ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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やっぱり一度に出せるのは4人くらいが限界ですね。
出せなくはないけどそれ以上は自分の実力的に結構しんどい……


団欒

「ところでベルリン解放記念式典の噂が流れているんだけどそこのところどうなっているのかしら?」

 

「私も聞いたぞユーティライネン。我々の悲願だったベルリン奪還を成し遂げたんだ。ぜひ盛大にやってもらいたいものだ」

 

ミーナ大佐とラル中佐の言葉にエイラは顔を顰めた。

 

「それ噂の出所はどこだ?」

 

いまだにベルリン解放の記念式典がどうなるか、カールスラント政府と連合軍上層部では激しい論争が続いている。

式典に関しては外部に漏れないよう徹底しているはずだった。

 

「私はトゥルーデ達が話しているのを聞いたわね」

 

「私はマンシュタイン元帥からだ」

 

総じてカールスラント経由な情報にエイラは苦々し気な表情浮かべた。

 

「解放記念式典はいずれやるけとそれがいつになるかはわからないぞ」

 

「パリ奪還のことを考えれば数ヶ月以内にあるのではないんですか?」

 

506部隊のグリュンネ中佐が尋ねた。

 

「パリの時はネウロイ占領地域との間にライン川があった。これを起点に強固な防衛線を築けていたけどオラーシャ国境にはそれがない。だからより多くの兵、より多くのウィッチで守る必要があるんだ」

 

「ならそれを用意すればいいだろう」

 

ラル中佐がこともなげにいった。

 

「お前と同じで連合軍だって人と物資の獲得には苦労してるんだぞ。それができてればガランド中将の部隊はベルリンに展開されてないさ」

 

ベルリン奪還によりリベリオン、ブリタニアと言ったネウロイ占領地域西側の国々にとって戦闘は半ば終わったようなものであった。残すオラーシャ戦線は元々オラーシャ、扶桑の担当領域でありそれほど多くの部隊を送るつもりがなかったからだ。

バルカン半島、アフリカ大陸にはネウロイが残っているがこれも時間と共に解決するだろうと言うのが西側諸国の考えでありカールスラントの防衛はカールスラント自身が行うものとして一部戦闘部隊に至っては撤退を開始してさえいた。

また、カールスラント自身もそれを望んでいた。ガリアと違いノイエカールスラントに強大な自国軍を残していた関係から他国の力を借りて自国の防衛をする必要がなく過大な援軍は大国としてのプライドに差し障るからだ。

 

「くだらんな」

 

小さな、しかしハッキリとした言葉でつぶやかれたそれは会議室に一瞬の沈黙をもたらした。

 

「カールスラントは大国だ。連合軍の力を借りずともネウロイを国境地帯から駆逐する兵も技術もある。式典を行うのになんの心配がある」

 

「ゴロプ中佐の言う通りカールスラントの軍事力は強大だ。けど今のカールスラントにはそれを支えるだけの補給線もなければ物資もないんだぞ」

 

現在のカールスラント最大の弱点はその物資の少なさにあった。

兵士も技術もその多くをノイエカールスラントに移動させる事に成功していたが物資とそれを得るための資金までは移動させきれなかった。

カールスラント陥落によりカールスラントマルクは暴落し物資の獲得には外貨を使うしかなかった。陥落当初よりはその価値は回復の一途を辿っているがそれが元の価値にまで戻るにはまだ暫くの時間を要する事は間違いない。

強大な軍事力を利用するにはリベリオンやブリタニアといった国々の援助が必要だった。

 

「ユーティライネン将軍もカールスラントのストライカーユニットを履いていると聞く」

 

「まぁ、そうだな」

 

唐突な話題転換に困惑を覚えながらとエイラは同意した。

 

「世界でも有数のエースであるユーティライネン将軍がカールスラント製のストライカーユニットを使う、それ即ちカールスラントのストライカーは世界一ということだ!」

 

「え、うん?そう……なのか??」

 

さっきまでは必要なこと以上は喋らないと言う何処か職人のようなそんな雰囲気を醸し出していたゴロプ中佐が性格が変わったように語り出した事に困惑しながらもエイラは同意を示した。

 

「そうだ!すなわちカールスラントが自国の防衛を開始すればなんの問題もなく解放記念式典ができると言うわけだ」

 

困惑するエイラに助け舟を出したのはボニン中佐だった。

 

「いくらカールスラントでも補給がなければ戦えない。カールスラントの事を評価してくれるのはありがたいが過大評価は良くないな」

 

「フーベルタの言う通り技術力こそ上がっているけど生産力は陥落前の方が上よ」

 

ミーナ大佐も同意を示した。

 

「しかし……」

 

「そういえばあれはどうなったんだ?」

 

尚も言い募ろうとするゴロプ中佐の言葉を遮りラル中佐が口を開いた。

 

「あれ?」

 

「パリの時にも歌を歌ったウィッチだ」

 

「あぁ、ルミナス・ウィチーズか」

 

エイラのテンションが露骨に下がった事にラル中佐は不思議そうな表情を浮かべた。

 

「何か問題があるのか?」

 

「さっき言った通りベルリン防衛はパリの防衛と比べて難しい。レーダーサイトがまともに機能していない現状じゃ尚更だ。

もし仮に式典中に、それもルミナス・ウィッチーズの飛行中にネウロイが来てみろ。わたしには彼女達に戦えと命令する以外の選択肢がないんだ」

 

「それは残念だな。歌うウィッチは有名だからな、一目見てみたいと思っていたのだが……」

 

戦うのでは歌う事を目的としたウィッチであるルミナス・ウィッチーズは戦う事を生業とするウィッチの間では度々話題に上がるくらいには有名だった。

ラル中佐ももちろん知っていて一度くらいはルミナス・ウィッチーズを見てみたいとも思っていた。

 

「意外と観れるかもしれないけどな」

 

「今の言い方だと歌う事はないように聞こえたが?」

 

「カールスラント政府が煩くてな。私とパットン将軍が中心になって式典の延期とルミナス・ウィッチーズの不参加をもぎ取ろうと交渉してるんだ」

 

「パットン将軍もなの?」

 

意外な人物の名前にミーナ大佐は驚き聞き返した。

 

「一応ベルリン防衛部隊の指揮官だからな。私も将軍も不安定な防衛体制を余計な事で煩わされたくないんだよ」

 

「カールスラント政府がやりたいと言っているのならやればいいだろう。カールスラントの事だ、きっと何かしらの対応策を用意した上で要請しているんだろうからな」

 

ゴロプ中佐の言葉にエイラはため息を吐いた。

 

「そんなものはないぞ」

 

「カールスラントにおいて政府が軍に過度に干渉する事は少ないわ。きっと政府は軍がなんとかすると思って任せてきているのね」

 

カールスラントは1800年代後半より平時に軍が政治に、戦時に政治が軍に過度に口だしせず専門家に任せ続けてきた。

故に今回も連合軍に対しては式典をすると言う政治的な要求のみを突きつけ防衛体制等軍事面はできる限りの協力するとまで言っていた。

事実、彼らは連合軍が必要とするレーダーの購入の為の資金の提供等を申し出て実際幾らかの資金援助をしていたがそれが対応策と言えるかどうかは甚だ疑問だった。

 

「ユーティライネン将軍は噂と違って随分と優しいんだな」

 

ボニン中佐が以外そうな表情でそう言った。

 

「噂に聞く将軍はいついかなる時でも冷静に、冷酷に軍事的な正解を選ぶ事ができると聞いている。バルバロッサの時のようにな」

 

「エイラさんは元々優しいわよ」

 

「バルバロッサの件だって前線指揮官だったウィッチの意図を組んでの苦渋の決断だろう。自らが泥を被ったお陰であの時撤退した連中はユーティライネンと言う悪者を作る事ができ罪悪感にかられずにすんだ。これを優しいと言わずなんと言うんだフーベルタ」

 

ミーナ大佐とラル中佐の擁護にエイラは恥ずかし気に頬を掻いた。

 

「すまない。今のは忘れてくれ、私の認識が間違っていたようだ」

 

「別に気にしてない」

 

室内になんともいえない空気が流れる中ラル中佐が再び口を開いた。

 

「そうそう、そのユーティライネンの優しさに免じて私の罪を許して欲しい」

 

罪を許して欲しいと言う割に悪びれる様子のないラル中佐にエイラは胡散臭いものを見るような表情を浮かべた。

 

「お前の副官のリトヴャクだがありがたく502に迎え入れる事にした」

 

ラル中佐の言葉にエイラは開いた方が塞がらなかった。

 

「脇が甘くなったなユーティライネン。連合軍ウィッチ隊総司令官などと言う顕職に祭り上げられたせいか?」

 

「お、お、お、お前……ッ!」

 

「と、言うわけでリトヴャクは頂いていく。なんせ前線には余裕がないからな」

 

「ちょっと待ちなさい!サーニャさんは501の隊員よ!」

 

ミーナ大佐が抗議の声を上げた。

 

「それは違う。書類上はユーティライネンの副官として連合軍司令部付きになっていた。残念だがミーナが口出しできることではない」

 

「待て、それなら私にもリトヴャクを貰う権利が……」

 

「フーベルタ話をややこしくしないで」

 

余計な事を口走ろうとしたボニン中佐をミーナ大佐が一喝した。

 

「ではそろそろユーティライネンが正気に戻りそうだから失礼するとしよう」

 

そう言うとラル中佐は会議室から走り去った。

 

「い、一度ならず二度までもやられた……」

 

流石のラル中佐もまさか二度はやるまいと思って油断していたが故に起きた事件にエイラは後悔が止まらなかった。

 

「うぅ、ごめんよサーニャ〜」

 

シクシクと涙を流すエイラをエイラのサーニャに対する溺愛っぷりを知らない隊長達が唖然たして見つめるのだった。




本作のラルとエイラは結構仲良しなので今回の件もそこまで酷い仕返しはしません。前線の兵力が不足しているのも事実ですしね。
なおラルはそれをわかった上で実行した模様。タチが悪い。
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