ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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本作序盤のエイラは10歳なので原作よりも幼くなっています。また、辻褄合わせにやや強引な設定も含みます。そこのところご了承いただければれば幸いです。


スオムス編
スオムスの魔女


1939年10月

 

 スオムスの航空ウィッチにはある共通点がある。それは訓練生の時よりも任官してからの方が空を飛ばなくなる、というものだ。

 カールスラントやブリタニアといった大国と違い、北欧の小国のスオムスは物資も装備品も十分にない。そのため少ない物資は貴重なウィッチを戦力化するための訓練部隊に回され正規部隊にはまともな補給がこないということがよくある。少ない物資をやりくりするためウィッチ達が空を飛ぶのは稀なことであった。

 この頃のウィッチの多くは第一次ネウロイ大戦を経験していないため戦争というものを知らず人々を守るためではなく、多くのウィッチは空への憧れからで飛んでいた。現在、カレリア地方のオラーシャ帝国国境付近を飛んでいるスオムス空軍軍曹、エイラ・イルマタル・ユーティライネンもまたその一人であった。

 

「久しぶりに飛べると思ったらただの国境警備任務とかつまんねーの。どうせなら模擬戦とかがよかったな」

 

 他に誰もいないからいいものの上官に聞かれたら説教されそうなことを言っているが、これはスオムス空軍のウィッチが誰もが思っていることであった。現在のスオムスにおいてウィッチになるには士官学校でおよそ一年の教育と飛行訓練を受けた上で試験に受かる必要があり、誰もがなれるわけではない。試験に受かり自由に空を飛べると思っていた矢先物資不足で空が飛べないという現実に直面しショックを受け予備役編入を望む新人ウィッチも少数ながら存在する。例に漏れずエイラもまた着任1ヶ月でその現実に直面していた。

 

どうせ誰も見てないんだしアクロバット飛行でもしようか、などと考えていると通信が入った。

 

『こちらラッパーランタ基地ルーッカネン中尉。イッル、任務を中断し即時帰還しろ』

 

「まだ予定の半分も飛んでいませんがもう帰還ですか」

 

『訳は帰ってから話す。即時帰還だ』

 

「了解」

 

エイラはふぅ、と一息つくと

 

「ビックリしたー、サボろうとしたのがバレたのかと思った」

 

※ ※ ※

 エイラが帰還するとブリーフィングルームに行くよう言われ、ブリーフィングルームに入ると第24戦隊第二中隊の全員が揃っていた。

 

「ユーティライネン軍曹、ただいま帰還しました」

 

「ご苦労様、イッル。席についてくれ」

 

エイラが席につくと第24戦隊第二中隊長のエイニ・アンティア・ルーッカネン中尉が話し始めた

 

「さて、イッルに任務を切り上げて戻ってきてもらった理由だが、オストマルクの防衛ラインが突破された。詳細は不明だがカールスラントも大打撃を受け現在撤退中だ」

 

その言葉にエイラ達は驚きの声をあげ質問を始めた

 

「撤退ってどれくらいですか!?」

 

「うちから義勇軍を送るってことですか?」

 

「被害はどれくらいでたんですか」

 

次々に出る質問に対してルーッカネンは

 

「静かに!」

 

その言葉とともに皆が質問をやめるとルーッカネンは軽く咳払いして話を続けた

 

「カールスラントよりも問題はオラーシャだ。オストマルクの突破により生じた軍事的空白を埋めるようとした結果、オラーシャ方面が突破された。このままでは今年中にネウロイがスオムスに攻めてくる可能性がある」

 

その言葉に皆がざわついた

 

「現在の配置ではやや戦力が足りないと上層部は考えている。そのためヘルシンキの第28戦隊にラッパーランタを明け渡し、我々はスール=メリヨキ基地に向かう。」

 

何か質問はと続けると副隊長のニーナ・クルキネン少尉が質問した

 

「オラーシャの戦力は膨大です。仮に一部が突破されても予備兵力を動かして早期に突破箇所を抑え切れるはずじゃないんですか」

 

「確かに、本来ならそのはずだ。しかし現在オラーシャ側包囲網はキエフが陥落し、ドニエプル川も突破された。このままではいつスオムスにネウロイが来てもおかしくない」

 

その言葉に皆驚きの声をあげた。キエフからスオムス方面にかけてはネウロイの侵攻を食い止める山や大河がほとんど存在しないことを皆知っていたからだ

 

「今年中どころか来月に来てもおかしくないじゃないですか!」

 

そうニーナが叫ぶと

 

「そうだ。我が中隊はスール=メリヨキ基地への移動を明日行うよう指令が出ている。皆今から荷物をまとめて明日の移動に備えろ」

 

「「「了解」」」

 

各自が自分の部屋に移動の準備をしに行こうとする中、エイラはニーナに泣きついていた。

 

「ニーナ助けてくれー」

 

「どうしたんだいイッル、そんなに慌てて」

 

「荷物が入りきりそうにないんだ」

 

それに対して驚きながら

 

「まだこの基地に来て1ヶ月も経ってないのにどうしてそんなに荷物があるのさ」

 

エイラは思わず目を逸らしながら

 

「初めて給料もらったのが嬉しくてつい」

 

「イッル、私は言ったよな。私物を買うのは構わないが移動することもあるからすぐに片付けれる量にしろと」

 

呆れたような視線を送りながらそう言った

 

「は、半分は家に送るつもりだったんだナ」

 

「確か給料日は2週間ほど前だったと記憶しているがそれだけの期間があってまだ送ってなかったのかい」

 

視線に耐えられなくなったエイラは地面を見ながら

 

「荷物を整理するのを手伝って欲しいんだなナ」

 

と呟くように言った

 

「別に手伝わないとはいってないさ」

 

「手伝ってくれるのか!」

 

「手伝いはする、ただしこれからはちゃんと買い物するときはちゃんと考えて買い物するんだよ」

 

「わかった!ありがとうニーナ!」

 

エイラはそう言いながら抱きついた。

 

「わっ、ちょっとイッルわかったから早く片付けに行くよ」

 

「はーい」

 

 彼女たちが基地を移動した1週間後、ノヴゴロド南方に大量のネウロイが確認された。そのさらに2週間後、ペテルブルク陥落によりネウロイのスオムス侵攻がいよいよ現実味をおびてきたのであった。




オリキャラ紹介
ニーナ・クルキネン少尉
1924年8月29日生まれ39年時点で15歳
第24戦隊第二中隊副隊長同隊第二小隊長。エイラの教育係
固有魔法なし。
好きなこと  
星を見ること
妹がいる
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