100話達成しました。読んでくださる皆さまのおかげてここまでこれました。これからもよろしくお願いします。
リバウ
「それで、元々上がりを迎えていた坂本はともかく宮藤の方はどうなったんだ」
ラル少佐はヴェネツィアの巣の破壊の詳細とその後、坂本少佐が魔法力を失った事を告げ一息ついているエイラにもったいぶらずに話せと続きを促した。
「魔法力そのものはあるけど空を飛ぶことも治癒魔法を使うこともできなくなったな」
エイラの言葉にラル少佐は首を傾げた。
「よくわからんな。魔法力がない訳ではないのに魔法を使えないとはどう言う意味だ」
「そのままさ。魔法力を発現して使い魔を身に宿すことはできる。けどそれを使って魔法の行使ができないんだ。医者によると原因は出力不足と魔法力不足みたいだな」
「出力はともかく魔法力は多かったと聞いているが?」
上がりを迎えたならともかくそうではないウィッチの魔法力が減るなど聞いた事がなかった。
「どうも魔法力を作り出す事に異常があるみたいだ。器が大きくても供給量が小さかったら意味ないだろ?」
「なるほど、ならば時間をかければ元の魔法量に戻る可能性はあると言うことか」
「多分な」
現状元の魔法量に回復した事がないため正確なところはわからなかった。
「それで何故宮藤を止めなかった?」
「何故って…。あの場ではそれが一番いいと思ったからだよ」
「下手な嘘はよせ。どんな場所でも冷静にその場の最善を選んできた中佐が宮藤を突っ込ませる事のリスクに気がつかないと言っても誰も信じないぞ」
エイラはコーヒーを一口飲むと無言で続きを促した。
「もし仮に巣の破壊に失敗していれば501は勿論艦隊は壊滅、アドリア海の制海権は無くなりロマーニャは陥落していたはずだ。今までの中佐ならそのリスクを負うことを許容するはずがない」
「買い被りすぎたよ」
エイラはそう謙遜したがその言葉を無視してラル少佐ほ続けた。
「そこで私は考えたんだ。どういう理由があれば止めないのか、どんな根拠が中佐にはあったのか」
ラル少佐はじっとエイラのことを見つめると言った。
「未来予知の固有魔法。分かるのは数秒先どころじゃないんだろう?」
その言葉にエイラの眉がピクリと動いた。
「わたしの固有魔法はそこまで万能じゃない。少し先が精一杯だ」
その返答にラル少佐は口元に笑みを浮かべると言った。
「仮に10分、いや3分先がわかるのであればネウロイの巣に攻撃を加えてどうなるか、短いが結果を知るには充分な時間と言えるんじゃないか?」
問いかけてこそいるがその顔は確信を持っているようだった。
「……実戦で使えるもんじゃないんだよ」
苦虫を噛み潰したような顔でエイラは言った。
「と言うと?」
「魔法力の消費が大きすぎる。ここぞと言う局面で1、2分先の未来を見る事ができたとしてもその後に動けなかったら意味がないだろ」
「だが見た上で宮藤のサポートまで行っている。
実戦で充分使えているじゃないか」
「宮藤にあそこまで影響が出る事がわかっていたらさせてなかった。
あまりにも不完全すぎるんだよ、未来予知は」
「つまり宮藤が魔法を使えた状態で巣を破壊するのがベストだと?
完璧主義にも程があるぞ」
「そうじゃない。いや、それもそうだけどそれ以上に欠点があるんだ」
エイラはため息をつくと言った。
「未来予知によって見た未来を変えた場合、当然その後の未来もそれに則したものに変わる」
「つまり1分先を見て10秒先の未来を変えれば1分先の未来は初めに見たものと変わると言うことか?」
ラル少佐の問いかけにエイラは頷いた。
「だから態々数秒以上先の未来を見ることはあんまり意味がないんだ」
「結局少し先の未来を変えるとそれに付随してさらに先の未来も変わる…か。それでも充分ふざけた魔法だと思うがな」
呆れたと言わんばかりに息を吐いた。
「だがこれではさっきの質問の答えにはなっていないぞ」
どこかバツが悪そうな表情を浮かべるとエイラは言った
「アイツの性格的に魔法力を取り戻したらまた戦おうとすると思うんだ。果たしてそれがアイツにとって本当に幸福な事なのかどうか…」
優しい、あるいはお人好しと言う言葉が服を着て歩いているような宮藤が戦場に立つ事が正しい事なのかエイラは疑問に思っていた。
「もし望むのならば戦わすべきだろう。なんせ我々には余裕などないのだからな」
ガリアとヴェネツィアを解放したとは言え長い戦争で欧州主要国では兵も物資も不足しつつあった。
「けどアイツは扶桑の人間だ。本来なら扶桑で平和に学校に通っている年齢なんだ。いくらウィッチとはいえ、わたし達の都合で戦場に来させることが果たして正しいことなのかどうか…」
「随分と傲慢だなユーティライネン。それは宮藤が、ウィッチ自身が決める事だ。中佐が口出す必要はないだろう」
エイラの意見をラル少佐は一蹴した。
「わたし達と宮藤は違う。お前のところの下原もだ。
わたし達は自国が危機に晒されたから戦っているんだ。けど扶桑やリベリオンの連中はそうじゃない。ウィッチ達は完全な善意から協力してくれているんだぞ。その過程で魔法力に異常をきたすなんて本来あってはならないことだと思わないか?」
「……随分と腑抜けたなユーティライネン。
我々は戦争をやっているんだ。スオムスとて一時は国土の一部を奴等に占拠されていた、なのに私達の気持ちが分からんとは言わせんぞ」
ラル少佐が声を荒げた。
「何があっても、何を使ってでも、何を犠牲にしてでも祖国を取り戻す。それが私達の使命だ。私達ウィッチの存在意義だ。例え他国の人間だろうと協力してくれるのなら使う。
まだ起きてすらいない未来の事を憂う時間があるのなら今何が出来るのか、何をすべきか考えるべきだろう」
「それは違う!
いくらわたし達に余裕がないと言っても扶桑、リベリオンの援助は大きい。特にリベリオンの対ネウロイ用兵器はウィッチの役割の一部を奪うほど高性能なのは疑う余地もない
カールスラントの解放はそう遠くない。ならその後、生き残ったウィッチ達に何をすべきか、今を生きるウィッチ達を一人でも多く未来に残すために何をすべきかこそ考えるべきだ」
第502統合戦闘航空団がリバウまで進出しているのもカールスラント全土奪還のための布石でありカールスラント奪還作戦が近い事は多くの人々にとって共通認識だった。
「未だ我がカールスラントはネウロイの占領下にある。そんな事を考える暇はない」
「だからその解放がそう遠くないんだからその先こそ考えるべきだろ!」
「逆に聞くが中佐が同じ立場にあった時その先のことなんか考えられるのか?」
「考えられるさ。スオムスと違ってカールスラントにはノイエカールスラントがある。あそこがある限り例え欧州から人類が追い出されようともカールスラントは滅ばない」
ラル少佐の問いかけにエイラはこともなげに答えた。海外領土を持たないスオムスは本土の占領イコール滅亡と同義だ。対してカールスラントはノイエカールスラントがあるため国家が滅びる事はない。
「あそこはカールスラントであってカールスラントではない」
ラル少佐は吐き捨てるようにそう言った。その感情はエイラには理解し難いものだった。
「わたし達にとって最も大切なのは生き残った上で奪われた国土を取り返す事だった筈だ。違うか?」
感情の高ぶりを抑えるように一度一度息を吐くとエイラは尋ねた。
「違うな。たとえこの身が朽ち果てようとも祖国を取り返す事が使命だ」
「バカなこと言うなよ。死んでちゃなんの意味もないじゃないか」
「意味ならある。私の家族が、親戚が、友が、カールスラントの国民が祖国へと帰ることができる
なにより我々ウィッチがいなければまともにネウロイと戦うことすらできないんだ。ならば我々が死力を尽くさ無いわけにはいかないだろう」
「それは驕りじゃないか?
大戦初期ならともかく今はネウロイへの対抗手段も増えた。わたし達が死力を尽くす時代は終わったと考えるべきだ」
「それでも我々ウィッチが未だに主力だ。まだ終わっていない」
一部の大型兵器であればネウロイに対抗できるが歩兵が使うような自動小銃ではネウロイに対抗するのは困難だった。
「いいや、終わる。終わらせるべきなんだ。
本来ならわたし達だって学校に通って普通に友達と遊んでいる筈なんだ。なのに今わたし達がしていることはなんだ?硝煙と血の匂いに塗れて明日を迎えられるかも分からない日々を過ごす。
それで死んでいくなんてあまりにも可哀想じゃないか。たとえ今がどんなに地獄だとしてもその先の未来において戦友と一緒に今を思い出として語れるくらいには生かしてやるべきじゃないのか?」
「我々ウィッチにはネウロイを倒す力がある。なればこそより良い未来を手に入れるために死力を尽くすんだ」
「その先に自分が、多くのウィッチがいないとしてもか?」
その問いかけにラル少佐は無言で頷いた。
「……どうやらわたし達の意見は一致しそうにないな」
「そのようだな」
未来に一人でも多くのウィッチを残そうとするエイラとたとえどれほどのウィッチが死のうとも祖国の奪還と国民の帰還を目指すラルとでは考えがあまりにも違いすぎ話は平行線のまま終わった。
今回はこんな話にするつもりなかったのにいつの間にやらエイラとラル両者の哲学的なものがバチバチにぶつかり合うことになってしまった。
ルミナスウィッチーズのヴァージニア・ロバートソンって使い魔が明かされてないですけどなんなんですかね。個人的にはニュージーランドの固有種、フクロウオウムと予想しておきます。
ニャーゼーラントとか言う明らかにニュージーランドがモデルの国出身の子がいる時点で違うきもしますが…。