世界の歪みになろうとも   作:ジャギィ

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時系列は飛び飛びなのでご注意ください


ミッションスタート

───気がつけば、俺は巨大なガラスの筒…カプセルポットともいえる容器の中にいた

 

培養液に全身が浸かって、ロクに呼吸ができないにも関わらず息苦しさがない奇妙な感覚。目を開ければ培養液で歪む視界の先に、黄緑の髪色をした中性的な青年が微笑む

 

「へえ…この段階で目覚めるとは、君は他の2人とは違う優秀な個体のようだね」

 

…目覚める?…他の2人?俺は一体なんだ?なぜカプセル(こんなもの)の中にいる?

 

思考を巡らせるが、ふわふわとした感覚が脳の動きを鈍らせるように感じる。そして情報を整理している中

 

「君たちの存在が、世界により正しい変革をもたらしてくれることだろう……期待しているよ

 

 

『チームトリニティ』」

 

青年が確定的な情報を口にした

 

 

 

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“機動戦士ガンダム00”

 

革新的技術によりエネルギー問題が解決したが、それでもなお、世界三大国家によるゼロサムゲームが繰り広げられる西暦2300年代の時代

 

ある時、天才科学者「イオリア・シュヘンベルグ」が創設した『戦争根絶』を目的とする私設武装組織「ソレスタルビーイング」は、世界に対し、機動兵器『ガンダム』による全ての戦争への「武力介入」を開始した……

 

これがガンダム00の物語のあらまし

 

「兄貴〜〜、今日はシュミレートの訓練だったよなぁ?」

「そうだ。昨日ソレスタルビーイングの武力介入が開始された以上、我々も近々任務が通達されることだろう…いつ出撃しても問題がないよう体を慣らしておかねばならん」

「えー!?ここんとこ、ずーっと戦闘訓練ばっかじゃん!」

 

そして私は今、そんな不安定な世界で生きている。死の運命というものを背負って生まれ落ちた

 

「もっと別のことしようよォ『ヨハ()ィ』」

「聞き分けろ、ネーナ」

 

そう───ヨハン・トリニティとして

 

ソレスタルビーイングには世界を変えるという理念に惹かれ、世界各地にスポンサー、そして監視者と呼ばれる者が存在する。そしてその監視者の中の1人…アレハンドロ・コーナーの独断で生み出されたデザインベイビー……それが私たち「チームトリニティ」という存在だ。私たちは秘密裏に生み出されたガンダムマイスターであり、チームトリニティの存在意義は…ハッキリ言えば「世界を1つにするための捨て駒」なのだ

 

私と弟のミハエルは近いうちに、妹のネーナは5年後に殺される。過剰な武力介入を繰り返す故に、罪なき市民を殺す故に

 

確かに作中で見たチームトリニティの行動は度が過ぎている。特に「楽しそうにしているのがムカつく」という理由でパーティ会場にビームライフルを撃ち込んだネーナの行為はあまりに度し難い

 

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「…まあ、ただ訓練を続けるのが苦痛なのも確かだ。これが終わったら別件で外に出る。その際にケーキでも買ってきてやろう…良い成績を残せばリクエストにも応えよう」

「本当!?よーしっ、気合い入れるよーHARO(ハロ)!」

『シャーネーナ!シャーネーナ!』

「兄貴、俺は!?」

「美味いものだろう?結果を出せば、さっきネーナに言った通りだ」

「ヒャッホゥ!さっすが兄貴ィ、話が分かるぜ!」

 

訓練後のご褒美がもらえると分かると、笑って喜ぶ2人の弟妹(きょうだい)

 

私たちは人工的に生み出された生命。肉体年齢は上から順に26、19、17だが、実際の実年齢は違う。偶然か奇跡か、はたまた神の悪戯か、文字通り生まれ変わった私は肉体年齢以上の成熟した精神を持っている

 

しかし…ミハエルとネーナは、まだ5年しか生きていない

 

いかに男性的あるいは女性的な肉体だろうと、いかに知識を持っていようと、2人はまだ世界を知らな過ぎる。閉鎖的な空間で生活してきたことがさらに拍車にかけている。そんな所では、価値観の歪んだ未熟な成長しかできない

 

この精神的に幼い弟妹が、青春も出会いもなにもかもを、世界のために喰い潰され、擦り潰され、その果てに命をも失おうとしている

 

「これが世界の歪みか」

「? 何か言ったヨハ兄ィ?」

「…いや、なんでもない」

 

そんなこと、許容できるわけがない。ならば…やることは決まっている

 

『ミハエルとネーナをなんとしても生かす』。それが私の遂行する最初で最後、そして唯一のミッションなのだから

 

 

 

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巨大なGNランチャーを背中にマウントした黒いガンダム“ガンダムスローネ アイン”。その中で私は情報端末を操作し、ある回線へと接続する

 

すると映像の中に現れたのは、黄緑の髪色をした美青年の顔

 

『やあ、ヨハン。元気にしていたかい?』

「お久しぶりです、アルマーク様」

 

この男の名はリボンズ・アルマーク。ガンダム00の2ndシーズンにおけるラスボス、イノベイター(イノベイド)という存在の首魁、神を自称する世界の歪みであり……そしてヨハン・トリニティとしてのファーストコンタクトとなった人物だ

 

リボンズはどうやら、チームトリニティの中でも非常に早期覚醒した私に興味を持ったらしい。その後の経過であまりに早く成熟した思考と精神、強い自我に目をつけたリボンズは、自分の私兵として私を勧誘した。さすがのイノベイター様も、輪廻転生が原因とは思い至らなかったようだ

 

しかし、これからの私の目的を考えればイノベイドの陣営にいるのは非常に便利だ。だからこそ、私のその勧誘を受けたのだ

 

「珍しいですね。常にあの男と行動しているあなたがこうして直接回線のコールをしてくるとは」

『さすがのボクも四六時中、彼と行動を共にしているわけじゃないさ。それに君は貴重な人材だからね。そんなことも気づかず使い潰すことしか考えてない彼の短慮さを見ると疲れてしまうんだよ』

「アルマーク様もお人が悪い…「気づかず」ではなく「気づかせず」が正解でしょうに」

『フフフ…』

 

上機嫌に含み笑いをするリボンズ

 

ちなみに『あの男』や『彼』とはアレハンドロのことだ。アレハンドロはイオリアの計画を乗っ取ることを画策しているが、リボンズはその計画を利用して最終的に奴を切り捨てる予定だ。アレハンドロから逃れる隠れ蓑としてリボンズは最適なのだ

 

『任務の方はどうだい?』

「○○家の監視者の始末は完了しました。……早く表舞台に出ることができれば、ガンダムでまとめて始末できるのですが」

『仮定の話をしてもしょうがないさ。それにそんな状況下でも完璧に任務をこなしている…本当に君は優秀だね』

「恐縮です」

 

ミハエル、ネーナ。私がなんとしても、お前たちが胸を張って生きられる未来にしてみせる

 

例え………「どんなこと」をしてでも

 

 

 

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世界三大国家が合同軍事演習を名目に行われた大規模なガンダム鹵獲作戦は、我々“トリニティ”チームの介入により阻止できた

 

そして今、宇宙にて“プトレマイオス”チームと合流するために、擬似GN粒子発生装置搭載型補給艇『トリニティ』にて、ミハエルとネーナを乗せて移動している最中だ

 

ちなみにこの『トリニティ』はリボンズ・アルマークに「何か褒美が欲しくないか?」と聞かれた時に「擬似GN粒子発生装置がついた移動艇」を要求した結果、用意された代物だ。おそらくアレハンドロ・コーナーが世界三大国家に提供するために準備していたものをかすめ取ったのだろう。こんな物も用意しているとは、あの男はとことん世界を自分色に染め上げたいようだ

 

「2人とも、プトレマイオスを発見した。アインで移動を開始する」

「了解!」

「ラージャ♪」

 

ミハエルとネーナを“アイン”の手の上に乗せ、プトレマイオスに近づく。中に入れてもらうよう光通信を送れば、プトレマイオスの出撃口が開く。中に入り、アインから降りた私はミハエルとネーナを連れて通路に入る。その先には戦術予報士スメラギ・李・ノリエガを先頭にプトレマイオスチームのメンバーがいた

 

私はとりあえずチームの自己紹介をしたのだが、ここで一悶着があった。ネーナが“ガンダムエクシア”のパイロットである刹那・F・セイエイにいきなりキスしようとしたのだ

 

間一髪で私がネーナを掴んで止めたおかげで未遂で終わったが、今度は刹那のその時の反応が気に入らなかったミハエルが小型の電磁ナイフを取り出し、刹那や止めようとしたロックオン・ストラトスを攻撃しようとした。これには私も力尽くで止め、ミハエルと事の発端であるネーナを声を荒げて叱責した

 

普段怒鳴ることなどなかったからか、2人は借りてきた猫のように大人しくなる。私はプトレマイオスメンバーに頭を下げて謝って話を終わらせると、ここに来た目的を果たすため、彼らについていく形でブリーフィングルームに向かった

 

 

「それで、結局あなたたちの目的はなんなの?」

「もちろん、戦争根絶です」

「じゃあ、お前さんらは俺たちと共に行動するってことか?」

 

ロックオンのその言葉を聞いたミハエルは、心底小馬鹿にした顔で口を開く

 

「バーカ!そんなことすッ」

 

ゴッ!

 

「イッデェ!?何すんだよ兄貴!!」

「説教の量が足りてなかったか?話がこじれるから口を閉じておけ」

「なんだよォ」

 

だが、ミハエルが失言を言い切る前に拳を頭に落とし、無理やり黙らせる。こうでもしなければ止まらないからな

 

「先ほどの言葉だが、半分合っていると言わせていただこう」

「半分?」

 

顔の右半分が前髪で隠れた長身のガンダムマイスター、アレルヤ・ハプティズムが疑問符を口にする。意味を理解したらしいスメラギは確認するように私に問う

 

「つまり、あなたたちは別れて行動するということ?」

「その通り。ミハエルとネーナをプトレマイオスに一時的に在籍させ、私は単独で地上に降り、ミッションを遂行するつもりだ」

「ハァ!?」

「ええ!?それ本当ヨハ兄ィ!?」

 

ミハエルとネーナが心底驚く。当然だ。これは私の独断の行動であり、2人を生かす…そのミッションの第1フェーズだ

 

そしてここで反対意見を出すのは、眼鏡をかけた中性的な人物、ティエリア・アーデだ

 

「俺は反対だ。ヴェーダにお前たちの情報はなかった…ヴェーダに記されていない者と共に行動するなど危険極まりない」

「俺も反対だぜ!なんでこんな生ぬるい奴らと一緒にいなきゃなんねーんだよ!?」

「ミハ兄ィの言う通りだってヨハ兄ィ!私たちも一緒に連れてってよ!」

 

便乗するように文句を言う弟妹。だがその意見を聞き入れるわけにはいかない

 

「ダメだ。先のガンダム鹵獲作戦、あのような事態にもう1度陥れば、今度こそオリジナルのGNドライヴが奪われるかもしれない。そのようなことになればイオリアの計画は完全に破綻する」

「貴様!ガンダムマイスターを名乗っておきながらヴェーダの計画を疑うのか!?」

「少なくとも計画の大幅な修正が余儀なくされるのは間違いない…それを阻止するためにも戦力を集中しておく必要がある。そしてガンダムスローネの中で単独行動に1番適性があるのは、GNランチャーで複数の敵を一掃できる“アイン”だけだ」

「それなら俺の“ツヴァイ”だって…」

「GNファングは単体の敵への撹乱・陽動が目的の武装だ。少なくとも対多数向きの武装ではない」

 

ミハエルはぐうの音も出ない様子で黙り込む。残るネーナの“ドライ”は特殊兵装が支援特化の『ステルスフィールド』だ。つまり反論材料はない

 

「ヴェーダに我々の情報がなかったというのならば、尚更ミハエルとネーナを手元に置いておくべきだろう。監視することもでき、私に対する人質としても使えるのだからな」

「………退室させていただく」

 

ティエリアは明らかな敵意を隠さず私を睨むと、無重力を泳ぎながらブリーフィングルームを後にした

 

「なんだアイツ、ダッセェ」

「なーんかヤな空気〜。ミハ兄ィ、船の中、探検しよ!」

「ネーナ」

「…ロックオン、アレルヤ、彼らを案内してあげて」

「分かりました」

「りょーかい」

 

また自分勝手な行動を取ろうとするネーナを咎めようとするが、先にスメラギがそう言ったため、機会を失ってしまった

 

弟妹2人とガンダムマイスターが2人いなくなり、部屋に残ったのは私とスメラギ、そして刹那の3人となった

 

「…ミス・スメラギ。先ほどの話、いかがだろうか?『トリニティ』の補給艇も2人に預けておくため、物資の不足などで迷惑はかけぬはずだ」

「…………」

「ミス・スメラギ」

 

考え込むスメラギだが、私は姿勢を正し、腰を曲げ、頭を下げる。驚く様子が肌で感じ取れるが、今の私にはこの程度のことしかできない

 

しかし“プトレマイオス”の面々と行動を共にすることで、正しい良識と本当の武力介入が学べるはずだ。私は2人が真に強くなれることを祈るしかできない。だから誠心誠意、心に訴えるしかないのだ

 

「勝手な話なのは百も承知…しかし、2人の心はまだ幼い。本来なら武力介入など関わるべきではないのに…」

「あなた…」

「どうか、ミハエルとネーナをよろしくお願いします」

「あなたにとって、2人はそれほど大切なのね」

「ええ、私の大切な…弟と妹です」

 

どれほどの時が経ったのか?まるで時間が10倍にも20倍にも増えたかのような感覚の中、スメラギが声をかける

 

「…分かった。2人は私たちが責任を持って預かるわ」

「…! ありがとうございますッ」

「その代わり、しっかり働いてもらうからね?」

 

計画の第一段階は完了した。そうとなれば長居は無用と外に出ようとし…

 

「聞きたいことがある」

 

その時、刹那・F・セイエイの言葉が私の背にかけられる

 

「お前はガンダムか?」

 

側から聞けばまるで意味の分からない質問だ

 

しかし私は知っている。刹那・F・セイエイにとって『ガンダム』とは、世界の歪みを正す象徴であるということを

 

「ガンダムも変わる」

「何…?」

「人や戦争、世界が時代と共に変わってゆくように…灼熱から極寒に、天国から地獄に、ガンダムのあり方さえも」

「…………」

 

人もガンダムも、世界にとって希望になればその真逆にもなる。だからこそ、自分だけのガンダム(こころ)が必要なのだ

 

「私がガンダムなのか…それはお前の中のガンダムが決めることだ」

「…!」

 

言いたいことを伝えた私は、視線を前に戻して退室した

 

………とても微妙な表情で私と刹那を見るスメラギの姿が、強く印象に残った

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