東京喰種 √鬼   作:MM氏

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第十三話 復讐に駆られて

 

 CCG本部から中国に派兵された日本人捜査官,法寺項介。彼は持ち前の実力と頭脳,そして多くの捜査官の力を借りて,中国で危険視されていたSSレート喰種「イェン」を討伐することに成功した。しかし,イェンには弟が存在した。アオギリの樹に属するタタラである。タタラは兄,そして友人を葬った法寺に復讐すべく日本に渡った。そんなタタラであったが,他国そして孤独という二つの檻によって悩まされていた。 

 そもそも言語が通じず,喰種とも意思疎通が図れない。兄共に実力はSSレートでありながらも孤独感に蝕まれていた。そんな彼は,心を閉ざし日本で多くの捜査官や同胞である喰種を無差別に殺していた。全ては兄を殺した法寺という男を呼び寄せるため。しかし,そこでタタラは鬼人と恐れられる喰種と対面することになった。

 

 

「へぇ,お前がここ最近世間を騒がせている凶悪な喰種か…」

 

 

「……」

 

 

「変わった匂いだな。……他所者か」

 

 

鬼人はタタラに質問を投げかけるがタタラは何も答えない。警戒しているのか,或いは隙を窺っているのか。しかし,この時のタタラの内心は

 

こいつは兄よりもずっと危険 であった。

 

 

タタラの兄,イェンは中国で殺戮を繰り返していた赤舌連の頭領であり、当然その実力は折り紙付きであった。そしてその兄の間近にいたタタラは当然兄の強さ恐ろしさを知っている。しかし,目の前の男からは兄以上の何か感じた。普段は好戦的なタタラであったが,この時ばかりは戦うことを諦めた。自身と相手の力量を比較し,いかにリスクを減らすかを考える。その結果,戦わないという選択肢を選んだのだ。鬼人も戦闘意欲がないことを悟ったのか,緊張感を溶かしそっと歩みより急にフレンドリーに話し始める。しかしタタラは日本語を話せない為,鬼人は言語に詳しい友人に頼ることにした。

 

 

「なるほどな,じゃあお前は遥々日本まで漂流した桃太郎って訳だ。復讐のために」

 

啊啊(ああ)我不会原谅杀死我兄弟的人(俺は兄を殺したやつを許さない)

 

「それでお前,鬼退治1人でやるつもりか?」

 

「……」

 

「俺らのグループは頭数が不足しててな、強い奴がいないか探してたんだよ」

 

「……」

 

「どうだ?その感じじゃ仲間もいやしねぇだろ。」

 

 

兄を失い,仲間を失いタタラは天涯孤独の日々を送っていた。日本に漂流したのも己の身のみ,仲間というものの存在を忘れていた。彼にはもう復讐という道以外残されていなかったのだ。しかし,その復讐をやり遂げるのに1人ではあまりに無謀だった。

 

(今俺には,奴らとやり合えるだけの戦力がいる。これを利用しない気はない。それに,この男は誘いを断れば即座に俺の首を捥ぐだろう)

 

タタラがそう予測したのも無理はない。何故なら目の前にいるこの男,陽気に話しながらも決して目だけは笑っていなかったからだ。

 

 

好的(分かった)

 

 

一つ返事で答えたタタラに鬼人は少し驚いた。

 

 

「へぇー。お前みたいなタイプは断るもんだと思ってたが。へっ,何か企んでやがるな。まぁ,こちらとしては有り難てぇ話だ」

 

そう言った鬼人は少し笑いながら,タタラから視線を外し背を向けた。元来,人は背を向ける相手に対して安心感を持っていると言われているがこの場合は少し違った。鬼人はタタラのことを完全に信用しきった訳ではない。それでも背を向けるということは,いつでも殺れるという自信か或いは…。

 

 

 

 しかし,この時タタラも隙をついて鬼人を殺そうとは考えていなかった。自身の復讐の為,そして何より鬼人に対して興味が湧いていた。別に何か決定打があって彼に深く興味が湧いた訳ではない。ただ、何となくをという他ないだろう。

 

 

「一応名乗っとくぜ?俺の名前はーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい,どうして名前のところで止まるんだよ」

 

 

話しが途中で中断され,アヤトはそう疑問をぶつけた。

 

 

「……長く話しすぎたな。話はここで終わりだ。すぐに会議をはじめる」

 

 

「なっ,興味持たせといてそれかよ。…にしても不思議だな。普段無口なあんたがこんだけ話すなんて」

 

 

「それもそうだな」

 

(たまにアヤトを見ると,お前(鬼人)を思い出すよ)

 

 

 

 

「ただいま」

 

その時,二人は突如聞こえた女性の声の方に視線を向けた。するとそこには,綺麗な緑色の髪の毛をなびかせた女性が椅子に腰を据えていた。

 

 

「エトか,どうしたその傷は」

 

エトの体に刻まれた傷を見て,タタラはそう問いただす。アヤトもその様子に驚いていた。

 

(こんなに強い奴が…)

 

 

「うーんちょっとね」

 

そう答えたエトの表情は少し切なげだった。そんなエトの感情を読み取ってか,タタラは会議の時間を少し遅らせることにした。アヤトも一度その場から離れるよう指示される。タタラはエトが傷を負っている場所に包帯を巻いた。

 

「中々深いな。…奴と久々に会ったのか?」

 

「うん。それにしても,アヤト君に懐かしい話してたのね」

 

「聞いていたのか」

 

「えぇ。アヤト君は何も知らないものね。彼が……」

 

 

「そうだな。エト,何があったか聞かせてくれ」

 

二人はそのまま,奥の部屋に入っていった。

 

 

 

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