ルミナス・ウィッチーズの解体と再編に伴う業務、その殆どを受け持ったのはルミナス・ウィッチーズの隊長であるスチュワード中佐だった。
それまではスチュワード中佐よりも上の人間、直近ではエイラが処理していた事が全てスチュワード中佐に降りかかって事でルミナス・ウィッチーズのメンバーと再編を喜ぶ暇もなくベルリン中央にあるカールスラント軍司令部とベルリン郊外のルミナス・ウィッチーズ基地とを行き来する日々を送ることになった。
ベルリン解放式典で公演を行うにあたり連合軍との調整が必要になるが連合軍ベルリン防衛部隊の司令官だったパットン将軍が事故にあった事でルミナス・ウィッチーズに関する事は後回しにされた。
結局ルミナス・ウィッチーズが連合軍との会談の場を持てたのはパットン将軍が亡くなった3日後のことだった。
「久しぶりだな」
パットン将軍の死により防衛部隊は一時的にベルリン防衛部隊所属のウィッチ隊をエイラの指揮下に戻す事で業務を縮小化、部隊の立て直しを図っていた。
そのためベルリン防衛に関して連合軍内でもっとも発言力のある人物はスチュワード中佐の元上官であるエイラになっていた。
「……お久しぶりです」
当初、ルミナス・ウィッチーズは解散されると伝えられたが実際のところそれは所属が移るだけだった。この事はスチュワード中佐からすれば騙されたという意識がありエイラに対して苦手意識を植え付けていた。
「なんだよ、元気がないな」
対してエイラは一度解散はさせたが結局はルミナス・ウィッチーズの存続を許した形になるため苦手意識を持たれているなど思っていなかった。
「ルミナス・ウィッチーズの再編に伴う業務が忙しくて…」
恨みがましい視線をエイラに向けるが当のエイラは飄々とした態度であった。
「なんだよ、そんなの大した事ないだろ。それならわたしだってパットン将軍の穴埋めで大変なんだぞ」
ゲイ将軍がベルリン防衛部隊の陸軍を、エイラがウィッチ隊及び空軍を管理下に置く事でパットン将軍の穴を埋めた。ベルリン解放式典の直後にはオラーシャ奪還のための作戦が発令される事が通達され、エイラもその準備に奔走している。
作戦そのものはベルリン奪還直後から考えられていて陸、空軍に関しては作戦立案の殆どが終了していた。しかしその作戦におけるウィッチの役割については未だに議論が続いていた。
大戦初期から中期にかけてはネウロイを倒すためにウィッチの存在は必要不可欠だったが科学の発展によりネウロイ倒すために必ずしもウィッチが必要ではなくなった。
そのためオラーシャ奪還においてウィッチをどの様に活用するのか上層部では決めかねていた。そのウィッチ隊運用の中心になるのがエイラでありパットン将軍の穴埋めとオラーシャ奪還作戦の立案と二つの仕事を掛け持つエイラの忙しさはスチュワード中佐の比ではなかった。
「そんなわけであまり時間が取れないから手短に頼むぞ」
「善処します」
元々エイラはベルリンでルミナス・ウィッチーズが公演を行う事に反対の立場だった。交渉は難航するだろうとスチュワード中佐は考えていた。
「ルミナス・ウィッチーズのベルリン公演の件なのですが…」
「その件は好きにしろって言っただろ?」
エイラにとってその話は終わった事でそれ以上議論の余地はないと考えていた。
「それに本来それはパットン将軍の管轄だったんだ。それが偶然わたしと考えが一致していたからベルリン公演のウィッチ隊の動きに関して任されていただけで本来それ程強い力はないんだぞ」
「しかし今は防衛部隊のウィッチ隊を纏めているからある程度ベルリン解放式典の警備にも口を出せる立場にありますよね?」
「たしかにそれは認める。けど今回に限ってはもう口を出すつもりはないぞ」
「それは私達ルミナス・ウィッチーズがカールスラントの指揮下にあるからですか?」
「よくわかってるじゃないか。私の権限はあくまでも連合軍内のものでそれ以外にはそう大きな影響力はないからな」
実際のところはベルリン防衛に関わる事はたとえカールスラント軍内のことでも連合軍上層部は口を出す事ができるがカールスラントとの関係を考えるとそれを行使する事はほとんどあり得なかった。
「それだけではありませんよね。私達がカールスラント指揮下に入った事で、ルミナス・ウィッチーズが不祥事を起こせばそれは連合軍ではなくカールスラントの責任によって処理される。そしてその処罰の対象はルミナス・ウィッチーズの隊長である私になる」
「そうだな。けどそれがどうしたって言うんだよ。わたしは最初に聞いたぞ中佐。公演を取りやめるか、武器を持って戦う覚悟を持つかと」
「ええ、そして私達はベルリンでの公演を行うと答えました」
「だから好きにしろと言っただろ?
言葉通り好きにできる体制も整えてやったじゃないか」
「事前の通達くらいあっても良かったんじゃないですか?」
事前の通達があればルミナス・ウィッチーズがこれほど慌ただしく準備をすることもなかったのにと恨みがましい視線を向けるとエイラはニヤリと笑みを浮かべた。
「使いの参謀から言われなかったか?準備を怠るなと」
「……たしかに言われました。しかしあれで察しろと言うのは無理がありませんか?」
エイラ自身、あの伝言で意図が伝わるとはこれっぽっちも思っていない。しかし直接的な言葉で伝えるのは癪に触った。
「ウィッチってのは良くも悪くも道を切り開いていくからな」
「はい?」
「ベルリン公演を行うと言ってきた時、中佐は武器を持って飛ぶつもりはないと言った。
ウィッチってのは往々にして上層部には予想外な第三の道を見つけ出してそれを実行する傾向にある」
そう言うと再びエイラはため息を吐いた。
「ウィッチ隊ってのは歳のせいか、他の部隊と比べて命令無視や独断専行と言った行為が極端に多い。
もちろんそれがいい方向に転がることも多いけどその後始末をするのは上層部だ。ルミナス・ウィッチーズの選択もルミナス・ウィッチーズとしては正しかったのかもしれないけど、その後始末をする奴の大変さってのを中佐に分かって欲しかったのさ」
「つまり今私が大変な思いをしているのは閣下の意趣返しという事でよろしいですか?」
「そうだぞ」
素直にエイラが認めた事にスチュワード中佐は面食らった。
「何驚いてんだよ。連合軍からルミナス・ウィッチーズを移動させるのメチャクチャ大変だったんだからな。
連合軍の広告塔の役割になってたから、各国の軍に対する寄付や戦意高揚はどうするだって軍のお偉いさんから突き上げくらったらしてほんと大変だったんだからな」
「ならルミナス・ウィッチーズを連合軍に置いておけば良かったのでは?」
「そんな危ない事できるはずないだろ。もしネウロイが来たらどうするんだよ。まともに戦えないウィッチに戦えって命令するのはわたしだって嫌なんだ」
「嫌なんですか?」
「お前わたしをなんだと思ってるんだよ。嫌に決まってるだろ」
スチュワード中佐の予想外の言葉にエイラは語気を強めた。
「てっきりウィッチであれば全員戦えくらい思っているのかと……」
「何を持ってそう判断したのか知らないけど、わたしだって守るべき対象の区別からいつく。たとえウィッチでも戦えない、戦いに向かないウィッチがいる事だってわかってる」
そう言うとエイラは時計に目を向けた。
「そろそろ次の予定があるから切り上げたいんだけど何か質問はあるか?」
「……では最後に一つだけ、今の話とは関係ないのですかいいですか?」
どこか遠慮したような雰囲気でスチュワード中佐は口を開いた。
「いいぞ」
「パットン将軍の死に関して将軍が暗殺したのではないかと言う噂が流れています。この件について関わりがあるのかどうか教えていただけませんか?」
「なんだそれ?どうしてわたしが将軍を暗殺したなんて話が流れるんだよ」
「将軍があった翌日の朝、パットン将軍は亡くなられました。その間将軍の他に面会した人物はいないそうです」
元々パットン将軍の事故は何者かによる暗殺が失敗した結果だとする噂があった。そこにエイラが出会った翌日、パットン将軍が亡くなったとなり暗殺の容疑者の1人にエイラの名前が浮上していた。
「馬鹿なこと言うなよ。将軍とは諍いはあったけど、最近では協力体制にあったんだぞ。そんな事しないよ」
「……そうですよね。すみません変なこと聞いて」
「いや、わたしもそんな噂が流れている事を知らなかったから知れて良かった。話はそれだけか?」
「はい。ありがとうございました」
ふと思ったんですけどルミナス・ウィッチーズって公式から漫画とか出てないですよね?なんでなんですかね。