「うっひゃあ〜」
「実際みるとすげぇなぁ」
「大きい」
「あんな巨大なものが陸上を動けるのか」
眼下を走るラーテを見た501の面々の感想は概ねそのようなものだった。直前の作戦会議で大まかなスペックと写真は見せられていたが実際に見たラーテは彼女たちの想像を超えて大きかった。
「GO!GO!GO!」
そしてそのラーテに最も興奮していたのがこの部隊の指揮官、パットン将軍だった。キューポラから身を乗り出し腕を振る姿は前線指揮官というよりは車やバイクに熱中する子供が実際に乗せてもらった時のようだった。
「来るわよ!各自、ラーテの援護を最優先に!」
ミーナ中佐の指示のもと壁型ネウロイからのビームを防ぐためにラーテの前に501部隊全員でシールドを張るが宮藤がいない影響は大きく防御には穴があった。かなりの数のビームをラーテに直撃させてしまったがラーテはものともせずに進む。
「ビームを跳ね返した!?」
対ネウロイ用傾斜装甲がビームを跳ね返すのを見てペリーヌが驚いた。対ネウロイ用傾斜装甲は戦車や装甲車などにつけると重量の問題から速度が著しく落ちるため船舶に用いられる事が多い。しかしこのラーテはこの巨体を動かすために強力なエンジンを積んでいる為対ネウロイ用傾斜装甲を使う事ができた。
「ラーテが!」
叫び声を上げた服部が見たの大量のビームの一点集中攻撃を受けて煙を上げたラーテだった。
「散発的なビームなら防げても集中砲火を浴びると流石に無理か。けどラーテは主砲を撃てさえすれば良い。多少の損害は無視していいい。
それより問題はアレだな」
エイラが指差した先、ベルリンの中心部から数千、ヘタをすると万に達しようかと言う大量の小型ネウロイが飛び出してきた。
「ラーテに近づかさせないで!迎撃開始!!」
ミーナ中佐の号令にバディ毎に分かれて迎撃を開始した。
「私達で敵を惹きつけるぞ!」
「OK!」
バルクホルン、ハルトマンが真っ先に突撃しネウロイを上空へと引きつける。その過程でオマケと言わんばかりに大量のネウロイを破壊していく。コアを持ったネウロイならともかくこのネウロイの群れはコアを持っていない。ほんの少し攻撃を当てるだけで簡単に撃破する事ができた。
サーニャのフリーガーハマーなどは特に有効であり命中し、爆発を起こしたところから次々とネウロイは巻き込まれて破壊されていった。
「こっちは任せろ!」
サーニャが撃ち漏らしたネウロイを未来予知で先読みしたエイラがネウロイの群れの真正面に立ち塞がり機関銃を乱射して次々に破壊する。
対物ライフルと言うフリーガーハマーに匹敵する威力を持った攻撃を撃てるリーネも又このネウロイには有効だった。エイラのようにネウロイの群れの正面に立つと真っ直ぐ直線状になって突撃してくるネウロイの群れに向かって引き金を引くとそれだけでその群れの殆どを消滅させた。
しかしそれでも撃ち漏らしはある。数機の撃ち漏らしを服部が撃破し、ネウロイの群れが散開し乱戦に持ち込んで来た頃にラーテの主砲は射程圏に入った。ラーテの足が止まり主砲が傾き、一瞬の間の後轟音と共に主砲が発射されラーテ正面の壁型ネウロイは破壊された。
「サーニャ見ろ!」
壁型ネウロイの破壊に皆が歓声をあげるなか、エイラが気付いた。
「奥の壁も崩れてる…?」
「いや、アレ崩れてるんじゃないぞ!」
崩れていると思っていた壁型ネウロイはさっきまでエイラ達が戦っていた小型ネウロイへと姿をかえラーテの前へと移動し、再びその姿を壁型ネウロイへと姿を変えた。
つまり壁は崩れているのではなく移動しているだけであり、ラーテが本体に近づくにはベルリンを囲う壁型ネウロイ全てを破壊する必要があると言う事だった。
ラーテが主砲を撃つよりも早く壁型ネウロイは先制で攻撃を加えたがラーテはびくともしない。お返しと言わんばかりに主砲を撃ち返すが破壊された壁型ネウロイの代わりに再び別の場所から壁型ネウロイが移動してきて再びその進路を阻んだ。
「これで最後かしら」
ラーテは3枚、4枚と壁を破壊していく間に殆どの小型ネウロイを破壊し終えた501の前に再び小型ネウロイが現れた。
「うぇーまた出てきた」
「なら倒すまでだ!」
勇ましい言葉と共にバルクホルン、ハルトマンの2人が突撃を仕掛け他の面々も続くがそのあまりの数の多さに経験の浅い服部は苦しそうな表情を浮かべていたが他は概ね余裕を持って小型ネウロイを撃破し続けた。
途中、疲労の大きかった服部をラーテ直掩に回すなど多少のアクシデントはあったが順調に小型ネウロイを駆逐し続けた。
「壁ネウロイ、全て撃破されましたわ!!」
やっとの思いで全ての壁を撃破するまで戦線を維持し続けた501の前に再び小型ネウロイが現れた時、さしものバルクホルンも弱音を吐いた。
「数が減らない!前身は難しいぞ!!」
いくら501とはいえ疲労が蓄積されればミスもでる。一瞬の隙をついて小型ネウロイの群れがラーテへと向かっていくが他の小型ネウロイとの戦闘に手一杯で誰もそれを防ぐ事ができない。しかしここで戦線を離脱していた服部が役に立った。ラーテの上空で疲労の回復に努めていた事から他のメンバーよりも戦場全体見渡せ、いち早くそのネウロイに気がついた服部は急降下しネウロイの群れの側面から機銃を乱射した。
危機一髪、窮地を脱したかに見えたラーテだが新たな危機が直ぐそこまで迫っていた。破壊した壁型ネウロイの破片が浮き上がり集合、新たな姿を形作っていく。それに気がついた時にはもうすでにそれは完成目前であり止める手立てはなかった。服部がそれに弾かれ体勢を崩し、後ろを見やった時にはラーテ含む戦車部隊は巨大なドームに囲われているた。
「パットン将軍!聞こえますか!?パットン将軍!!」
ミーナ中佐が即座にパットン将軍と通信を繋ごうとするが結果は無駄に終わった。
「ダメだわ、内部と無線が繋がらない」
「ラーテが孤立した!」
「クソ!罠だったのかよ!」
バルクホルンが放った言葉にシャーリーそう返し、ルッキーニが驚いて声を上げた。
「ミーナ中佐、ここで突っ立ってても仕方ない。一番火力の出るサーニャのフリーガーハマーで破壊できないか試してみよう」
「そうね。エイラさん、サーニャさんの援護をお願い。その間、どこかに通れるような隙間がないか他の皆んなで調べてみるわ」
「了解」
ここまでしておいて今更そのような隙を見せるとも思えなかったがやらないよりはマシだろうと言う思いからエイラは返事を返した。
サーニャのフリーガーハマーがドーム型のネウロイへと命中し爆炎を上げるがドーム型ネウロイには傷一つつくことはなく501の皆は絶望感を抱いた。
「ラーテといえど中で集中攻撃を受けたら……!」
「もう結構立つんじゃない?」
「パットン将軍……」
『501部隊、及び作戦にベルリン奪還に参加する全将兵に伝える。パットン将軍はドームの中で健在である。繰り返す、パットン将軍はドームの中で健在である。
将軍からの連絡によると現在、フラックタワーを拠点に抵抗中。内部にはパットン将軍、戦車兵他ウィッチ一名、至急来援を乞うとの事だ。作戦参加部隊は別命あるまで一時待機せよ』
「ドームの中にウィッチが!?」
予想外の報告にミーナ中佐は驚いた。
「どう言う事だ!」
バルクホルンもまた同様だった。ベルリン奪還に参加するのは501部隊以外にウィッチはいないはずでありいるとすれば命令違反かをしたウィッチくらいのはずだった。
「宮藤さん、きっと宮藤さんのことです!」
「んな馬鹿な!」
服部の言葉にシャーリーが否定的な言葉を述べた。
「宮藤さんはキールで待機中では?」
ペリーヌも服部の意見には懐疑的だ。
「でも、聞こえたんです!ラーテから宮藤さんの声が!」
「ラーテに乗ってたってこと?」
ルッキーニ尋ねた。
「なんでだよぉ」
意味がわからずエイラは情けない声でそう言った。
「魔法力がなくて作戦に参加できないなら…」
「ひょっとして衛生兵として?」
リーネの言葉をサーニャが引き継いだ。
「うん、宮藤ならやるだろうね。ね、トゥルーデ」
「ああ、宮藤だ!」
ハルトマンがサーニャの言葉に同意し、バルクホルンもそれに同意した。
数分の後にブラッドレー将軍から連絡が入った。
「ブラッドレー将軍より最優先命令です。これより壁の内部に取り残されたパットン将軍と戦車部隊、そして宮藤総長の救出作戦を実行します」
「言われなくとも!」
「うん!」
シャーリーとルッキーニがやる気をみなぎらせるがそれに対してペリーヌが現実的な問題を投げかけた。
「でも、あの頑丈な壁をどうやって……」
「一つだけ道がある」
バルクホルンの言葉に、皆の注目が集まった。
「ベルリンの地下道だ!」
ほんと、ラーテってどうやって動かしてたんでしょうか。重さ的に道路とか陥没しそうですけど意外と軽いんですかね。