水曜日にAbema TVでもやるみたいなんでそれでみます。
エイラが前回502部隊を訪れた時と違い、ポクルイーシキンとの仲が改善された事は502の面々からは明らかだった。
二人の不仲な様子をいつもハラハラしながら見ていたニパなどはその様子に安堵し、ラルやロスマンと言った年長者はエイラが来るたびに部隊内に険悪な雰囲気が漂うことがなくなりホッと一息ついていた。
そんな仲、それを面白く思わないものもいた。
「ねぇニパくん。サーシャちゃんの中佐に対する態度、随分変わったと思わないかい?」
半開きになったハンガーの扉の隙間から仲良さげに談笑するエイラとポクルイーシキンを見ながらクルピンスキーは言った。
「いつの間にか仲直りしたみたいだね」
エイラ、ポクルイーシキン双方と仲の良いニパは以前から二人の仲を心配していただけに嬉しそうに言った。
「ニパくんは気にならないのかい?」
「なにがですか?」
「二人の間に何があって仲直りしたのか」
「うーん。気にならないわけじゃないけどそういう事ってあまり聞かない方がいいのかなって思うんですけど」
サーシャと仲が悪かった理由、というよりサーシャが一方的にエイラに冷たくしていた理由を知っているだけに本人の仲でなんらかの折り合いがついたのだろうとニパは思っていたためなにがあったのかニパは大して気にしていなかった。
「甘い、甘いよニパくん。これは大問題だよ」
「何か問題があるんですか?」
めずらしく真剣な表情を浮かべるクルピンスキーにニパは尋ねた。
「大有りだよ!
あんな表情、僕にも見せてくれないのにポッとでの中佐なんかに奪われたんだよ!」
クルピンスキー相手には笑顔など滅多に、というか全く見せた事がないサーシャが普段あまり会う機会のないエイラに見せている事に顔に手を当てて嘆いた。
「奪われるも何も別にサーシャさんはクルピンスキーさんのものじゃ…」
いつも通りのクルピンスキーの様子に呆れながら言った。
「何よりあからさまに嫌ってた相手にあんな顔するなんてきっと夜、何かあったに違いない!」
「なんで夜限定…」
「知らないのかいニパくん。歴史は夜に作られるんだよ」
「へー」
いつものクルピンスキーの発作と理解したニパは興味なさそうに生返事で返した。
「そうだ!ニパくん、今夜僕の部屋に来ないかい?歴史の作り方を…フギャ!!!」
クルピンスキーは潰れたカエルのような声を上げるとその場に崩れ落ちた。
「一体ニパさんになにを吹き込もうとしているのかしら偽伯爵」
眉を吊り上げて怒りの形相を浮かべたロスマンが言った。
「せ、先生。スパナは流石に死んじゃうよ」
頭に大きなたんこぶを付け抗議の声を上げるクルピンスキーの足元にはスパナが転がっていた。
「なんだ、死んでなかったの」
ゴミを見るような目で言った。
「ロスマン先生殺す気だったの?」
まさかの返事にニパはギョッとして言った。
「ニパさん、この程度でウィッチは死なないわ。貴女ならよくわかっているでしょう」
「あ、はい」
ロスマンの不機嫌そうな様子にタジタジになりながらニパは返事をした。
「ニパくん騙されちゃダメだよ。スパナ当てられて生きてるウィッチなんて君みたいな固有魔法を持ってるウィッチだけだよ。普通のウィッチは死ぬからね」
クルピンスキーの言う通り、ニパの超回復の様な固有魔法でもない限りいくらウィッチとはいえ当たりどころが悪ければ十分死ぬ可能性があった。何より今クルピンスキーは魔法力を発現しておらずその身体能力は生身の人間と大きな違いはなかった。
「貴女は生きてるじゃない」
「そりゃ先生が愛を込めて手心を加えてくれたからさ」
暴力に手心とかあるのかなぁ、などとニパが思っているとロスマンがクルピンスキーの足元にあったスパナを拾うと言った。
「そう、ならもう一度投げてもいいかしら?もちろん愛は込めてあげるわ」
凶悪な笑みを浮かべながらロスマンはスパナを構えた。
「できれば手心も加えてくれると嬉しいんだけど…」
その後の惨劇を予想し、ニパはそっとその場を後にした。
それからそう間を置かずにニパの背後からは悲鳴が聞こえてきたが全力で聞こえないふりをするのだった。
「それで、貴女は一体なにを気にしているの?」
クルピンスキーへの折檻を済ませるとロスマンは尋ねた。
「中佐とサーシャちゃんがバルバロッサ作戦の時になにがあったか、噂くらいは聞いたことあるよね」
「ええ。比較的穏やかなので中佐がサーシャさんと酷い口論になって殴り合いに発展したとか、酷いのだと彼女の部下を中佐が撃ち殺したとか、色々あるわね。けど全て噂よ」
バルバロッサ作戦が失敗し全軍撤退が命令された際の混乱はクルピンスキーもロスマンもよく知っていた。
バルバロッサ作戦で生きて帰ってきたウィッチの中で最も奥深くまで進出していたのがポクルイーシキンの部隊だった。そしてそれを収容し一人の犠牲者も出さずに無事に撤退したエイラと合わせて当時、二人は噂の的となっていた。
同時に撤退の際に二人の間で意見の相違があった事も当時を知る者達にとっては有名な話であり以来二人の仲が拗れたのも当時を知っているものからしたら周知の事実だった。
「そう、全て噂だね。けど少なくとも昨年のグリゴーリ攻略まではその確執が、少なくともサーシャちゃんの中では残っていた訳だろ?
それが暫く会ってないうちに無くなるなんて事そうない事だと思うんだ」
「たしかに妙な話ではあるわ。けどそれがどうしたと言うの?二人の仲が良くなって好影響な事はあっても悪影響はないわ」
「そうなんだけどさ、気になるじゃん」
「本人に聞けばいいじゃない」
思ったよりもくだらない理由にロスマンは面倒臭そうにそう言った。
「もう聞いたよ。けどはぐらかされちゃって」
「ならもうその話は終わりでいいじゃない。何よりそんな細かい事気にするなんて貴女らしくないわよ」
普段は細かい事はあまり気にしない質のクルピンスキーが今回は何故かこだわる様子を見せている事にロスマンは訝しげな表情を浮かべながら言った。
「僕らしくない、確かにそうかもね」
「そう思うならこの事を詮索するのは辞めなさい」
「はーい」
※
「中佐とサーシャちゃんの事、隊長は何か知っていますか?」
ロスマンにはああ言ったものの、やはり理由が気になったクルピンスキーは事情を知っていそうなラルに尋ねた。
「知らん」
「隊長も知らないんですか?」
隊長であるラルならば知っているだろうと思っていただけにクルピンスキーはその返答に拍子抜けた。
「ああ。そもそも私自身、アイツらの間になにがあったのか噂以上のことは知らないからな。意外とくだらない事で仲違いしていただけかも知れんぞ」
そもそもバルバロッサ作戦参加者の多くは作戦失敗後の撤退戦について多くは語ろうとせず、また当時のエイラ、ポクルイーシキン両隊の所属者達も命令されたわけでもないのに緘口令が敷かれたかのように作戦失敗後の出来事について一様に口をつぐんでいた事もありその詳細を知るものは関係者以外には存在しないと言ってよかった。
「くだらない事でサーシャちゃんがあんなに長い事あんな態度でいるとは思えませんけど」
「かもしれんな。だがそれがどうしたと言うんだ。なにも問題ないだろう」
「ロスマン先生にそう言われて一度は納得してたんですよ。けどよくよく考えたらサーシャちゃんにとってはそうじゃないかもしれないなと思って」
深みのある言い方にラルは無言で続きを促した。
「間違いなく中佐は全ウィッチの中でもトップクラスに政治力があるしそちら方面にも近いじゃないですか。だからあんまり信用してないというか、なんというか怖いんですよ」
「随分と曖昧な理由だな。いや理由とすら言えないんじゃないか?」
「そうかもしれません。けどこのままサーシャちゃんが中佐との仲を深めることが彼女にとって良いこととは思えないんですよ」
クルピンスキーらしくない言動にラルは困惑した表情を浮かべた。
「まぁ、全て僕の勘ですけどね」
そう言ってクルピンスキーは笑みを浮かべた。
「隊長も知らないならもう知る術はなさそうだなぁ。諦める事にします」
そう言うとクルピンスキーは執務室から立ち去った。
接触魔眼って魔眼なのでしょうか?
通常の魔眼は相手に接触せずともコアが見れたりするわけなので、これは目そのものに魔法的な作用があります。
対して接触魔眼は相手に接触する事によりその内部のコアなどの位置を自身の目ではなく脳に対して直接投影していると捉える事ができるのではないでしょうか?
つまりこの場合重要なのは目そのものではなく接触する事が重要でなのであり目は必要ないのではという疑惑が湧きます。
もしかしたら人と手を繋いだりしたらその人にもコアの位置を見せれるのでは?
もっとも、通常の魔眼も目で見るのではなく脳に投影しているだけと考える事もできます。しかし坂本少佐が眼帯でオンオフ切り替えてるあたり目が重要な役割を果たしている事は間違い無いのでこれは魔眼と言えそうですね。
絶対魔眼は知らない。