少しづつ寒くなってきましたね。
アントウェルペン港が氷山により使用不能になった2日後、エイラはガリアのとある港町に来ていた。
「急に港を貸してくれって言われても困りますよ。我々にだって生活があるんだから」
そう言ったのはこの港町の漁師たちのまとめ役をしているポール・ルフェーブルという男だった。
「船の出入りが少ない時間だけでもいいんです。なんとかお願いできませんか?」
「そうは言ってもなぁ」
なぜエイラがこんな事をしているのか、その原因は昨日の会議にあった。
「諸君、本日集まってもらったのは他でもないアントウェルペン港が封鎖された事による補給計画の破綻をどう修正するか協議するためな訳だが…誰か案があるものはいないか」
アントウェルペン港が氷山で封鎖された事が与える影響は大きい。もしこの状態が長引けば西方方面軍が機能不全になるためどうにかして状態を改善する必要があったため、アイゼンハワー元帥は司令部の参謀を集め会議を開いたのだった。
「後方参謀の間ではガリアとベルギガの港を利用する他ないとの意見で纏まっています」
リベリオン軍所属の後方参謀がの1人が早速意見を出した。
「具体的には何処の港を候補に考えている」
「ガリアのルアーブルを中心にガリア、ベルギガの中小港に物資の荷揚げを分散し今回のような事態が起きても大きな影響を受けないようリスクを分散する予定です」
「しかしそれでは分散した物資を何処かで集積する必要がある。一つの港から運ぶなら護衛も必要なトラックも少なくていいがその案では前線からいくらか人員をまわさねばならないのではないか?」
そう言ってカールスラント軍所属の作戦参謀が顔を顰めた。
「リベリオン本国に要請すればなんとかなる」
「確かに後方参謀の言う通り運ぶためのトラックはなんとかなる。護衛に関しても最前線で501、506が戦っている以上多少前線の兵力が減ったくらいではびくともしないだろう」
そう言ってアイゼンハワー元帥はエイラに視線を向けた。
「501については問題ありませんけど506は二つのチームに分かれている関係上少し防衛能力に不安があります」
「501に問題がないのなら構わない。結局のところ重要なのは再び港湾拠点を襲われないようにする事だからより海に近い501が万全の体制なら十分だ」
「しかし元帥、中小の港湾施設も使うとしても問題があります」
「なんだ参謀長」
「ベルギガはアントウェルペンの失態を取り返すために全面的に協力してくれるでしょうがガリアは違います。現在復興中のガリアは民間の物資を様々な港に荷揚げしているため我々がそこに割って入るわけですからガリア政府にはかなり嫌な顔をされるでしょう」
未だに復興途中のガリア北部は各国からの支援物資が毎日大量に届く。その殆どはルアーブルに届けられているがそれ以外の港にも届いていてガリア政府が簡単に認めるとは考えにくかった。
「言われてみればそうだな。となると普段漁などでも使っているから生活に直結している民間人にも嫌な顔をされるな」
ネウロイと戦うためとはいえ民間人が自分の生活に支障をきたしてまで協力してくれるかはわからない。結局のところ解放されてたガリアにおいて最も重要なのは自国での生活が守られる事であってカールスラントの解放はあくまでもその次でしかないからだ。
「よろしい。ガリア政府には私が頭を下げよう」
「お願いします。ガリア政府の協力が取り付けられても港側に拒否される可能性もありますがその際はどうにますか?」
「そうだな……ユーティライネン大佐」
「はい!?」
まさか自分の名前が呼ばれるとは思っていなかったエイラは驚きながらも返事をした。
「ウィッチとして民間への知名度の高い大佐が適任だろう。頼むぞ」
これにエイラが了承した結果、早速翌日からエイラは説得へと駆り出される事になるのだった。
エイラが必死に頼み込んでいると部屋の扉が開きエイラよりも少し歳下に見える少女が部屋に入って来た。
「パパ!501部隊のユーティライネン大佐が来てるって本当!?」
「マノン!ノックくらいしなさい。お客さんが来ているんだぞ」
「わー!ユーティライネン大佐だ!」
マノンと呼ばれた少女は目をキラキラさせながらエイラに駆け寄った。
「マノン!いい加減にしなさい!!」
「もぉ!パパうるさい!」
「少しくらい構いませんよルフェーブルさん」
マノンの勢いにたじたじになっているルフェーブルにエイラはそう言った。
「しかし…」
「私、マノンって言います!ユーティライネン大佐のファンなんです!ぜひサインが欲しいんです!!!」
「いいぞ」
「やった!!ありがとうございます!!!」
エイラの返答にマノンは全身で喜びを表現するとブロマイドを差し出した。
「それで港を貸していただく件なんですけど」
マノンから受け取ったブロマイドにサインを書きながらエイラはルフェーブルに話しかけた。
「最近はパリの方も復興が進んで少しづつ人が増えてきましたから今ここで魚の出荷数を落とすような事はできませんよ」
「別にいいじゃない港くらい。そんなに使ってないんだから貸してあげたらいいのに」
エイラからサインを受け取ったマノンがそう言った。
「マノン、いい加減にしなさい」
「どうせ早朝から昼ぐらいまでに船の出入りと水揚げは全部終わるんだからそれ以外の時間は使って無いんだから問題ないじゃない」
「それはそうだが…」
「ユーティライネン大佐は港が使えないと困りますよね」
「…そうだな。少しでもいいからここの港を使えるように交渉してくるよう言われているから断られたらわたしは上の人から怒られる事になるな」
実際のところこの返答は正しく無い。ここが使えなくてもルアーブル港が使えれば問題の殆どは解決するためこの港の重要度はそう高くは無い。また、他にも同じような港は存在するためここ一つが使えなくなったところでアイゼンハワー元帥から怒られるなどということはあり得なかった。
「ユーティライネン大佐も困ってるみたいだしやっぱり貸してあげようよ!」
「いいかマリア、これはパパ一人で決めていいことじゃないんだ。収入にも直結するから他の漁師たちみんなの意見を聞いた上でこう言っているんだよ」
「けどここを貸すことでカールスラントが解放されるなら解放されるまでの間くらい貸してもいいじゃない」
「ちなみに借りる以上は賃料として軍から金銭の支払いもあるぞ」
収入の話を出されて少し勢いが削がれたマノンにエイラが助け舟を出した。
「な〜んだ、なら大丈夫じゃない!何も心配いらないわ!!」
マノンの言葉にルフェーブルはため息をつくと言った。
「わかった。パパの負けだ。大人しくマノンの言う通り港を貸す事にするからママのところにでも行ってなさい」
「本当!?ユーティライネン大佐、パパが港を貸してくれるって!!」
「ありがとうマノン。助かったよ」
エイラがそう言って笑みを浮かべるとマノンは顔を真っ赤にして部屋から出ていった。
「ルフェーブルさん。さっきの言葉に間違いはないですね?」
「二言はない。元々断るつもりもありませんでしたしね」
エイラもこの件が断られることはないと内心分かっていた。その上でルフェーブルができる限りいい条件で貸し出すための交渉を行うだろうと思ってマノンが来るまでは話をしていた。
「吹っかけようと思っていたのにマノンのおかげて全部台無しですよ」
「常識的な範囲の額を支払いますから安心してください」
「多少色は付けてくれるんでしょうね」
「お嬢さんを利用したお詫びくらいはしますよ」
そう言ってエイラは笑みを浮かべるのだった。
ジニーの使い魔、モフィーってなんだったんでしょうね。
渡鳥的な性質を有している使い魔って事は分かりますけどそれなら環境の変化で大きく体調を崩すって言うのもどういう事なのか…。
一箇所に止まるならともかく移動する性質である以上比較的頑丈な体してそうなのに。