ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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やっとここまできたって感じがします。


出撃

幸運なことに座礁することもなくワール川に突入した大和に異変が起きたのはワール川からライン川に入って直ぐのことだった。

 

「また通信障害が起きた?」

 

「…うむ。どうやらそのようだ」

 

二度目の通信障害とあって坂本少佐は気まずげに頷いた。

 

「大和の通信設備はかなり高度なものを積んでるはずだろ?」

 

「そのはずなんだが…」

 

「原因はわからないのか?」

 

二度目ともなれば機械的なものなのかそれ以外に原因があるのかぐらいは知っておきたいと思いエイラは尋ねた。

 

「おそらく機械的な問題ではない。何度も確認させたがどこにも問題は見当たらないしおそらく環境を要因としたものだと思う」

 

「断言しないのは見落としがある可能性があるからか?」

 

「そうだ。おそらくないとは思うがチェックするのは人間だからな。ないとは断言できん」

 

「サーニャ魔導針は使えるか?」

 

エイラの問いかけにサーニャは魔法力を発現させ少しの間目を瞑った。

 

「ダメ。何も聞こえないわ」

 

いつもならば聞こえるはずの音が聞こえないことに不安げな表情をしながら首を横に振った。

 

「サーニャもダメなら環境的な物と見るべきか」

 

「そうとも限らないんじゃないか?」

 

坂本少佐の意見にエイラが疑問を呈した。

 

「だが機械の問題ではなくサーニャも通信ができないとなると環境が原因としか思えないが…」

 

「こんなに天気がいいのに通信に障害が起こるとかあると思うか?」

 

「確かにそれは考えにくいが……。どこかの国が電波妨害をしたとでも?」

 

「意図的かどうかはともかく新兵器の実験とかで偶然電波障害が起こったとかはあり得るんじゃないか?」

 

「そんな実験があるという話は聞いたことがないな」

 

電波障害を起こす可能性があるような実験であれば事前通達がある筈だが坂本少佐は聞いた覚えがなかった。

 

「私も知らないな」

 

「ならば可能性としては秘匿されているか、本当に環境が原因ということになるな」

 

「仮にバルトランドのも原因が同じだとして、ここまで距離が離れているのに電波障害が継続するか?」

 

「バルトランドとの間あたりで実験していればあり得るんじゃないか?」

 

「バルトランドにしろベルギガにしろ復興途中でそんな大規模な実験ができるような余力はないだろ」

 

国民の大半がブリタニアなどに亡命していたこの二カ国は海外領土などの規模も大きくなく対ネウロイようの新たな兵器などの開発もできずそれどころか国民の生活すらままならない状態だった。国土を奪還したことによりやっとまともな生活をし始めたばかりであり大規模な通信障害が起こるような何かをする余裕があるとは考えにくかった。

 

「少佐、そもそも大規模な実験を行える国ってのはリベリオン、扶桑、カールスラント、ブリタニアぐらいなんもんだ。そのいずれもが秘密裏に何かやりたいってなら自国内や植民地でどうにかできる国ばっかりだ。強いて言うなら扶桑が怪しいけど少佐が何も知らない以上無関係と考えていいんだろ?」

 

「正直陸軍が関わっていれば海軍の私が何も知らないのも納得できるが海軍ほど欧州に人を派遣していないしあまり考えなくてもいいだろう」

 

「ならもう原因は一つしかないんじゃないか?」

 

「まさかネウロイが原因だとでも言うつもりか?そこまで技術的に高度なことができるとは思えんが……」

 

坂本少佐は懐疑的だ。

 

「そんなに通信を妨害する事が高度な事か?」

 

「人間ならともかく相手はネウロイだぞ?」

 

「スオムスに現れた人型ネウロイはウィッチを操った。オラーシャでは周囲の気温を大きく下げることのできるネウロイもいた。ネウロイはわたし達人間よりもよっぽど高度な事をやってきた。なぜ通信妨害に限って技術的に高度なんて理由でできないと思うんだ?」

 

そもそも人類がネウロイよりも高い技術を持っているのであればこのような事態になりようがなかったのだから坂本少佐の意見はあまりにもネウロイを甘くみすぎていた。

 

「まったくもってその通りだが……、ならなぜネウロイは今まで通信妨害をしてこなかったんだ?」

 

「わたしに聞かれても困る。そんなのネウロイに聞いてくれよ」

 

「ネウロイは喋らないぞ。どうやって聞くんだ?」

 

「冗談だよ。ネウロイのせいと決まったわけでもないしな」

 

それもそうか、と坂本少佐が返し通信室に戻ろうとした時サーニャの魔導針が瞬いた。

 

「ネウロイの反応が…」

 

「カールスラン側か?」

 

「うううん。ガリアの方……。どんどん増えていくわ」

 

「場所はどの辺りだ?」

 

「どの辺りとかじゃないわ。探知できる範囲全体よ」

 

サーニャの言葉にエイラと坂本少佐は顔を見合わした。

 

「全面攻勢か!」

 

「みたいだな。少佐、ストラカーの補給は終わっているか?」

 

「ああ、いつでもいけるぞ」

 

ストライカーユニットが設置されたカタパルトを指差した。

 

「……注意点とかはあるか?」

 

「強いて言うなら姿勢制御に注意をすることくらいだな。それ以外は特にない」

 

坂本少佐の答えにエイラは深呼吸をするとカタパルトにのぼり魔法力を発現させると慎重にストライカーユニットに足を通した。隣ではサーニャも同じように、こちらはエイラよりも手早く準備を済ませていた。

 

「出撃準備できたぞ」

 

エイラの呼びかけに坂本少佐は手を上げて答えるとカタパルトの担当者に発進させるよう伝えた。

 

ゆっくりとエイラは前に進み、次の瞬間後ろで火薬の爆発する音が聞こえ一気に加速した。

 

『宮藤少尉を助けて!』

 

「宮藤!?」

 

「芳佳ちゃん!」

 

カタパルトから飛び出した瞬間聞こえた声に思わず2人はその名前を呼んだ。

 

『宮藤さん、応答して!』

 

『返事しろ宮藤!』

 

『大丈夫か宮藤!』

 

『芳佳ちゃん返事して!』

 

『無事ですの!?宮藤さん!』

 

『待ってろ宮藤!』

 

『芳佳!すぐ行くからな!』

 

救援要請に続いて次々と501のメンバーの声がインカムから流れ出しサーニャとエイラもそれに続いて言葉を発した。

 

「待ってて、芳佳ちゃん!」

 

「宮藤、どこだ〜!」

 

その時、遠くの方で巨大な魔法陣の光が現れた。

 

「エイラ、あそこ!」

 

その近くには地中に体を埋めた超大型のネウロイが魚雷のような形をした中型のネウロイを次々と吐き出していた。

 

「よし、急ぐぞ!」

 

エイラとサーニャが加速すると背後の大和から大きな砲声が響き魔法陣の付近にいたネウロイが四散した。

 

『あれは!?』

 

『バトルシップ!?』

 

『大和よ!ライン川を遡上しているわ!』

 

『浮き輪つけてる!』

 

『扶桑の海軍は出鱈目だ!』

 

『はっはっはっはっは!弟子の窮地だからな、無理もするさ!』

 

いつの間にか零式観測機に乗った坂本少佐が現れエイラ達の下方を飛んでいたミーナ中佐達に合流した。

 

「ああでもしないと川底につっかかってな」

 

「そういう問題じゃあ……」

 

ハルトマンが呆れたように突っ込んだ。

 

「お〜い、わたしたちもいるぞ〜」

 

そう言ってエイラは少し高度を下げ部隊に合流した。

 

「うわ〜、なんかうじゃうじゃきたよ〜!!」

 

大量のネウロイがエイラ達の方向に突撃してくるが次の瞬間、どこからともなく銃撃が加えられ先頭の数機が撃墜された。

 

「ひゃっほ〜!」

 

「到着〜!!」

 

歓声を上げながらシャーリーとルッキーニが合流した。

 

「ミーナ!宮藤に土産がある。露払いを頼む!」

 

「分かったわ!総員戦闘隊形!」

 

坂本少佐の呼びかけにミーナ中佐は命令を下した。

 

「目標、火線上の全てのネウロイ!坂本少佐を援護します!」

 

まずハルトマンとペリーヌが突撃すると固有魔法のシュトゥルムとトネールでネウロイを吹き飛ばした。

 

「やるぞ、ルッキーニ!」

 

「オッケー!」

 

シャーリーは左脇にルッキーニを右脇にリーネを抱えた。

 

「合体!」

 

「え?」

 

まさか自分が巻き込まれると思っていなかったリーネは焦った。

 

「えぇぇぇぇえ〜!!!」

 

そのまま三人は突っ込みネウロイの一団に大きな穴を開けるとエイラとサーニャが取りこぼしを冷静に処理していった。

他の三人もそれに続いて別のネウロイの一団を壊滅させて行く。

 

「また出てきたわ!」

 

倒したネウロイと同数以上の数にミーナ中佐が眉を顰めた。

 

「ふ、随分溜め込んでいるな」

 

いくら出てこようとも501の敵ではなくそれらはあっという間に蹴散らされ坂本少佐は宮藤にポットを落とした。

 

「サーニャ、少佐の撤退を援護するぞ」

 

倒しても倒してネウロイはで出てくる。ストライカーユニットよりも速度の遅い零式観測機が振り切れるはずもなくエイラはサーニャに声をかけ坂本少佐撤退の援護に向かった。

 

「エイラ、上を飛んでる服部を助けてやりたいんだが援護を頼めるか?」

 

「服部?」

 

「私の弟子でな、宮藤の随行員として欧州に来ていたんだ」

 

坂本少佐に示され上を見ると確かに一人のウィッチが空を飛んでいた。

 

「先導するよ」

 

エイラが服部を回収して下を見ると宮藤が空中でホバリングし仲間達が周囲を取り囲んでいた。

 

『そうだ、静香ちゃん!』

 

「大丈夫よ、芳佳ちゃん」

 

「こっちだこっち」

 

服部の事を思い出し周囲を見渡した宮藤にサーニャとエイラは声をかけた。

 

「宮藤少尉…」

 

「静香ちゃん…よかった」

 

「はっはっはっはっは、思った通りだな。宮藤、お前には空が一番似合う。そこがお前のいるべき場所だ」

 

そこにミーナ中佐達が降下してくると言った。

 

「待っていたわよ宮藤さん。行ける?」

 

「はい!」

 

その時、地響きを上げながら超大型のネウロイが地響きを上げながら上昇しその全体の姿を表した。周囲には生き残った少数のネウロイが守るかのように展開している。

 

十分な護衛ネウロイがいれば多少手擦ったであろう超大型ネウロイもごく少数の護衛ではもはや501部隊の敵ではなかった。それでも501部隊だけではやや火力不足は否めなかったであろう、しかしここには大和がいた。轟音を轟かせ発射された大和の主砲弾がネウロイに炸裂するとそのコアが露出した。それを見逃すはずもなく501部隊は一気にコアに向かって殺到した。

 

「総員、火力をコアに集中!」

 

ネウロイもそれを許す事なく生き残りの魚雷型のネウロイをコアの付近に集結させビームによる必死の防衛を図った。

 

「くっ、どうするミーナ!」

 

想像以上のビームの量にバルクホルンが指示を仰いだ。

ミーナ中佐が指示するよりも先に宮藤が先行した。

 

「宮藤!?」

 

「このまま行きます!」

 

そう言うと宮藤は巨大なシールドを展開した。

 

「各自シールド展開。宮藤少尉に続け!」

 

ミーナ中佐の命令により展開されたシールド群はそのままネウロイの群に突っ込み蹴散らすと超大型のネウロイのコアまでもを貫いた。

どんなに大きなネウロイであろうとコアを破壊されたらそのまま消滅するしかなくその巨大な体躯を白い破片と変えたのだった。

 

「宮藤少尉ー!」

 

「静香ちゃん!」

 

零式観測機をはなれた服部が宮藤に抱きついた。

 

「少尉はいらないよ、静香ちゃん」

 

「はい、宮藤さん!」

 

「ミーナ中佐。今カールスラント国境付近に新たなネウロイの兆しありとの報告を受けました」

 

エイラの知らない銀髪のカールスラントのナイトウィッチがミーナ中佐に報告した。

 

「聞いたわね、みんな。新たな脅威に対し我々がなすべき事はただ一つ。ここに501統合戦闘団、ストライクウィッチーズを再結成します」

 

「了解!」




ふと疑問に思ったんですけどミラーシャが持ってたマルセイユのサイン入りブロマイドの入手経路ってどうなってるんですかね?
てっきりクリスにプレゼントするまでサインしていないものだと思っていたんですけどそんな事なかったって事なんですかね?それともよっぽどマルセイユと親しい人だったとか?サーニャの話がこの後だからクリスの後ではないですしどう言う事なんでしょうか。
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