ダンまち ~孤高の剣士の英雄譚~   作:キリト・クラネル

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 《インフィニット・オンライン 孤高の剣士》の主人公をダンまち世界に転生させる話の始まり始まり~()

 本作はIF展開となります。《孤高の剣士》のIS学園襲撃時、アラクネの奇襲で和人の腹に穴が空いたシーンが、心臓を撃ち抜かれる展開に変わったバッドエンドです。

 ユーリ様考案のバッドエンド展開を流用しているので許可は取れてます。

 ではどうぞ。


序章 ~異界輪廻~

 

 

 ――気を抜いた訳ではなかった。

 

 ナノマシンを埋め込まれた眼(ヴォーダン・オージェ)、胸に埋め込まれた()()()()に入っている(ヴァ)(ベル)からの声かけ、培ってきた勘など、現状出せるだけの手を尽くしていた。

 だが、下手を打った。

 なんて事はない。生身には疲労がある。何十分と動き続ければ全身が疲労を訴え、動きが鈍くなるのは自明の理。約三ヵ月前まで寝たきりだった身だ。十分足らずとは言えISを相手にむしろよく動けた方だろう。

 

 ――そんなもの、なんの慰めにもならないけど。

 

 致命傷だった。

 胸のコアさえ無事なら、俺はたとえ頭や心臓を破壊されようと再生できる。今回の学園襲撃に際して【黒椿】を使う気は無かったが、死にそうな時は使うつもりでいた。

 

 だが、それは傲りだったのだろう。

 

 一発。拳ほどの砲弾が、俺の胸に直撃した。コアが壊れたかは分からない。ヴァベルの注意も逸れていたのか、シールドが発生する事もなく、俺の胸の中心――心臓部分は大きな穴が穿たれた。

 ごぽ、と血が噴き出る。

 胸から。

 口から。

 命の源が、流れ出る。

 

「――和人君ッ!!!」

 

 傍らから、悲愴な叫びが上がる。

 それすらもどこか遠く感じる。近くから聞こえるのに、音の響きが彼方のようだ。俺の生が遠のいている証拠。俺の意識が沈み始めている証左。

 全身から力が抜けていく。

 ――それでも、倒れない。

 残る力で倒れるのだけは拒絶する。視線を上に上げれば、栗色の髪の女性の背後に黒い球体――【黒椿】のコア――が転がっているのが見えた。壊れてはいないが、完全に取れてしまったらしい。

 

「……はっ」

 

 皮肉なものだ、と。胸中で独り()ちる。

 アレのせいで全てが狂った。けれど今は、アレが無いから死にそうになっている。そして俺は死ぬのだ。このまま、何も為せず――――

 

 未来を、喪うのだ……

 

「和人君、和人君ッ!」

 

 自嘲の笑みを浮かべていると、眼前で尻もちをついていた女性――結城明日奈が、涙を浮かべながら手を伸ばしてきた。繰り返し名を呼ぶ姿はまるで幼子のよう。

 ――どこかで、見た顔だ。

 なんとはなしに考える。

 答えは見つからなかった。けれど、どこかおかしくて、懐かしくなって。

 寒くなる体に、熱が灯った気がした。

 

「逃げ、ろ……」

「やだ、やだよ! 死なないで! 私、やっと気づけたのに……!」

 

 涙は滂沱となり、頬を伝い、落ちていく。それだけ悲しんでくれている事が、不謹慎だと分かっていても嬉しく思った。

 受け入れられていたのだと。

 ――だからこそ。

 彼女を、死なせたくないと思った。

 

「ぁ、あ……!」

 

 冷えた体に鞭を打つ。

 血が少なくなったのだろう。体の感覚はほとんど麻痺し、視覚が無ければ立てているかも、刀を握れているかも分からない。こんな体たらくではロクに剣なんて振れやしない。

 無駄だと、理性が叫ぶ。

 もう終わりだと本能が沈黙する。

 憎いと、獣性が慟哭する。

 ――それ以上に、悲しかった。

 未来を守れない事が。もう、生きられない事が。

 せめてもう少し外れてくれていれば。せめて、【黒椿】が体内に残っていれば、まだ希望はあったのだ。

 

 だが、そうはならなかった。

 

 たらればの話は意味がない。

 

 だから――繰り言は、もう終わり。

 

『……正気かよ』

 

 くぐもった女の声。空から舞い降りた、蜘蛛の如き色合いのIS。アメリカ製第二世代型IS【アラクネ】が構えもしないで地面に降り立った。

 その佇まいから、もう俺が戦えないと見ている事がよく分かる。

 油断ですらない。

 軽んじてもいない。

 ただ、もうコイツは無理だと、経験と道理で判断している。

 それに反し、未だ剣を手に立ち向かおうとしている俺を見て、正気を疑っている。

 ハッ、と俺は口角を挙げた。血を吐くが、その量も初期程ではない。むしろ体が軽いくらいだ。不思議な高揚感を覚える。

 

「あいにく……正気じゃ、生きてられなかったんでね……」

『だからって、お前……』

 

 世界に仇成すテロリストをして、俺の行動は埒外にあるらしい。絶句と動揺が声音から感じ取れた。今すぐに攻撃を仕掛けてきそうな雰囲気ではない。

 それをいいコトに、俺は意識を背後に向けた。

 まだいる明日奈と、その後ろの学生達。

 

「早く、逃げろっ」

「で、でも……!」

 

 生徒達の動揺。

 明日奈の震える声。

 

「早くしろっ! 俺を、無駄死にさせる気かァッ?!」

 

 残る力を振り絞って、背後を振り返り、怒声を上げる。血が噴き出るが知った事ではない。死にゆく俺よりも、まだ生きられる明日奈達の方がもう大事なのだ。

 俺の怒号に、明日奈がひっ、と怯えた声を上げた。表情は歪んでいる。悔しさと、悲しみ。

 ――その顔を記憶に刻みながら、俺は踵を返す。

 返事は聞かない。

 もう意識の外だ。

 

「お……ぉ、ぉぉおおあああああああああッ!!!」

 

 今はただ、眼前の敵を斬り伏せる――――ッ!!!

 

 

 

     ***

 

 結論から言えば、桐ヶ谷和人は死んだ。

 

 心臓を撃ち抜かれ、血反吐を吐きながらも、IS学園を襲撃した中の一機【アラクネ】を一刀だけで応戦。あまりの惨状に身が竦んだ生徒や一般人を守りながら、ISを起動出来るようになった各国操縦者、クロエ・クロニクル、織斑千冬、更識楯無らが駆けつけるまでの約二分間を耐え凌いだ。

 後にISコアを宿していた事で物議を醸す事になり、その遺体の処遇を巡って波乱が起きるが、天災・篠ノ之束の介入により遺体は回収され、誰にも知られぬ地へと丁重に弔われたという。日本には、遺骨なき墓が国葬で建てられていた。

 それでも彼を悪く言う人間は少なからずいた。

 常識に照らせば、彼の行動は異常だっただろう。理解し難いからこその否定。あるいは、称賛される少年を認めたくないが故の防衛反応。

 

 だが――多くの人間は。中でも直接守られた人達は、彼の行動に深く感謝し、同時に死を深く悼んだ。心臓を破壊されて尚戦い続けた様は正に英雄そのもの。

 

 ――仮想世界でも、そして現実世界でも多くの人を救った彼は、現代史に挙げられる英雄として讃えられるようになった。

 

 桐ヶ谷和人。

 通称・キリト。

 

 

 

 数々の偉業から、人々は彼を指してこう呼ぶ――――【解放の英雄】と。

 

 

 

 ――――そんな彼の魂は、いま。

 

 

 

「ただいまー! ……って、いない? 畑にでも行って……あ、置手紙だ。なになに……『キリトへ。お祖父ちゃんがモンスターに殺されてしまいました。それから一ヵ月待ったけど帰って来ないし、お金も尽きそうなので、僕はオラリオに行って冒険者になります。キリトも良ければ来てね。ベルより』…………いそいでしたくしないと」

 

 

 

 遥か異界の彼方にて、新たな英雄譚を築かんとしていた。

 

 






 前半のほとんどはメッセで送ってくださったバッドエンド集そのものという事実()
 ユーリ様、容赦無さ過ぎやで()
 明日奈病むしかないやんこんなん……()


キャラ説明
・桐ヶ谷和人
 SAO×IS作品《孤高の剣士》における主人公。
 2025年6月時点で11歳。誕生日がくれば12歳。
 元はIS主人公織斑一夏だったが、二次あるあるのアンチ風潮で貶められ、第二回モンド・グロッソの時にオリ兄ともども誘拐されるも、見捨てられ、研究所でコアを埋め込まれた。日本に戻るも行き倒れ、そこを桐ヶ谷家に拾われ、《桐ヶ谷和人》になる。
 性格は和人、出生など現実の立場で一夏の要素が強い。
 元多重人格者。
 もともとの優しい人格、生存本能、憎悪の人格に分裂していたが、SAO時代に統合され、《ロスト・ソング》編に於いて復讐心を完全に超克している。
 SAOの劇場版ラスボスを実質ソロ撃破、そのあともソロプレイで他を圧倒。リアルでも対IS武器を用いて生身でISをギリギリ撃墜している実力者。本編だと腹に穴が空いた状態でアラクネを斬鉄で制していたりする。

 ”平行世界”から来た未来のユイ曰く、世界を滅ぼした事もあるそうな。

 和人の経験と見識、一夏の生活能力、ⅩⅢ機関の武器と戦法など、オールマイティーな強さを持つ。
 彼と張り合えるのは(世界)(最強)千冬、()()直葉、未来電姉ユイ=ヴァベル、コピーAIキリカの四人だけらしい。



・キリト・クラネル
 ダンまち主人公ベル・クラネルの義弟として転生した姿。
 容姿は黒目黒髪。GGOの男の娘キリトを幼くしつつ、キリッと鋭い目つきにした感じ。普段は柔和。
 相変わらず黒ずくめ。ベルが白兎ならキリトは黒狼。


・結城明日奈
 言わずと知れたSAO原作ヒロイン。
 孤高の剣士に於いてはサブヒロイン。本編だと腹に穴が空く直前で、ヴァサゴが遠隔操作する無人機に殺されかけたところをプログレッシブ版のように救われ、恋心を自覚した。
 つまりこの明日奈、恋心を自覚した瞬間死別で失恋という悲惨という言葉では語れない筆舌し難い結末を味わっているのである。
 明日奈でなくても病むわこんなん()

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