ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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なんというか、この2人のぶつかり合いはあんまり見たくない。


ザ・フォッグ 後編1

サーニャ達がキールのネウロイを倒すために出撃していた時、書類上エイラはサン・トロン基地にいた。

 

「本当によかったんですかね」

 

服部がチャリと後ろを振り返りながら宮藤に尋ねた。

 

「エイラさんがいいって言ってるしいいんじゃないかな」

 

「けど明らかにこれは軍機違反ですよ!」

 

振り返った服部の視線の先にはエイラがいた。

 

「わたしは今ここにはいない事になってるから問題ないぞ」

 

「書類を改竄したからですよね」

 

「改竄なんて人が気の悪いこと言うなよ」

 

「ならなんだって言うんですか」

 

「訓練飛行中誤ってキール方面に近づいただけだ」

 

「それをパットン将軍やアイゼンハワー元帥に対しても言えますか?」

 

「勿論だ。なんせ形式上は上司みたいになってるけどわたしはあくまでもスオムス軍の所属、嫌味の一つくらいは言われるかもしれないけど直接どうこうできる関係じゃないからな」

 

連合軍司令部の参謀職を外すくらいのことはできるだろうがエイラにとってはそれは必要ないものでありやられたところで何も問題はなかった。

 

「けど統合戦闘航空団から外されるたりすることもあるんじゃ…」

 

「それはあり得ないな。統合戦闘航空団は各国に対してエースウィッチを出すよう要請しているのであって名指しで指名されることはない。あったとしてもそれは各隊の隊長が指名しているのであって連合軍司令部の指名じゃ無い。だから外す時も基本的には派遣国の判断になる。スオムスにはわたし以上のウィッチはいないから絶対に外すなんてあり得ないんだよ」

 

厳密にはエイラに匹敵しうるウィッチは存在するがエイラほどスオムスに利益のある行動を取れるウィッチがいないためスオムスがエイラ以外を501部隊に送ることは考えづらかった。

 

「だからってサン・トロン基地を空同然にするのは……」

 

「ミーナ中佐がいるだろ」

 

「ですが一人ではもしネウロイが来たら対応し切れるかどうか…」

 

「中佐なら余程の、それこそこの間の再侵攻の時みたいに大量のネウロイが現れない限りは一人でも対処可能だよ。200機撃墜は伊達じゃ無いさ」

 

501部隊どころか世界的に見ても上位に入る実力者のミーナ中佐ならば並大抵の事ではサン・トロン基地が落ちる事はないとエイラは考えていた。しかし同時にミーナ中佐がそろそろ上がりを迎える年齢である事を心配してもいた。もしこのタイミングでその兆候が出れば服部の言う通りサン・トロン基地は空同然の状態になる。そこにネウロイが来ればいくらミーナ中佐でも厳しい戦いをするだろうと考えていた。だからエイラはこの出撃をできる限り早期に終わらすために固有魔法である未来予知に意識を集中させどこから攻撃が来ても即座に反撃、ネウロイを撃破できるよう体制を整えた。

 

いくらサーニャが歴戦のナイトウィッチとはいえ長時間霧の中をネウロイを探して飛んだ経験はない。探索範囲が予定の約8割に達する時には目に見えて疲れが出始めていた。

 

「サーニャ疲れてないか?」

 

『いえ、大丈夫』

 

霧で姿は見えないがサーニャの声は明らかに大丈夫とは言い難い声音だった。

 

『十二時方向、距離2,000反応あり!!』

 

サーニャの報告を聞いたエイラは宮藤、服部の後方から2人の上ギリギリをすり抜ける形でサーニャと宮藤達の中間地点へと移動をした。通常のウィッチで有ればこの濃い霧の中3人の位置を把握しつつ正確に移動する事は不可能に近いがエイラは未来予知と高い飛行技術を駆使する事で3人に接触する事なく、また逸れるような事もなく位置を変える事に成功していた。

 

『このままそっと近づきましょう。わたしがいいと言うまで絶対に撃たないで』

 

『『了解』』

 

サーニャがネウロイとの距離をカウントしそのカウントが目標のネウロイまで後500メートルを告げた直後、エイラの未来予知が側面からのビームを感知した。

 

「サーニャ危ない!」

 

ビームの発射元と思われる方角にエイラが機銃を乱射すると微かにネウロイの破片のような物が光ったような気がした。

しかしそれきり反応はなくほんの僅かだった事もありエイラは確信を持つことができなかった。

 

『何してるのエイラ!』

 

『ユーティライネン大佐!?』

 

思考に意識が呑まれそうになったエイラはサーニャ達の呼びかけで我に帰ったエイラが見たのは正面から飛来する大量のビームをシールドで防ぐサーニャ達と目の前に迫る赤いビームだった。サーニャ達と違いエイラは軽々とそのビームを避けると正面に向かって機銃を発射するために体制を整えた。

 

『リトヴャク中尉どうしたら!?』

 

『応戦しないで!味方に当たるわ!!全員撤退して!!』

 

『『了解!』』

 

サーニャの指示に従い宮藤達が撤退するのを見ながらエイラは一度姿が見える限界まで近づいて全貌を確認するべきなのではないかと考えていた。

 

『エイラ!』

 

しかしサーニャの呼びかけによりエイラはその考えを捨て去った。自分1人でもここから撤退できる自信はあったがエイラがいない状態でサーニャ達が無事撤退できるか自信が持てなかったからだ。

 

基地にたどり着いたエイラは再び思考の海に沈んでいた。サーニャが感知できないネウロイがいるというのは俄には信じ難い話ではあるが自身の未来予知が攻撃を察知した以上はもはや疑いようもない。一概にエイラとサーニャ、どちらの固有魔法が優秀かは比較できないが敵を見つけると言う点ではサーニャに軍配が上がるのはまず間違いない。ただそれはあくまでも敵が感知範囲内にいてかつサーニャが感知する事ができると言うのが大前提だ。この感知できないものの中にはネウロイのビームを含まれるため探知範囲外の超遠距離からの狙撃で有ればサーニャは対応することができない。言うなれば潜水艦のアクティブソナーやレーダーに近いものだった。

対してエイラは自分や周囲が数秒先の未来に攻撃を受けているので有ればそれを感知する事ができる。これは探知範囲などなく音さえ感知する事ができればどこにいても敵を見つけるパッシブソナーに近いものだった。もっとも、これはエイラの固有魔法本来の使い方ではなく、またこれが役に立つ事も少なかった。

 

「エイラ!どうして撃ったの!?」

 

珍しくエイラに対して語気を荒げるサーニャに宮藤と服部が目を見開いた。

 

「エイラが勝手に変な方向へ撃ったから作戦が失敗したのよ!!」

 

「ちょっとまて、あのままだとサーニャが撃たれてたんだぞ」

 

確かに作戦が失敗した事の原因の一端はエイラの行動にありそれはエイラも認めるところだ。しかしエイラにも言いたい事はあった。

 

「撃たれてたって何に!」

 

「ネウロイにだよ!あっちにいたんだ!」

 

「エイラはそれを見たの!?」

 

見たかどうかで言えば見ていないが正しい解答だろう。光ったような気はするが確証が持てるほどのものではなくそもそも濃い霧のせいで姿を確認出来てさえいないのに命中した事による破片の光だけ見えると言うのもおかしな話だ。

 

「見てないけど感じたんだ!未来予知でサーニャが撃たれてるのを!!」

 

「わたしは何も感じなかった!間違いなく、あっちには何もいなかった!」

 

エイラ、サーニャ両者共に自分の固有魔法でこれまで戦い抜き生き残ってきたプライドがあり自分の固有魔法が完全なものだと疑っていない。それがこのぶつかり合いを起こしていた。

 

「いや、絶対にいた!」

 

両者共に自分の固有魔法に間違いはない、そう主張し続ける限り2人の意見が一致する事はあり得ない。

 

「…エイラはわたしを信じてくれないの?」

 

普段のエイラならそれに対して信じると即答していただろうが今回に限ってはそうはいかなかった。そうしないだけの理由もあった。

 

「……悪いけど今回に限っては信用できない。初めにあのネウロイと接触した時のことを思い出してみろよ。サーニャの探知していなかった方からビームが飛んできたんだぞ。

サーニャの方こそわたしを信じてくれないのかよ」

 

エイラの問いかけにサーニャは沈黙で返した。

暫くの間2人の間で睨み合いが続いたがサーニャが踵を返した事でそれは終わりを迎えた。

 

「…なんだよサーニャのやつ」




正直原作でのサーニャは冷静とは言い難いなと思います。初めに側面からの攻撃に対応できなかったのにその事実を完全に無視していて自分の固有魔法が完璧と疑っていないあたり冷静ではないと思います。
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