タイトルの如く、我が家に住むことになったエルフのお話。


この小説は『小説家になろう』様にも掲載していたものを、僅かながらに改訂して再び掲載しています。



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あらすじよりも注意書きの方が長い不思議


我が家のエルフさん

 突然のことになるが、我が家にはエルフがいる。

 

 エルフ。そう、エルフだ。指輪ほにゃらら、ほにゃらら島戦記などに登場する、架空の生物である。

 

 物語にしか存在し得ない生物が、なぜこの鉄が走り空を飛ぶこの現代社会にいるのか。長くなるので要約してしまえば、所謂『異世界転移』というヤツである。

 

 エルフといえば魔法に長けた種族として有名だ、それぐらいぶっ飛んだ魔法の一つや二つ、あってもおかしくないだろう。

 

 事実、我が家のエルフに聞いたところ「転移系の魔法にも色々種類がある訳。同じ空間を行き来したり、もしくは自分のいる所に物を取り寄せたり。中でも一番難しいのが自ぶ」無駄に長いので再び要約するが、つまりはエルフにだけ伝わる秘術を使ったということだ。

 

 再び元の世界に戻れる保証がない上、失敗する可能性も高い魔法であるらしい。そうまでしてなぜこちらに来たのか甚だ疑問なのだが、本人に直接聞くと「なんかこっちの方が面白そうだったから」とのこと。ただのアホだ。

 

 

 それはさて置き。エルフという種族は、総じて美しいものだと聞いている。実際我が家のエルフも中身はともかく、外見はとても綺麗である。中身はともかく。

 

 金糸のような金色の髪に、青宝石ともいえる碧眼。肌は透ける程白く、美しいという言葉を形にした端麗な顔立ち。羞花閉月、もはや自分の語彙の少なさが不甲斐なく感じるほどである。

 

 外見のついでに言っておくのだが、もちろん耳先は葉っぱに似た形で尖っている。

 

 何度か触らせて貰おうと頼んでみたのだが、一度として触らせてくれたことはない。もっとも、寝ている間にたっぷりと触らせて貰ったので、今では特にその必要性は感じていない。

 

 ちなみに、相手から「さ、触らなくていいの?」と尋ねてきたからと言って、調子に乗って「しゃぶらせろ」と言うと、全力で殴られることになるので気を付けて欲しい。

 

 

 ああ、今更ではあるが、我が家に住むエルフ。名を『リリーベル・オール・ヴェルスーニア』という。

 

 本人曰く「こう見えても私、エルフの中でも偉いほうだったんだからね。精霊の加護だって他の人より多かったし、魔法だってたくさん使えたのよ。しかもパパは村長やってたんだから!」ということだ。

 

 ない胸を一所懸命張っていたが、全て過去形なのが彼女の残念なところである。

 

 彼女の出生だが、話の通り村長の一人娘で、蝶よ花よと育てられてきたらしい。大事な箱入り娘というやつだ。

 

 そのせいか我が家に来た当初と言えば、それはもう我が侭し放題であった。あれやってこれやってと、自分で動くことはほとんどなかった。それでも我が家の両親はとても嬉しそうに相手をしていた。

 

 本人は両親を召使いのように思っていたらしいが、実際は「なんだか孫ができたみたい」と完全に子供扱いであった。なんとも残念なことだが、両者とも満足しているのだから良しとしよう。

 

 ちなみに現在はそんな様子は全く見せず、我が家の両親を本当に父母と同じように「パパ、ママ」と呼んでいる。父の肩を揉み、母と料理をする。完全に家族の一員だ。

 

 母が「あんたリリーちゃんの代わりに異世界帰りなさい」と言うぐらい、欠かせない存在なのだ。

 

 しかしちょっとばかりむかついたので、寝てるリリーベルの鼻に牛乳を流し込んでやった。危うく魔法で殺されるところだった。

 

 

 魔法と言えば、彼女はこちらの世界でも魔法を使うことができる。もちろん使える数は断然減ったし、威力も相当落ちている。

 

 その状況に愕然としていたが、使えるというだけでも十分凄いのだ。そう言って慰めると、五秒程で立ち直って偉そうにしていた。もはや残念を通り越して憐憫の念すら浮かぶ。

 

 しかしなぜ使えるのか。『こちらの世界には精霊が存在せず、魔法を使うことができない』というのがよくあるパターンである。

 

 だが彼女はこう説明してくれた。

 

「精霊はこの世界にもいるわよ。特に木や草花といった、自然の物に多く宿ってるわね。後は古くから使われてる物にも宿ることがあるわ。使いこまれた道具や、愛され続けた人形とかにもね」

 

 つまり、精霊とは付喪神みたいなものなのだろう。ならばと、小学生の頃友達の兄から貰った未だ現役のエロ本を取り出したら、顔が三倍に腫れる程叩かれた。

 

 この要領で自分の胸も叩けばと言ったら、その倍になるほど叩かれた。間違ったことは言っていないのに。

 

 余談だが、持ってきたエロ本にはしっかりと精霊が宿っていた。リリーベルは何とも複雑な表情をしていたが、十年以上の時を経て尚使われ続けている代物だ、こちらとしては当然だと頷かざる得ない。使うというとこがミソ。

 

 

 この世界は精霊の数が非常に少ない。実に非情である。実際問題、シャレてる場合ではないほどに非常事態だったりする。

 

 これはリリーベルの受け売りだが、エルフという種族は、精霊からの加護を受けて成長していく生物であるらしい。

 

 精霊を取り込み、体内に廻らせ、糧とし、力と成す。力を失った精霊は魔法と共に排出され、自然の中で再び力を得て、また取り込まれる。成長ないしは老成するには精霊の存在が必要不可欠なのだ。

 

 ちなみに、加護と魔法の強さの関連性はここにある。加護が多い、つまりは取り込む精霊の数も多く、排出する数も自然と多くなり魔法の威力が上がるのだ。

 

 そのため、例え人より多く精霊を取り込んだからといって、その分放出もしているので成長が早まるということはない。精霊は常に一定量しか体に収まっていないのだ。

 

 言ってしまえば、エルフとは精霊のでっかい塊のようなもの。

 

 例えるならば、雪が一番近い。一つ一つは小さな結晶だが、纏まることで大きく白い塊となる。もっとも、原子でできている人間も似たようなものであるが。

 

 

 話が逸れたが、要するに精霊が少ないこの世界では、リリーベルが成長できないということだ。全くできないという訳でもないが、これでは何百年、何千年の時を要することになるのだろう。非常に非情で、無情。

 

 リリーベルは「大丈夫よ。エルフはもともと長命な種族なんだから」と何でもないように話したが、夜に一人で泣いているのを知っている。

 

 大丈夫なはずがない。

 

 自分がみんなを忘れるより、みんなが自分を忘れるほうが、ずっと悲しいのだ。

 

 一人取り残されることが、どれだけ辛いことか。

 

 それを見て決めたのだ。

 

 必ず方法を見つけ出すと。そして、この命ある限り、ずっとリリーベルの隣にいると。

 

 

 

「って明日の結婚式の時話そうと思うんだけど、大丈夫だよな?」

 

「それを本気で大丈夫と思っているアンタの頭が大丈夫じゃない」

 

「とか口言いつつも、顔赤らめてにやにやしちゃうリリーベルさんマジ可愛い」

 

「ううううるさいうるさいっ!」

 

「ツンデレいつもごちそうさまですって待て、魔法はダメだ危ない待て待て待てって何で褒めてんのに俺吹き飛ばされ――っ」

 




諸君、私はエルフが好きだ以下略。

『エルフ!エルフ!エルフ!』



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