1941年は第二次ネウロイ大戦前半において最も重要な年となった。この年の5月にカールスラント、6月にはガリアが陥落し欧州における人類の敗北が決定的となる。
しかし同年6月には北欧に撤退してきたカールスラント軍とオラーシャ軍、そしてスオムス軍の三軍を中核とする連合軍北方方面軍によるスオムスからの反攻作戦、バルバロッサ作戦が発動された。時を同じくしてオラーシャ南部よりオラーシャ軍とカールスラント軍、扶桑軍が中核となる連合軍東方方面軍によるタイフーン作戦が行われた。この二つの作戦によりペテルブルクとツァーリィツィンの奪還が成功しこの戦争における初の領土奪還に成功した。
1941年3月 ヘルシンキ
北方方面軍が組織された事に伴いオラーシャ帝国北部への反攻作戦がヘルシンキにある司令部で計画されていた。
「ペテルブルク奪還後はそのままリバウ方面に向けて進軍しカールスラント東部にネウロイを引き付け撤退中のカールスラント軍の援護を行えばいいではないか」
カールスラント軍の将校がそう言うとすぐにオラーシャ軍の将校が反論した。
「なにを言うか!ペテルブルク奪還後はそのままモスクワへと進撃し南部の部隊と合流、オラーシャ全土のネウロイを駆逐する!」
これに対してスオムス軍将校が
「そんな兵力がどこにある!仮にモスクワまで行けても補給線が維持しきれんだろう!それよりもペテルブルク周辺で人類側の勢力圏を拡大し今後の作戦に備える方がいい」
さらに誰かが打開策のようなものを出す
「戦略的な目標など決めずに高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応すればいいだろ!」
「何を言っている貴様!行き当たりばったりということか!?」
北方方面軍の中核となる三ヶ国がそれぞれ違った戦略目標を持っているため反攻計画は遅々として進まない。
反攻計画の最初の目標であるペテルブルク奪還に際して先鋒を務めるウィッチの中隊長に作戦の説明とその打ち合わせのためにマンネルヘイム元帥に呼び出されたエイラは、反攻計画の進捗状況が不安になるような光景を横目に見ながら自分を呼び出したマンネルヘイムの元へと向かった。
「お久しぶりです元帥」
「久しぶりだな。早速だが現在の計画の進捗状況について説明する」
そう言うと議論を交わしている参謀の1人に地図と駒を持って来させ説明を始めた。
「まずペテルブルク奪還作戦では海岸線を進むA集団と中央のB集団とラドガ湖沿岸を進むC集団の三つの集団がペテルブルク及びネヴァ川方面に向かう。それに際して各国から一個中隊、計三個中隊をトラックに発進装置とユニットを乗せて各集団の先鋒部隊に随伴させる。このうち一つは君が率いることになる」
地図においた駒をスオムス国境から移動させながら言った。
「勿論、作戦には他のウィッチも参加するがそれは基本的に先鋒部隊ではなくその後続を守るために飛ぶことになる。そこで随伴するウィッチには先鋒部隊は勿論ペテルブルクの制空権も確保してもらう」
質問はあるかと尋ねられエイラ率直な意見を述べた。
「先鋒部隊に三個中隊は少なすぎると思います。何か理由が有るんですか?」
「補給の問題だ。トラック一台で発進装置2つしか運用できないからこれ以上は増やせん。本来なら各中隊ごとに所属する先鋒部隊の制空権確保をしてもらうが流石に数が少なすぎる。そのため各中隊は場合によっては他の部隊に増援を出したりして臨機応変に対応してもらう」
もう少し詳しく聞こうとするのを遮ってマンネルヘイム元帥はクリップに挟まれた紙の束を手渡した
「詳しくはそれに全て書いてある。それを持って第3会議室にいるカールスラントとオラーシャのウィッチと作戦での行動について話し合ってきてくれ」
それは機密文書とスタンプが押された作戦計画書だった。
「了解です」
「それとペテルブルクの奪還に関するところ以外に関しては他のウィッチに閲覧権限がないから見られると罰則がある。だからその点に注意してくれ」
「先に該当箇所を確認しても良いでしょうか?」
うっかり見られるわけにもいかないためそう聞いた。
「勿論だ。あとそれは君用の資料だから人にさえ見せなければ好きなように取り扱ってくれて構わない」
そう言われてエイラは手早く資料の中身を確認して必要のない部分を取り外してから第3会議室へと移動した。
会議室に入るとポクルイーシキン少尉と紅茶色の髪をしたカールスラント空軍の制服を着たウィッチがいた。エイラが入ってきたことに気づくと立ち上がり自己紹介をした。
「カールスラント空軍第52戦闘航空団第8中隊中隊長グンドュラ・ラル中尉だ」
「スオムス空軍第24戦隊第一中隊中隊長エイラ・イルマタル・ユーティライネン中尉です」
自己紹介が済むとポクルイーシキンに顔を向けた。
「久しぶり。オラーシャの中隊長はポクルイーシキン少尉なんだな」
「いいえ、私は代理です。中隊長が負傷しているので私が来ました」
「そっか。早速だけど何から話していく?」
エイラがそう聞くとラルが言った。
「私達は作戦の概要を知らないから説明してくれる参謀が来るまでは待っていればいいんじゃないか」
「え、そうなのか?」
「そうだ。しかし3人揃ているのにわざわざ待つ必要もないな。呼びにいくか」
「呼びに行くと言ってもこの部屋から出るのは禁止されていますよ」
ポクルイーシキンの言うとうりこの司令部は作戦の立案に伴い各国の機密文書も多く存在し各国の参謀以外の出入は厳重に管理されていた。
そのことを思い出したエイラは何故わざわざ1人だけ作戦の概要を説明されたのかその理由に気付いた。
「ゴメン、説明する参謀って多分わたしだ」
「ユーティライネン中尉はウィッチだろう?」
「ウィッチだけど軍大学を卒業してるから参謀でもあるんだ」
そう言いながらさっき渡された計画書と会議室に置いていた地図を広げると作戦の概要を説明した。
「問題はC集団だな。この部隊が一番担当空域が広いし移動距離も長い。それにネヴァ川を越えてネウロイが来るかもしれないから激戦が予想される。ここの制空権を得るためには一個中隊では少し少ないな」
ラルがそう言いポクルイーシキンもそれに同意した。
「そうですね。もう少しC集団の部隊を増やすよう要請出来ないんですか?」
「道が悪すぎてそれ以上ウィッチを増やすと補給に影響が出る。ムリダナ」
「なら他の部隊から援軍を送るしかないか。そういえば担当する中隊とかは決まっているのか?」
「ちょっと待ってろ。部隊配置は私しか見れないから絶対にこっち見るなよ」
そう言いながら鞄の中にしまっていた計画書を取り出して確認すると途端に嫌そうな顔をした。
「うへぇ、わたしが担当だ。A集団はポクルイーシキン少尉でB集団はラル中尉だな」
「あらかじめC集団方面に私の隊から援軍を出しておこう」
「それでペテルブルク奪還に失敗したりしたら意味ないだろ。必要なら連絡するから中尉の部隊はペテルブルク奪還に集中してくれ。」
この作戦におけるC集団の役割はペテルブルク奪還よりもオラーシャ方面からのネウロイによるB集団の補給線を脅かされるのを防ぐ役割の方が大きかった。ペテルブルク奪還に動くのはC集団全体ではごく少数であり大多数は守りやすいネヴァ川までの進出を目指していた。そのためC集団にとってはペテルブルクからのネウロイを抑えるためのB集団のウィッチの数が減ることにより側面を破られC集団の補給線を脅かされる可能性のあるラルの提案は受け入れがたいものだった。
「だがそうなるとペテルブルクの戦況によっては援軍を送れない可能性もある。その場合ユーティライネン中尉の隊だけで守り切れるのか?」
「二週間以上単独で維持するのはムリダナ。それまでにペテルブルクを奪還するか援軍が来るかしないと守りきれないな」
「つまりその期間内にペテルブルクの戦況を良くする必要があると言う事ですか」
ポクルイーシキンが呟いた
「戦況を良くするのではなく奪還すれば全て解決する。自信がないのか?」
ラルが挑発するように言った
「まさか、ペテルブルク奪還くらい一週間で終わらせて見せます」
「ふふ、そうかなら問題無いな」
「他に何か言っておくべき事や聞くべき事はないか?」
エイラが尋ねるとラルがポクルイーシキンに言った。
「そう言えばポクルイーシキン少尉は隊長代理だそうだが本当の隊長の復帰の予定とかはどうなっているんだ?」
「すみません分からないんです。怪我は完治したんですけどストライクユニットを見ると震えが止まらなくなったりしてこのまま復帰できないこともあり得ると言われているそうです」
「ああ、あれか。私もそうなったウィッチを知っているが厄介だな。このまま少尉が中隊長となって作戦に参加することになりそうだな」
「まだ時間がありますからきっと治ると信じています」
こうして中隊長同士の会合が終わり、各隊は作戦開始までの期間部隊の練度を上げるため訓練に勤しむこととなった。
最近考察ばっかり書いてたけどそろそろネタが無くなりそう。実際にはまだまだあるけど本作のネタバレに繋がるから書きたいけど書けない。
てことで今回はリベリオンの国際政治と戦後について軽く触れようかなと思います。
リベリオンと最も密接に繋がってるのって実は扶桑なんですよね。この2カ国は508で空母運用可能なはずのブリタニアすら除いた統合戦闘団を作った上にストライカーユニットの技術も共有していて明らかに密接に繋がってますね。もしかしたら自国が直接ネウロイに攻撃されてないのも大きいのかもしれませんね。
けどこの大戦が終われば手を組む理由とか無いんですよね。むしろ互いの利害がぶつかり合って米ソ冷戦ならぬリ扶冷戦とかも結構あり得そうですね。地政学的にも明らかに扶桑の太平洋領土とかリベリオンにとって邪魔ですしね。というかソ連にあたるオラーシャが第二次世界大戦と違ってウラルまで撤退してる事からかなり工業力落ちてるだろうし戦後にまともな国力あるのって扶桑とリベリオン、後はワンチャンカールスラントが喰らいつけるかどうかみたいな感じしますね。ちなみにブリタニアはちょっと厳しい気がしますね。あの国現状は列強と言えるくらいウィッチ保有してるけど戦後になって自分の国に帰ると下手したら海外領土守らんくらいにウィッチが減りそうな気がするんですよね。だからあの国も戦後には生き残れないかなぁ。