エイラ、サーシャ、ラルの三人が執務室で談笑しながらコーヒーを飲んでいるとふとエイラが思い出したかのように言った。
「そういやアンナを破壊する時はリベリオンとカールスラントの兵器を使ったって話だけど実際のところ威力はどんな感じだったんだ?」
「それについては報告書が上がっているはずだが?」
「読んだけど当事者からの話も聞きたいからな」
「隠すことでもないからいくらでも話してやる。サーシャ、話してやってくれ」
「隊長が話すんじゃないんですか?」
口ぶりからてっきりラル自身が話すものだと思っていたサーシャは驚いて尋ねた。
「固有魔法からしてお前が適任だろう」
ラルの言葉に納得するとサーシャはおもむろに口を開いた。
「アンナ攻略の作戦が決定された」
隊長からそう告げられたのは、ヴェネツィアの巣が攻略される二ヶ月ほど前のことでした。
「アンナですか?しかしヴェネツィアの巣の攻略もありますし十分な物資が用意できないと聞いていましたが…」
ヴェネツィアの巣とアンナでは位置的にヴェネツィアの巣の方が脅威的と見られていてアンナの攻略は当分先になると、ほんの数日前に聞いたばかりだったので隊長の言葉には驚かされました。
そしてそれは隊長も同じだったようで上層部から詳しい話を聞き出していました。
「ヴェネツィアの巣は扶桑が全面的に支援する事になった。代わりにアンナはリベリオン、そしてカールスラントの支援により破壊する算段がついたようだ」
「その程度でネウロイの巣が破壊できるとは思えませんが…」
これまで連合国が総力を上げて一つの巣を破壊していたのにいかに大国と言え扶桑一国の支援でロマーニャとヴェネツィアが巣を破壊できるとは思えませんでした。
「扶桑、リベリオン、そして我がカールスラントはネウロイの巣を破壊し得る兵器の開発に成功している………らしい」
そういう隊長は珍しく困惑したような表情を浮かべていました。
「使われるのはリベリオンの対ネウロイ用気化爆弾とカールスラントからはシュトゥルムティーガーに搭載された魔導徹甲弾を改良した魔導ロケット弾の二つを使う。列車砲の半分ほどの大きさになるが威力は十分だと本国は言っている」
列車砲の威力はネウロイの巣を取り巻く雲を晴らすのには効果的でしたがコアそのものを撃ち抜くにはあまりにも威力が高すぎ、コストパフォーマンスが悪すぎました。なので多少威力が落ちてもコアくらいなら破壊できるそうです。
「魔導徹甲弾はグリゴーリ攻略の際一度使って実績もありますしそれを改良したとなればある程度信頼できますが対ネウロイ用気化爆弾は本当に効果があるんですか?」
「B-17の編隊が大型ネウロイに対して使ったところ倒す事に成功しているようだ」
魔導徹甲弾はグリゴーリにある程度の効果はあったし、それを改良したものなら心強いと思いました。しかし対ネウロイ用気化爆弾が本当にネウロイの巣を破壊できるほどの力を持っているとは思えませんでした。
「大型ネウロイとネウロイの巣は別物です。それだけで信頼するのはどうかと思いますが…」
「私もそう思わんでもないが、上層部が決めた事だ。覆しようがない」
わずかばかりの不安を残しながらも私達はアンナ攻略のためにまずは主力部隊をアンナに到達させるため、前線を上げる作戦を実行しました。
それからおよそ一ヶ月かけて私達はアンナまで150キロ程の地点までの安全を確保する事に成功しました。
「ここからが正念場だな。シュトゥルムティーガーを無事射程圏内まで送り届ける為に数日交代で直掩に出る必要がある」
「前回と違って待ちではなく積極的に動いているからこその弊害ですね。大型の兵器を動かすとなるとそれ相応に時間と労力がかかるとはいえこれじゃあ到着後私達がまともに動けるのかどうか…」
「特に魔法力の少ないひかりと上がりを迎えて魔法力が減少しつつあるエディータが心配だな」
「二人はシフトから外しますか?」
「どちらか一人ならともかく二人とも抜けると流石にキツい。アンナ到着前にもしシフトに入っているようならメンバーを入れ替えて少しでも魔法力を回復させるべきだろう」
「ではそのようにシフトを組みますね」
ロスマンさんはもとよりひかりさんはウチに来た頃と違ってなくてはならない人材になっています。接触魔眼もある程度使いこなせるようになりました。ひかりさんには負担を強いる事になりますがシフトに入ってもらった方が私としてもありがたいです。
「私たちの魔法力とて無限ではないというのに、司令部も無茶させてくれる」
「おまけに司令部の人達がアンナ攻略の指揮を取るために使う移動用のB-17の護衛までさせるなんてあり得ません」
「なんせ大事な司令官閣下だからな」
「なら大事な攻略主力の私たちも次の機会ではB-17で一緒に移動したいものです」
私達が主力の直掩である以上そんな事は無理なのですが、そもそも他に有力な部隊、流石に507は無理でもスオムスの24戦隊あたりがいれは巣の攻略に集中する事ができるのですから、司令部に多少の愚痴を言いたくもなります。
「ふっ、自分で飛べるのにわざわざ乗せることなんかしないだろう。あったとしても爆弾倉に入れられて爆弾がわりに投下されるのが関の山だろう」
「隊長、ウィッチは爆弾ではありませんよ」
流石に冗談でしょうけど、あまり表情の変わらない隊長だとイマイチ判断がつきにくいです。
「冗談だ。もしそんな事があれば全力で抗議しよう」
それから二日と言う時間をかけてシュトゥルムティーガー含む機甲師団は道無き道を行きながらなんとかアンナの前にまでたどり着く事に成功しました。幸い私達に落伍者はいませんでしたが、シュトゥルムティーガー24両のうち3両が脱輪や故障により放棄を余儀なくされました。
「これよりB-17による対ネウロイ用気化爆弾の投下を行う。それにより雲が晴れたのち。シュトゥルムティーガー21両による一斉射撃によりアンナのコアを破壊する」
「私たちはその護衛ですね」
「ああ。B-17が作戦の要だ。絶対に落とさせるな」
下原さんとジョゼさんの二人をシュトゥルムティーガーの護衛に残して残りのメンバーはB-17の護衛のため高度を上げました。
幸運な事に想定よりもネウロイの数が少なくあまり苦労せずにあんな上空に辿り着き爆弾を投下する事ができました。
「すごい…」
「マジで爆弾でネウロイの巣を吹き飛ばしやかった」
その光景に私達は思わず見張れてしまいした。アンナの周りの雲を吹き飛ばすばかりかアンナ本体にもダメージを負わしていたのです。あともう一個大隊もあればアンナを倒す事もできたかもしれません。
そのアンナの残骸とも言えるモノにシュトゥルムティーガー21両による一斉射撃が行われ、巣は完全に破壊されたと誰もが思いました。
「おい、見ろ!また残ってやがるぞ!」
菅野さんが指を刺した先には中型ネウロイ程度大きさになったアンナが必死に再生しようとしていました。
「ヤツを再生させるな!全機突撃!」
隊長の号令で皆が一斉に銃を乱射しながらアンナに向かって接近する中、菅野さんが一人飛び出しネウロイの巣に拳を叩き込んだ事でアンナは完全に破壊されました。
「とまぁこんな感じですね」
「なるほどなぁ、シュトゥルムティーガーじゃあ行軍速度が遅すぎるのか」
「それもありますけど陸上兵器では護衛ウィッチの負担が大きすぎますね。
グリゴーリの時のような迎え撃つ形ならともかく、今回のようにネウロイの占領地域まで陸路で行くのは余程の兵器でないと途中でネウロイに破壊されてしまいます」
「正直シュトゥルムティーガーが3両しかやられなかったのは奇跡と言っていい」
2人は心底疲れたというようにため息をついた。
「シュトゥルムティーガーもかなりの装甲を持ってるって聞いたけど」
「巨大な戦艦でさえネウロイのビームを受けると大ダメージを負うんだ、シュトゥルムティーガーならなおさらだろう」
「じゃあ今後は大和をさらに発展、強化するかリベリオンの対ネウロイ用気化爆弾に頼る感じになるか」
「おそらく、そうなるだろうな」
シュトゥルムティーガーにしろ対ネウロイ用気化爆弾にしろウィッチの護衛が不可欠であり統合戦闘航空団のような精鋭部隊がこれからますます酷使される事を予想してエイラは憂鬱な気分になるのだった。
ネウロイの巣ってどこから来ているんでしょうか。
昔後書きにネウロイの巣が超大型ネウロイではないかとか書いた気がしますがではそもそもどこで生まれているのか、という疑問が最近湧きました。
一番初めのネウロイは何かはわかりませんがその他の巣についてはちょっとした考察があります。
初めの巣、そこで生まれたネウロイの巣のコアがミツバチの分蜂(前の女王蜂が新女王に巣を譲って半数ほどの働き蜂を連れて巣から出ていく事)みたいに巣分かれして増やしたのかな〜とか考えています。
作中のネウロイの行動的に蜂に近い生態をしている気がしますし。