「エト,久しぶりだな」
「懐かしいね,こんな形で再開するとは思わなかった」
「久々の再開を祝して乾杯でもって,、そんな訳にはいかないよな」
久々の再会を果たした龍二とエトだが,それは決して感動なものではないものをお互い悟っていた。何せ,今こうして龍二を襲っている金木を洗脳したのは他でもないエトなのだから。龍二は地面に倒れている金木に少し視線を向けて,再びエトに戻した。
「俺はお前達に,」
「……」
「あまりにも謎が多いんだもん。気づいたら直ぐいなくなっちゃう」
「なぁ,エト」
「Vの使いだったのね…」
そう言い放つ彼女の声はとても冷たかった。その声から感じ取れる感情はまさしく怒りであることを龍二は理解した。何も言わずに沈黙を貫く。
「……」
「私達のこと嘲笑って楽しかった?」
「そんなつもりは」
すると,エトの周りに赤い霧が溢れ出し次第に巨大な赫子が露わになった。その赫子が彼女の身体を纏い,体積は数倍膨れ上がる。その後の彼女の姿はまるで怪物だ。ひつつ目の隻眼が彼を睨む。
「あははははは,虚しいな。ワインはいかがかしら?」
エトの赫子が龍二に牙を向けた。しかし,龍二は攻撃が来るにも関わらずそのままその場に立ち止まっている。赫子が龍二を突き刺し,串刺しにされた龍二は壁へと投げつけられた。倒れた龍二はそのまま動かない。
「へぇ…抵抗しないんだ」
「はぁ,はぁ,もう体が動かねぇんだよ」
「それもそうね。でも」
すかさずエトの攻撃は龍二を狙う。無数の小さな羽赫が龍二の身体を貫く。龍二は吐血し、その場でそっと目を閉じた。
(きっと,これは報いだ。俺が犯した様々な罪の)
死ぬ間際,過去の記憶が全て浮かぶ走馬灯というものが存在する。龍二は現実では何も見えておらず、記憶の中で浮かぶ映像をそっと見つめていた。遠い過去の記憶。幼少期から大人になるまで,そして家族,友人,恩人,仲間。様々な記憶が交差する中,大きな心残りが存在していた。
(蓮二,結局ちゃんと話せてなかったな。そして……)
もう殆ど龍二の瞳には何も映っていなかった。ぼやける巨大な怪物の姿に視点を合わせて一言。
「エト,ありがとうな」
その表情はとても穏やかだった。しかし龍二にはエトがどんな表情をしているのか全く読み取れていない。
(おっかねぇ顔してるんだろうな。いつも不気味な顔してやがるけど,キレた時は顔に出やがるからな)
「最後に聞いていい?貴方にとって私達って何だったの?」
その言葉を最後に龍二の意識は途切れた。