「あなたが僕を,ここまで運んでくれたんですね」
そう言ってベットから起き上がろうとした金木だが,自身の身体が思うように動かないことに気づく。龍二は無理に起き上がろうとした金木の元により肩を貸した。
「感謝しろよ?細身と言っても怪我人の身体にはちと応えたぜ」
「ありがとうございます。............あなたには聞きたいことが沢山あります」
「....聞きたいことね。俺もあるんだがな」
「四方蓮示さんについてですね」
「.....まぁそれもあるがな」
彼が口にした”四方蓮示”という人物。それは”あんていく”で裏方の仕事を受け持ち,同時に金木に対して喰種としての戦い方の基本などを教えてくれた,いわば師匠のようなものでもある。彼のおかげで金木が救われた部分も数多くあった。そんな彼と苗字が一緒な龍二をただの偶然ではないと金木は悟った。
「四方さんの親族の方ですか?」
「まぁ血縁上,兄弟だな。俺が兄であいつが弟」
血縁上と言う言葉に金木は違和感を感じたがそのまま話し続けた。
「やはりそうでしたか。四方さんの兄弟ということならその強さにも説得力があります。四方さんのことで何か聞きたいことはありますか?」
「..............いや大丈夫だ」
間を置いて龍二はそう答えた。予想外の反応に驚く金木。
「やけにあっさりですね。.....いいんですか?」
「......あぁ。お前があいつを知っている。ただそれだけで十分だ」
「それは一体どうゆう......」
「別に意味なんて無ぇよ」
そう言った龍二の顔を見て,何か思い詰めているのだと感じた金木だが,そこから深く詮索する気はなかった。
しばらくすると龍二が口を開いた。
「なぁ,お前はなんでアオギリに入ってるんだ?」
問いかけに言葉を詰まらせる金木。
「アオギリは凶悪な喰種達の巣窟。お前もそれは十分承知な筈だ。お前は人間を殺し蹂躙し喰らうためにアオギリに入ったのか?」
その問いに金木は口を開いた。
「いいえ,僕は.....守りたいんです。大切な場所を.....。そのためにアオギリに入って,アオギリの標的からあんていくを」
「なるほどな....身を削ってるって訳か」
「だから僕は.............その為に強くなりたいんです。大切な人,場所を守れるぐらいの強さが。」
そう強く放つ金木に龍二は冷静に言葉を返した。
「お前が強さに執着する理由がわかったよ。だがな金木。.....................強くてもどうにも出来ないことだってある」
自分が求める強さという言葉を否定され,金木は少しだけ苛立ちを覚えた。彼が今,すがれるものはもう強さしかないのだ。
「それは,あなたのことを言ってるんですか?」
その発言に龍二は一瞬黙った。
「.............。結局,周りによって左右されちまう部分っていうのがあるんだよ」
「それじゃあ....何が......正解なんですか?僕は一体どうすれば」
「.........正解なんてものは無ぇよ。.......まぁなんだ。俺が言えることは選択を誤るなってことだ。大切なものを守りたいなら尚更な。俺は行くぜ」
そう言って龍二は金木を背に扉から出て行った。追おうとした金木だが負傷していた体のせいでベッドから動けずにいた。
「僕が選んだ選択は間違いだった,のか?」
side
コクリア襲撃事件から3日が経ち,本来,既にこの場にいる筈であろう青年の姿はどこを探しても見つからない。
「帰ってこないね。金木君」
暗闇の中で彼女が呟いた。すると上空を覆っていた雲が散らばりだし,
光が差し込んできた。月明かりで露わになるのは紫のマントに身を纏い,体を包帯でグルグル巻きにしている彼女だ。その容姿は一言で言うと不気味というほかない。
「誰かに背負われ連れ去られたと証言している奴が複数いる」
その彼女の横では白装束のようなものに身を纏い,口は赤いマスクによって覆われている男が1人いた。そんな彼の瞳には光が無かった。
「連れ去った?私たちみたいなことしてるね」
「どちらにせよ,うちの駒を連れ去るのは反逆行為とみなす」
「見つけ次第消す?」
「いや,証言によれば金木研の体はボロボロだったらしい。あいつをそこまで追いやったのだというのなら........見つけ次第スカウトするよ」
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