の大半の人族なんぞ原始共産制の蛮族一直線になりかねない程度には文明的だったりする、のかもしれないし、そんなことはないのかもしれない。結局のところよく考えてないもといわからない。
人族の言語や文字はある程度共通しているが、その理由としては統一宗教関連の、『神秘暗号』処理を施されてこの世界の自動翻訳機構の対象外となった聖句を聞き取ったり、書物を読むため、というものが大きく、魔法関連の技術の発展度合いは亜人族とは別の方向を向きながらも高度である。故に人族と亜人種族の対立は現実的に起こる。
・糖蜜(飴)
ロイメル王国に自生するシダ類の樹液を固めた、茶色がかった黒色の四角い物体。
。ロイメル王国の特産物で、現地では開拓民でも手に入れられるほどポピュラーなもの。
土のような独特のえぐみがあるが、甘味としての糖度は十分。地球のものでいうと黒糖あたりが近いだろうか?
糖蜜はそれ自体の美味しさに加えて、使い方によっては食べ物の保存期間を延ばすことなどもできるので便利。ジャム。
また、発酵させればお酒も造れるようだ。味はラム酒に近いそう。
今日から毎日、ジャムを焼いてラム酒を呑もうぜ?
・魔伝
魔伝では、魔力を持った音、魔音が魔鉱石の結晶構造に振動を起こした際に発生する共鳴振動波及び魔電熱が、風と火の魔力の波に変化して空間を伝わり、他の魔鉱石の共鳴反応を誘発する。
云わば『超音波を使った糸電話』、『電源がそのままスピーカーにもなる』とでも呼ぶべき原理が用いられているらしい(ただ、魔波が空間を伝わる速度は音波よりも高速で、周波数や波長の維持力も高い)。
云わば電気を帯びた音波のようなものが魔伝の通信波の正体なのであるが、そうであるがゆえに電波だけを拾えばよい地球の電波探知機が魔伝の通信波を傍受できたのに対し、風の魔力と火の魔力(正確には火の魔力から生じた電波)双方を拾わねばならない魔伝は地球の電波のみからなる通信波を傍受することができない。
・ワオキツネザル
霊長目キツネザル科に属する霊長類(サル)。ワオキツネザル目に属する唯一の霊長類(サル)。
地球におけるアフリカ大陸の、マダガスカル南部に生息する固有種であり、体長は約38m半~45cm半ほど。灰色の背面に、明色で先端の白い四肢や胴、それに尻尾に走る白と黒の輪っか状の斑紋が特徴的で、特に尻尾の斑紋はこの生物の和名である「輪尾狐猿」の由来となった部分である(尻尾白黒狐猿じゃあいかんかったのか?)。
だがしかし、この生物の最大の特徴は尻尾が白黒だとか、実はメスの股間にアレがついているだとか、そんなものではなく、二足で直立した上で行う「横跳び移動」であろう。
作者が昔ど〇ぶつ奇想天外!で見たこいつらの生態といえば、大地の上を集団でホーホー言いながらジャンプしまくるヤバい光景であった。ぶっちゃけ騒がしくて愉快すぎる件。
地球だとマダガスカルにしか生息していないが、異世界だとどうなんだろう?まあ、多分今後出ることはない筈。予定がない。