ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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ルミナスウィッチーズ、本作に組み込むのは時系列的に流石に厳しいかなぁ。


達成

「心底残念でならないな」

 

それがエイラの200機撃墜を達成した報告を聞いたラル少佐の第一声だった。

 

「残念って…別に暫くここにいるからまだまだスコアは伸ばすつもりだぞ」

 

「そうじゃない」

 

てっきり目標を達成した事でどこかに配置換えになると考えてそう言ったのだと思っていたエイラは拍子抜けた。

 

「もし……」

 

「もし?」

 

「もし中佐が襲撃を受けなければと考えていた」

 

その言葉にエイラは少し驚いていた。ラルとエイラは怪我による戦線離脱を余儀なくされた他の多くのウィッチと違い平和な日常ではなく戦乱の中に身を置いている。

世界でも有数の撃墜スコアを誇る2人だけにプライドも相応に高く、以前のように動けないことに対するもどかしさは同じような境遇のラルもよくわかっている筈だった。そしてそれを指摘される事がその高いプライドにどれほど傷を付ける事になるかと言う事も。

 

「他でもないお前からそれを言われる事になるなんてな」

 

「すまない。だがこのスコアを見るとそう考えずにはいられない」

 

三週間。エイラが29機のネウロイを撃破するまでにかかったのはたったそれだけの期間だった。

 

「並のウィッチでは一生かけても達成できないスコアだ。それをたったの三週間で達成するなんて普通のエースウィッチでは無理だ。うちの隊にもそんな奴はいないだろう」

 

「進出してきたばかりだから結構ネウロイの数が多かったからな。クルピンスキーとかならできるんじゃないか」

 

奪還したばかりのこの地はネウロイの巣に近いこともあってペテルブルク以上の激戦区となっていた。

 

「たしかにスコアは中佐に近いものを出せるだろうがそれをするとユニットがなくなる。ユニットの損耗が部品の劣化以外で無いなどクルピンスキーでは無理だ」

 

「まさかそれでわたしが連日出撃するのを許していたのか?」

 

エイラとサーニャは502基地にいるが所属は今も501部隊となっている。これは後々ベルリン奪還作戦の際に解散状態から部隊を復活させるよりも書類上は存続している形にした方が手続き上楽な部分が多いと判断されたからである。

そうなると当然二人の補給と502の補給は別々のものとして扱われているためラルからすれば自分の部隊(ブレイクウィッチーズ)から人を出すよりも二人に出撃してもらう方がメリットが大きかった。

 

「それもある。だがそれ以上に中佐の今の実力を知りたかった」

 

「ガッカリしたか?」

 

以前と比べると全ての能力が下がっていると自覚しているエイラは恥ずかしそうにそう言った。

 

「今の話を聞いていなかったのか?褒めているんだ」

 

他者からどれだけ褒められようと、エイラは今の自分に納得していない。眉間に皺を寄せながらも続きを促した。

 

「中佐がウチに来る前、マルセイユから連絡があった。自分やハルトマンに匹敵する実力を持っている奴とあったと言われた。マルセイユの実力は世界でも五本の指に入るがそのプライドもまた世界で五本の指に入るくらい高い。

そのプライドの高いマルセイユが自分と変わらないとまで言うんだ。正直耳を疑った」

 

「買い被りだ。今のわたしには固有魔法を使った小細工しかできない。まともにぶつかり合えばわたしの方が弱い」

 

「固有魔法を含めてウィッチの実力だろう。マルセイユの正確な狙撃は固有魔法の賜物だ。ハルトマンだってあの機動力は固有魔法あってのもの、中佐だけ固有魔法を含まずに考えるのはフェアじゃ無い」

 

「だとしてもその二人ほどわたしの固有魔法は万能じゃ無い。二人には負けるよ」

 

「ふっ、そう言う事にしておこう」

 

小さく笑うとラルはそう言った。

 

「だからこそ中佐が負傷していなければ二人を超えるウィッチになっていたことは容易に想像がつく。私が心底残念でならないと言ったのはそう言う意味だ」

 

「それを言うと少佐だってそうだろ。もし腰がそんな事になってなかったら撃墜スコアはハルトマンを抜いて一位になっていてもおかしく無い」

 

ラルの撃墜スコアはバルクホルンに次ぐ第三位、腰の怪我さえ無ければ今も最前線でネウロイと戦っていた事は想像に難く無い。

 

「否定はせん。だがそれは中佐もそうだ。私を含め撃墜スコア上位者は全員がハルトマンを超えていた可能性はある。

おまけに中佐はハルトマンと同じ501にいたからハルトマンのスコアを食っていた可能性が高い。そうなるといよいよ誰が撃墜スコア一位になっていたは分からないな」

 

「だけど現実はそうならなかった」

 

「だからこそ残念でならない。私は中佐の離脱でベルリン奪還が一ヶ月は遅れていると思っている」

 

その言葉にエイラは珍しくキョトンとラルを見つめた後、大きな笑い声を上げた。

 

「あはは!わたしがいないだけで一ヶ月も遅れるっていくらなんでも買い被りすぎだ」

 

笑うエイラの目には面白さのあまり涙が浮かんでいた。

 

「冗談じゃないぞ」

 

真剣そうなラルの声にエイラは笑いを堪えながら視線を戻した

 

「中佐が前線で戦うだけで並のエースウィッチ一個小隊に匹敵する働きが期待できる。おまけに指揮能力も抜群ときている。中隊なり大隊なりを任せればこの長い戦争を通してみれば一ヶ月程度の短縮は容易だろう」

 

「らしくないぞ。少佐の言うことには何の根拠もないしそもそも一個人が戦争全体に与える影響なんて微々たるものだ。むしろ後方の研究者の方が戦争に与える影響は大きいんじゃないか」

 

ウィッチや軍全体の力の底上げをするのが研究者だ。華々しい戦果は前線で戦うもの達に与えられるがそれが研究者を筆頭とした後方の人間によって得られるものだとエイラはよく理解していた。

 

「だが研究者によって作られた新兵器を運用するのは人だ。そしてそれがストライカーユニットであればウィッチ個人の技量によって引き出される性能は大きく違ってくる。それが他とは比べ物にならない実力の持ち主であれば一ヶ月程度の短縮はできるとは思わないか?」

 

「逆に聞くけど少佐はできるのか?」

 

半ば呆れながらもエイラはそう尋ねた。

 

「当然だ。サーシャや菅野が戦果を報告するたびに私ならもっと戦果を挙げられると何度思ったことか。それを考えれば一ヶ月くらい軽く短縮できる」

 

「大した自信だな」

 

「中佐に自信がなさすぎるんだ」

 

エイラが一ヶ月の短縮できないと言い張ることが心底理解できないようだった。

 

「よく考えてみろ。これまでネウロイの巣にとどめを刺したのは皆ウィッチだ」

 

「けどとどめを刺せるまで追い詰めたのは人類の科学だ。わたし達はそのおこぼれに与ったにすぎない。違うか?」

 

「だが科学によって生み出された兵器以上の力を持ったウィッチもいる」

 

それを聞いてエイラは大きな溜息を吐いた。

 

「いるにはいるけどそれこそ全ウィッチの中で一人か二人だろ。そんなの戦略に組み込むことができるわけないだろ」

 

エイラがよくよくラルを見てみるとその口元は僅かに笑みを浮かべていることに気が付いた

 

「オマエ、揶揄ってたのか?」

 

「別に揶揄っていたわけではない。私だってウィッチが戦争全体に与える影響が小さい事くらいわかっている。しかし地域単位で見てみるとその存在は大きい。それらが組み合わされば戦争全体にも大きな影響を与える事になる」

 

戦争全体で見ればウィッチ個人が戦争に与える影響はそう大きくはない。そもそも数が少なくその実力も個人個人で大きな開きがあるからだ。

 

「それはそうだけど……。それはウィッチ個人と言うよりはウィッチ隊じゃないか?」

 

「部隊の戦果は指揮官の腕によって大きく変わるだろう。そして中佐なら一個中隊も有れば戦争全体に影響を与えるほどの戦果を上げられるだろう?」

 

「オマエ、さっきと言ってること違うくないか?」

 

エイラ個人の戦闘能力が戦争において与える影響を話していたはずがいつのまにかエイラが率いる部隊が戦争全体に及ぼす影響へと議論の内容がすり替わっていた事にエイラはじとっとした目で言った。

 

「私はずっと中佐が戦争全体に与える影響を話していたのであって中佐個人の戦果によって戦争が短くなる話などしてはいなかったんだがな」

 

してやったり、と言わんばかりの笑みを浮かべながらラルは言った。

 

「性格悪いぞ」

 

「中佐が勝手に勘違いしただけだろう。

私だって一人の戦果で戦争が一ヶ月縮まるとは思わんさ。だがそれが部隊の指揮官ならば一ヶ月くらい縮まってもおかしくはないだろう」

 

「それについては否定はしない。とびっきりの実力を持った指揮官なら戦争全体に与える影響も殊更大きいだろうからな」

 

502が長年に渡りペテルブルクをアンナ、ヴァシリーからのネウロイの攻撃を退け続けてきたことからもわかるようにウィッチ個人はともかくウィッチ隊の影響は戦争全体においても小さくないものなのだった。




そういえばナイトウィッチって人によって魔導針の形が違いますけどどうしてなんですかね。
形によって電波の送受信に影響があったりするんでしょうか?うーん、謎ですね。
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