連合軍西ヨーロッパ戦域統合作戦司令部
「エイラ・イルマタル・ユーティライネン大佐、ただいま着任しました」
「連合軍西ヨーロッパ戦域統合作戦司令部司令官のドナルド・アイゼンハワー元帥だ」
挨拶を済ますとアイゼンハワー元帥はすぐに今後の作戦計画を話し始めた。
「大佐も聞いていると思うが次の作戦はカールスラント奪還作戦だ」
「501、502、504、506を使う大規模な作戦になると聞いています」
501と502を投入すると聞いた時、エイラは上層部の気合の入り用に驚いていた。501はともかく502はペテルブル防衛の要の部隊であったからしばらく動かされることはないと思っていたからだ。
「そうだ。カールスラントに巣食うネウロイの巣、その全てをこの作戦で全て叩き潰す」
「アンナ攻略で使われたものについてはわたしも聞いています。全て潰すとなると相応の数が必要ですが用意できるんですか?」
「既にブリタニアに必要な数は揃えてあり、その一部はベルギガのアントウェルペンに移送を開始している」
つい最近使われたばかりの新兵器が既に量産されていることにエイラは驚き、一つの可能性に考えがいたり尋ねた。
「今年中に攻略するつもりですか?」
「一刻も早くカールスラントをネウロイから解放しなければならない。ガリアもかなり復興されてきたしここらが仕掛け時だろう」
「あまりネウロイを甘く見ない方がいいと思いますが…」
これまで最前線でネウロイと戦い続けてきたエイラからすればアイゼンハワー元帥の考えはあまりにもネウロイの力を軽視し過ぎているのではないかと言う疑念が拭えなかった。
「人類がネウロイに対抗出来ず大陸から叩き出された最大の原因は通常兵器がネウロイに対して効果がなかったからだ。今回の作戦では戦車砲にも対ネウロイ用に我が国が開発した新型徹甲弾を用意してある。問題はないだろう」
先のネウロイの再侵攻で大きな被害が出なかったあたりその新型徹甲弾が役に立ったのだろうとエイラは当たりをつけた。
「これからおよそ二ヶ月にわたり敵戦力の漸減を行い陸上兵力がカールスラントにあるネウロイの巣までスムーズに行軍できるよう道を作る。そのための主戦力はウィッチだ」
「その間統合航空戦闘団は何をすればいいんですか?」
「なにを?漸減作戦をするに決まっているではないか」
「…カールスラント奪還のための本作戦には?」
「当然参加する」
「いや、無理でしょう。いくらウィッチでもそんな連戦では100パーセントの力を出すことは難しいです」
ため息を吐きそうになるのを堪えてエイラは言った。
「世界中のエースウィッチを集めた統合戦闘航空団ならできるのではないか?」
「エースウィッチを集めたと言っても一隊あたり10人前後しかいないんですよ?
カールスラントのネウロイの正確な数は知りませんけど明らかに劣っているのだけは確かです」
「そうだな。だが数で劣るのはウィッチ全体で見ても同じだろう。だからこそ選りすぐりのエースウィッチを集めて効率的に運用しようとしているのではないか」
「言い方は悪いですけどたかだか前哨戦如きに統合戦闘航空団を投入するのはいかがなものかと。無為に損耗させることになりかねませんし何よりこの程度ならエースウィッチでなくともある程度の数がいればどうとでもなるかと」
アイゼンハワー元帥は少し考えるそぶりを見せた後言った。
「だがそれではウィッチに大きな被害が出るのではないか?」
「数がいれば問題ないでしょう」
「ガリアの防衛にかなりの数のウィッチを割いている。あまり多くは出せない」
「少し前まで506が主力となって防衛をしていたと聞きます穴埋めのための部隊を作戦に転用してガリア空軍のウィッチに少しの間頑張ってもらえばいいのではないですか?」
「ガリア空軍に期待しすぎだな」
エイラの意見をバッサリとアイゼンハワー元帥は切り捨てた。
「期待しすぎと言うこともないと思いますが…」
「現在パリに政府を置くガリア共和国の指揮下にある兵は約40万人。だがガリア軍に所属する兵はざっと100万人だ。これが何を意味するかわかるか?」
普通ならおかしな話だがガリアに限っては事情があった。
「ガリア撤退時に各地にバラバラにできたガリアの政府は全て一つに統合されたと聞いています」
ガリアはカールスラントと違って政府が主導した撤退ではなく各人が独自、あるいは地方政府の判断で疎開していた。そのせいもあってネウロイの被害が少なかった南部ではペタン将軍主導でヴィシーを首都とするヴィシー政権が樹立し、対してブリタニアに逃れたガリア政府はド・ゴール将軍を中心に纏まり各国から支援を受け自由ガリア軍を編成していた。この二つが特に大きな集団だがこれ以外にも植民地などにいくつかの集団がありガリアが解放される直前までこの状態が続いていた。
「未だにその名残がガリアにはある。特にペタン将軍などは軍閥と言って良いほどの勢力を誇っている。規模としてはガリア政府と大きく変わらん」
「ガリア軍をあてにすることできないと言うことですか」
「そうだ。軍事的に大きな勢力だったド・ゴールと官僚や経済界に大きな影響力を持っていた王党派が手を組んだことでかなりマシにはなったがそれでもヴィシーや植民地軍が不穏なのは変わりがない」
「ならカールスラントを使えば良いのではないですか?」
「あの国にそんな余力はない。オラーシャ、スオムス、アフリカ、バルカン半島と言った他全ての戦域に対して大量のウィッチを送り込んでいる。もちろんそれを引き戻せばなんとかなるだろうが代わりの部隊を用意する必要がある。現実的ではないしそれなら他の国から部隊を出すべきだな」
「リベリオンは…」
「私としては出しても問題ないと思うがが本国があまりいい顔をしない」
「……では不安ではありますがガリア空軍に暫く頑張ってもらうしかないのではないですか?」
最初の意見にエイラの考えは帰結した。
「ユーティライネン大佐、そもそも穴埋めのための部隊などない。今まで通り506には防衛のためにも戦ってもらう」
「今まで通り?つまり漸減作戦を行いつつガリアを守ると?」
「そうだ」
「そんな馬鹿な話がありますか。弱小国家だったスオムスでさえ自力で国を守っていました。それを仮にも大国と謳われた国が他国に防衛をさせて自分達はゆっくり復興作業をすると?」
「いや、それは違う」
「何が違うんですか。自国の内情を理由に他国に防衛を肩代わりしてもらっている事実は変わらないじゃないですか」
「他国に防衛を肩代わりしてもらっているのは事実だがゆっくり復興をしているのではない。ガリアの舵取りを巡って政治闘争を繰り広げているのが正解だ。ペタン将軍は北部ガリアの復興に手を貸す事で北部からの支持を受けようとしているようだからな」
「なお悪いじゃないですか」
「そうかな。旧ヴィシー政権とガリア政府がぶつからないだけまだマシではないかな?」
アイゼンハワー元帥の不穏な一言にエイラは眉を顰めた。
「流石にそれはないのではないですか?」
「いまだにペタン将軍は旧ネウロイ勢力圏との境目付近に軍を置いているのにか?」
つまるところそれは現ガリア共和国とペタン政府の国境という事だ。
「その戦力をカールスラント方面に向けてほしいものですね」
「まったくだ」
アイゼンハワー元帥はため息を吐いた。
「そう言うわけで余剰戦力はない。統合戦闘航空団には漸減作戦を行いながらガリアの防衛をしてもらう。わかったな」
アイゼンハワー元帥の言葉にエイラは渋々頷いた。
多分ですけどオペレーションサウスウィンドに参加した戦車って対ネウロイ用の専用弾載っけてそうですよね。特にT34カリオペとか専用弾使ってると思います。じゃないと撃つ意味ないですし。