ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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これが今年最後の話です。もしかしたら来年最初の投稿は少し遅れるか、お休みする可能性があります。


ザ・フォッグ 前編

「バルクホルン達のお陰でキールへのルートは楽ちんだな」

 

「今回のキール偵察は西方方面軍のキール奪還作戦の為の事前偵察なのよね?」

 

「そうだな。もしこれでキールに強力なネウロイがいたら501の出番だし、いなかったら通常の対ネウロイ兵器での奪還作戦が発令される事になるな」

 

少ない人数で大きな戦果を得ることができるのがウィッチだが数が少なく貴重だ。精鋭である501部隊やその他のウィッチ隊をいたずらに消耗させない為にリベリオンを中心に開発された対ネウロイ用兵器は積極的に用いられている。今回の作戦も余程強力なネウロイがいない限りはウィッチではなく対ネウロイ用兵器が中心の作戦となる予定だった。

 

「どのみちキールまでは少し距離があるしよっぽどのネウロイがいない限りはウィッチを出撃させないよう進言するつもりだけどな」

 

「キール軍港はできる限り無傷で奪還しないといけないわよね。ウィッチがいなくてもそれはできる事なの?」

 

「対ネウロイ用気化爆弾は通常の爆弾と違ってネウロイ以外のものには大きな攻撃力を持たないとはいえ当たれば人が死ぬくらいの威力はある」

 

「ならやっぱりウィッチが奪還に行くべきじゃないかしら」

 

サーニャの不安を落ち着かせるように笑顔を浮かべるとエイラは言った。

 

「けど余程の悪条件が重ならない限りはネウロイに対してピンポイントで爆撃できるから心配はいらないさ」

 

霧が深い、雲が濃いなどの悪条件が重なれば地図を頼りに爆弾を投下する事になるがそれだとキールに投下できるかさえも怪しい。

 

「霧が出てきたな…。濃いぞ」

 

エイラがそう呟くのと同時にサーニャの魔導針が瞬いた。

 

「エイラ!」

 

「ネウロイか!?」

 

「前方、距離500」

 

サーニャの報告と同時に正面に大きな影が現れ真っ赤なビームがエイラ達に向かって飛んできた。

 

「うわ!」

 

ビームはサーニャのシールドにより遮られた。

 

「あいつか!」

 

「逃げるわ、追いましょう」

 

2人が追撃に移ろうとした時、エイラの未来予知に反応があった。

 

「ヤバ!」

 

咄嗟にサーニャの腕を掴んで急降下するとエイラ達がいた場所を赤いビームが通り過ぎた。

 

「コンニャロ!」

 

体制を立て直したエイラが反撃しようとするとそこにはもうネウロイの姿はなかった。

 

「クソッ!霧で何にも見えないぞ!どこいった!!」

 

「探知圏内にはもういないわ。逃げたみたい」

 

サーニャの言葉にエイラは少し考えると言った。

 

「まさか……この霧あのネウロイが?」

 

「そう見たいね」

 

「厄介だな」

 

一時的にパリの総司令部に戻ってきたエイラからの報告を聞いたアイゼンハワー元帥はため息混じりに言った。

 

「はい。キールにネウロイがある事自体は想定内ですけど霧を出すとなると最悪の事態もあり得るかと」

 

「キール軍港及びキール運河への損傷を許容した上で無差別爆撃を行うしかないか」

 

アイゼンハワー元帥の言葉にエイラは頷いた。

 

「おそらくはアントウェルペン港ほどの損傷を受けることはないでしょうけどそれでも作戦が来年春以降に持ち越す事になることは間違いありません。できる事なら霧を出すネウロイを倒した上でキール軍港に出来るだけ傷を負わせずに奪還したいところではありますけど…」

 

「問題はナイトウィッチと大佐の索敵能力を掻い潜って側面から攻撃してきたネウロイか」

 

「あるいは正面のネウロイがなんらかの方法でビームを屈折させたとも考えられます。なんせ周囲にはネウロイが出したと思われる霧があったのですからそれくらいできても不思議ではありません」

 

サーニャの索敵能力の高さはエイラが一番よく知っている。故にエイラはサーニャが見逃したとは考えていなかった。

 

「もしくは探知範囲内からの遠距離狙撃だが…」

 

「その可能性もありますがそれならネウロイがわざわざ姿を現す必要はないでしょう。可能性は低いと思います」

 

「ならばナイトウィッチが探知できなかったと?それは由々しき事態だぞ。ナイトウィッチによる哨戒体制を見直さねばならん」

 

今後貴重なナイトウィッチを減らす事になりかねない事態にアイゼンハワー元帥は焦りを見せた。

 

「ナイトウィッチと言っても出来ないことはあります。周りがネウロイの出した霧に囲まれていたのなら尚更です」

 

「霧が全ての元凶だというのかね?」

 

「それはなんとも言えませんが原因の一端であることは間違いいでしょう」

 

その時、突然荒々しい音と共に扉が開き左頬に傷のついた男が入ってきた。

 

「アイク!キール奪還作戦が中止とはどういう事だ!」

 

「ジェリー、中止ではなく一時作戦を延期すると言ったんだ」

 

ジェリーという愛称でかつアイゼンハワー元帥をあだ名で呼べる人物はこの戦線には1人しかいない。西方方面軍司令官のジュラルド・S・パットン大将だ。

 

「そう言ってベルリン奪還作戦も中止同然の状態にしたくせに今更俺がそんな戯言を信じるとでも本気で思っているのか!?」

 

「キール奪還はあくまでもキール軍港のネウロイの状態がわかるまでと条件をつけたはずだ。そう長い時間はかからんよ」

 

「中がどうなっているかわかれば直ぐに作戦を実行するんだな」

 

「そもそもキール軍港を奪還しなければベルリン奪還も果たせん。近日中に作戦実行の許可を出す」

 

その言葉にパットン将軍が納得する様子を見せるとようやくパットン将軍はエイラの存に気付いた。

 

「ところでその女は誰だ?」

 

「紹介しよう。私の元で参謀をやっているエイラ・イルマタル・ユーティライネン大佐だ」

 

「…ああ!いつだったかアイクがキール奪還作戦を含めた功績はまず間違いなくベルリン奪還を1ヶ月は早める事になるとか言って誉めていたウィッチか!」

 

アイゼンハワー元帥の意外な高評価に内心で驚きながらもエイラはパットン将軍に敬礼をした。

 

「スオムス空軍所属、エイラ・イルマタルユーティライネン大佐です」

 

「リベリオン陸軍のジュラルド・パットンだ」

 

答礼を返すとパットン将軍はアイゼンハワー元帥に尋ねた。

 

「それで、大佐と何を話していたんだ」

 

「大佐が直接偵察に行ってキール近郊の様子を探って来てくれたからその報告を聞いていたところだ」

 

「で、結果はどうなんだ」

 

「未知のネウロイがいる事がわかったな。その対策を含めたキール奪還作戦をどうするか、今から話し合おうとしていたところだ」

 

そう言ってアイゼンハワー元帥からエイラの報告書を渡されたパットン将軍はそれに目を通すと言った。

 

「こんなもの無視して対ネウロイ用気化爆弾で一挙に殲滅してしまえばいいだろう」

 

「それは最終手段だ。それで港湾機能に支障をきたしても困るからな」

 

「だからと言っていつまでもここで手をこまねくわけにも行かんだろう。行動あるのみ。もし仮に壊してしまえばその時にあらためて対応を考えるなり延期するなりすればいい」

 

パットン将軍の意見はやや乱暴ではあるが現状の打破という現時点での要望は叶っていた。

 

「簡単にいうがこれ以上の延期は本国の政治家連中がいい顔をしないぞ。ただでさえ欧州遠征は財政を逼迫させているんだからな」

 

「そんなの俺の知った事か。俺は戦争屋であって財務官僚じゃない」

 

「本国の連中にせっつかれている私の立場も考えて欲しいものだがジェリーの考えはよくわかった。期限を決めよう」

 

アイゼンハワー元帥はそう言ってエイラに視線を向けた。

 

「霧を出すネウロイが存在しようがしまいが2日後の正午、キールに対して爆撃を行う」

 

「霧で精密な爆撃は不可能ですがそれでも良いのですか?」

 

「その時は無差別爆撃によりキールごとネウロイを倒す。それでキール軍港が損傷しても致し方ない」

 

「もちろん、その指揮は俺がとっていいんだろうな」

 

「西方方面軍麾下の航空部隊を使うからな。当然だ」

 

「そういうわけだからユーティライネン大佐、501にもその旨伝えておいてくれ。そしてキール奪還までの間大佐はサン・トロン基地に待機してくれ」

 

「了解しました」




小さな虫型ネウロイですら感知できたサーニャに感知できないネウロイって一体……。
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