ここは,アオギリの樹が拠点としている流島という場所である。この場所は孤島である為、人が寄り付かず喰種達が住むにはうってつけの場所であった。そんな島はアオギリの樹の支配下となっており,未だ人にその場所はバレいない。そして,そんな島には沢山の喰種が住み着いており、皆交戦的な喰種が多かった。昔,教会が建てられていたであろう廃墟の中で,男が1人苛立っていた。
「ちっ,ここ最近半端野郎顔ださねぇな。これから大事な任務があんのによ」
そう呟く青年が1人。彼の名前は霧島アヤト。アオギリの樹に所属する幹部の1人であり端正な顔立ちをしているがその気性はかなり荒かった。現在,行動を共にしていた金木研がしばらく不在のため、愚痴吐いている。
「やっぱり半端者は仕事も半端だなクソが」
「こんなところにいたか…」
そんな所に1人の男が颯爽と姿を現した。暗闇で隠れていたシルエットは月の光によって照らされる。白装束に身を纏い,赤いマスクをつけている彼は,タタラというアオギリの幹部である。彼の目は冷酷でとても冷たい。そんなタタラを見てアヤトは尋ねた。
「タタラ,半端野郎がどこへ行ったか知らないか?」
「あぁ。奴はこの間,エトによって見つかった」
「何だ見つかったのかよ。それでどこにいるんだよ」
「さぁな。現在エトが連れ回している」
「エトの野郎,こっちが忙しい時に」
金木がエトと一緒にいることで任務を放棄していることに苛立ちを覚えながらも何か意味があることなのだと察し,それ以上は口を挟まなかった。
「それで,もう時期なんだろ?例の抗争」
「あぁ。今回の抗争で恐らくCCG側に多大なる犠牲者が出る。その隙をついて鳩の数を減らそう」
「なら,尚更半端野郎には戻ってきてもらわねぇといけねぇ。あんな奴でも戦いに置いては,あんたに一目置かれるレベルだ」
「あぁ。強いが精神的に脆い。あれではすぐにダメになってしまう。ヤモリが居なくなった後での代わりではあるが…」
「半端野郎だから仕方ねぇ。そこは躾りゃいい。あんたが直々に」
「ふっお前では役不足だな」
タタラの一言によってアヤトは表情が般若のようになった。それ程までに金木研に敵対心を抱いている。
「ふざけんな!俺がその気になりゃあいつぐらい」
以前,アヤトは金木研によって完全に敗北している。金木がヤモリに拷問されて日,それまでひ弱だった彼はまるで人格が変わったかのように冷徹にそして強くなっていた。そんな金木はアヤトを圧倒して、アヤトはプライドがズタズタになっていたのだ。恐らく再戦を望んでいるが,今は金木も同じアオギリの樹に属している為,中々望みが叶わないでいた。
「そう向きになるな。…瓶兄弟,そしてヤモリ。今,アオギリの樹は戦力が不足している。だから拡大のためにも新たな喰種が必要だ」
「あぁ、だからこうしてスカウトし回ってる。なぁタタラ,前から思ってたんだがこの組織って幹部はいるが,頭はいんのか?」
アヤトはずっと持っていた疑問を問いただした。現状,アオギリの樹はタタラが指揮をとっているがそのタタラが幹部という名目の以上,後ろには正当な王がいると考えるのは至極当然のことである。
「……あぁ。いるよ」
「じゃあ,何でそいつは一度も顔を出しやがらねぇんだよ」
「…さぁな」
「何だよそれ」
するとタタラはそっと椅子に腰をかけて寂しげな目で地面を見つめていた。そんな様子を見たアヤトは初めてのことに驚いていた。するとタタラは口を動かす。
「かつてアオギリには鬼人と恐れられた喰種が存在した」
「鬼人?初耳だな。強いのか?」
「あぁ。……少しそいつの話をしよう」
普段無口なタタラがこれ程までに口を開くことは珍しいのでアヤトは静かにタタラの話を聞くことにした。