ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。


ザ・フォッグ 中編

パリの司令部からサン・トロン基地に戻ったエイラはバルクホルン達がキール奪還の為の爆撃機を護衛するためにブリタニアに向かった事から暇を持て余していた。偵察が終わり基地の人員も少なくなった今、安易な出撃は許可されずかと言って司令部にいる時のように書類に埋もれているわけでもない。あまりのやることの無さにエイラはサトゥルヌス祭に備えてヒンメリを自作していた。

 

「なーんか左右のバランスがおかしいような気がするなぁ」

 

目線の位置に掲げ観察してみるとどうも左右で長さが違うせいで歪な形をしているように見えたためエイラは針金の長さを調節し始めた。

暫くしたようやく納得のいく出来のものができた時、ちょうどいいタイミングでサーニャが部屋に帰ってきた。

 

「あ、サーニャ!どうだこれ?」

 

エイラの呼びかけを無視してサーニャは地図を広げて机に向き合った。

 

「サーニャ……?」

 

珍しく真剣な表情をしているサーニャの様子にエイラは不思議そうな表情でもう一度呼んだがサーニャが振り返ることはなく真剣な様子で地図に何か書き込んでいた。ひとしきり書き終わるとサーニャはエイラを呼び寄せた。

 

「霧の範囲とネウロイの発見場所から推定される大凡の活動範囲を書き込んだわ」

 

サーニャの書き込んだ霧の範囲と推定されるネウロイの活動範囲はほぼ一致しており高確率でこのネウロイが霧の原因である事がわかった。

 

「サーニャの魔導針で探知して居場所を探ろうってのか?」

 

エイラの問いかけにサーニャは頷く事で答えた。

 

「辞めた方がいいと思うけどなぁ」

 

「けどエイラ」

 

「そもそも霧を出すネウロイがわたし達が接触したネウロイと決まったわけじゃないしいくら戦線を押し込んだとはいえここはまだ最前線、あまり戦力は避けないぞ」

 

現状バルクホルン、ハルトマンの2人を筆頭にシャーリー、ペリーヌ、ルッキーニ、リーネの6人がブリタニアにいて不在となっている。基地の戦力はエイラが一時的に滞在している事を考えても三分の一程度まで落ちていると見ていいだろう。

 

「現実問題としてキール奪還に避ける戦力は2人か3人、それ以上はいくら付近のネウロイを駆逐したとはいえ流石にベルギガの守りが不安になる」

 

「シュナウファー少佐の部隊も近くに赴任していたから少しくらいなら…」

 

「少佐の隊はナイトウィッチの部隊だから昼間まで負担をかけさせるわけにはいかないだろ」

 

カールスラント空軍のナイトウィッチ、ハイデマリー・シュナウファー少佐が率いる部隊もベルギガに駐屯しているがその戦力はナイトウィッチが中心だ。サーニャやシュナウファー少佐のようなエースと呼ばれるナイトウィッチならともかくそうでないナイトウィッチに昼間の戦闘においても夜間戦闘と同様のパフォーマンスを期待することはできない。

 

「まぁ、今のわたしにこの部隊に対する指揮権はないからどんなに否定したってなんの意味もないんだけどな」

 

「けどエイラは反対なんでしょ」

 

「もしもミーナ中佐がいいって言うならわたしにそれを覆す事はできないからな」

 

エイラの言葉を受けてミーナ中佐になされたサーニャの提案は予想に反して受け入れられる事になりサーニャは宮藤、服部の2人に対して訓練を行うのだった。

 

「どうして許可なんか出したんだよ」

 

「作戦の成功率が高いと思ったからよ」

 

「成功率が高い?わたしと偵察に行った時、サーニャは側面からの攻撃を感知できなかったんだぞ」

 

それが意味することは即ちサーニャの魔導針が万能ではなかったと言う意味になるがミーナ中佐もエイラもそれを信じきれない理由があった。

 

「ロマーニャでサーニャさんは虫ほどの大きさしかないネウロイを感知する事に成功していたわ。今更探知できないものがあるとは思えないけど」

 

「問題はそれなんだよな。ネウロイのビームの出力は大きさと比例する。あそこまで強力なビームを放てるネウロイだ、大きさも相応にと大きいはずだ。なのにサーニャはそれを見つけられなかった」

 

「探知圏外からの遠距離狙撃だったか、あるいは探知できなかったか…」

 

「何が原因にせよサーニャ達だけじゃ危険だ。単純に失敗するだけじゃなく3人を失うような事態になるとカールスラント奪還もさらに伸びることになるぞ」

 

「それはダメよ!」

 

ミーナ中佐の強い否定の言葉にエイラは目を細めた。

 

「作戦が失敗するのは不味いわ。エイラさん、貴女もサーニャさん達について行ってくれないかしら」

 

エイラの雰囲気が変わった事を察してミーナ中佐は居住まいを正すとそう言った。

 

「…それが本音か」

 

「本音?」

 

「中佐がキール奪還を許したのは作戦の成功率が高いからじゃない。その方がカールスラント奪還作戦の発動が早くなるからだ。違うか?」

 

エイラの言葉をミーナ中佐は否定できなかった。キール奪還作戦が決定した時、バルクホルンからキール奪還に際して軍港が破壊されてもいいのか聞かれたミーナ中佐はそれに否定の言葉を返していた。

 

「キールが破壊されたとしても奪還できればカールスラント奪還作戦は必ず発令される。それじゃ不満か?」

 

「…そこに私やトゥルーデの姿はあるのかしら」

 

「いないだろうな。だけどそれがどうしたって言うんだ」

 

「私は!できる事なら自分の手でカールスラントを取り戻したい!!」

 

ミーナ中佐の悲痛な叫びにエイラは無言で続きを促した。

 

「そのためには時間がないの。その為の時間を捻出する為に出来る事はなんでもするわ」

 

「501の隊員を犠牲にしてもか?」

 

「それは…」

 

「いいか中佐。オペレーションサウスウィンドウに参加したくても出来ないウィッチなんていくらでもいるんだ。その幸運を当たり前のように捉えたらダメだ。たとえ自分が参加できなくとも誰かがそれを成し得てくれればそれでいいじゃないか」

 

カールスラント奪還に際して投入されるウィッチの主力は統合戦闘航空団に所属するウィッチだ。それ以外のウィッチは爆撃機や地上部隊の護衛といった地味な任務が大半だ。

 

「そんな事はわかっているわ!けど分かっていることとそれに納得するかは話が別よ!!」

 

「そうだな。だけど中佐が指揮官である以上それに納得して指示を出さないといけない。違うか?」

 

「このままキール軍港が奪還できても使えなければ意味がないじゃない!無傷で奪還できるチャンスをみすみす逃すなんて私にはできないわ!!!」

 

「…キール軍港奪還に使われるのは対ネウロイ用気化爆弾だ。建物への被害は最小限に済むはずだ」

 

対ネウロイ用気化爆弾の性質上ネウロイ以外への被害は爆風によるものくらいしか存在しない。通常の爆弾を落とすよりは被害は少なくなるがそれでも場所が悪ければ港湾機能に障害が出る事は疑い用がなかった。

 

「あの濃い霧の中、最小限の被害でネウロイを倒せるなんてとても思えないわ」

 

もっとも、現状行われる予定の無差別爆撃ではより多くの爆弾を使用する関係上その被害はより大きなものとなるためこの作戦が終わった時どの程度現状をとどめているか想像ができなかった。

 

「中佐の願いはネウロイを倒して霧を晴らしキール軍港への被害を最小限にとどめる。それで間違いないか?」

 

「……ええ、それができれば私はオペレーションサウスウィンドウに参加できるわ」

 

「暫く中佐1人でここを守る事はできるか?」

 

「最前線とは言っても殆どのネウロイは駆逐しているから問題ないけど…」

 

「ならサーニャ達の後をつけてわたしも出撃するよ」

 

エイラの言葉にミーナ中佐は目を見開いて驚いた。

 

「エイラさんは司令部から基地から離れないよう命令されているわよね。出撃するなんて」

 

「言っとくけどこれは貸しだかんな」

 

そう言ってエイラはミーナ中佐の問いかけを遮った。

 

「わたしだって中佐達に作戦に参加させてやりたいんだ。けど立場的にわたしは表立ってそうする事はできない。だから貸しだぞ」

 

そう言うとエイラは踵を返して部屋から出て行こうとした。

 

「エイラさん……ありがとう」

 

ミーナ中佐の言葉に振り返らずに手を上げる事で応えるとそのまま執務室を立ち去った。




サーニャが探知できなかった理由ってなんだったんでしょうか。虫型ネウロイでさえ探知できたのにあのネウロイだけ探知できないって言うのもおかしな話ですよね。
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