作戦発動の前日、エイラはミッコと共にラッペーランタの軍人墓地にあるニーナとアンネリの墓を訪れていた。
「しばらく来れてなくてごめん。いい酒を持ってきたから許してくれよな」
そう言いながらエイラは持ってきた酒をコップに注いでニーナとアンネリの墓に置いた。
「ニーナは酒に弱いからそれじゃ許してくれないんじゃないの」
ミッコがからかうように言った。
「そうだけど花とか前線じゃ手に入らないから仕方ないじゃん」
「それもそうか」
そう言いながらミッコはニーナの墓には花を、アンネリの墓には灰皿に火をつけたタバコを置いた。
「なぁミッコ、これ預かっといて欲しいんだけど」
エイラは一通の封筒を差し出した。
「なにこれ」
「わたしの遺書」
「やめてよ縁起でもない」
ミッコはおもわず受け取った遺書を返そうとした。
「有り得ない話じゃないだろ」
「それはそうだけど未来予知のあるイッルに渡されると本当に死んじゃいそうで嫌なんだよ」
「わたしの未来予知はそんなに万能じゃないよ。これはニーナやアンネリみたいにいきなり死んだ時に備えようと思っただけだよ」
「渡されるボクとしてはあまり気分の良いものじゃないけどね」
「ゴメン。けど信用できる人間ってなるとミッコぐらいしか思いつかなくて」
「まぁそういう考えなら受け取っとくけど絶対に無事帰ってきてよ」
ミッコも最前線で戦っていたウィッチのためその危険性は十分知っていた。そのため結局はそれを受け取ることにした。
「うん、わかった。作戦が終わって帰ったらまた連絡するよ」
そう約束して2人は別れた。
翌日、人類初の大規模反攻作戦となるバルバロッサ作戦、その第一段階であるペテルブルク奪還作戦が開始された。
ペテルブルク奪還作戦はまず機甲師団により電撃的に進軍しA集団とB集団がスオムス方面に来るネウロイの集結地と予想されるペテルブルクを半包囲する。そしてC集団がネヴァ川まで進出しノヴゴロド方面からのネウロイに対する防衛線を築きその後ろを主力部隊が残っているネウロイを相当しつつ進むと言うものだった。
「トラックが揺れてお尻が痛いよー」
道が悪い上にネウロイが出現すればすぐに飛び立つ為にトラックの荷台に乗っているせいで振動をもろ受けてニパはそう言った。
「我慢しろよニパ」
そう言いつつもエイラもなんとか振動を抑える手段がないかとカバンを敷いてクッションがわりにしたりと試行錯誤していた。
「ねぇイッル飛んだらダメなの?」
「ネウロイが来るまではダメに決まってるだろ」
「ちぇ、早くネウロイ来ないかな」
「ここはネウロイの占領地なんだからきっとすぐにくるよ」
しかし予想に反してネウロイは現れずA集団は予定では40時間のところを30時間で、B集団は43時間の予定を35時間と当初想定したよりも早くペテルブルクへと到着していた。エイラ達のC集団もまた予定よりも12時間ほど早くネヴァ川まで後20キロ程度地点の林道を走っていた。
「ねぇイッル、痛すぎて逆にお尻の感覚なくなってきたんだけど」
「安心しろニパ、わたしもだ」
全くネウロイが出てこずトラックから降りる機会が殆どなかったため2人のお尻は限界を迎えていた。
「次の休憩っていつだっけ?」
「ネヴァ川に到達するまでもう無い」
「それっていつ」
その問いにエイラが答えようとした時、先頭の方から突然爆発音が聞こえた。
「何か爆発したよ!ネウロイかな?」
「わからないけど司令部からの指示を待たないと」
その言葉を待っていたかのようにエイラのインカムに司令部から通信が入った。
『こちら司令部、現在先頭の第七戦車大隊が地上型ネウロイと戦闘中。航空ウィッチはその場で別命あるまで待機せよ』
「やっぱりネウロイが出たみたいだな」
「じゃあ出撃するの?」
よほどトラックの振動がしんどかったようで少し嬉しそうに聞いた。
「いや、このまま待機」
「えー、まだこれが続くの」
「先頭が止まったからわたし達も暫く止まると思うぞ」
暫くするとエイラの言葉通りトラックが止まり振動が収まった。
「止まったね」
「そうだな、多分暫くはこのままだろうな」
2人の位置から先頭の部隊までは距離があるため戦闘音しか聞こえないがなんとなくニパは身を乗り出して前を見ていた。
「何か見えるか?」
「なにも見えないね」
その時森の奥が何か光ったように見え、そちらを見ようとさらに身を乗り出した。
「どうしたんだニパ」
「何か森の奥が光ったような気がして」
その時赤い閃光が迸りエイラ達の前に止まっていたトラックが突如爆発した。
「ネウロイだ!」
ニパの叫びを皮切りに両脇の木々が倒れ多数の地上型ネウロイが現れた。それを見たエイラは直ぐに司令部へと警報を発した。
「司令部!こちら24戦隊第一中隊ユーティライネン中尉!地上型ネウロイが多数出現!」
「どうしようイッル、このままじゃ分断されちゃうよ!」
ニパの言う通りネウロイは先頭部隊と分断を図るかのようにエイラ達の前に立ちはだかっていた。それを見たエイラは即座に決断した。
「第一中隊!全員即座に発進し上空からネウロイを撃破しろ!」
「り、了解」
ニパは返事をするとユニットに飛び乗りエンジンを始動させる。発進ユニットからほぼ垂直に離陸する為、通常の離陸より発進に時間がかかる。その間ニパを守る為にエイラは武器を手にするとトラックから飛び降りネウロイに向かって発砲した。
「なにしてんだよイッル!?」
「わたしに構わず早く発進しろ!」
「わ、わかった!」
話しているしている間もネウロイはトラックを攻撃しようとする。それを阻止する為にエイラはさらに攻撃の手を強めた。
ようやく回転数が上がりニパは空へと飛び立った。その後方では他の隊員達も続々と空へと上がっていく。
「発進したよ!援護するからイッルも早く発進して!」
「わかった!」
ニパや他の隊員からの援護射撃が来ると同時にユニットに飛び乗るとエンジンを始動した。
『こちら司令部、司令部を含む複数箇所ににネウロイが出現しC集団は分断されつつあり。航空ウィッチは即座に発進しネウロイを撃破せよ!』
更に悪い知らせが続いた。第七戦車大隊からの航空支援要請である。
「第二小隊はこの場でネウロイを掃討、第三小隊は第七戦車大隊の救援に向かい終わり次第わたし達に合流しろ!第一小隊はわたしと一緒に司令部に向かう!」」
「「了解!」」
指示を終えるとエイラは司令部に向かって飛び立った。
その道中に見たC集団の状況は想像以上に悪かった。林道を進む為に長く細い隊列を成していたC集団は数百メートル単位で地上型ネウロイに分断さていた。林道故に開けた場所が少なく集団で反撃できないためゆっくりと、だが確実にC集団はその数を減らしていた。
「ねぇイッル、援護してあげちゃダメなの」
司令部に向かうまで何度もネウロイに攻撃されている部隊を見つつもそれを無視して飛び続けるエイラにニパは尋ねた
「ダメだ。もしその間に司令部が壊滅したら組織だった抵抗が出来なくなって全滅するかもしれないだろ」
司令部までは10キロも離れていないためストライカーユニットであれば一分足らずで到着する。そのため多少の援護をする時間はあるかもしれないがその時間すらエイラは惜しんだ。
司令部上空に到達すると司令部を攻撃する地上型ネウロイに対して即座に攻撃を開始した。
「一秒でも早くネウロイを倒して他の援護に行くぞ!」
高低差を生かしてネウロイを次々と撃破すると直ぐにまた別のネウロイの撃破へと向かった。これを10回ほど繰り返しやっとのことでネウロイを撃退した。
「疲れたよー。暫く寝てていいかな?」
全てのネウロイの撃破を確認した後、トラックに戻ってからなりニパは言った。
「ダメだ。それよりもこっちを手伝ってくれよ」
そう言ってエイラは最初に破壊されたトラックの方にニパを手招きした。
「えー、何するんだよ」
「使えるものがないか探すんだよ。このトラックはうちの隊の補給物資が大量に乗ってたから少しでも回収しないと」
「そんなの後でもいいじゃん。先に寝させてよ」
「そうしたいけどこのトラックにはわたし達が使う燃料の半分が乗ってたからな。早めに使えそうなのは回収しないと」
「え゛それってヤバくない?」
「かなりヤバいな。全部合わせて1週間分持ってきてた燃料のうちその半分が無くなったからな」
「け、けど補給があるから何とかなるよね?」
「うーん、どうだろ。今回の作戦では最高で5日くらい無補給で行動することになる想定だったからな。もしかしたら足りないかもな」
「けど最高ってことはもっと少ないかもしれないんでしょ。なら大丈夫だよね」
「それは後続部隊の状況次第としかいえないなぁ」
「きっと大丈夫だって!ここに来るまでネウロイは出てこなかったし!」
「だといいんだけどな」
結論から言うと、エイラの不安は的中した。C集団を襲ったのと同様の手法で後続の主力部隊が襲われ補給状況が悪化した。さらにはC集団自体もネヴァ川まで15キロほどの地点で完全に足が止まりネウロイとの一進一退の攻防を繰り広げることとなった。
エイラにタバコって似合いそうじゃないですか?
もちろんエイラは未成年ですけどそこはまぁウィッチだから特例と言うことで。どこかにタバコ吸ってるエイラの絵とかないかな。なんなら飲酒してるシーンでもいいかも。
それは置いといて今回はそんな考察ってほどたいそうなものではないですがウィッチの飲酒喫煙について考えていきます。
タバコを吸うウィッチはいらん子中隊のエリザベス・ビューリングくらいであまり資料がないからなんとも言えませんが、飲酒はハンナ・マルセイユを筆頭にヴァルトルート・クルピンスキーなど色んな人が飲んでいます。確認できた中だと【ブレイブウィッチーズprequel】では菅野直枝とニパもお酒を飲むシーンがあります。(菅野は13歳の可能性あり)しかしそれが許されているわけではなく【ケインズ・リポート】では加藤圭子がマルセイユに飲酒に関して注意され、カールスラントでは違法と言うような事を言っています。とはいえアフリカという他国であるからカールスラントの法律が適用されるとは考えにくいです。これらの事から考えられれるのは二つ。一つは単純に黙認されている、二つ目はウィッチに超法規的措置が取られているという可能性です。作中の描写を見るにどちらもあり得そうでありどちらの場合も意図は明らかです。
オブラートに包んでいうならば「勝てない自分たちに変わって戦ってくれてありがとう、ご褒美にお酒あげるよ。」
オブラートに包まずいうならば「守ってもらう代わり多少の犯罪行為は見逃したるわ」という感じでしょうか。まぁいずれにせよ年若い女の子を戦わせている事に対する罪滅ぼし、あるいは報酬的な意味合いが強いでしょう。加藤圭子がマルセイユに注意していた件は直接戦場になっているかどうかの違いからウィッチの飲酒に対する考え方が扶桑とカールスラントで違ったとかそんなところでしょう。あるいは単純に真面目なだけかもしれませんね。