ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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やっぱりこの2人の絡みはいいですね。


ザ・フォッグ 後編2

キールの霧を出すネウロイを倒す事に失敗した翌日、ミーナ中佐がサーニャ達の再度の出撃を知らされたのは当日の早朝サーニャ達が出撃する直前のことだった。

エイラが自室でヒンメリを作っているとドアが開きサーニャが机からインカムを取り出した事でエイラはサーニャ達が再びキールの霧を出すネウロイを倒すために出撃する事を知った。

 

「また行くのか?」

 

「そうよ」

 

「言っとくけどわたしはもう行けないからな」

 

流石に2度も上層部を騙すような行為はエイラにできなかった。

 

「いいわ。エイラはここに残って」

 

「え?なんで…」

 

自分が行かないと言えば止まるとばかり思っていたエイラはその答えに愕然とした。

 

「ミーナ隊長達には時間がないの」

 

「は?なんだよそれ」

 

サーニャの返答の意味をエイラは始め理解できなかった。それを理解したのはヒンメリが完成してツリーに飾った時のことだった。

 

「できた……」

 

一番見てもらいたかったサーニャがいないのでは意味がないと思いながらもエイラは窓から見えるツリーを眺めると呟いた。

 

「……作ったからには飾らないとな」

 

ツリーに飾り付けをしているエイラの様子をどこからか見ていたミーナ中佐が出てきてエイラに声をかけた。

 

「エイラさん。何をしているの?」

 

「コイツを付けてるんだ。やることも無いし暇だからな」

 

「サーニャさん達の事が心配で落ち着かないんじゃない?」

 

心配しているかどうかで言えば当然心配している。しかしサーニャの実力なら多少不利を取っても無事逃げる事は可能だと考えていた。

 

「……どうしてサーニャ達が出撃するのを許可したんだ?」

 

エイラはサーニャ達が霧を出すネウロイに負ける事は無くとも勝つことができるとは到底思えなかった。

 

「サーニャさんにしては珍しく言葉に熱がこもっていたのよ。あんなにやる気があるのに作戦の実施を許可しなければそれこそ隊の士気に関わると思ったのよ」

 

一見するとネウロイと最前線で戦う501部隊の士気が下がると戦線全体にその影響が波及しかねない事を考えるとミーナ中佐の考えは正しいように聞こえる。

 

「……バルクホルンもミーナ中佐ももういつ上がりを迎えてもおかしくないよな」

 

「そうね。それがどうかしたの?」

 

「ミーナ中佐達には時間がない、去り際のサーニャの言葉だ」

 

言われた時は理解できなかったが今ミーナ中佐と話していてその言葉の意味にエイラはようやく気づいた。

 

「サーニャさんも故郷を奪われているから私達の気持ちを察してくれたのね」

 

自分の手でベルリンを取り返したいという気持ち考えそのものはエイラも否定はしない。しかし指揮官がそれを部下に察せられあまつさえ気を使われるなどあってはならないことだと思っていた。

 

「私達がウィッチでいられる間に絶対にベルリンを取り戻す。サーニャさんは優しい子だから自分のことのように思ってくれているんじゃないかしら」

 

「なぁ中佐」

 

「なに、エイラさん」

 

「サーニャ達の再出撃を許した事に自分が上がりを迎えそうだからって理由だからじゃないだろうな」

 

エイラの問いかけにミーナ中佐は大きく息を吐いた。

 

「その気持ちがなかったと言えば嘘になるでしょうね。けど今回に限ってはそれはないわ」

 

ミーナ中佐の答えにエイラは無言で続きを促した。

 

「貴女に貸しを作ってしまったわ。それを返すまでは自分勝手な行動をするわけには行かないわ。だから純粋に士気の問題を考えて出撃を許したわ」

 

ミーナ中佐の答えにエイラは満足したように頷いた。

 

「それならいいんだ」

 

そう言ってツリーにかけられたヒンメリを見上げるとちょうど太陽がが上りヒンメリが朝日を浴びて光り輝き始めた。

 

「眩しい……」

 

その時エイラに一つの考えが湧き上がった。ナイトウィッチの使う探知は科学の結晶たるレーダーに仕組みが限りなく近い。そしてその性質も殆ど一緒と言ってよかった。レーダーの明確な弱点としては海面付近の目標は海面でレーダーが反射する事により映らないというものがある。個人差はあるが魔導針も同じような性質を持っていて海面付近の目標は探知しにくい。仮にネウロイがレーダーを、魔導針の探知波を反射させることができるのならばサーニャの探知に引っ掛からなかった事にも納得できる。

 

「……サーニャが危ない!行かなきゃ!」

 

サーニャ1人ならあるいは逃げ切れるかもしれないが今回は経験の浅い服部と未だに魔法力に不安のある宮藤がいる。サーニャだけならともかくこの2人がいてはもしもと言うことも考えられる。

 

「エイラさん!?」

 

「もしも上層部がなんか言ってきたら適当に誤魔化しといてくれ!それで貸し借りなしだ!!!」

 

そう言って走り去るエイラをミーナ中佐はただ見送ることしかできなかった。

 

『もう随分飛んだはずだけど……』

 

『もうこの辺りにはいないのでは?』

 

宮藤の呟きに続いて服部も自らの推測を口にした。

 

「いた。真っ直ぐ前方。このままそっと近づいてわたしの合図一斉攻撃」

 

サーニャからの通信に宮藤と服部は気を引き締めた。

 

「今よ!」

 

サーニャの合図と同時に3人全員が真正面の霧の中に浮かび上がったネウロイに向かって一斉攻撃を加えた。

 

『やった!』

 

『やりました!』

 

宮藤と服部が歓声を上げる中サーニャは砕け散ったネウロイの破片がおかしな動きをしている事に気がついた。

次の瞬間、ネウロイは映像が巻き戻るかのように元の形を取り戻しビームを放ってきた。

 

『復活した!?』

 

『じゃああれは!?』

 

「子機…?」

 

通常コアを破壊すればネウロイは復活しない。このネウロイはコアがありそうな中心部付近を重点的に攻撃していたがそれ以外の場所も攻撃していないわけでは無く十中八九コアは破壊できているはずだった。

 

「それじゃあ、親機がいるの!?」

 

サーニャの言葉に答えるかのように背後からのビームが3人を襲った。

 

「あれは…」

 

「ネウロイの…親機!」

 

宮藤と服部が驚きを露わにすると同時にネウロイは大量のビームを放ってきた。

 

「そんな、全く探知できなかった。どうして……」

 

「とにかくやっつけないと!」

 

宮藤がそう言って反撃を行おうとすると突如宮藤の高度が下がった。

 

「うわわ!」

 

「宮藤さん!」

 

「芳佳ちゃん魔法が!」

 

最悪のタイミングで宮藤の魔法力に限界が訪れた。

 

「この状況でネウロイ二機の相手は危険すぎるわ。撤退しましょう」

 

サーニャの指示の元撤退を開始したがサーニャ達の前にいつのまにか回り込んでいたネウロイの親機が立ち塞がった。

 

「回り込まれた!」

 

条件反射で3人が攻撃を行うがネウロイの親機はヒンメリのように骨組みしかないせいで一発も当たる事はなかった。

 

「弾がすり抜けた!」

 

この段階になってサーニャはようやくエイラの主張が正しかった事に気がついた。虫ほどの大きさのネウロイでさえ探知できたサーニャの魔導針をこのネウロイが回避できたというのは俄には信じがたかったが実際に探知できなかったネウロイが正面に現れた以上はエイラの探知の方が正しかったという事だ。

 

「エイラ…」

 

ネウロイのビームがサーニャ達を直撃しようかというその瞬間、間に1人のウィッチが間に割って入りシールドを展開した。

 

「エイラ!」

 

「エイラさん!」

 

「ふぅ、間に合った」

 

エイラがシールドを張る事は殆ど無い。そのエイラがシールドを張ったと言う事実がどれほどエイラが焦っていたかよくわかるだろう。

 

「エイラ、わたし…」

 

「話は後。今はあいつを」

 

戦況が不利になったと見たのか親機が霧の向こうへと引き上げ始めた。

 

「逃すかよ!」

 

「エイラ!」

 

「静香ちゃん私達は子機の方を!」

 

「了解!」

 

エイラとサーニャの動きを見て宮藤と服部が2人の邪魔をさせないために子機の方へと向かう。

 

「あれがコアか!?普通に撃ってもダメだな」

 

コアはわかりやすく赤く光り輝きながらネウロイの中を動き回っていた。細い体と素早い動きが相まってエイラの実力をもってしても当てる事は難しそうだった。当てられるのはマルセイユのような正確な偏差射撃ができるウィッチくらいのものだろう。

 

「だったら!」

 

エイラは未来予知の出力を上げ普段よりもより先の未来を予知するとネウロイに向かって突進し未来位置にしがみついた。

 

「エイラ!どこ!?」

 

「サーニャー!!!」

 

サーニャの呼びかけに応えるかのようにエイラの叫び声がサーニャの耳に届いた。

 

「エイラ!?」

 

『サーニャならわたしの位置が分かるよな!?』

 

「へ!?」

 

『わたしに向かって撃て!』

 

「何言ってるの!?そんな事できないわ!」

 

エイラの予想外の言葉にサーニャは思わずそう言った。

 

『わたしを信じろ!撃てー!!!』

 

エイラの必死の叫びにサーニャは覚悟を決めるとフリーガーハマーをエイラの反応がする方向に向けると引き金を引いた。

 

「くらえ!」

 

サーニャのフリーガーハマーのミサイルが飛んでくるのを見て取るとエイラは素早くネウロイから離れた。

 

「エイラ!!!」

 

親機が砕け散ると同時に宮藤達が対峙していた子機も光の粒となった。

 

「エイラ!エイラ!?」

 

「サーニャー!!!」

 

サーニャの呼びかけに応えてエイラはサーニャの名を叫びながら抱きついた。

 

「やったな、サーニャ」

 

「うん」

 

霧を出すネウロイが倒された事を証明するように2人の周囲からは霧が晴れていった。




サーニャの探知に引っ掛からなかった理由、アニメのだと納得できなかったんで探知波を反射している事にしたんですけど正直まだ違和感が……。
ただアニメを見返すと実はエイラとサーニャで探知を回避した理由に対する考えが違うのかなと思いました。
サーニャはアニメで明言されていますけどエイラはヒンメリを見て気付いた描写だけで理由を明言きていないんですよね。で、ヒンメリみたいな作りだから〜って理由ではなくあの描写は朝日の反射を見て探知波を反射していると考えたんじゃ無いかなぁと思いました。てっきりサーニャが理由を説明していたからエイラも同じ結論だと思っていましたけど実際は2人の間で結論が違ったのかなと今になって思いました。
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