ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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久しぶりエイラーニャの絡みを書きたいなぁ


病室

その日、エイラはベルリンにある一番大きな病院の病室を訪れていた。

前線にいる事が多かった関係で病院といえば野戦病院で有りこのような綺麗に清掃された病院を訪れたのはかなり久しぶりの出来事だった。

501にいた時であれば宮藤がいた上にかなり充実した医療制度を備えた医務室があったため美容院に入院するという事はなかった。

そのため最後に病院の病室を訪れたのは実のところブリタニアでエイラ自身が入院していた時以来だった。

 

「よく来てくれたな」

 

ベッドの上から起き上がる事なく首を動かしてエイラに顔を向けそう言ったのはベルリン防衛部隊の司令官、パットン将軍だった。

いつもの様な覇気はなく顔も青く明らかに体調は良くなさそうだった。

 

「遅くなってしまい申し訳ありません。本当はもっと早くお見舞いに来るつもりだったんですけど」

 

エイラが見舞いに来た時、パットン将軍が事故にあってから既に11日が経っていた。

パットン将軍の入院の影響はベルリン防衛部隊だけでなくエイラの普段の業務にも影響を及ぼしていた。

ベルリンのウィッチ隊は基本カールスラント軍の指揮下にありエイラに関係がないが連合軍ベルリン防衛隊の指揮下にあるウィッチ隊はエイラの影響下にある。ゲイ将軍の負担を減らすため一時的に連合軍ベルリン防衛隊に所属していたウィッチがエイラの指揮下に入った他ゲイ将軍達をサポートするために関係各所との調整等忙しなか動いていた事がエイラの見舞いが遅くなった原因だった。

 

「すまねぇな」

 

もちろん、パットン将軍もそれは知っていたため謝罪の言葉を口にした。

 

「将軍が謝罪するようなことじゃないさ。

こんな事誰にも予期できる事じゃないんだからな」

 

「どっかの誰かが俺を暗殺しようとしてたんなら事前に食い止められたかもしれない事件だけどな」

 

パットン将軍がルミナス・ウィッチーズの件でカールスラント政府等と対立していたのは関係者の間では有名な話だった。

故にパットン将軍の事故がそれを理由とした暗殺事件だったのではないかとまことしやかに囁かれていた。

 

「……なにか怪しい事でもあったのか?」

 

パットン将軍の怪我の原因はパットン将軍の乗ったキャデラックとリベリオン陸軍の軍用トラックが衝突した事で起こった不幸な事故だった。

軍用トラックの乗員もゲイ将軍ら同情していたベルリン防衛隊の幕僚の誰もが軽傷か無傷だったなかパットン将軍だけはパーテーションに頭をぶつけ頚椎を損傷していた。

トラックもキャデラックもそれほど速いスピードで走っていたわけではなかったためパットン将軍の運が悪かったとしか言いようがなかった。

 

「ただの冗談だ。本気にするな」

 

そう言ってパットン将軍は口元を緩めた。

 

「テメェの方はなかなか意地の悪い事をしたそうじゃねぇか」

 

「意地の悪いとは心外だな。彼女達との妥協点を上手く見つけたと言ってくれよな」

 

「ケッ!公演を許可した直後に解体を伝えるなんてまどろっこしい真似しときながらよく言うぜ」

 

入院しているとはいえ正式にパットン将軍の司令官の任が解かれたわけではない。そのためエイラが何をしていたのかは把握していた。

 

「翌日の原隊からの命令書は新たに各国が協力して作った義勇独立音楽隊、ルミナス・ウィッチーズへの派遣命令。

わざわざ原隊からの命令書で伝えずとも直接言ってやりゃよかったじゃねぇか」

 

「ヒントは出した」

 

「それはちゃんと伝わったのか?」

 

「さあ?そこまでは知らないな」

 

そう言ってエイラは肩をすくめた。

 

「にしても義勇独立中隊、少なくとも俺が事故に遭った直後にできる話じゃねえ。ありゃいつから考えてたんだ」

 

新たに設立された義勇独立音楽隊は連合軍の指揮下にない。では誰が指揮するのかと言うと派遣先の国の指揮下に一時的に入りその国の軍の指揮下で動く事になっている。

とはいえこれは名目上で実質的には音楽隊の隊長であるリベリオン陸軍少佐、グレイス・メイトランド・スチュワードの指揮で動くことになる。

所属が連合軍という組織から派遣国へと変更るす事が容易ならざる事は疑いようがなく一体いつからこの事を計画していたのかパットン将軍は想像できなかった。

 

「将軍と共闘する前、わたしが考えていた案がこれだったんだ。

ルミナス・ウィッチーズが不祥事を起こし時にルミナス・ウィッチーズが連合軍のウィッチ隊でなければわたしとしては問題ないからな。

だからわたしと彼女達にとって最もいい方法は何か考えた時、わたしの指揮下から離れて行動する事が一番いい手段だと思ったんだ」

 

「仮にネウロイ野郎が攻めてきてルミナス・ウィッチーズが尻尾を巻いて逃げればそれはカールスラント軍所属のウィッチが敵前逃亡したに過ぎない。

後でカールスラントに対して非難でも表明すりゃあウィッチの評価が落ちる事は最低限で済むってか」

 

パットン将軍の言う通り、当初エイラはルミナス・ウィッチーズがベルリンでの公演を強行するようであれば今の状態と全く同じ事をしようと考えていた。しかしパットン将軍と言う強い協力者の登場がより強気な行動を取らせら事になりそちらへとシフトしていったが同時に事前計画を進めることも怠っていなかった。

そのため今回のパットン将軍の事故と言う不測の事態にも対応する事ができ辛うじて最悪の事態は免れた。

 

「緩い手だな。テメェならベルリン公演に限ればさせないと言うこともできたはずだ。違うか?」

 

「できなくはないけどそれでカールスラントとの関係が悪くなる事は避けたいからな」

 

カールスラントに司令部を置いている以上関係が良好な事に越した事はない。ルミナス・ウィッチーズとエイラにとって最も都合がいいとは言ったもののその実態はカールスラント政府とエイラにとって都合のいい落とし所というのが実情だ。

 

「リベリオンと違ってスオムスは真正面からカールスラントに喧嘩をあるほどの力はないんだ。この辺が落とし所としては丁度いい」

 

「テメェがそんな事を気にするタマかよ」

 

「気にするさ。わたしには誰それかまわず喧嘩を売るような度胸ないからな」

 

パットン将軍は自分が嵌められた事もあってエイラは相手が大国がどうかで怖気付く事はない図太い神経の持ち主という印象だった。

 

「俺を閑職に押しやったくせによくいう」

 

「隙があったからな。リベリオンとの関係を壊さずに上手く排除できそうだったから試しにやったらできたんだ」

 

「まったくたまったもんじゃねぇ。もしそんな事されてなけりゃあ今ここでベッドに寝転がることもなかっただろうさ」

 

吐き捨てるようにパットン将軍は言った。

 

「それは……」

 

「冗談だ、本気にするな。事故にあったのも閑職に回されたのも俺の油断が原因だ。テメェのせいじゃねえ」

 

エイラからパットン将軍を左遷させなければ事故が起きなかった可能性は高く偶然とはいえエイラは少しの罪悪感を抱いた。しかしそれを見抜いたパットン将軍は即座に冗談といい笑みを浮かべた。

 

「俺が万人受けしない人間だってのはわかっている。それをわかっていながら何もしなかった俺の落ち度だ」

 

表情には出さなかったがパットン将軍の言葉にエイラは衝撃を受けていた。かつてのパットン将軍であればここまで素直に自分の落ち度を認める事はなかったはずだ。いや、仮に認めてもその後に必ずが前向きな言葉が続いたはずだった。

だが今のパットン将軍は素直に落ち度を認めただけでそれどころかエイラを気遣う様子すら見せていた。

 

「本当に回復の見込みはないんですね」

 

「なんだ今更」

 

「元気そうな様子で俄には信じられなかったからな」

 

「首から下は動かないどころか感覚すりゃあねぇ。回復の見込みなんざありゃしねえよ」

 

「そっか……」

 

回復の見込みはない。それは即ちパットン将軍の除隊を意味した。この数ヶ月の間のパットン将軍との掛け合いが嫌いでなかったエイラは少しの寂しさを覚えた。

 

「怪我して任務に耐えられない以上、俺はこのまま退役する事になるだろう」

 

「寂しくなるな」

 

「ユーティライネンにそう言ってもらえるとは思えなかった」

 

驚いたような表情を浮かべた後パットン将軍は笑みを浮かべると口を開いた。

 

「だがテメェに吠え面かかせてやれなかったのが唯一の心残りだな」

 

「その幸運を喜ぶ事にするよ」

 

パットン将軍はエイラの言葉を鼻で笑うとため息をつくと皮肉気な笑みを浮かべた。

 

「しかし自動車事故で一生ベッドの上か。軍人の死に方じゃねえな」

 

エイラが見舞いに訪れた翌日、パットン将軍は肺塞栓症が原因で死亡した。自動車事故から12日後のことだった。




て事でパットン将軍は史実通り退場です。
この後市井では色々疑惑が出るんですけどそれはまたそのうち書きます。
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