ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

144 / 305
流石にこの人数出すのは疲れました。


顔合わせ 前編

統合戦闘航空団は精鋭揃いであることから激戦地に投入され易くその任務は熾烈を極める。故に統合戦闘航空団の指揮官が同じ場所に複数人集まる機会はそう多くはない。

その珍しい事が今回このベルリンで行われることになった。

 

「知ってる人もいるけど改めて、スオムス空軍少将、エイラ・イルマタル・ユーティライネンだ。1ヶ月前の人事で全統合戦闘航空団直属の上官になる事になった。よろしく」

 

今回の会議では501から508までの全統合戦闘航空団の指揮官クラスのウィッチとストームウィッチーズから加藤とマルセイユがきていた。

 

「事前に連絡をしていた通り、統合戦闘航空団の普段の運用に関しては今まで通りの運用を行う。ただベルリン奪還作戦のような複数の統合戦闘航空団を使用する作戦では少しばかり運用方法が変わる事になる」

 

「今まで通り戦えるというのであれば貴君の指揮下に入る事に否やはない。

だが生憎我が505部隊は他の統合戦闘航空団との共闘経験がない。一体何がどう変わるの具体的に示してもらいたい」

 

エイラの言葉に手を挙げ質問をしたのは第506統合戦闘航空団の司令官、グレーテ・M・ゴロプ中佐だ。

 

「508部隊としても具体的な運用方法について協議したいと思います。

私達は空母を基地としていますので今後の作戦参加には限界がありますから」

 

これを言ったのは508部隊の司令官、ジェーン・S・サッチ中佐だ。

一口に統合戦闘航空団と言ってもそれらの成り立ちは異なる。

501から503はその戦域において防衛の要であり攻勢においては槍先となる事を目的に作られた。

対してゴロプ中佐の505部隊は東欧に於いてどの国の指揮下にも入らず独自の判断でバルカン半島からカスピ海までの撤退を生き抜いた精強なウィッチ達を纏めた部隊である。

 

「2人の意見はもっともだな。まずゴロプ中佐の疑問から片付けよう」

 

エイラが合図をすると後ろに控えていたサーニャが会議室にいるウィッチ達に資料を配った。

 

「今までの統合戦闘航空団はその権限は他のウィッチ隊と比べると大きいけど連合軍に所属するウィッチ隊の一つでしかなかった。

わたしが全統合戦闘航空団の司令官になった事で、方面軍指揮下のウィッチ隊から連合軍統合作戦司令部付きのウィッチ隊に所属が変更になっているんだ」

 

これまでであれば、東西にある二つの戦線での合同作戦が行われる事はまずあり得なかった。しかし今回のベルリン奪還により、統合作戦の実行が現実的となりそれらを統括する部署が必要となり作られたのが連合軍統合作戦司令部だ。

一つの戦線ならともかく対ネウロイの全戦線に対して影響力を持つ事になるためその人選は慎重を極めたが結果としてはリベリオン、扶桑、カールスラント、オラーシャ、ブリタニア、ガリア、スオムスの7カ国がそれぞれ代表を選出する事で落ち着いた。

なお、その後も各国が陸、海、空の主導権を巡って争いは続いたがスオムスはそれからあっさりと離脱しウィッチ隊の全指揮権を掻っ攫う事に成功している。

 

「これまでと違う点としてはあくまでも方面軍の一部隊だったのから連合軍司令部の直属部隊になった事で必ずしも方面軍の指揮に従わなくても良くなっているんだ」

 

「運用レベルでは変わらないという話だったけどそれだと運用レベルでも大きく変わるんじゃないかしら」

 

そう問いかけたのは501部隊のミーナ大佐だ。

 

「そうでもないさ。必ずしもと言っても余程変な命令じゃない限りは従わないとダメだし、もし度が過ぎるようならわたしから何らかの罰を下す事になる」

 

「つまり権利はあるが行使はするなということか?」

 

502部隊のラル中佐が尋ねた。

 

「行使するなとまでは言わないけど使い所は考えてくれよな」

 

「それはまた難しい話ではないか?」

 

それを言ったのは503部隊の副司令、フーベルタ・フォン・ボニン中佐だ。

 

「今まで通りしてくれたらいいんだけど……」

 

「上からの命令で断りたい事なんて山のようにある。その誘惑を断ち切れというのは些か酷ではないか?」

 

「例えば何があるんだ?」

 

「ジェットストライカーの試運転とかじゃないかしら」

 

ミーナ大佐の言葉にエイラは苦々しい表情を浮かべた。

確かに当時その力があれば問答無用で行使していただろうと思ったからだ。

 

「バルクホルンの奴が大変な目に遭ったと言う奴か。それは確かに権利を行使したくなる際たる例だな」

 

遠いオラーシャの地でもその噂は届いていたようでボニン中佐は頷いた。

 

「それなら今後はそういうのはウチで引き取ろう。うちの部隊に怪我をしてもすぐに治る固有魔法を持った奴がいる。多少の不具合なら問題なく使用できる」

 

ボニン少佐の言葉にここぞとばかりに口出ししたのはラル中佐だった。不具合により隊員が怪我をする可能性に目を瞑れば、試作機とはいえ性能のいいストライカーユニットが手に入るのは喜ばしいことではある。しかしその犠牲がエイラの友人となれば黙ってはいられない。

 

「そういう事ならウチで預ろうか?」

 

エイラが口を開くよりも先に507部隊の司令となっているハッセことハンナ・ウィンド少佐だ。運の悪いニパが本人の預かり知らぬところで生贄に捧げられるのを見ていられなかったようだ。

 

「少佐の隊はニパのような固有魔法を持っている者はいないだろう」

 

「よく知ってるな」

 

呆れたような口調でエイラが言った。

 

「統合戦闘航空団のウィッチは優秀なものばかりだからな。いつでも迎え入れられるように監視は怠っていない」

 

いつでも引き抜けるよう虎視眈々と狙っていると堂々とラル中佐は宣言した。

 

「ちょっと!まだ諦めてなかったの!?」

 

「グンドュラのところには十分優秀なウィッチがいるだろう!」

 

501、503の2人からの口撃にラル中佐は飄々と肩をすくめた。

 

「あの2人はどうしてあんなに怒っているんですか?」

 

不思議そうにエイラに尋ねたのは504部隊の司令官、ドッリオ中佐だ。

 

「中佐も気をつけろよ。アイツは人の部隊から勝手にウィッチを引き抜く常習犯だからな」

 

「人聞きが悪い事を言うなユーティライネン。偶然私に都合の良いよう書類が勝手に動いているだけだ」

 

ラル中佐の言い訳にすらなっていない無茶苦茶な言葉にエイラはため息で返した。

 

「で、今はどの隊の誰を狙っているんだ?」

 

「バルクホルン、ハルトマンは当然として」

 

ラル中佐の言葉にミーナ大佐が怒りの声を上げたがラル中佐はそれを無視して続けた。

 

「宮藤、ノヴォトニーとキッテル」

 

今度はボニン中佐が腰を浮かしたがエイラが視線で制した事で再び椅子に座り直した。

 

「竹井、マルヴェッティ」

 

まさかの自分の部隊の人物が呼ばれるとは思わずドッリオ中佐は目をぱちくりとさせた。

 

「アレリューヒンとカンタクジノ」

 

「おい!」

 

冷静沈着なゴロプ中佐が声を荒げたがそれすら無視してさらにラル中佐は続ける。

 

「そういえばうちにはナイトウィッチがいなかったな」

 

その言葉にグリュンネ中佐とプレディ大佐が鋭い視線をラル中佐に向けた。

 

「ヴィトゲンシュタインとブランクも貰おう」

 

いつの間にか欲しいから貰うへと言葉が変わっているがこの際全て聞こうとエイラは更に続きを促した。

 

「507からはウィンドと迫水を貰おう」

 

今まで司令官は指名していなかっただけに最低限のモラルは持っていると思っていただけにハッセは驚いた様子だった。

 

「508は雁渕とハリスを貰おうか」

 

その言葉にサッチ中佐は思わず拳を握りしめた。

 

「ああ、忘れていた!!アフリカのストームウィッチーズからも貰わないとな。マルセイユと稲垣を貰おう。これで全隊2人ずつ、公平だな」

 

ラル中佐の言葉に会議室は沈黙に包まれた。

それを破ったのはミーナ大佐だった。

 

「私だけ3人引き抜かれているのだけど」

 

「バルクホルンとハルトマンは2人で一つだろう」

 

「まて、そう言う事ならどちらか片方は503によこせ」

 

慌てたようにボニン中佐が言った。

 

「ならバルクホルンをやろう。ハルトマンはうちが貰う」

 

2人のやり取りにミーナ大佐は大きなため息を吐いた。

 

「グンドュラ、フーベルタ。前と違って今日はちゃんと拳銃を持ち込んでいるの」

 

ミーナ大佐の言葉に2人はの動きが止まった。

 

「ほんの冗談だ。ミーナ」

 

「そうだ、ちょっとしたじゃれあいじゃないか」

 

ラル中佐とボニン中佐が慌てたようにそう言ったが騙されるミーナ大佐ではない。

 

「実は今日の随行はトゥルーデとエーリカなのだけど……」

 

「なんだと!それを早く言わないか!!」

 

「こうしてはいられない。グンドュラ、すぐに2人を説得に行こう!!」

 

ミーナ大佐の言葉に2人は立ち上がり会議室を出ようとしたが何かに気が付いたラル中佐が足を止めた。

 

「そうだ、いや待て。今この場にいるウィンドの方が先だ」

 

「なら2人はウチで引き取るがそれでも構わないか?」

 

ここに来てエイラとミーナ大佐以外の司令官達はさっきまでの事は冗談でも何でもなく本気で引き抜こうとしていたと言う事にようやく気がついた。

 

「ミーナ大佐、加勢しよう」

 

最初に行動を起こしたのはゴロプ中佐だった。

 

「ウチとしても竹井とフェルを引き抜かれるのはちょっと許容できないかな〜」

 

続いて504のドッリオ中佐が立ち上がり他の司令官達も続々とミーナ大佐への加勢の意思を表明した。

 

「ほんの冗談じゃないか。間に受けるな」

 

流石のラル中佐も不味いと思ったのか後退りしながら弁明した。

 

「いいや、グンドュラのあれは本気に決まっている」

 

いつの間にかミーナ大佐の隣に来ていたボニン中佐が追い討ちをかけた。

 

「フーベルタ、貴女も同罪よ」

 

もちろん見逃されるわけもなくミーナ大佐達から厳しい視線を向けられた。

そんな状況を変えたのはこの場で一番の上位者、エイラだった。

 

「ラルの思惑がみんな分かったところで一度席についてくれ」

 

エイラの言葉にラル中佐とボニン中佐が嬉々として、それ以外は渋々席についた。

 

「北の連中とカールスラントの間じゃ有名だけどラル中佐の人材収集癖は異常だ。今名前をあげた奴は囮でそれ以外を引き抜く事だって考えられる。十分に注意してくれ」




マルセイユと加藤は次回出る予定です。
508のサッチ中佐はまだ出てないと思ってたんですけどサイレントウィッチで出てたんですね。
お陰で少しですけど出す事ができました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。