東京喰種 √鬼   作:MM氏

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第九話 刹那

「おっと、怖い怖い,しかし生き急ぐことないぞ功善」

 

「生き急ぐ?その口ぶりだと自信があるのだな」

 

「さぁどうかな?今ここでやるのも楽しそうだ」ニチャア

 

赫眼を出現させた芳村に警戒しつつも、挑発する芥子。芥子を見つめる芳村の瞳には軽蔑、嫌悪、憎悪など様々な感情が浮かんでいた。しかし、その瞳とは裏腹に身体を落ち着かせていた。芳村に戦闘意欲が無いのを悟った芥子はゆっくりと店の椅子に腰をかけた。

 

「嘘だ。大事な店だろう?俺はここでは暴れない。俺はな…」

 

「…そうか。なら要件はなんだ?」

 

芳村が1番気掛かりなのは芥子が訪れた目的で会った。なにせ、二人が再会したのは実に十数年ぶりであり、本来なら芳村は追われている身ある。そして芥子はその芳村を追っているVの幹部だ。

 

「そうだな。さっき久々に懐かしい顔を見たよ。今日は懐かしい顔づくしで嬉しいものだな」

 

その一言で、ここに来る前に龍二にあったことを悟る芳村。開いていたしわまみれの手を強く握りしめ、その腕に血管を浮かび上がらした。

 

 

「彼は自分の人生を歩みはじめようとしている。見逃してやってくれないか。もう彼は十分お前たち(V)に尽くした筈だろう」

 

「尽くした度合いは関係ない。奴は私達(V)にとって宝刀である。貴様よりもな。なぁ,功善よ。貴様も戻ってこないか」

 

「私には店がある。そして彼にも自分自身の人生がある。それを妨げていいのは自分自信だけだ。お前が本当に奪おうものなら…」

 

気がつけば、芳村の身体に纏わりつく、血液の蒸気。その全てが芳村の鎧へと変化した。と同時に大幅に距離を取る芥子。その額には先程の余裕そうな表情とは違い、冷や汗を垂れ流している。

 

「ふっ,まだまだ現役だな。近づくと火傷しそうだ。近々また訪れるとしよう」

 

ドアの鈴の音同時に芥子は店内から姿を消して行った。芳村は、武装を解除し,ソファに腰を掛けた。深くため息を吐きながら、周りをそっと見渡し、その顔には悲しみの感情が溢れ出ていた。

 

「潮時か。……寂しくなるな」

 

芥子の言っていた『俺はここでは暴れない。俺はな…』。

 芳村は、もうあんていくで過ごす時間が短いことを悟っていた。本来、気付かれずに生活するだけでも大した事なのに、その中で人が集まる喫茶店を経営しているのだ。しかし、どれだけ続こうがバレてしまえばそれは一瞬で崩れ去ってしまう。

 

「これまでよくやったと……割り切れる者ではないな」

(私は強欲になっていたようだ…)

 

 

そっと息を漏らす。外では雷鳴が轟き、まるで不穏な声のようであった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「はぁ,奴ら追ってこないな。ここまで来れば,安心か」

 

先程の戦闘で龍二の体はかなり傷ついていた。予想以上の出血量に焦り,地面に落ちていたボロボロな布切れを傷口に巻いていた。

 

「あいつ,致命傷になるところばかり狙ってきやがって。身体の構造をよく理解してやがる」

 

龍二は古びた廃墟の一室で腰を休めていた。そこは龍二がよく使っていた場所であり、愛着も湧いていた場所であるが、しばらく居ない間に生活感は無くなっていた。カラスの死骸や、虫など、常人なら誰もが嫌がる様な場所であったが、龍二はどこか居心地の良さを感じていた。

 

「7年もいなきゃこうなるか。…俺にはこうゆうところが1番合ってるな」

 

そのまま、汚いアスファルトの床に横たわり何もない天井を見上げていた。考え方をする時はいつもこうやって上を見ていた龍二だった。

 

「気がかりなことは多いが、今は何も考えずただ寝よう」

 

彼は自分がコクリアに収監されていた期間について何も知らない。それもそのはず、外界との交流を全て絶たれ、コンクリートでできた5平方メートルの壁の中でずっと生活していたのだ。外のことについて何も知らないのは至極当然な話である。

 

 

 

 

 

どれくらい経っただろうか。ここ最近体は常に緊張しており、安眠は愚か少しの睡眠しか取れていなかった。しかし,今は何故かとても心が休まる。龍二は夢を見ていた。

 

「兄貴!」

 

そう誰かに呼ばれた気がした。振り向くとそこには死んだ筈の妹がこっちを見て手を振っていた。龍二は驚いた。しかし,同時にあり得ない光景を前に夢と悟る。現実ならばどれ程良かったことだろうか。

 

「ヒカリ,俺は…」

 

「兄貴、なんでもっと早く来てくれなかったの?」

 

その一言に心が動かされる。そしてあの時の記憶が鮮明に浮かんできた。それは妹のヒカリが,喰種捜査官有馬貴将の手によって殺された時の場面であった。本来なら守れる筈だった。しかし,彼の優柔不断さが彼女の死に繋がったのだ。彼には守れなかったと言う死んでも悔やみ切れない想いがずっとあったのだ。

 

「ごめんな,こんな兄貴で」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「!!!」

 

ここで、夢の世界から一気に現実に引き戻された。そして身体から離れていた緊張という悪魔はまた、龍二を取り巻いた。龍二は急いでその身を起こし,外の様子を伺った。何故龍二が急に目を覚まして起き上がったのか,龍二の第六感がこう叫んでいた。

 

何か来る

 

廃墟を取り囲む,巨大なコンクリートのコンテナが赤い物体によって真っ二つ、或いはバラバラな姿に変貌していたのである。それも全て一瞬の内に。龍二は窓から身体を乗り出し,その何かをじっと凝視していた。

 

「みぃつけたぁぁぁあぁぁぁ」

 

「お前、その姿…」

 

 

彼の前に立ちはだかったのは数日前、自身をコクリアから出してくれた恩人であり、人と人ならざる者の狭間で生きる金木研の姿であった。しかし、以前あった面影は無く、その瞳には何も映されていなかった。何故なら彼の眼球は既になくなっていたからだ。

 

 

「よもりゅぅじじじじし」

 

金木は高速で龍二のいる場所に赫子を伸ばした。しかし龍二は難なく交わし、金木と同じ地面の上に身体をついた。と同時に龍二の足元から赫子が出現し龍二の左足を貫いた。

 

「がっ,,坊ちゃんこの期間に強くなりすぎだ。何があった?」

 

「ぼくはぼくはぼくはぼくは」

 

金木は全身から赫子を放出した。無数の禍々しい赫子が龍二に牙を向ける。

(これだけの赫子,一体どれほどのRC値を)

 

 

 

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