東京喰種 √鬼   作:MM氏

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第十話 痛み

金木の瞳に龍二は写っていないが、それでも金木は正確に龍二に向けて赫子を伸ばした。その速さと強度に先日までの金木とは明らかに実力が違うことを悟りながらも正当なやり方で力を手に入れたわけではないのだと感じていた。

 

「金木,この前までのクールフェイスはどうした?」

 

「ボクはあな、たをぉ殺して」

 

先程から会話が噛み合わない程、金木は意思疎通が通じなくなっていた。そして今は龍二を襲うことだけを目的とした人形と化している。しかし,金木の赫子は龍二に当たらない。

 

(戦いっていうのは如何に冷静にいられるかが鍵だ。だから,そうなっちゃ強くても勝てない)

 

龍二は金木の赫子を避けて,そのまま拳を金木の脇腹に強く入れた。骨が軋む音と共に金木の体はコンテナにめり込む。しかし、直ぐに金木の体は起き上がり,龍二に向かって動き出した。

 

「ぼぐばもうだれにもまげないぃぃぃ」

 

(お前を見ていると余裕のない頃の自分を思い出す)

 

 

龍二は悲しそうな目をしながら,金木に向けて羽赫を放った。金木の体を貫通した羽赫から微量の電流が流れ出し,金木はそのまま地面に膝をついた。龍二はそっと金木に歩み寄ろうとする。しかし,倒れている金木は身体を痺れながらも戦意を喪失させてはいなかった。

 

「よ、もりゅうじぃぃぃぃいいいい」

 

龍二は金木の気迫に押され、身体を少し後ろに下がらせた。金木の身体から新たな赫子が生成されていく。その赫子は百足に酷似していた。赫子の形は本人のイメージにより左右される。金木が百足に似た赫子を扱っている理由は,恐らくヤモリに受けた拷問の影響だろう。耳の中に入れられた百足は金木の心身を狂わせ,トラウマとなってしまったのだ。龍二は金木の赫子を見ながら,様々な想像を浮かべていた。

 

(誰が好き好んでこんな赫子をイメージさせれるんだよ。お前はどれだけのものを背負ってるんだ)

 

百足の形をした禍々しい赫子は龍二に向かう。

 

(この赫子は,当たったらやばい)

 

龍二は赫子を避けながら,金木との距離を大幅にとった。しかし,痺れが治った金木は龍二にすぐさま飛び掛かる。すると,上空に飛んだ金木の身体に向けて龍二の回転蹴りが炸裂した。吹き飛んだ金木はそのまま地面に沈み込むが,赫子だけは自分の意志があるように龍二に襲い掛かる。

 

「ぅぁぁぁぁぅぁぁあぁぁあ!」

 

(こいよ。俺にも少し背負わせてくれ)

 

その瞬間百足は龍二の身体を通り過ぎた。龍二の身体に大きな空洞が空く。そこから噴き出るおびただしい量の血。龍二は地面に膝をついた。

 

「がはっ」

 

「ぁぁあぁぁあぁぁやったよ,おかぁさんんん」

 

龍二の反射神経ならば,金木の赫子を避けることは容易かった。しかし,龍二は敢えて金木の一撃を受けることにしたのだ。それは決して,攻撃を受けても致命傷にならない耐久力の自信や余裕がある訳ではなかった。現に龍二は直ぐに回復することが不可能な程の致命傷を受けていた。口から吐血しながらも、龍二は金木をまっすぐ見つめていた。

 

 

「ぁぁぁぁぁぁああ」

 

「はぁはぁ,何でそんな辛そうなんだよ」

 

「はぁはぁ,ぁぁぁあ1000-7はぁぁ」

 

「どれだけ腹を貫かれようとも腕を失おうと」

 

「おれにぃぃいうばわせぇろぉぉぉぉぉ」

 

「俺に攻撃しているお前の方がずっと痛いよな」

 

龍二の一言に金木は頭を抱えて呻き声を上げた。その声から怒り悲しみの感情が凄まじく感じられる。

 

「ぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあ」

 

金木は叫び声を上げながら,龍二に向かった。無数の赫子が龍二を貫く。もう出血のしすぎで,意識が朦朧としている。

 

「お前は充分強い」

 

龍二は自分を貫いた赫子を押さえ込みそっと目を閉じた。金木は貫いた龍二の身体から自身の赫子を引き抜こうとするが,それは龍二の手によって塞がれる。

 

 

「!!!」

 

次の瞬間,龍二の身体から高密度な電流が流れ出し,そのまま赫子伝いに電流が金木を襲った。しかし同時に龍二の身体にも電流が襲う。

 

「ぁぁぁぁぁぁぁぁあ」

 

 

「がっ,ゆっくりや、すめ」

 

 

金木はそのまま地面に倒れた。既に意識は途切れている。先程のように赫子が動くこともなかった。龍二は自身の体を貫いている赫子を引き抜き,そのまま地面に膝をついた。

 

「流石に血を流しすぎた。これ全部俺の血か…」

(もっと温存しとくんだったな)

 

龍二は金木との戦闘で体力の殆どを使い果たした。しかし,まだ体の緊張を解かずその場に立ち止まっていた。

 

(俺の第六感が言っていたのはこいつじゃない)

 

先程,龍二が休んでいた中急に起き出したのは誰かが来るという直感であった。しかし,それが金木を指していたのではないと龍二は最初から分かっていた。つまり,直感させた人物はまだこの場にいるということだった。

 

「出てこいよ、エト」

 

「久しぶり,もとアオギリの頭領さん」

 

 

不気味な彼女が龍二を見つめていた。龍二は冷や汗をかきながら拳を構えていた。

 

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