「分かんねーんだけど、これで授業になってんのか?」
「ああ、心配いらない。予測不能な展開が彼らの刺激になっている。だからミルコは自然体でいてくれ」
「そーなのか。ヒーロー科の先生って、案外楽なんだな」
「いや、それは違うぞ」
ミルコと相澤が話している間、緑谷、爆豪、飯田、轟の4人は真剣な眼差しをしていた。
「戦闘が始まったらまず、かっちゃんは僕らとミルコさんの間で爆発を広範囲で起こして、視界を遮って欲しいんだ。そして、きっとミルコさんはその爆煙の中、轟くんを狙って真っ直ぐに突っ込んでくると思う。乱戦の時の氷結は1番厄介だろうからね。そこで飯田くんの出番だよ。轟くんを担いでもらって、ミルコさんがやって来る前に、素早く爆煙の中に飛び込んで距離を取って欲しいんだ」
3人は黙って緑谷の話を聞いている。
「飛び込んで来たミルコさんを迎え撃つのは僕とかっちゃん。僕が近距離でかっちゃんが遠距離。隙を与えず、どちらかが狙われたらカバー。爆煙が晴れる直前、僕も遠距離攻撃を仕掛けるから、それを合図にかっちゃんは思う存分攻撃を仕掛けて。さっき、ミルコさん、かっちゃんの爆発を正面から受けることはしなかった。だからあの驚異のスピードでまた避けていくはず。そして、飯田くんならそれに追いつけるはずだよ。背後まで接近したら、轟くんは飯田くんの背中からそのままジャンプして、懐に飛び込むんだ。そして、最大火力で攻撃をして欲しい。……それで、決着が付けばいいんだけどね」
飯田と轟の2人は頷く。
「了解した。緑谷くんには驚かされるな」
「こういう時、お前の作戦は頼りになる」
「ありがとう。……ところで、か、かっちゃんは、どう、かな?」
爆豪はそっぽを向きながら、
「……好きにしろや」
と呟いた。
「ありがとう!」
緑谷は拳を握る。
「飯田くん、轟くん、かっちゃん。みんなでミルコさんに勝とう。このメンバーなら絶対にやれ、ぐはっ!!」
全員、何が起こったのか一瞬分からなかった。
突然、緑谷が横に吹っ飛んだのだ。
「ヴィランの目の前で、お前たちは作戦会議なんてやるのか? 油断してんじゃねー!」
ミルコの仕業だった。
「「ええええええ!?!?」」
この授業、対ヴィラン戦を想定してたのかよ。言ってねーし。
不意打ちじゃん。
緑谷、かわいそう。
クラスメイトたちは各々思うことはあるが、しかし言葉には出せなかった。
「てんめっ!」
憤怒する爆豪。しかし、彼の腕は既にミルコによって拘束され、そのまま至近距離で蹴りを入れられてしまい、その場で悶絶する。
轟は、地面を氷結しようと氷を張るものの、それも遅い。
ミルコは轟に向かってジャンプし、そのままダイレクトキックを決めた。
一旦距離を取ろうと走り出した飯田に、ミルコは逃すまいと彼の胴体を両足で挟み込むと、そのまま地面へと叩きつけた。
3人を戦闘不能にするのにかかった時間、わずか8秒。
1年A組に絶望感が漂う。
「強すぎるだろ」
「ううっ、痛そう」
「あれじゃ反応できないわ」
「作戦も台無しですわ」
そんな中、1人のクラスメイトが立ち上がった。
「俺が相手だ」
あの光景を見た後に、誰が立ち向かえるというのだろう。
そんな向こう見ずで勇気のあるやつとは、一体……。
峰田だった。
いつの間に準備をしていたのだろうか。峰田の学生服に、たくさんのモギモギがくっ付いていた。
クラスメイトたちは瞬時に察した。
「最低だ」
「クソだな」
「最悪」
「峰田かっけー」
何を隠そう、峰田は、自身の能力を使い、ミルコに引っ付く気でいるのだ。
倒すとか、やっつけるとかいう問題ではない。
ただ、彼の欲望が絶望に勝ったというだけの話。
しかし、彼の結末は、上空から降ってきた、ウサギのかかと落としによって幕を閉じられた。
峰田は、地面に埋まっている。かろうじて上半身だけは地上に出ている状態。
そして、案の定、気絶していた。
「なんだよこれ、取れねー。あっ、取れた」
ミルコの足にくっついていたモギモギがコロコロと転がる。
「さあてと、次はどいつだ? 誰でもいいぞ、どっからでもかかってこい! ん!?」
そんなミルコの威勢の良い台詞は、彼女自身によって中断され、と同時に彼女は、後ろを振り返り、咄嗟にガードした。
「おまえかー!」
緑谷の飛び蹴りを防いだミルコ。
緑谷は、背後から奇襲をかけようとしていたようだ。
緑谷は悔しそうに唇を噛んだ。やはり防がれたかと。その頬には汗が垂れ、焦りの表情が見て取れた。
「でも、こういう、ことですよね」
「そうだ。そういうことだ」
緑谷とミルコ、2人は目を合わせ、どちらからともなく、ニヤリとした。
緑谷は、お構いなく、休みなく、ミルコに攻撃を繰り出していくが、次々とそれをいなされてしまう。
緑谷の攻撃が止み、一旦距離を置く2人。
「緑谷とか言ったな。お前は私と違って考えて動くタイプだ。分かるか? パワーにばっか頼ってんじゃねーって言ってんだ!」
今度は私の番だと言わんばかりにミルコからの蹴りを受ける。
そんな1発の反撃だけで、体制を崩してしまう緑谷。
大きく避けるだけで精一杯だった。
今の僕じゃ、力勝負じゃ、勝つことはできない。……そうか、ミルコさんは考えず反応で動くタイプ。つまり勢いがあるんだ。そういう人に対処するには……。拘束するしかない!
ミルコさんなら大丈夫と確信し、叫ぶ。
「ミルコさん。僕の全力受けてみてください!」
「ははっ、何だ、ようやく本気か? ああっ、いいぞ、来い!」
緑谷の全身からプラズマのようなものが発生し始める。
「フルカウル20%。うううおおおおおお!!」
OFAによりスピードとパワーを兼ね備えた緑谷は、今打てる最大出力のパンチをミルコに向かって打ち込んだ。
緑谷に手応えなど無かった。
しかし、それで良い。
ミルコに少しの隙が生まれればそれで。
緑谷は、なんと峰田の元へ真っ直ぐに飛んでいくと、気絶している彼を地面から拾い上げた。
「峰田くん、峰田くん」
「うっ。お、おお、緑谷か。助けてくれたのか。サンキュー、な」
「気がついてくれて良かった。急であれなんだけど、僕と一緒に戦って欲しいんだ」
「は!?」
「君の力がどうしても必要なんだ。峰田くんにしかできないことなんだ。やって、くれるかい?」
峰田は、少し照れたように頭をかいた。
「へへっ。緑谷にそこまで言われちゃーな。俺も男だ。で、何をすればいいんだ?」
緑谷と峰田、2人が手を組んだ。