ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

120 / 305
久方ぶりにランキングに乗りました。ありがとうございます。


キール

「足りないな」

 

それがガリアの港町から軍の物資を荷下ろしする許可を得たエイラが改めて補給と兵力の配置を見て出した結論だった。物資の集積はペースこそ遅くなったが年内にはなんとか予定の数が集まることが確実となっていた。しかしそれ以外、特にウィッチの絶対数が不足していることにエイラは気づいた。

 

「今年中にカールスラントを攻略する事はできない」

 

そこからのエイラの行動は早かった。すぐにアイゼンハワー元帥にアポイントを取ると必要な資料を集めてアイゼンハワー元帥と協議を行った。

 

「現状の兵力ではベルリン奪還が困難です。せめて補充があるまでベルリン攻略を延期すべきです」

 

現段階で年内に大幅なウィッチの補充予定はない。年が開ければいくらか補充も来るがそれまでは精々戦線離脱したウィッチの代わりを補充するくらいのものだった。

 

「つまり大佐はベルリン攻略は来年に持ち越すべきだと?」

 

「はい、現状では決戦兵器ラーテをベルリンまで運ぶのは困難だと考えます」

 

ベルリンにあるネウロイの巣、ウォルフを破壊するために用意された決戦兵器ラーテはカールスラントが作成した陸上戦艦というべき超巨大な戦車だ。陸上戦艦というだけあって攻撃力、防御力共に絶大な物を持つが完成まで時間と資材が大量に必要となるため一台しか用意できていなかった。

 

「物資はアントウェルペンが破壊される前と同じくらいの量が集積されているだろう。一体何が問題だと言うんだ」

 

「ラーテの重さです元帥。計画では川を渡る際は浅瀬を渡るか工兵が頑丈な橋を作るとなっています」

 

「それのどこに問題がある」

 

元々の作戦にその事は組み込まれていてエイラの指摘はアイゼンハワー元帥にとっては今更言われるまでもない事だった。

 

「浅瀬を渡る分には問題ありませんが橋を作るのは問題です。工兵を持ってしても数日がかりで作成される橋はその間ウィッチによる護衛が不可欠です。しかし現状ウィッチの数は十分ではなくこのままではラーテがベルリンに到達する前に破壊される可能性が高いです」

 

「漸減作戦により道を切り開くことになっているがそれでも無理なのか?」

 

現在も統合戦闘航空団を中心に少しづつガリア国境付近のネウロイを駆逐していて順調にいけば年内には大部分を掃討できると考えられていた。しかしこれまでのネウロイとの戦いでネウロイが人類を上回る回復力を持っていることをよく理解しているエイラはあまり楽観的に考える事はできなかった。

 

「不可能とは申しませんがネウロイの回復力を考えるとそれにどれほどの効果があるのかわからない以上はっきりとしたことを言う事はできません」

 

いくらラーテが強力とはいえ制空権が確保してないのであればネウロイの攻撃により破壊されかねない。

 

「501ならば守り切れると思っていたのだが…」

 

「いくら精鋭とはいえたかだか一個中隊程度のウィッチが守り切れるわけないでしょう」

 

ウィッチとしては珍しくウィッチ個人の実力にあまり重きを置いていないエイラはアイゼンハワー元帥の言葉をそう切り捨てた。

 

「では大佐はどうしろというのだ。今更作戦を大幅に延期しろとでも言うのか。政治家連中がなんというかわからんわけでもないだろう?」

 

このネウロイとの戦争は各国が莫大な金を注ぎ込むことで成り立っている。大戦初期と比べネウロイに対して対抗策を持ちつつある人類では少しづつネウロイ討伐のために予算を割く事を忌避する風潮が出始めていて特にリベリオンやブリタニアからの軍への風当たりが強くなりつつあった。

 

「せめてキールが使えれば距離も道も格段に良くなってウィッチの負担も少なくなるのですが…」

 

カールスラント北部の街キールからは大きな障害物なくベルリンを目指せるためネウロイの占領下になければ是が非でも使いたい場所だった。

 

「キールか…。いや、それはいいアイデアだな」

 

「ネウロイの占領下にあって奪還が困難であるから使用しなかったんじゃないんですか?」

 

「もちろんその通りだ。だが現在とでは事情が異なる。この作戦を決定したときは今と違ってアントウェルペンも使え、更に兵力も多かった。それが先のネウロイの侵攻で兵が減り、アントウェルペンの破壊で補給が細くなった」

 

「ですが兵の補充についてはカールスラント奪還に際して済ましていますし補給に関しても現在改善中、つまり最初から兵は足りていないということになりませんか?」

 

「そうでもない。陸軍と空軍に関してはたしかに元に戻っている。ウィッチは別だがな」

 

「ウィッチこそ補充してほしいのですが…」

 

現状ガリアと統合戦闘航空団が西方のウィッチ隊の主力となっているが、ウィッチ全体の数は不足していた。

 

「残念だがどこの国も貴重なウィッチを失いたくないのだ」

 

大戦初期に多くのウィッチを失ったカールスラントやガリア、そしてブリタニア本土の防衛でウィッチを失ったブリタニアは特にその傾向が強かった。

 

「しかしそうなるとキール奪還のために前線から兵を引き抜くのは難しいですよね」

 

アイゼンハワー元帥の言葉に思わずエイラをため息をつくとそう言った。

 

「そうだな。だがリベリオンとカールスラントの予備兵力が現在ブリタニアに集結中だ。本来はカールスラント奪還後の守備隊として使う予定だったがこれをキール奪還に投入しよう」

 

「よろしいんですか?いや、そもそも参謀と相談してから決めるべきではないですか?」

 

「もちろん参謀とも話をする。だが私個人としては大佐の意見に賛成だ。たしかにラーテをガリアからカールスラントに移動させるリスクよりもキール奪還に関わるリスクの方が幾分か小さい」

 

一台しかないラーテとその他多数の兵士の命を天秤にかけた結果アイゼンハワー元帥はラーテを取った。この決断の理由の一つにリベリオン本国の政治家からベルリン奪還を早期に実現するよう要請されていたからあまり時間をかけていられないという理由があった。

 

「キール奪還に回せるウィッチはどれくらいになる」

 

「501から隊員の半分ほどを出すのが限界かと思います」

 

501の任務の一つがベルギガ方面の防衛である以上最低限の人員は残す必要があった。

 

「精鋭の501だ、それだけいれば十分だろう」

 

「できればブリタニアあたりからこちらに追加のウィッチを送ってほしいのですが…」

 

現状では規模は不明だが501だけでキール攻略のための部隊の制空権を確保し切れるとは思えなかったエイラはそう言った。

 

「それはウィッチの統括をする参謀の役目だな。がんばってくれたまえ」

 

つまりエイラがブリタニアに頼めと言うことだが正直あまりいい思い出のないブリタニアとの交渉はエイラは避けたかった。

 

「早急に他の参謀と協議しキール奪還のために作戦を練るぞ」




後書きのねたがなくなってきた今日この頃。
今回は氷山ネウロイについてです。
おそらく、と言うよりはほぼ確実にあのネウロイって氷山に覆われる事で水と接することがないようにしていたわけですけどあれって準備にどれくらいかかったんでしょうね。北極あたりで穴掘って氷山の中に入る。入ってきた穴は掘った時に出た氷で塞いで自然と寒さで塞がるのを待ったとしたら冬に作ったってことですよね。で、なぜがそのまま引きちぎらずに夏頃に自然と氷山が崩れて水に浮かぶまで待っていたと。…冬場にビームで氷山削って浮かばなかったのはどうしてなんでしょうね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。