少し迷ってます。
「まさか貴様がルミナス・ウィッチーズのベルリン公演反対派だとは思っていなかったぜ。同じウィッチ同士馴れ合っているものだとばかり思っていたぜ」
唐突にエイラの執務室を訪ねてきたのは連合軍ベルリン防衛隊司令官、ジェラルド・パットン中将だった。
「あなたの方こそベルリン公演に反対な事が意外ですよ。ルミナス・ウィッチーズの公演では当然ベルリン奪還の功労者達が演説なりなんなりする事になります。自己顕示欲の塊みたいな将軍がまさかその機会を逃すことをよしとするとは思いもしませんでした」
エイラの考えるパットン将軍は自らの功績を誇る事を厭わない人物だ。こう言った機会は嬉々として参加するものだとエイラは考えていた。
「腐れネウロイ野郎をぶっ殺した功績なんざ本国に帰ればいつでもパレードで出迎えてくれらぁ。
だが今ここでそれをやられちゃあ場合によってはその功績を、ベルリン奪還そのものを台無しにされかねねぇだろうが!!」
「要人が集まる事になるであろうベルリン講演はその要人警護にウィッチをさかざるを得ませんからね。将軍の言う通り、ベルリンを放棄する事になっても驚きはしません」
ルミナス・ウィッチーズが公演するとなれば各国の要人が多数集まる事は想像に難くない。その警護のためにかなりの戦力をベルリンとその周辺に置く必要があるが連合軍にはそこまでの余裕がない。
「それだけじゃねぇ!
ルミナス・ウィッチーズ、あれをテメェは見捨てる事ができるのか!?
奴さん達が逃げる時間を稼ぐ為にウィッチ隊を護衛に向かわせるんじゃねぇか!?」
「自ら望んで危険地帯に出ようとする者を守ろうとする程わたしは優しくないですよ」
「どうだか。小娘が変な仲間意識を感じて助けんとも限らんだろう。
何より政府の連中から要請された時、貴様は断れるのか?」
「無意味な想定はやめてくれませんか。わたしはルミナス・ウィッチーズが戦う覚悟を持たない限りベルリンでの公演はやらせないと言っています。もちろん、政府に対してもです」
既にカールスラント政府からはエイラに対してルミナス・ウィッチーズの公演の許可を出すよう再三に渡って要請されていた。
それを断ったから剛を煮やした政府の人間がルミナス・ウィッチーズに直接乗り込んで許可を取るよう要請したのだ。
「圧力には屈しないってか」
「必要とあらば連盟空軍航空魔法音楽隊は解散させます」
エイラの言葉にパットン将軍は目を見開いた。
「そこまでするのか」
「当然です。このベルリン奪還はこれまで戦ってきたウィッチ達の集大成でもあるんです。それを台無しにするような事をさせるわけがないでしょう」
「だが背後にいる連中がそれを許すかな?」
「わたしはウィッチ隊の総司令官、連合軍所属のウィッチの人事権はわたしにあります。
たとえアイゼンハワー元帥でもウィッチ隊の人事に口を出すことは不可能です」
エイラの強気な発言にパットン将軍は考えるそぶりを見せた後言った。
「ベルリンの防衛については俺に責任の半分がある。その立場からルミナス・ウィッチーズのベルリン公演は絶対に許可できん」
パットン将軍の唐突な宣言にエイラは訝しげな表情を浮かべた。
「こんな所でそれを宣言されてもなんの意味もありませんよ」
「もちろんそうだ。ユーティライネン、貴様がルミナス・ウィッチーズのベルリン公演に反対の立場なのはまだ軍の一部と政府の連中しか知らねぇ。
そして俺が反対派なのを知っているのは俺の部下と貴様だけだ」
パットン将軍がなにを言いたいのか理解できずエイラは眉を顰めた。
「大々的に動けていないのは結局のところ政府の圧力が強いからだ。違うか?」
いくらエイラが軍で力を持とうとも相手は政府、限界がある。
故にエイラは水面下でマンネルヘイム元帥やマンシュタイン元帥など連合軍の有力者に声を掛けていたが結果は思わしくなかった。
自らの担当する戦線と直接関係がなくリスクを負ってまでその意見に追従するメリットが見当たらなかったからだ。
特にマンシュタイン元帥は自国の事であり表立って反対を表明することに躊躇いがあった。
「そこでだ、手を組まねぇか」
予想外の提案にエイラは言葉が出なかった。
「俺達2人が共同でルミナス・ウィッチーズに反対の立場を表明すれば政府としても無視はできんだろう。それに後に続いて反対の立場を明確にする奴も出てくるかもしれん」
パットン将軍の言う通り、全ウィッチの中で最も影響力のあるエイラとベルリン奪還の立役者たるパットン将軍が揃ってベルリン公演に反対の立場を表明すればベルリン公演を望むもの達も無視はできない。
それだけではない。2人が矢面に立つ事で立場を明確にしていなかった連合軍の上層部、マンシュタイン元帥達カールスラントの有力軍人などが立場を表明しやすくなる事は間違いない。
「……将軍はわたしの事が嫌いでしょう。なのにどうして協力をしようとするんですか?」
「確かに俺は貴様が嫌いだ。だがそれ以上にベルリン奪還の成果をよくわからん連中に無茶苦茶にされる事の方がよっぽど嫌に決まっているだろう!」
大きな声と共に振り下ろされた拳は机を揺らしコーヒーカップを倒して中に入っていたコーヒーが染みを作った。
「貴様が軍人として優秀な事はよく知っている。そしてその優秀な軍人と俺の意見が合致しているんだ。手を組まねぇ理由がないだろうが」
倒れたカップを気にも止めずパットン将軍はさらに続けた。
「それともなんだ。貴様は自分の好悪くらいで防げる最悪を防がないようなくだらねぇ人間なのか?」
「まさかそんなわけないでしょう。ただわたし1人でも出来ることをわざわざ人に頼る必要があるのか考えていただけですよ」
パットン将軍の小馬鹿にするような物言いにエイラは思わず言い返しがエイラ1人では限界がありパットン将軍の手助けがありがたいのは事実だった。
「意地を張るな小娘。貴様がいくら優秀だろうと今はまだその才能を十全に活かすだけの力を持ってはいないだろうが。大人しく俺の手を取れ」
確かにパットン将軍の言う通り今のエイラの力ではベルリン公演を政府が強行した場合止める事は難しい。だがパットン将軍と手を組む事をエイラの小さなプライドが邪魔をして素直に頷けずにいた。
「……お前のメリットはなんなんだよ」
「あん?」
「わたしはベルリンの公演を潰せればそれで目的を達成できる。
けど今閑職に回されている将軍が表立って騒動を起こすような真似をしたら二度と前線に戻る事が出来なくなるだけでなんの成果も得られていないんじゃないか?」
何よりも解せないのはパットン将軍のメリットだ。確かにベルリン公演は様々な危険を秘めている。最悪はベルリンの失陥だがそれはパットン将軍が今なりふり構わずに止める必要がある程起きる可能性のある物ではない。
「気に食わねぇんだよ」
「はい?」
「後ろでのほほんとしていた連中が俺達が必死の思いで奪還したベルリンを軽々しか扱う事が」
パットン将軍の言う事はなんとなくエイラも理解できた。
今回、ベルリンでの公演を言い出したのはカールスラント皇帝の四男で彼自身は軍籍を持ってはいるが戦場で戦った事はなかった。
後方で何もせずにいた連中が低い可能性ではあるがベルリンの失陥、ウィッチの信用などを賭けにベルリンで公演を行い戦勝をアピールする。気分の良い物ではなかった。
「感情がどうとか言いながら行動理由がそれですか」
「だが行動を起こすには十分な理由だろう」
パットン将軍の言葉にエイラはコーヒーを口に含むとゆっくりと嚥下した。
「ベルリン公演なんていう余計な提案ををしでかしてくれた連中には相応の対応をして然るべきでしょう」
そこでエイラは何かを決心するかのように一つ息を吐いた。
「しかしわたし1人では限界があるのも事実です。
パットン将軍、貴方の提案を飲みます」
エイラの返答にパットン将軍はニヤリと笑みを浮かべると手を差し出した。
「テメェならそう言ってくれると思っていたぜ」
「不本意ですけど仕方がありません」
嫌そうな表情を浮かべながらもエイラはパットン将軍の差し出した手を握った。
という事でパットン将軍再登場です。
そういえばパーシングの後継はパットン戦車ですけどストライク・ウィッチーズの世界だとどうなるんでしょうね。明らかに46年もまだ戦争中っぽいですしなんなら47、8年あたりまで続きそうな雰囲気ですけどパットン戦車とパーシングの間にもう一種類くらい戦車ができそうですよね