西方方面軍が保有するウィッチ戦力の少なさにゲンナリしながら前線の戦力配置を見直していたエイラの下を突然訪ねてきた二人のウィッチの姿を見て、エイラは更に気持ちが落ち込むのを感じた。
「先日サン・トロン基地目前までネウロイが来た事は知っているわね」
「宮藤と服部が共同撃墜したって事なら聞いてるぞ」
「そんな事はどうでもいいわ」
元々ミーナ中佐の来た理由に察しがついていたこともあってエイラは顔を顰めて答えた。
「部隊の増強なら無理だゾ」
「そんな事はないだろう。ユーティライネン大佐は今や東方を除く全てのウィッチ隊を動かせる立場にある。どこかに使えるウィッチがいるだろう。それを貰いたい」
そう言ったのは第502統合戦闘航空団司令、グンドュラ・ラル少佐だった。
「待ちなさいグンドュラ。ベルギガの防衛に支障が出かねないから補充は501が先よ」
「それは違うだろう。こっちもエディータがあまり前線に出れなくて余裕がない。そっちは坂本が抜けたとはいえその分補充があっただろう。こちらが先だ」
どちらか一方だけでも面倒なのに二人揃われてはたまったものではない。エイラは一度大きく息を吐くと言った。
「ない袖は振れない。無理なものは無理だ」
「そうは言ってもこちらも譲れないわ。ベルギガ付近は私達くらいしかまともなウィッチがいないのよ?もし何かあって私達が一人でも欠ければベルギガ防衛に責任を持てないわ」
「こちらの方が深刻だ。基地のあるリバウはかなり強引に取り返した事もあって後方連絡線に不安がある。エディータの代わりをよこせ」
二人の言い分はエイラも納得できるものではあった。しかし納得ができるからと言って二人の要望を通す事に繋がりはしない。
「何のための統合戦闘航空団だと思っているんだ。各国から選りすぐりの精鋭を集めて攻防共に強大な力を発揮する事ができる統合戦闘航空団が隊員が一人少ないくらいで泣き言を言うなよ」
「一人少ないとかそんな問題ではない。502の防衛範囲が広すぎる。増員が無理なら507をペテルブルクからもう少しカールスラントよりに配置転換させろ」
「501だって正面のネウロイを倒さないといけないからローテーションがギリギリなのよ。エイラさん補充を頂戴」
圧をかけるようにエイラの机に手をつくミーナ中佐を手で宥めるとエイラは言った。
「連合軍の殆どのウィッチ隊を動かせると言っても今動かせるウィッチはカールスラントとリベリオンくらいだ。けどそれも全部戦略予備だから動かすのは無理だぞ」
少し前にあったネウロイの再侵攻で少し多めに戦略予備を確保する方向にシフトした事もあって戦力を捻出するのは難しかった。
「本土を取り返して軍を再編したガリア空軍のウィッチがいるだろう。それを戦略予備に回せばリベリオンとカールスラントのウィッチは増援に回せるだろう」
「残念だったな。ガリアは未だに南部と確執があるから使えるのは精々三分の二、それは全部ガリアの防衛だ」
「エースを一人ぐらい501に移せないの?」
「そもそもエースウィッチがいないぞ」
「そんな事はないでしょう」
「ガリア本土の失陥後、各地でバラバラに戦ってたから新兵の補充が上手くできなかったから若いウィッチにエースはいない。ガリアの今いるエースはみんな引退したか、ラルのところみたいに有力部隊が抱え込んでるかだからガリア本土にはいないんだ」
「ならエースじゃなくてもいいわ。ガリアのベテランウィッチを頂戴」
「それをやるとガリア全体の防衛に差し障るから無理だな」
ベテランという事は相応に階級が高く重要な役割についている事が多い。現状人材が不足気味なガリアでベテランを引き抜けば全軍の瓦解に繋がる可能性があった。
「…ならもういいわ」
ミーナ中佐の言葉にエイラはホッと息を吐いた。
「わかってくれたか」
「こっちで勝手にやらせてもらうわ」
「何をするつもりだミーナ」
「いつもグンドュラがやっていることよ」
ミーナ中佐の答えにラルがため息を吐いた。
「やめておけミーナ」
「意外ね、貴女が止めるなんて。むしろ率先してやりそうなのに」
普段は物資も人も取りたい放題他の部隊から奪っているラルが止めてきた事にミーナ中佐は驚きが隠せないでいた。
「甘く見るなよミーナ」
ミーナ中佐の言葉にラルは視線を鋭くさせて言った。
「私がそんな事もやらずにここに来たと思っていたのか?」
何故かラルは自慢げにそう言った。
「それもそうね。貴女なら言葉よりも先に行動に出るわね」
今度はミーナ中佐がため息を吐いた。
「それで、結果はどうだったの?」
「ここに来ているのが何よりの答えじゃないか?」
つまりはラルのお眼鏡にかなう目ぼしいウィッチが見つからなかったと言う事だった。
「ミーナかサフォーノフ中佐の所から1人譲って貰おうかとも考えたんだが…」
「ちょっと!」
「やめろよ。どっちもギリギリなんだぞ」
ミーナ中佐とエイラの非難にラルは肩をすくめた。
「それくらい私もわかっている。だからやらなかったんだ」
「そうだろう。どこにも余裕なんてないんだ。だから諦めてリバウに帰れ」
そう言ってエイラは追い払うように手を振った。
「そうはいかない。私だって戦力は欲しい」
「だからないんだって」
「バルカン半島は安定していた筈だ。そこから戦力を引っ張ってきてくれ」
「無理だ。やりたきゃ自分でやれ」
エイラは投げやりに言った。
「生憎私はあちらにツテがない。ガリア、スオムス、ブリタニア、オラーシャのどれかに関わるものでないと手が出せん」
「なら諦めろ。あそこも安定してると言っても予断を許さないしなにより戦力がギリギリだ」
エイラの言葉にラルは首を横に振ると言った。
「ユーティライネン大佐ならどこかにヘソクリがあると思ったんだが…」
「わたしだって戦力が欲しいんだよ。いっつもアイゼンハワー元帥に要請してんだぞ」
「それで、答えはどうなの?」
エイラの言葉にミーナ中佐が食い気味に尋ねた。
「全部却下されてる。カールスラントもリベリオンもこれ以上ウィッチは送りたくないみたいだな」
「扶桑の遣欧艦隊はどうだ」
「そっちはもっと面倒臭いぞ。なんせ連合軍に所属はしてるけど連合軍の指揮下に入ってないんだ。だからわたしが出せるのはあくまで要請でしかないからな。機嫌を損ねないように下にでて持ち上げて、それでやっと動いてくれるんだ」
アジアの雄としてのプライドか、遣欧艦隊は連合軍指揮下ではなくあくまでも扶桑軍として行動している。エイラがいくら要請しようとも遣欧艦隊司令部や扶桑本国が否といえばそれまでの事だった。
「坂本少佐経由でどうにかできないの?」
「できるんだったらとっくにやってるよ。どうにも扶桑軍上層部じゃウィッチが軍の行動に関して口出しされるのを嫌う傾向にあるみたいで全然効果がなかったな」
「…もしかして坂本少佐はそれでパットン将軍の下に?」
「それは知らないけど…。追い出された可能性は高そうだよな」
今現在坂本少佐は西方方面軍のパットン将軍の下でカールスラント奪還のために働いているが実績的には遣欧艦隊司令部や扶桑本国で相応の地位についていてもおかしくなかった。
「エイラさん…」
ミーナ中佐が非難するような視線を向けた。
「わ、わたしのせいじゃないぞ!一回頼んだだけだからそもそも扶桑軍がウィッチ好きじゃないんだと思う…」
自信なさげにエイラはそう言った。
「坂本の事はいいだろう。問題は戦力があるのかどうかだ」
「さっきから言ってるだろ。ないものはない」
ラルの問いかけにエイラは再び力強く答えミーナ中佐とラルはその答えに肩を落とすのだった。
ストライカーユニットって使う人によって性能面が変わったりするんですかね?
もし変わらないならシールド以外で魔法力が強いメリットはないし逆に変わるのならそれはそれでウィッチの軍事利用がちょっと難しくなるのかなって気がします。