四方家に生まれた長男,龍二,ヒカリ,蓮示。3人は優しい父,そして厳しい母に育てられすくすくと育っていった。しっかり者の長男に自分勝手な長女,そしてそんな姉とは対照的に次男は大人しく無口に。そんな温かな家庭は,ある日突然消え去った。彼らの父親がCCGに捕まってしまい,また母親も復讐に駆られ,3人の元に帰らなくなってしまった。まだ幼い3人を残して,両親いなくなってしまったのだ。
そこからは龍二が住む場所を探し,ヒカリと蓮二を餓死させないよう食料を、調達していた。両親がいなくなった後,龍二が大黒柱として2人を支えた。当然、ヒカリと蓮示は長男である龍二を慕い尊敬していた。
しかし,そんなヒカリと蓮示の前からある日突然,龍二はいなくなったのだ。ある置き手紙を残して。
「お前らの兄であることに疲れた」
2人は信頼していた兄に裏切られたと感じた。しかし,ヒカリは自分達のせいで兄は我慢をしていたのではないか,兄という立場なので全てを我慢して2人に尽くしていたのではないのかと悟り,龍二のことを責めることはできなかった。
それ以降,弟である蓮示を導くため,姉としてしっかりしはじめた。今まで兄がおこなっていたことを,弟の手本になるべくこなしていった。蓮示も次第に兄のことを忘れていき,ヒカリと協力して生活した。
そして,2人は育ち,やがてヒカリは霧島アラタという男性と恋に落ちた。彼はとても優しい人間であり、2人もどこか兄に似ていると感じていたのだ。そして月日が経ち,ヒカリとアラタは結ばれた。弟である蓮示は,姉ヒカリの結婚を心から喜んでいたが,内心では少し寂しいと感じていた。しかし,そんな蓮示の気持ちを悟ったヒカリは蓮示にこう投げかけた。
「レン,あたしに子供ができようがババアになろうが,いつまで経ってもあたしはあんたの姉ちゃんだよ」
その言葉を聞いて,蓮示は安心した。蓮二は姉が兄同様,自分の前から消えてしまうのではないかと心配していたからである。蓮示にとって姉はかけがえのない唯一の家族なのだから.......。
それからヒカリとアラタの間に子供が2人できた。蓮示は心の底から祝福し,2人の子供の世話などもヒカリから任された。子供の名前には
姉が董香,弟は絢人と名付けられた。幸せだった。まるで,昔のように家族5人で生活している時のように。
しかし、現実は残酷だ。その幸せもすぐに消えていった。近所の人から通報が入り,彼らが喰種であることが噂されていたのである。そして,買い物から帰る家族4人の前に眼鏡の男が立ちはだかった。情報を聞きつけた時にはもう遅かった。姉はそのまま,捜査官の手によって死んでしまったのだ。
蓮示は、最愛の姉を失ってしまったのだ。そして絶望の淵にいた蓮示の前に,数年ぶりに長男である龍二が現れたのだった。なぜこのタイミングで現れたのか。蓮示は龍二の襟元を掴み溜め込んでいた感情をぶつけた。
「今更,なんの様だ??俺たちを見捨てたあんたが!」
「蓮示,俺は...」
「俺の名前を呼ぶな!!!なんで今なんだ。姉さんがいなくなった今現れたんだ。....俺は....あんたをこれからもずっと恨み続ける。姉さんもそうだ!!お前が,姉さんの代わりに死ねばよかったんだ」
強く言い放ち,蓮示は龍二の前から去っていった。呆然としている龍二はそのまま膝から崩れ落ち地面に屈んだ。
「すまない,....蓮二,ヒカル」