カールスラント奪還のための物資が集積される港、アントウェルペン港。そこへ続くスヘルデ川河口を巨大な氷山型ネウロイが数多の妨害を受けながらアントウェルペン港へと突き進んでいた。
「全砲門、氷山型ネウロイに向かって全力斉射!」
ネウロイの前で決死の攻撃を続けるのはヴェネツィア海軍のリットリオ級戦艦ドージェだ。対ネウロイ用装甲により覆われた船体はあちこちから火の手が上がり満身創痍となりながらもアントウェルペン港に近づけ無いために残っている火力をネウロイにぶつけ続けていた。
「あれなら本体がある内部まで氷山が砕けるはず!」
ドージェの奮戦で分厚い氷塊は砕かれ一人で奮闘していた宮藤は氷山の中へ侵入する事に成功した。
「あれが本体」
丸い円盤型の胴体と多数の触手を持つ、まるでクモヒトデのようなネウロイが宮藤の前に姿を表した。
本体にとどめを刺すべく体勢を整えてた宮藤に予想外の衝撃が襲った。
「回転数は抑えてるのに…!」
使い慣れていない、また型式の古いストライカーユニットのせいか出力が安定せず大きく体勢を崩した宮藤を見逃さずネウロイはビームを放ち氷山の外へと押し返した。
「まただ…。出力が安定しない!」
一度ドージェに墜落し修理してもらったばかりなだけに宮藤はもどかしさを抑えきれなかった。
「ドージェが!」
顔を見上げるとさっきよりも酷い損傷を受けた船体が傾いているドージェが目に入った。
「ネウロイ進路変更!アントウェルペンです。追いつけません!」
甚大な被害を受け速力が低下したドージェではアントウェルペン港に向かうネウロイを止める事は出来ずただ見送ることしかできなかったり。
「魔導エンジンの出力が上がらない…!あとちょっとなのに…これ以上スピードが出ない!!」
この空域にある唯一のウィッチである宮藤は懸命にネウロイを追いかけるが魔導エンジンが不調なせいでなかなか距離がつまらない。
「もう追いつけない!」
宮藤が諦めかけたその時、どこからともなく魔導エンジンの音が辺りにこだますると同時に聞き覚えのある声がインカムから聞こえてきた。
『目標、スヘルデ川河口のネウロイ』
『はいほーい』
『返事は了解だ』
『りょ〜かい!』
宮藤の右斜め上に頼もしい仲間達の姿が現れた。
「ミーナさん!バルクホルンさん!ハルトマンさん!」
バルクホルンとハルトマンが宮藤の呼びかけに答えるようにクルリと回転すると宮藤達が見守る前で一瞬にしてミーナ達はそれまで宮藤達がネウロイに与えてきた以上のダメージを与えてみせた。
「ヤッホー宮藤〜!」
「無事か、宮藤!」
「はい!」
手を振るハルトマンと優しげに微笑んでいるバルクホルンに宮藤は笑顔で答えた。
「久しぶりね」
「まったく、こんな相手に苦戦するとはな!」
「皆さんが来てくれるなんて…。一体どうして」
「話は後で。来るわよ!」
宮藤の質問を遮るとミーナ中佐は後ろを振り返った。
「あ!また出力が…!」
カールスラントの3人がビームを避ける中ただ一人宮藤だけがまた訪れた魔導エンジンの不調でビームの直撃を受けそうになった。
しかしギリギリのところでビームを発射しようとしていたネウロイが爆発し爆風により宮藤は空中で宙返りした。
「対装甲ライフル!」
「芳佳ちゃーん!」
叫び声と共にリーネが宮藤に抱きついた。
「リーネちゃん!来てくれたんだ!!」
「ほらほら、まだ攻撃来ますわよ」
リーネに続いてペリーヌが宮藤の隣に現れた。
「ペリーヌさん!」
「坂本少佐から出撃要請が来たんですから来ないわけにはいかないでしょ」
宮藤達も攻撃に加わろうとするとバルクホルンとハルトマンが相手にしていたネウロイの一部が分離しミサイルのように陸に向かって飛び始めた。
「分離した!」
「街に向かってる」
「ここはあたしに任せろ!」
追いかけようとする体勢を見せた宮藤達の横をシャーリーが高速で過ぎ去った。
「シャーリーさん!」
「任せた〜!」
「ルッキーニちゃん!」
シャーリーに少し遅れて宮藤達の横に現れたルッキーニが笑顔を浮かべた。
「いかせねぇよ!」
シャーリーはあっさりとネウロイに追いつくと街に被害を与える事なくネウロイを撃破した。
「よお!待ったか?」
ネウロイを撃破したシャーリーはバルクホルンに近づくとからかうような声音で言った。
「遅いぞ!何をやっていた!」
「あのなぁ!私らのいた基地はここから一番遠いんだぞ!」
「見て!氷山が!!」
バルクホルンとシャーリーのやり取りをよそに新たな動きを見せた氷山型ネウロイに気付いたルッキーニが声を上げた。
ネウロイは触手のような部位を氷山内に引っ込めると氷山に亀裂が走り中から円盤型のネウロイが姿を表した。
「本体が!」
宮藤の言葉に即座に反応し全員でネウロイの追撃を始めた。
「あれが氷山を操っていたのね!」
「高高度に逃げるつもりですの!」
ウィッチ達が追いかける前で逃げるネウロイに向かって複数の白い煙が走りネウロイは爆発し進路を変えた。
「あれは…ロケット弾!」
「と言う事は!」
「エイラさん!サーニャちゃん!」
501の残りのメンバーが集まり第501統合戦闘航空団総力を上げての追撃戦が始まった。
「敵の射程圏内に入ったわ。来るわよ!」
固有魔法により正確なネウロイの位置を把握できるミーナ中佐が注意を促すと同時に前衛のミーナ、シャーリー、ペリーヌ、ルッキーニがシールドを展開した。
「今よ!」
合図と同時にエイラ、サーニャ、リーネ、宮藤が飛び出しネウロイに猛攻を加えた。
さらにバルクホルンが海面スレスレから上昇して下から猛攻を加える。
「コアを確認!ハルトマン!」
露出したコアに向かっでハルトマンが急降下しながらコアを撃ち抜くとネウロイ光の粒子となり砕け散った。
「やった〜!!」
皆が歓声を上げる中再び宮藤のストライカーユニットが不調を訴えた。小さな爆発音を上げるとストライカーユニットは完全に停止し宮藤は海へと真っ逆さまに落ちていった。
「芳佳ちゃん!」
リーネが後を追うが追いつきそうになくとうとう海面に激突するというところで一人のウィッチが宮藤を抱き抱えた。
「大丈夫ですか!」
「静香ちゃん!」
抱きかかえたウィッチは宮藤をヘルウェティアの医学校に送り届けるための随行員として来ていた服部静香だった。
「お久しぶりです、宮藤少尉!」
満面の笑みを浮かべて服部は宮藤にそう言った。
「よかった」
一方で宮藤を助けるために追いかけていたリーネは宮藤が海面に叩きつけられなかった事にほっと胸を撫で下ろした。
「ちょっと待て!ヤバいぞアレ!」
エイラがアントウェルペン港の方角を指差しながら顔を真っ青にして叫んだ。
「氷山が止まってない!」
氷山が港にぶつかれば一体どれほどの被害が出るか計り知れない。全員が一斉に氷山を止めるためにアントウェルペン港に向かって飛び始めた。
「本体のネウロイは破壊したのに!」
「慣性で進んでるんだ!」
疑問を口にしたペリーヌにシャーリーが答えた。
「この大きさじゃ、簡単には止まらないぞ!」
氷山を止めるためにウィッチ達は氷山の前に立ち塞がり攻撃を加えた。
「砕けろ〜!!!」
シャーリーが叫ぶがそもそもウィッチの装備は通常の歩兵が持つ装備と威力そのものに違いはない。魔法力を乗せてネウロイに対する攻撃力を生み出すことによってネウロイと戦えるようにしているのであってネウロイ以外、特に無機物に対しては大きな威力を発揮しない。この中で最大火力はサーニャだがそれでさえここまで大きな氷山相手では無力だった。
「無理〜!大きすぎるよ〜!!!」
ハルトマンの言葉にミーナ中佐は悔しそうな表情を浮かべると命令を下した。
「全員、退避!」
※
「反抗作戦を前に、大きな被害を受けてしまったな」
坂本少佐が巨大な氷山を見上げながらそう言った。
「反抗作戦?」
初めて耳にしたその言葉に宮藤が尋ねた。
「そう、私達人類のネウロイに対する反抗作戦がついに開始されるのよ。その目標はベルリン」
ミーナ中佐が宮藤の疑問に答えた。
「ベルリンって…カールスラントの?」
「そう、首都だよ」
リーネが答えた。
「ついに来たか!」
バルクホルンが気合を入れるように手のひらに拳を打ちつけた。
「気合い入ってんね」
「当然だ!私達の国を取り戻す時が来たんだ!」
ハルトマンの言葉にバルクホルンは声を大きくして答えた。
「ベルリン上空には強力なネウロイの巣の存在が確認されています。戦いは、今までにない厳しいものになるでしょう。坂本少佐は正式に部隊を抜ける事になりましたが、新たに扶桑海軍よりウィッチが一名加わります」
「服部!」
「はい!」
「え、静香ちゃん!?静香ちゃんが501に!?」
予想外のサプライズに宮藤は喜色をあらわにした。
「ではここに501統合戦闘航空団、ストライクウィッチーズを正式に再結成します!」
ジニーってあの後どうなったんでしょうかね。ブリタニアのナイトウィッチになったのか、それともルミナスで歌い続けるのか…。
個人的には後者であって欲しいところですけどどうなんでしょうか。ブリタニアの情勢的にも普通に歌い続けてそうな気もするしナイトウィッチとして活躍している気もしなくはないし。うーん、もどかしい。
…なんかその内誰か書きそうな内容ですね。ジニーがナイトウィッチとして活躍する話。